新世代歌声合成ソフトSynthesizer V Studio ProがアップデートしVST3/AUに対応

VOCALOIDでもCeVIOでもない、第3の歌声合成ソフト、Synthesizer V(シンセサイザー・ブイ)。これは日本のベンチャー企業、Dreamtonicsが開発するソフトで、7月30日から新バージョンとなるSynthesizer V Studio Proおよび歌声データベースであるSynthesizer V SakiおよびSynthesizer V 琴葉 茜・葵(ことのはあかね・あおい)の2種類が株式会社AHSを通じてパッケージソフトとして販売を開始したばかりの製品。そのSynthesizer V Studio Proのアップデート版である1.0.6が9月4日に登場し、Windows版はVST3、Mac版はVST3およびAU=Audio Unitsのプラグイン環境でも使えるようになりました。

もちろんユーザーは誰でも無償でアップデートできるもので、これまでのスタンドアロン版に加え、プラグイン版としても使える形になったのです。もっとも現時点は最初のバージョンが発売されて1か月ちょっとと間もない時期であり、まだ9月いっぱいは初回限定優待版が半額で発売されているキャンペーン時期でもあるのです。そのアップデートされたバージョンはこれまでと何が違うのか、プラグイン版の使い方はどうなっていて、スタンドアロン版と何が違うのかなど、試してみたので紹介してみましょう。

Synthesizer V Studio Proの1.0.6へのアップデートでVST/AUのプラグインとしても使えるようになった

Synthesizer Vがどんなソフトであるかについては、先日も「歌声合成はさらに次の時代へ。Synthesizer Vがサンプルベースと人工知能のハイブリッドで大きく進化」という記事で紹介しているので、全体像についてはそちらを参照していただきたのですが、一言でいえば、歌詞と音符を入力すれば歌声を合成してくれるソフトです。

7月30日の発売前に、DTMステーションPlus!の番組としてもSynthesizer V特集を組んだことがありましたが、そのときに作曲家の多田彰文さんがSynthesizer Vを使って作成した曲があるので、こちらをご覧ください。

現時点ではSynthesizer V SakiおよびSynthesizer V 琴葉 茜・葵という2つのキャラクターの歌声があるので、これらを組み合わせて歌わせたものでした。AHSによると、今後歌声データベースはどんどん増えていくとのことで、すでに小春六花というキャラクターの開発が進んでいることが公表されているほか、それとは別のキャラクターの収録も行われているようなので、ここは非常に楽しみなところです。

ライセンスとアップデートの「アップデートの確認」ボタンを押すと「利用可能なアップデート」という表示が現れる

さて、そんな中、9月4日、Synthesizer V Studio Proのアップデート版となる1.0.6がリリースされました。すでに使っているユーザーであれば、「ライセンスとアップデート」のところに「利用可能なアップデート」と表示されるので、これをアップデートすることで入手することができます。

その1.0.6の最大の特徴は、これまでのスタンドアロン版に加えてプラグイン版としても使えるようになったこと。具体的にいうと

VST3プラグインへの対応(Windows/macOS)
AUプラグインへ対応(macOS)

のそれぞれ。これによって、Cubase、Studio One、FL Studio、Ability、Logic、Ableton Live……とさまざまなDAWでの連携が可能になったのです。

これまではWindows版もMac版もスタンドアロンでの動作に限られていたため、実際に曲を作るには、Synthesizer V Studio Proで書き出したWAVファイルをDAWに読み込ませるか、あらかじめDAWで作っておいたオケをSynthesizer V Studio Proのオーディオトラックに読み込んで再生するしかなかったのですが、プラグイン版の登場によって、DAW内に統合して使うことができるようになったのです。

Windows 10およびmacOS 10.15 catalinaで実際に試してみたので、簡単にその使い方などを紹介してみましょう。

1.0.6をダウンロード後、上書きする形でインストールを行うと途中でVSTiプラグインという表示が現れる

まずWindowsにおいてはアップデートをかけると、スタンドアロン版が更新されるとともに、VST3版がインストールされます。VST3なので、とくにフォルダの指定なども不要で、Program Filesフォルダの中のCommon FilesフォルダにあるVST3フォルダにインストールされる形になっています。そして、VST3対応の各種DAWを起動すれば、すでに使えるようになっています。

Program Files > Common Files > VST3 フォルダ内にインストールされる

たとえばCubaseの場合、右ゾーンのメディアのVSTインストゥルメントの中にSynthesizer V Studio Pluginというものが入っているので、これをプロジェクト上にドラッグ&ドロップすればSynthesizer Vのトラックが生成され、使えるようになります。

CubaseのVSTインストゥルメントとして認識されるので他のVSTiと同じようにトラックを作成することで利用できる

同様にStudio Oneの場合もVST3に対応しているので、すぐに使うことが可能です(Studio One Primeなどプラグイン非対応のバージョンでは使うことはできません)。画面右側のインストゥルメントを見ると、Dreamtonics Co.,Ltd.というフォルダの中に、Synthesizer V Studio Pluginがあるので、これをドラッグ&ドロップすると使うことが可能です。

Studio Oneにおいても、インストゥルメントの中にSynthesizer V Studio Pluginが見える

そしてFL Studioの場合は画面左側のPlugin databaseを開くとInstalledという項目があるので、これを開きます。この中にEffectsとGeneratorsという2つの項目があるので、Generatorsを開くと、さらに複数の項目がありますが、その中のVST3を開くと、Synthesizer V Studio Pluginがあるので、これをChannel rackへとドラッグすると使えるようになります。

FL StudioではPlugin databaseの中にあるSynthesizer V Studio Pluginを選んで使う

またAbleton Liveの場合は、コレクションの中のプラグインに、Dreamtonics Co.,Ltd.という項目があり、その下にSynthesizer V Studio Pluginがあるのでこれをドラッグ&ドロップする形です。

Ableton Liveではコレクションの中のプラグインにあるSynthesizer V Studio Pluginを利用する

そして、Ability Proの場合はVSTiウィンドウを開くとここに組み込まれているVSTインストゥルメントの一覧が表示されます。その中にSynthesizer V Studio Pluginがあるのでこれを選べばすぐに使うことが可能です。

AbilityではVSTiウィンドウの中にあるSynthesizer V Studio Pluginを選ぶ

Macの場合も、VST3に対応しているので、Cubase、Studio One、FL Stuido、Ableton Liveなどは基本的にWindows版とまったく同様。VST3にもAUにも対応しているStudio OneやAbleton Liveの場合はダブルで表示されるので、どちらを使ってもOKです。

Mac版のStudio OneではVST3とAU、それぞれのSynthesizer Vが並んで表示される

一方、Logic Pro Xの場合はVST3ではなく、AUプラグインとなるのですが、使い方は同じです。トラックを作成する際、ソフトウェア音源を選択すると、その音源の一つとしてSynthesizer V Studio Pluginというのが現れるので、それを使えば組み込むことができます。

ソフトウェア音源としてSynthesizer V Studio Pluginを選んで作成する

プラグインが起動してしまえば、基本的にスタンドアロン版と使い方もユーザーインターフェイスもまったく同じなので、戸惑うことはないと思います。1つ違うのは、オーディオ出力が直接Synthesizer Vから出るのではなく、DAWのトラックとして出力され、DAW内のミキサーに立ち上がること。

そのため、DAW上でそのトラックにエフェクトを掛けることで、Synthesizer Vの歌声に直接りリバーブをかけたり、EQやコンプを掛けるといったことができるようになり、音楽制作の効率を上げることができます。

もちろん、これまでスタンドアロン版で作った楽曲をプラグイン版で読み込むこともできるし、反対にこのプラグイン版で作成したデータを保存すれば、スタンドアロン版で読み込むことも可能。さらに、以前の記事でも紹介した通り、Synthesizer VはVOCALOIDやCeVIO、UTAUなどのデータとの互換性を実現しているため、VOCALOID用に作成したデータを読み込んで使うことができるのも大きな特徴となっています。

VSQXファイルをそのまま読み込むことが可能

もっとも、VOCALOID上のパラメータを駆使してかなり調声したデータの場合、その調声結果が反映されるわけではないので、ニュアンスを細かく再現することはできないのですが、歌詞および音符情報についてはそのまま使うことができるので、すでに入力データがあるのなら、効率よく制作することができるはずです。

ここで気になったのがDAW上のテンポ、小節、拍とSynthesizer V上のテンポ、小節、拍の関係。実際に使ってみるとすぐに分かりますが、DAW上のトランスポート機能を使って小節を動かすと、それにSynthesizer V上の小節も連動するので、たとえば「24小節目の3拍目から再生」といったことができるわけです。

ただしDAWでプロジェクトを作成し、Synthesizer V Studio Pluginを設定した後に、歌唱データを読み込んだ場合、DAW側にテンポ情報などは反映されないため手動で設定する必要があります。また、DAW側で途中でテンポ変更を行う場合なども、自動ではSynthesizer Vにその情報が反映されないため、やはり手動で行う必要があるようです。この辺はプラグインの仕組み上での限界もあるので、ある程度は自分で設定する必要も出てきそうですね。

以上、プラグイン版としての動作状況を簡単に見てきましたが、1.0.6という今回のアップデートではプラグイン版のリリースのほかにも、一部あったバグが修正されているほか、機能強化も図られています。具体的には

 

・ピアノロール:スクロール範囲をトラックビューのものと同じになるよう拡張
・ピアノロール:ノートをドラッグしたときのクオンタイズ動作を改善
・編集:タッチパッドにおけるズームジェスチャーをサポート
・編集:「delete」キーを使用した選択内容削除(macOS)
・その他:タイトルバーにファイル名を表示

などなど。こうした点も考えると、プラグイン版は不要でスタンドアロン版があればOKという人でもあっても1.0.6にアップデートしておくのがよさそうです。

また冒頭でも紹介した通り、今後Synthesizer Vに対応した歌声データベースはどんどん増えていくとのことなので、どんな歌声で歌わせることができるようになるのか楽しみなところ。また新しい動きがあれば記事で紹介していこうと思っています。

※2020.8.6追記
現在、すでに次のアップデート版である1.0.8がリリースされています。これは1.0.6において一部ユーザーのショートカットキーが使えなくなるというトラブルを回避するためのもので、特に新機能の追加などはないようです。

※2020.09.24追記
2020.09.15に放送した「DTMステーションPlus!」から、第159回「Serato StudioがDTMをお洒落にトラックメイキング♪」のプレトーク部分です。「新世代歌声合成ソフトSynthesizer V Studio ProがアップデートしVST3/AUに対応」から再生されます。ぜひご覧ください!

【関連情報】
Synthesizer Vシリーズ公式ホームページ(AHS)
Synthesizer V Saki ホームページ
Synthesizer V 琴葉 茜・葵 ホームページ
Synthesizer V情報(Dreamtonics)
Web Synthesizer Vサイト

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