Digital Performer 11発売開始。パフォーマンスが向上し、機能向上するとともに対応ハードも充実

MOTUからDigital Performerの新バージョン、Digital Performer 11が7月7日に発表され、7月12日から発売が開始されました。現時点ではオンラインでのダウンロード販売および、楽器店での電子販売の形となっており、通常版が60,500円(税込)、旧バージョンからのアップグレード版が24,200円、他社DAWからの乗り換えとなるクロスグレード版が48,400円などとなっています。

DAWの老舗というか、MIDIシーケンサ時代のPerformerから脈々とつながる長い歴史を持つDigital Performerですから、この新バージョンに期待している人も多いと思います。もともとMac用として発展してきたDigital Performerも、ご存知の通り、2013年のDigital Performer 8の時代からMac/Windowsのハイブリッドとなり、今回のDigital Performer 11ではついにM1 Macにもネイティブ対応するソフトへと進化しました。さっそく試してみたので、実際どんなDAWに進化したのか、ファーストインプレッションという形で概要を紹介してみたいと思います。

Digital Performer 11が発売開始

以前、「なぜカラオケはCDリリース日から歌えるのか?Digital Performerでの打ち込みが支える通信カラオケの世界」という記事で、Digital PerfomerがMIDI打ち込みの最前線で活用されている話を書いたこともありましたが、長年MIDIを扱っているユーザーの方で、Digital Performerは必須だ、という方は多いようです。とくにMIDIの数値入力が可能であるところが、支持されているようです。

MIDIの数値入力機能はDigital Performerの大きな強みのひとつ

一方で、「DAWによって音は違う!?Digital Performerが唯一無二と主張するレコーディングエンジニアの意見とは」という記事で、エンジニアの阿部哲也さんの話を取り上げたこともありました。阿部さんは、藤田恵美さんのレコーディングやプロデュースなどにも携わる、ハイレゾ作品の世界では著名な方ですが、オーディオを最高の音質でレコーディング、ミックスするのにDigital Performerを選ぶ方も多くいます。

より高音質に仕上げることが可能なオーディオエンジンもDigital Performerの重要なポイント

さらにライブステージを仕切るマニピュレーターの方々の間でもDigital Performer使用率は非常に高いようです。Digtal Performerのチャンク機能をプレイリスト的に利用するのが便利だ、ということでプロの現場で広く使われているのです。

MIDIもオーディオもライブも……プロが活用する業務用のDAWというイメージも強いDigital Performerではありますが、価格的には前述の通り、通常版でも60,500円と、ほかのDAWと同等ですし、もちろん初心者でも扱いやすいソフトとなっています。

今回2年半ぶりのメジャーバージョンアップとなるDigital Performer 11

そのDigital Performerが、2年ぶりにメジャーバージョンアップとなりDigital Performer 11となりました。どんな機能が追加されたか主なものについて見ていきたいと思いますが、その前に、パフォーマンスについて先にお伝えすると、Digital Performer 10と比較して、描画速度などがより高速化しているとようで、4K画面でもサクサク動いて使いやすくなった印象です。

M1 Macにネイティブ対応。「機種」が「Intel」ではなく「Apple」になっていることからも確認できる

またこのタイミングでM1 Macにネイティブ対応したので、M1のBigSur環境でも安心して使えるようになったのは嬉しい点です。

バージョンアップするユーザーの場合、いきなりすべての環境をDP11に切り替えるのは怖いので、旧バージョンと併用するという人も少なくないはず。そうしたユーザーのためにプロジェクト保存の際、10.1、10.0、7~9、6.0……と一通り選択できるのも安心なところです。

さまざまな旧バージョン形式での保存も可能

では機能のほうを見ていきましょう。まず一つ目が付属の音源、nanosamplerが2.0へとバージョンアップし、従来のシンプルなサンプラーから、多機能なサンプラーへと進化しました。

nanosampler 2.0のセッティングタブで、エンベロープやフィルタなどの設定がグラフィカルにできる

最大のポイントはクラシック、ワンショット、スライスの3つのモードを装備したという点。クラシックは従来通りのサンプラーではありますが、セッティングタブをクリックするとフィルター、アンプエンベロープやフィルターエンベロープ、LFO……といったパラメータがグラフィカルに表示され、ここで自由に音作りが可能です。

ワンショットモードで使うこともできる

またワンショットを選べば、途中でループしないワンショットで鳴らせる音源になるし、スライスを選ぶと、音のアタックを検知して、自動でスライスしてくれるモードとなります。たとえば、ドラムループをドラッグ&ドロップしてnanosampler 2.0に入れることで、自動的に切り刻んでくれるとともに、それぞれにノート番号が割り振られるので、キック、スネア、ハイハット…などをMIDIで自在に演奏することが可能になる、といった具合です。

自動的にスライスすてくれるスライスモード。スライス結果がMIDIノートに割り振られる。こちらの画面はWindows版

さらにここにはZynaptiqのZTXタイムストレッチのエンジンが搭載されており、非常に高品位なタイムストレッチが可能なのも重要な特徴。必要に応じてZTXタイムストレッチをスタンダードモードと、フォルマント修正モードの2種類から選択することが可能となっています。

続いて紹介するのがレトロスペクティブレコード機能の搭載です。レトロスペクティブレコード機能とは、レコーディング中ではなくても、演奏していて「あ、今弾いたフレーズ、よかった!」というとき、コマンド一つで、トラックに反映させることができるという機能。裏で、ずっとレコーディングを続けているから、そんなことが実現できるんですね。

レトロスペクティブレコード機能としてMIDI記録機能のほか、オーディオ記録機能も追加された

もっともこのレトロスペクティブレコード機能は従来のDigital Performerでも搭載されていたのですが、これまでMIDI機能のみだったのが、オーディオ機能でも利用できるようになったというのが、今回のポイント。まあ、MIDIだと鍵盤を適当に弾いていて、「あ!」という時があると思いますが、オーディオでどこまで必要性があるのかは未知数。ただ、ふと鼻歌で歌っていたのが、いい感じだった…というときには便利かもしれませんね。
3つ目はMPE=MIDI Polyphonic Expressionをサポートしたということです。MPEとは各鍵盤ごとに別々のピッチベンド操作をしたり、別々のモジュレーション操作ができるというもので、ROLI Seaboardなどがその代表的デバイス。ほかにもArtiphonのInstrument 1やORBAといったデバイスが出てきており、MIDI 2.0への橋渡し的なものとして注目を集めています。そのMPEデバイスを接続したとき、その操作をしっかり受け止められるようになっているのです。

各インストゥルメントが通常のMIDI入力のほかMPE入力にも対応した

たとえば、PolySynthをMPE対応にしたい場合、デフォルトでMIDI 1となっているところをクリックするとMPEを選択できるようになっているので、こちらに変更します。その上で、どの信号を受けるか1~15のいずれかを選択する形となっています。

続いて紹介するのがコントロールサーフェイスの対応の拡充です。これまでもMackie ControlやHUIには対応していたDigital Performerですが、今回、主要なコントローラに片っ端から対応した格好です。具体的にはAKAIのPMC40mkII、APC Key25、APC Mini、EuCon、iCON Control、Komplete Kontrol、Lauchpad Pro MK3、Lauchipad X、Lauchpad Mini mk3、Radikal SACなどなど。

さまざまなコントロールサーフェイスに対応

とくに、iCONのPlatform Nano、Platform M/Xシリーズにフル対応したのは大きなポイント。iCONのコントロールサーフェイスは高機能なのに手頃な価格なので人気な機材ですが、それがそのままDP11で使えるわけです。またNative InstrumentsのKomplete Kontrolシリーズを使っている人も多いと思いますが、これをコントローラとして使えるようになったので、ここからミキサーなどを動かせるのも便利です。さらにOSCにも対応しているので、iPhoneやiPadからコントロールするといったことも簡単にできるようになっています。

Native InstrumentsのKomplete Kontrol M32のノブでフェーダーをコントロールすることもできた

さて、今回のDP11の新機能として、アーティキュレーション・マップへの対応というのが大きく打ち出されています。これは、EastWest、VSL、Spitfire、Cinesamplesなどのオーケストラサウンドライブラリの表現をDP11から容易にアクセスできるようにするというもの。ただ、実は7月16日現在、日本語環境ではしっかり実装されておらず、無理やりこれを使うとDP11が落ちてしまうという問題が生じています。

英語版であればアーティキュレーション・マップに対応しているが日本語はまもなくの予定

メーカー側もすでにこの問題については認識しているようで、近いうちに日本語環境でも動くようになるとのことなので、少し待ちましょう。もし、今すぐにでも使いたいという方は英語モードにすれば使えるようなので、試してみてはいかがでしょうか?ちなみにCubaseのアーティキュレーションマップもそのまま読み込んで使うことができるようですね。

スコア入力時のアーティキュレーションも演奏に反映されるようになったが、これも現時点では英語モードのみで動作

もうひとつ日本語環境でまだ実装されていないのが、QuickScribe=スコア入力画面でのアーティキュレーション入力。オーケストラ・ライブラリのサウンドにコネクトされたトリル、トレモロ、ボウイング、ダブルシャープなどのアーティキュレーションを記号で入力すると、演奏に反映されるようになっているとのこと。これについても対応待ちということのようです。

テキストサイズだけを大きくすることも可能になった

以上、ざっとではありますが、DP11の新機能について紹介してみましたが、いかがだったでしょうか?最後にもう一つ追加しておきたいのが、テキストサイズの変更機能が搭載されたこと。DP10でも[Command/CTRL]+[+/-]で画面の拡大縮小が可能でしたが、今回テキストサイズだけを変更することが可能になったので、数値入力画面の数値だけを大きくする…といったことも可能になりました。4K画面で小さくて見づらいという人にとっても嬉しい機能であり、これだけでもDP10からバージョンアップする価値がありそうですね。

【関連情報】
Digital Performer 11製品情報
Digital Performer 11ニュースリリース

【価格チェック&購入】
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