バ美肉ツールのVoidolがVSTプラグイン化を実現。DTM制作でのボーカルに新旋風が巻き起こるか!?

1月16日にスタートしたThe 2020NAMM Showで、日本のクリムゾンテクノロジーが、「Voidol -Powered by リアチェンvoice- VST Plugin版」(以下Voidol VST)のプロトタイプを発表しました。Voidol VSTは以前に「VTuberに超強力兵器が誕生!リアルタイムに自分の声をキャラクタボイスに変換できるソフト、Voidolが960円で発売開始!」、「VTuberのための悪魔のアイテム、VoidolがついにWindowsに対応。標準搭載のイケメンボイスの新キャラクタも追加に」といった記事でも紹介したことのあるリアルタイム音声変換ソフト、VoidolのVST版。

マイクに向かってしゃべったり、歌ったりした声を、リアルタイムに全く別のキャラクタの声に変えられるソフトで、男性の声をカワイイ女性キャラクタボイスに変換できるというものです。VSTプラグイン化されたことで、音楽との親和性も高くなり、今後DTMにおけるボーカルの在り方にも変化が出てくる可能性もありそうです。まだプロトタイプの段階ではありますが実際に使って試してみたので、どんなものなのかレポートしてみます。

2020NAMMでプロトタイプが発表されたVoidol VST

NAMMで発表されたVoidol VSTは、まだプロトタイプの段階なので、発売時期も価格も、また最終的な機能などもハッキリはしていません。Windows版、Mac版それぞれのVSTプラグインとして2020年内のリリースの予定であるという程度の情報です。とはいえ、そのプロトタイプを、実際に自分のPCにインストールして試してみたところ、機能的にはほぼ完成しており、このまま発売してもいいのでは……と思うほどの内容となっていました。

簡単に説明すると、Voidol VSTはVSTインストゥルメントではなく、VSTエフェクト。ボーカルの入ったオーディオトラックに、Voidol VSTをインサーションの形で入れると、再生した際の歌声がもともとレコーディングしてあったボーカルから、Voidolで設定したキャラクタの歌声に差し替わる、というソフトです。全然違う人の歌声に変えることができ、もちろん男性が歌ったトラックを女性の歌声に変えてしまうことも可能。実際に、そのようにして作られたデモ曲があるので、ちょっと聴いてみてください。

どうですか? これ、誰の歌声をどのようにして差し替えたのか……ということは公然の秘密となっているので、ここでは深追いはしませんが、面白いですよね。曲は「TOKYO”妄想”2020 feat. 音宮いろは」というもので、もともと6年前にVOCALOIDの初音ミクが歌う曲として作られたものを、アレンジしなおすとともに、ボーカルをVoidolにしてリメイクされたもの。

すでに発売されているスタンドアロン版のVoidol

ちなみに、このキャラクタは、すでに発売されているVoidolにデフォルトで用意されているキャラクタとしても知られている“音宮いろは”です。VOCALOIDの歌声とは明らかに違うし、ボイスチェンジャーを使った歌声ともまったく違うものですよね。

このような歌声にすることは、Voidol VSTでなくても、従来のスタンドアロン版のVoidolでもできるのでしょうか?

「これまでMac版、Windows版としてリリースしたVoidolでは、トークの声をリアルタイムにキャラクタの声にすることができる一方、音程のある歌声もリアルタイムに変換することが可能だったので、基本的には可能です。ただ、リリース後も研究・開発を続けていく中、やはり歌声を変換する場合は、トーク用ボイスモデルではなく、ソング用のボイスモデルを用意し、それで変換したほうが、より自然な歌声になることが分かってきました。先ほどのデモは、そのソング用ボイスモデルで変換したものなんです」と話すのは、クリムゾンテクノロジーの代表取締役で、一般社団法人音楽電子事業協会(AMEI) MIDI規格委員会委員長でもある飛河和生さん。

Voidolの開発元、クリムゾンテクノロジーの代表取締役、飛河和生さん。写真は昨年10月に上海で行われたMusic Chinaの会場でのもの

つまり、現在販売されているVoidolの音宮いろはでは、このビデオほどの精度での歌声は作れないけれど、今後リリースされるであろう音宮いろはのソング用ボイスモデルを利用すれば可能ということですね。

このVoidol VST、ここではWindows版を使ってみましたが、Studio OneでもCubaseでも、Ableton LiveでもAbilityでも使うことができました。

DAWを起動し、ボーカルトラックにVoidol VSTをインサーションで組み込んで……という手順は必要ではあるものの、実際の使い方自体はスタンドアロン版のVoidolよりもシンプル。極端な話、挿してキャラクタを設定するだけなんです。

このプロトタイプには

音宮いろは
音宮いろは TOKYO 2020
ANDROID GIRL
東北ずん子

の4つのキャラクタが用意されていました。

「音宮いろはと東北ずん子は、トーク用のボイスモデルとなっていますが、音宮いろは TOKYO 2020とANDROID GIRLはソング用のボイスモデルとなっています。どちらでも、歌声を変換することが可能ですが、やはりソング用のほうが、より歌声のつながりがキレイになります。もっともソング用のボイスモデルをどう作るのがベストなのか、現在まだ模索中であり、音宮いろは TOKYO 2020については、とりあえずTOKYO 2020を歌わせることを目的に作ったアルファ版的なボイスモデルなので、その点ご了承ください」と飛河さん。

試してみたプロトタイプには4種類のボイスモデルが収録されていた

ちなみにANDROID GIRLの元ネタが何なのか、飛河さんから言及はありませんでしたが、試してみると、まさにVOCALOIDという感じの歌声。しかもある程度、ボーカルトラックでの抑揚やピッチの揺れにも追従するので、それなりに調整のかかったVOCALOIDという感じの歌声になるんです。技術的にはまったく違いますが、以前産業技術総合研究所が開発した「VocaListner(通称:ぼかりす)」にも近い感じで、扱い方は圧倒的に簡単であるというのも興味深く感じたところです。

ところで気になっている方も多いと思いますが、このVoidol VSTもリアルタイム変換は可能です。その場合、Voidol VSTを挿したオーディオトラックにマイクから歌声を入力し、エフェクト結果をモニターすればいいのです。ただし、ここには当然レイテンシーが発生し、そのレイテンシーはDAWの設定によっても大きく変わってきます。オーディオインターフェイスのバッファサイズをなるべく小さくして試してみた感じでいうと100msec程度でしょうか……。DAWが介在する分、やはりスタンドアロン版のVoidolのほうがレイテンシーの面では小さいようでした。

画面下に3つのパラメーターがある

なお、基本的には、挿して、キャラクタを設定するだけでOKですが、見ると、いくつかのパラメータがあります。左から

NOISE GATE
GV Coefficient
OFFSET GAIN

の3つ。NOISE GATEは、もともとのボーカルトラックにノイズがある場合、それが反応しないように調整するものです。そしてGV Coefficientは系列内変動係数というものだそうで、これによって変換具合が多少変わるようですが、基本的にはあまりいじらなくてもよさそうです。そしてOFFSET GAINは、ボイスモデルによって声の大きさが変わるので、それを調整するためのもの、となっています。

また最終段にはリミッターがあるので、これをオンに設定しておくと、いい具合に歌声をまとめてくれますね。

現在12種類のボイスモデルは発売中。これらもVoidol VSTで利用できる

さて、すでにスタンドアロン版のVoidolを使っているユーザーのみなさんにとって気になるのは、ボイスモデルの互換性ではないでしょうか?そう、このボイスモデル、デフォルトで音宮いろはのほかにも、くりむ蔵、奏ミナト、ヨネちゃんの計4キャラクタを搭載していますが、別売の追加用ボイスモデルが現在12種類発売されています。実際に購入した方も少なくないと思いますが、これらをVoidol VSTで使うこともできるのでしょうか?

「ボイスモデル自体はスタンドアロン版もVST版も互換できるように開発中ですので、どちらでもお使いいただくことは可能な予定です。ただし、歌声用のボイスモデルについては、今後順次、新製品として開発していく予定なので、お待ちいただければと思います」と飛河さん。

いずれにせよ、Voidol VSTの発売まで、もう少し待つ必要がありそうですが、どんなものになるのか楽しみなところ。また新情報が入れば、詳しくお伝えしていきたいと思います。
【関連情報】
Voidol製品情報
Voidol追加用ボイスモデル一覧
Voidol VSTプロトタイプ版プレスリリース
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