演劇の音響にAbleton Liveが使われている!? 田村響華さん、小岩井ことりさんも出演するリーディング&ライブ『Re:Union』の裏舞台

演劇や朗読劇などに欠くことができない、舞台音響。音楽のライブにおけるPAに相当する役割だけでなく、セリフに合わせて効果音を流したり、BGMを流したり…といった操作を行う仕事であり、その出来の良し悪しで、舞台の印象が大きく変わるといっても過言ではありません。

その舞台音響にDAWが活用されている、ってご存知ですか?ちょうど1月24日(木)~27日(日)に予定されている2.5次元リーディング&ライブ『Re:Union(リユニオン)』の稽古現場を見学させてもらったところ、Ableton Liveが大活躍していました。音楽における使い方とはちょっと違うのですが、DAWの多様性を改めて知ることができたので、レポートしてみたいと思います。

なぜ、私が舞台の稽古を見学することになったのか……、ちょっと不思議に思う方も多いと思いますが、理由は単純。いつもネット放送番組、DTMステーションPlus!を一緒にやっている作曲家の多田彰文@akifumitada)さんが、『Re:Union』の音楽を担当していること、同じくDTMステーションPlus!のレギュラーゲストである声優の田村響華@tamura_kyoka)さん(ちょうど『けものフレンズ2』がスタートしたところですね!)が、この舞台のキャストであること。さらには先日のコミックマーケットに向けて多田さんとともにオリジナルアルバム『Harmony of birds』を一緒に作った、DTMステーションでもお馴染みの声優、小岩井ことり@koiwai_kotori)さんが、ゲスト出演という形でキャストを務めつつ、テーマソングの作詞も担当してる舞台だから、応援のつもりでちょっと覗いてきたからです。


『Re:Union』の稽古場にお邪魔しました。左から田村響華さん、音響の角丸雄亮さん、多田彰文さん、小岩井ことりさん

リーディング&ライブとはちょっと聞きなれない言葉かもしれませんが、これは朗読劇に歌を組み合わせたもので、ドラマパートとライブパートで構成されています。キャストのみなさんは、舞台の後方に着席して、台本を持って朗読していく……とのことなので、大きなアクションがあるわけではないようですが、DTMステーション的には、小岩井ことりさん作詞、多田彰文さん作・編曲のテーマソングを田村響華さんなどが歌う、という点において取り上げないわけにはいかないですからね!

この『Re:Union』は、昨年7月に行われた2.5次元舞台『下北沢VR』に次ぐ、VRプロジェクト第2弾というもの。前作も多田さんが音楽を担当していたので、実際の公演(第1弾はリーディング&ライブではなく演劇でした)を見に行ってきましたが、現在・過去・未来を行き来する「タイムリープ」がテーマになっているという点では共通しており、今回は軽音楽部がテーマになっています。

軽音楽部最後にして唯一の部員となった彼女の願いはーーー

御苑学園(みそのがくえん)軽音部に代々伝わる、一冊の古いノート。
誰が、いつから始めたのかも分からないが、歴代の部員たちは誰もがノートにそれぞれの想いを綴っていた。
その中に紛れこむようにあった、ひとつの曲。

1990年、2035年、2019年、そして、2050年。
それぞれの時代に残されたまま、消えゆく運命だった曲は「タイムリープ」を通して形となってゆく。
そしてまた、それぞれの時代でも関わった者たちの運命もまた動き出す。

決して交わることのなかったそれぞれの時代を生きる高校生たちが、ひとつの曲を巡り、想いを紡ぎ合う。
それぞれが想う未来と過去、人、夢。
曲が完成した時に、待ち受ける運命とはーー

そんな『Re:Union』の稽古場で、目を引いたのが舞台音響のシステムでした。稽古場なので、PA的には簡易的なスピーカーが置かれているだけではありましたが、ここにはMacBook Proとともに、PAD型のコントローラであるAKAIのAPC40 mkIIが持ち込まれており、そのMac上ではAbleton Liveが動いていたのです。


舞台の稽古場にAbleton LiveとAKAIのAPC40 mkIIが持ち込まれていた

担当していたのDISCOLOR Campanyの角丸雄亮に伺ったところ
「舞台音響ではAbleton Liveを使うのが主流となっています。クロスフェードができてサンプラー機能を持つDJソフトを使うケースもあるようですが、Liveは断然多機能だし、日本語対応していて、セリフが入れられるという点が大きいですね」
という答えが返ってきました。


お話を伺った舞台音響の角丸雄亮さん

実は角丸さんは作編曲家でもあり、音楽制作においてはPro Toolsを使っているけれど、舞台音響の仕事ではLiveを使っているそうです。このLiveが主流というか、舞台音響にDAWが使われているこということにもちょっと驚きましたが、「日本語対応しているからセリフが入れられる」というのが何を意味しているのか、どうもピンときません。


画面右側にセリフの冒頭が並んでいて、それぞれをプレイするとそのシーンでの効果音や音楽が鳴る

その点について聞いてみると

「Liveの画面を見ると早いと思います。右側にセリフの冒頭部分が並んでいますが、このセリフのところで使う音楽や効果音が仕込んであるんです。実際の舞台において、そのセリフが来たタイミングでAPC40 mkIIのGOボタンを押すと、それが再生され、カーソルが1つ下がって、次のセリフに……というようになっているんです。そのセリフとして日本語入を入力できるという意味です」とのこと。


各ボタンには50近いSEが割り振られている

カラフルに光る各パッドには効果音として、チャイム、足音、学園祭でのざわめき、シャッター音、大きな扉を閉める音……などなど50近い効果音が割り振られており、そのパッドを叩けば鳴るわけです。ただ、実際にはそうした操作はほとんどせず、GOボタンを押していくだけで済むように仕込んでいるというわけなんですね。


ミスを減らし、事故を起こさないように、本番での操作は極力少なくできるようにしている

「できる限り事故が起こらないように、いじるところは少なくしています。フェード処理もなるべくオートメーションで書き込んで処理しています。舞台の進行に合わせて曲と曲のクロスフェードを手で行うなどにとどめています」

つまり、台本を見ながら役者さんのセリフを聴いて、「ここだ!」というところでGOボタンを押すのが中心の操作のようです。


フェード処理はオートメーションを組んで設定している

「それでも、緊張してGOボタンを2回押しちゃう、なんてことがあり得ないわけではないんです。すると本来とは違う効果音が出て大きな事故になってしまいます。そんな時、1つ上に戻すようにショートカットを割り振っていますよ」

念には念を入れているわけですね。ちなみに、これら効果音は素材集から引っ張ってきたものがある一方、角丸さんが用意したものも多いのだとか。たとえば、今回の『Re:Union』では過去の時代でカセットテープを使うシーンなどが出てくるわけですが、実家に残っていたラジカセを動かして、それを録音しているそうです。

ちなみに、この稽古においてはMacBook Proのオーディオ出力を小さなスピーカーに接続して使っていましたが、本番ではRMEのFireface UCXを使うそうです。


本番では、オーディオインターフェイスにアナログ6出力を持つRME Fireface UCXが使われる予定

「今回のステージでは卓にYAMAHAのDM1000を用い、ステージ用のマイクを計11本、スピーカーはマスターのLRのほか、4つを使うので、LIVEからの出力は4chを予定しているので、UCXで十分だと思います。会場の規模やスピーカーの配置などによっては、8ch程度が必要になることもあるので、その場合はadat出力などを行うケースもあります」

と角丸さん。


リーディング&ライブでのステージ配置図

もちろん、役者さんの声のバランスをとったり、エフェクト処理をするのも舞台音響のお仕事。それに合わせて効果音や音楽を正確に出していくのですから、かなり大変な業務であることを改めて感じさされれます。

その『Re:Union』のリーディング&ライブは1月25日~27日の3日間ですが、その前振り的なものとしてボイスドラマがあり、『ラジオ Re:Union』としてニコニコ生放送で、以下のスケジュールで配信されます。

1月9日(水) 田村響華 / 平山笑美 / バレッタ裕
配信前半(公式) 21:00~
OPコーナー&ボイスドラマ第1話配信!
配信後半(CH配信) 21:40~
アフタートークコーナー&いろいろ?配信

1月11日(金) 黒木ほの香 / 成海瑠奈 / 高木友梨香
配信前半(公式) 21:00~
OPコーナー&ボイスドラマ第2話配信!
配信後半(CH) 21:40~
アフタートークコーナー&もろもろ?配信

1月13日(日) 小岩井ことり / 小野早稀 / 石井マーク / 松井南波
配信前半(公式) 21:00~
OPコーナー&ボイスドラマ第3話配信!
配信後半(CH) 21:40~
アフタートークコーナー&あれこれ?配信

「ボイスドラマから物語は“2.5次元リーディング&ライブ”へと繋がってゆきます。ボイスドラマを聞いていなくても楽しめる構成にはなっていますが、あらかじめ予習しておいた方が、よりお楽しみいただけるかと思います」とのこと。このボイスドラマを聴いてみると『Re:Union』の世界観もわかって、結構引き込まれていきますよ!もちろん、私も、リーディング&ライブは見に行くつもりです。

最後に、田村響華さん、小岩井ことりさんにも稽古の合間にコメントを少しもらったので紹介しておきます。

滝野川春役:
田村響華さん

リーディング&ライブというのは私にとっても初めての経験で、とてもワクワクしています。過去、現代、未来、超未来を行き来する『Re:Union』という作品がすごく面白く、舞台でこの4つの時代がどうリンクするかが楽しみです。稽古では、各時代ごとに別々に行うので、リンクされた作品を自分でも見てみたいのです。お客さんが羨ましいですね。これまで比較的おとなしめの役柄が多かったので、春という元気な女の子を演じるのは嬉しいです。ぜひ多くの方にいらしていただければと思います。

イベント中でのちょっとした朗読劇はありましたが、ここまでの朗読劇というかリーディング&ライブは初めてです。ボイスドラマを楽しんでもらったあとに、舞台があるという構成も斬新で、2次元と3次元のいいとこどりですよね。私の演じる超未来=2050年のみくちゃんは、最後にして唯一の部員。すごく明るくて、元気なムードメーカーです。実は、この物語の主人公はみくちゃんじゃないか、って私、勝手に思っているんですよ(笑)。一人のみで演じるので、元気さをどう見せるかなかなか難しいキャラクタなんですが、ぜひみなさん見に来てくださいね。今日初めて、音響のシステムを見てみましたが、Liveを使うんですね!iPadでPON出ししているのを見たことがありましたが、こんな操作をしているのを間近で見たのは初めてです。音響ってミスしたら怒られるけど、成功しても褒められない難しい仕事だ…と聞いたことがあります。でもカッコいいし、憧れますよね!
篠崎みく役:
小岩井ことりさん

【公演日時】
1月24日(木) 19:30
1月25日(金) 14:00** / 19:30*
1月26日(土) 14:00** / 19:30*
1月27日(日) 13:00* / 17:00
※ *アフタートークイベントあり **アフタートークイベント&ゲスト出演あり
※開場は公演開始時刻の30分前からになります。

【アフタートークイベント】
1/25(金)
昼公演:小岩井ことり(ゲスト)・石井マーク・黒木ほの香・成海瑠奈・高木友梨香・松井南波
夜公演:バレッタ裕・田村響華・今野優月
1/26(土)
昼公演:平山笑美(ゲスト)・小野早稀・バレッタ 裕・田村響華・松井南波・今野優月
夜公演:黒木ほの香・成海瑠奈・高木友梨香
1/27(日)
昼公演:小野早稀・石井マーク・松井南波
※1/24(木)・1/27(日)夜公演のアフタートークイベントはありません。

【劇場】
新宿シアターモリエール
東京都新宿区新宿3-33-10 新宿モリエールビル2F

【チケット】
confetti:https://www.confetti-web.com/detail.php?tid=49299&
※ご予約には会員登録(無料)が必要です。

【関連情報】
Re:Union公式サイト
ラジオ Re:Union(ニコニコ生放送)
Re:Union Twitter : @VR2_ReUnion

Commentsこの記事についたコメント

4件のコメント
  • ななしさん@昼ご飯中

    Goボタン一つでなら
    DPのチャンクとかなら、どうなるかなぁ (゜_゜)

    2019年1月10日 12:47 PM
  • ふみゆき

    昔、音楽雑誌でクレイジーケンバンドの横山剣さんが、
    「ネタ」の入った、3台のMPC2000を専用のハードケースに入れて、
    スタジオに持ち込んでる写真を、見たことがあります。
    それを見た少し後に、PC or MacとNovation Launchpadの組み合わせで使えば楽なのに、
    と思ったことがあります。
    Ableton Liveなら、MIDIコントローラーも豊富ですし、
    PCのキーボードによる誤動作も少なくて、便利ですよね。

    2019年1月11日 3:15 AM
  • Re:Union@新宿シアターモリエール | DISCOLOR Company

    […] https://www.dtmstation.com/archives/23274.html […]

    2019年1月27日 4:44 PM
  • 2019年舞台音響|kakumarusound

    […] DTM STATION様に取材をしていただいたり、自分で作曲したものを音響担当する舞台でかけたりなど色々新しい経験にも恵まれました。 […]

    2020年5月23日 3:58 PM

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