• Synthesizer Vが着実に進化中。最新アップデートで歌声がより滑らかに人間らしく。弦巻マキも日本語・英語で登場

これまでも、何度となく取り上げてきた歌声合成ソフトのSynthesizer V(シンセサイザー・ヴイ)。国内で正式発売されてから、まだ1年もたたないというのに、毎週のようにアップデートが繰り返され、機能・性能がどんどん向上しています。エディタソフトとしては無料版のSynthesizer V Studio Basicと有料版のSynthesizer V Studio Proという2種類ですが、内部的には、ちょっとVOCALOID風でシステムが歌っている風なスタンダード版と、ディープラーニングによって、より人間っぽく歌うAI版が共存する形になっており、それにともない歌声データベースもスタンダード版とAI版が存在することは、昨年末に「AI歌声合成に対応したSynthesizer V AIがいよいよリリース。既存ユーザーは無料アップグレード可能。併せてAHSが各種新情報を一挙公開」の記事でも紹介したとおりです。

そのAI版の性能が6月18日にリリースされる1.3.0というバージョンで、大きく向上するのとともに、歌声データベースとして待望の弦巻マキが発売されます。CVに声優の田中真奈美@Manami__TANAKA)さんを新たに起用した弦巻マキはスタンダード版、AI版があるのはもちろん、それぞれの日本語版と英語版も登場し、計4種類。もっともパッケージ製品としてはスタンダード版とAI版はセットになっていて、日本語版コンプリート(AI版+スタンダード版)と英語版コンプリート(AI版+スタンダード版)があり、各種AI版/スタンダード版が分かれての販売はダウンロード版のみとなっています。また実は私が書いた「Synthesizer Vユーザーズガイド」というSynthesizer V Studio Proのガイドブックも発売になり、この本とセットになった製品も登場。さらに、このタイミングで喋るシステムである、CeVIO AIの弦巻マキ トークボイスの日本語版、英語版も登場するなど、弦巻マキは、かなり充実したラインナップになります。そこで、ここではSynthesizer V AIの性能進化がどんなものなのかを中心に最新状況をチェックしていきたいと思います。

弦巻マキも登場。最新版のSynthesizer Vで、より滑らかに歌うようになった

いろいろ説明する前に、DTMステーションPlus!の番組でも一緒にやっている作曲家の多田彰文さんが、弦巻マキのデモソング「世界中笑顔になれ!」を制作し、発表しているので、こちらのビデオをご覧ください。

これが、新たに登場した弦巻マキの日本語のAI版を使った歌声です。いかがですか?AHSの説明を見ると「得意な音域:A3 – D#5」とあるのに対し、あえてそれを超える高い音域まで歌わせてしまっているのも面白いところ。C5を超えた音域はファルセットになるように作られているようですが、その結果、超高音域はやや人間的ではないけれど、キレイなカワイイ感じになっているんですね。打ち込みのポイントについては、多田さんに少し話を伺ったので、後半のコラムにまとめておきます。

Synthesizer VおよびCeVIO AI用の日本語・英語の弦巻マキのデータベースが各種出そろった

こんな歌声が出せるのがSynthesizer V AIなのですが、今回のアップデートによりAIでの歌声がさらに人間的なものへと進化しているのです。弦巻マキは、Synthesizer Vとしては新キャラクタなので新旧比較ができないので、小春六花を使って、比較してみたいと思います。

まずは従来のバージョン、Synthesizer V Studio Pro v1.2.6に小春六花 AI v1.0.2を設定した歌声を聴いてみてください。

いかがですか?私が完全なベタ打ちで入力したものですが、これでも十分、滑らかで人間的な歌声であることが分かると思います。これを最新版のSynthesizer V Studio Pro v1.3.0にアップデートするとともに、小春六花 AI v1.0.4にアップデートした上で、同じデータを歌わせてみたのがこちらです。なお、この小春六花AI V1.0.4は弦巻マキ発売の6月18日に合わせてダウンロード開始となる予定となっています。

どうでしょう?さらに滑らかに人間的な歌声に進化していることが聴きとれたのではないでしょうか?「あれ?気のせいかな…?」なんて思った方は、再度よく聴き比べてみると分かると思います。

ちなみに、この楽曲も多田さんが作詞・作曲・編曲したもので、2019年末のコミケでリリースした小岩井ことりさんが歌唱の「oyasumiry」の冒頭を打ち込んだもの。聴き心地よくするためにDAWに取り込んだ後にボーカルにリバーブ処理だけはしています。

小春六花 AIのVer 1.0.2の波形(上)とVer 1.0.4の波形(下)

この新旧のWAVデータをCubase上に並べて波形を比較してみても、かなり違うことがよくわかると思います。バージョン番号的には、本当に小さなアップデートにように見えるのですが、こんな感じで進化しているんですね。

Synthesizer V Studio Proのガイドブックも登場

また冒頭にも書いた通り、6月21日、三才ブックスから「歌声合成ソフトウェア Synthsizer Vユーザーズガイド」という本が出版されます。これは私とDTMステーションのスタッフでもある中村太樹で書いたもの。初心者向けにSynthesizer V Studio Proの使い方を丁寧に解説してみたので、これからSynthesizer Vを使う…という方はぜひ参考にしてみてください。

本の中身はこんな感じで画面をふんだんに使って解説している

そして、もう一つ重要な情報が歌声データベースのSaki AIについて。Saki AIは6月17日までSakiのスタンダード版を持っている人であれば、無償でダウンロード可能となっていますが、18日になるとSaki AIが販売開始になることにともない、無償ダウンロードが終了してしまうのです。またこのSaki AIも進化してきており、先日、第3世代となったところ、これを使ったデモソングが以下のライブPさんによる「MASHIRA」というものです。

このように、今回のアップデートにより、歌声は大きく進化していますが、機能としては特に大きな変化はないようです。そのため、製品としてもバージョンアップを大きく打ち出してはいないのですが、こうした地道な進化も大歓迎。ぜひ、これからもいろいろと進化していくこと、また新たな歌声ライブラリの登場も楽しみに待ってます。

弦巻マキ・デモソング『世界中笑顔になれ!』のデータの中身

先ほどの弦巻マキのデモソング『世界中笑顔になれ!』をどのように作ったのか、多田さんに聞いてみました。基本的な作業工程は以下の通りとのこと。

【メインボーカル】
・まずベタで「la」の歌詞(デフォルト)のまま打ち込む(音を切る長さだけはある程度考えて)
・歌詞を考え、埋めていきながら文字間の長さ(ロールバー)調整をし、語句をしっかり&自然に聞き取れるようにする
・ビブラートなどを見直し、歌い回しとして聞かせたい形にチューニングをほどこしていく
・ピッチ調整で、スタートのベンドアップ(音程にあてるためのしゃくり、など)ほどこす(少し)
【コーラスパート】
・Main trackのデータから、コーラスをつけたい部分をコピー&ペースト
・ハーモニーをつけたい(ハモりたい)場所に音の高さを移動する
・ビブラートの周波数を若干調整し、自然なハモり具合に整えていく

もちろん制作手順は人それぞれだとは思いますが、基本的にはベタ打ちとなっており、データを見てもごく一部に、しゃくりのためのピッチ調整が行われているようでした。

基本的にはベタ打ちで構成されており、一部ピッチベンドで、しゃくりなどを描いている部分がある

またトラック的にはボーカル7パートで構成されており、そのうち4つが弦巻マキ AI、3つが弦巻マキ STDとなっています。コーラスパートでAIを左チャンネルに、STDを右チャンネルに振るといった使い方がされているのも面白いところです。

『世界中笑顔になれ!』は7トラックで構成され、かなり高い音まで入っている

また、本文でも紹介した通り、弦巻マキAIの推奨音域はA3 – D#5ですが、データを見てみると最高でC#6と、その1オクターブ上まで使っているのが効果的になっているようです。必ずしも推奨音域にこだわらず、歌わせてみて良ければ採用してしまうというのもアリのようですね。

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CeVIO AIトークボイス 弦巻マキが日本語・英語揃って登場

歌うためのシステムであるSynthesizer Vの弦巻マキ登場と同じタイミングで、喋るためのシステムであるCeVIO AIの弦巻マキのトークボイスも発売となりました。CVである声優の田中真奈美さんが喋る声をリアルに再現しているので、ハキハキと元気でかわいらしい声が特徴。元気、怒り、落ち着き、哀しみ、穏やかという5つの感情パラメーターの調整によって喜怒哀楽の表現も可能になっています。

高校時代に1年間イギリスへ留学した経験があり、英検1級を取得しているという田中さんだからこそできたのが、英語版。英語を入力することで、流ちょうにそのテキストを読み上げてくれます。またAHSによると、収録の際にはネイティブの方にも立ち会っていただいたとのことなので、かなりしっかりしたものになっているようです。実際にちょっと試してみたので、以下のビデオをご覧ください。

CeVIO AIトークボイスとしては、これが初の英語版。日本語とは言語体系が異なるだけに、仕様も若干異なるようで、たとえば日本語版にはあるアクセント調整画面がありません。その代わりに、ストレス(強勢)を三段階で調整できるようになっているのですが、この機能は現時点ではまだ実装されておらず、8月ごろに登場する無償アップデートで対応する模様です。また、新しい情報など出てきたら、お知らせしてきたいと思います。

【関連情報】
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Synthesizer V 小春六花 AI コンプリート製品情報
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