2つのスピーカーを切り替えて聴き比べられるモニタリングに特化したオーディオインターフェイス、Fluid Audio SRI-2をRolandが発売

アメリカ・カリフォルニア州のメーカー、Fluid Audio(フルイド・オーディオ)が開発したオーディオインターフェイス、SRI-2Rolandが輸入販売元となって3月30日より国内で発売します(実売価格は29,600円前後+消費税)。このSRI-2は24bit/192kHzに対応した2IN/2OUTのオーディオインターフェイスで、Windows、Mac、iOSで利用できる製品なのですが、最大の特徴はモニタリングに特化したオーディオインターフェイスである、という点。

モニタースピーカーメーカーであるFluid Audioが開発したSRI-2は、天面に大きなボリュームがあり、これで細かく音量調整できるだけでなく、スイッチ一つで2つのモニタースピーカーを切り替えて比較できるのも大きなポイント。もちろんLINE、INST、MICのそれぞれに対応したレコーディングも備えているのでオールマイティーなオーディオインターフェイスとして使うことも可能。実際どんなオーディオインターフェイスなのか試してみました。


Fluid AudioのSRI-2を試してみた

「オーディオインターフェイスはすでに持ってるよ」という方が多いとは思いますが、このFluid AudioのSRI-2はすでに別のオーディオインターフェイスを使っている人でもミックスやマスタリング用として使うことを想定した、モニタリングに特化したユニークなオーディオインターフェイスなのです。


3月30日に発売になるFluid AudioのSRI-2

トルクの重たい大きなボリュームノブを操作する感覚は高級オーディオ機器を使っているような雰囲気で、微妙な音量を細かく調整しながら音をチェックできる高音質なオーディオインターフェイスとなっています。

「でもFluid Audioってどんなメーカー?」という方も少なくないので簡単に紹介しておくと、同社はJBLでスピーカーの開発を行っていたKevin Zuccaro(ケビン・ザッカロ)氏が8年前にアメリカ・カリフォルニアで立ち上げたメーカーで、これまで数多くのモニタースピーカーを開発・販売してきた会社です。


大きくて、やや重めのトルクのボリュームノブ

ヨーロッパでは、結構人気なメーカーだそうですが、日本国内ではRolandが輸入代理店になって2017年から発売してきています。Rolandでは以前はMA-10Dなど人気のモニタースピーカーがあり、私自身今でも使っているのですが、すでに製造中止になっていて、現在あるのはMA-22/MA-22BTという小型モニターのみ。そのため、音楽制作用途で使えるモニタースピーカー製品を、Fluid Audioがちょうど補完する形になっているみたいですね。

そのモニタースピーカーのメーカー自らが、モニターリングのために出したSRI-2というわけなのです。3月30日の発売を前に、一足早くお借りして試すとともに、せっかくなのでFluid Audioのモニタースピーカーの1つ、5インチで出力70W(ウーファー40W+ツィーター30W)というスタンダードモデル、Fluid Audio F5もセットでお借りして試してみました。


リアにはSPEAKER A、SPEAKER Bという2系統のバランス出力端子が用意されている

まずSRI-2は、前述の大きなボリュームノブのほか、各種コントロールノブ、ボタン類がすべて天面に並ぶオーディオインターフェイスで、かなりデザインにも凝った製品です。USBバスパワーで動作し、リアにはSPEAKER A、SPEAKER Bという2つの出力が用意されているのが大きな特徴。フロントには入力用のコンボジャックx2が左側、ヘッドホンジャックが右側に装備されているというシステム構成になっています。


フロントの左側にはコンボジャックの入力端子が2つ、右側にはヘッドホン出力がある

また、SRI-2自体はいわゆるUSBクラスコンプライアントなオーディオインターフェイスとなっているため、Mac、Windows、さらにiPadやiPhone(Lightning-USBアダプタは必要)でも、接続すればすぐに使える仕様となっています。ただし、Windowsの場合、最新のWindows 10でないとしっかり認識されない可能性があるほか、接続しただけだとASIOドライバが使えないので、DAWで確実にコントロールできるようにはドライバをインストールする必要があります。


Windowsの場合はドライバをインストールすることでASIOも利用可能となる

今回はそのWindows 10のマシンにドライバをインストールして試してみましたが、Studio One 4 Professional、Ablity Pro 2.5、Ableton Live 10、Cubase Pro 10、FL STUDIO 12……とどのDAWでも問題なく使うことができたし、バッファサイズを最小で8サンプルまで縮めても安定的に動作させることができたので、非常に低レイテンシーなオーディオインターフェイスとして利用することが可能でした。


バッファサイズを8 samplesにしても問題なく動作してくれた

このSRI-2がモニタリング用として、とても優れているのは大きなボリュームノブがあるほか、右側にあるSPEAKERボタンを押すことで、SPEAKER A、SPEAKER Bを切り替えることができるという点。前述のリアの端子に異なる別々のモニタースピーカーを接続しておくことで、切り替えができるのです。


SPEAKER AとBの切り替えボタンが用意されているのが大きな特徴

実際に試してみるとその良さをすぐに実感することができます。DAWから楽曲を再生しながらSPEAKERボタンを押すと、AからBへ、BからAへと音が途切れることなく、スムーズに切り替えることができるのです。一般的な切り替え機の場合、一瞬音が途切れたり、切り替え時にプチッというノイズ入ってしまいがちですが、そうしたことがなく、曲の流れを一切壊すことなく、切り替えられるんです。


バランス出力対応のSPEAKER AとSPEAKER Bの端子にそれぞれ別のスピーカーを接続

そのため、ディテールをチェックしつつ、異なる音質のスピーカーで違和感なく聴くことができるかをしっかりと確認することができるのです。ちなみに、SPEAKER A、SPEAKER Bはいずれもバランス出力に対応しており、どちらか1つからの音を出すことができる仕様。つまり、同時に両方のスピーカーから音を出すことはできません。そのため、DAW側から見れば、あくまでも2IN/2OUTという仕様であり、スピーカーとヘッドホンも同じ信号が出る形です。

もっともメインのボリュームノブとヘッドホン用のボリュームは独立しているので、モニタースピーカー側、ヘッドホン側と別々に音量設定して、聴き比べていくことも可能です。


オールマイティーな2つのコンボジャック入力端子

なお、フロントにある2つのコンボジャック入力は、オールマイティーな入力端子となっています。+48Vボタンをオンにすることで、ファンタム電源も供給可能になるので、コンデンサマイクを接続することができますし、左右別々にINST/LINE切り替えが可能なので、ライン入力でもギターやベースを直接接続することも可能。


+48Vのファンタム電源にも対応しているため、コンデンサマイクも使用可能

もちろん左右別々に入力ゲインの調整も可能になっています。前述の通り、バッファサイズをかなり小さくすることが可能なので、ソフトウェア音源をリアルタイム演奏したり、アンプシミュレータや各種エフェクトを介してギターやベースなどを弾いた場合のモニターとしてもなかなか優秀に機能してくれるし、結構いい音でのレコーディングも可能でした。


LINEとINSTの切り替えスイッチも左右それぞれに用意されている

このSRI-2はiOSデバイスとLightning-USBアダプタ経由で接続して使うこともできるのですが、この場合、iPad/iPhoneのUSBバスパワーだけでは動作させることができません。そのために、SRI-2にはmicroUSB端子が用意されており、ここにACアダプタなどで電源を供給することが利用できるようになっているのです。もっともUSB Type-C接続タイプの最新iPad ProではACアダプタなしで動作してくれましたが……。


iPadやiPhoneで使用する場合はEXTERNAL POWERと書かれたmicroUSB端子にACアダプタを接続

これらiOSデバイスでの利用時においても、SPEAKER A、SPEAKER Bの切り替えはもちろん、各種マイクや楽器と接続してのレコーディングはPCで行うのとまったく同じように行うことができました。


iPhone XSでもバッチリ使うことができた

ところで、SPEAKER AにはFluid Audio F5を、SPEAKER BにはサーモスのVECLOS SSA40という小さなスピーカーを接続したのですが、F5が思いのほか、いい音でよかったですね。低域から高域まで結構フラットに音がでるし、モニタースピーカーとして解像度も高く、音像がクッキリしています。


今回初めて使ってみた5インチのモニタースピーカー、Fluid Audio F5

出力は70Wとパワフルでありつつ、同じ5インチでも他社の5インチモニターと比較すると若干小ぶりなのも設置しやすくて嬉しいところ。F5はFADER SERIESという製品群なのだそうですが、その名の通り、モニタースピーカーのフロント面にフェーダーが用意されており、これで音量調整ができるようになっているんです。また、このフェーダー、滑らかに動かせると同時にカチカチと段階を切り替えて音量を上げていくことができるので、左右でしっかりとバランスを整えられるのもいいところですね。この性能、このパワーで実売価格が33,400円前後(税込み)というのは、なかなかリーズナブルだなと思ったところです。


音量をツイーター横にあるフェーダーで調整することができる

以上、Fluid Audioの新製品、SRI-2について紹介してみましたが、いかがだったでしょうか?すでに使っているオーディオインターフェイスに加えてモニタリング用途でSRI-2を導入してみるというのもいいし、入力性能もいいので、このタイミングでSRI-2をメインに切り替えてしまうのも手。よりよいモニター環境を…と考えている方は、検討してみてもいいのではないでしょうか?

※2019.3.21追記

海外版のSRI-2にはCubase LEが付属しているようですが、国内流通分には付属していません。

【関連情報】
Fluid Audio SRI-2製品情報
Fluid Audio F5製品情報

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