ヤマハDXシリーズを再現するiPhone/iPadアプリ

ヤマハの往年の名機、DX7をはじめとするDXシリーズ。私も大学時代、DX100というミニキーボードタイプを購入し、とにかく使いまくりましたが、そのDXシリーズを彷彿させるiPhone/iPad用のアプリ、DXi FM synthesizerという170円のアプリがあるのをご存知ですか?

2010年5月にiPhoneアプリとして登場したこのシンセ、とってもよくできてたので、楽しくて使っていましたが、いつのまにかiPadにも正式対応したユニバーサルアプリになっていたんですね。作者の水引孝至(Takashi Mizuhiki)さんにコンタクトをとってみたら、少しメッセージもいただけたので、改めてDXi FM synthesizerについて紹介してみたいと思います。
iPad対応していたDXi FM synthesizer


ヤマハのDXシリーズはFM音源と呼ばれる独特な方式のシンセサイザです。このFM音源はヤマハがICチップ化し、その昔のパソコンにも標準音源として搭載されていたし、ちょっと前までの携帯電話の多くにも使われていたので、大半の人は知らず知らずのうちに使っていたのではないでしょうか?

DXi FM synthesizer iPad版の紹介ビデオ1

DXi FM synthesizerは、そのFM音源をiPhoneやiPadでエミュレーションするもの。見た目がDXシリーズにそっくりで、嬉しいのはそのプリセット音色のデキの良さです。いかにもDXというサウンドが飛び出してくるので、FM音源の難しさを抜きに、即演奏を楽しむことができるのです。DXサウンドをご存知の方なら、起動時に読み込まれる「SYN BASS」の音を聴いて、「おぅ!」と思うのではないでしょうか。

DXi FM synthesizer iPad版の紹介ビデオ2

もちろん、CoreMIDIに対応しているので、先日紹介したLine 6のMobile Keysをはじめ、ヤマハのiMX-1などのMIDIインターフェイスを介して各種MIDIキーボードを接続して演奏することができます。

DXシリーズは、当時のシステムの UI(メイン画面はキャラクタ LCD!)の表現力の限界もあって、シンプルな音源システムが、難しいものに誤解されてしまうこともありました。でもタッチパネルと大きなLCDを使えば、シンプルな音源システムを素直にデザインできるはず!、そんな簡単に使えるFMシンセがあったなら、もっと面白さを広められるはず!、と考えてDXi FM synthesizerを作りました」と水引さん。

確かに、このアプリを使う限り、あまり難しい感じはしません。そう、昔DXを使っていたときは、膨大にパラメータがあって、何をどう動かすか、本当に手探りだったのですが、このアプリはそんなにパラメータがないんですよね。

初めて FM 音源を触る方が、FM音源のエッセンスを楽しめるように、パラメータを厳選しています。どこを触っても、面白く音が変化するようになっているので、飽きさせません。また、音作りのテンプレートになるようなプリセットを収録してありますので、まずはプリセット音色をいじるところから楽しんでみてください」(水引さん)

なるほど、全部のパラメータが表に出ているわけではなかったようです。とはいえ、エンベロープのパラメータがグラフィカルに表示されるなど、数字ではなく、絵で見せてくれる面もあるので、分かりやすくなっています。

iPhone版を使うことが多かったためか、iPad対応したのについ先日気づいたのですが、対応したのは昨年の10月だったようです…。そのiPad版、見てすごいと思ったのは、GUIがよくなっただけでなく、「音」が「目で見える」ようなギミックが組み込まれたこと。そう、ギターが音を出すとき、音源である「弦」が震えるのと同じように、DXiが音を出すとき、音源であるオペレータが震える演出がされているのです。しかも、震える大きさで、それぞれのオペレータの出力量を表現しているというマニアックさ。

震えるオペレータをぼーっと眺めていると、なんとなく生々しく、見えてきませんか?また、ADSR  式の EG の進行位置をハイライト表示するようになっているのも、出てくる音と、設定したパラメータの対応を理解し易くする工夫の一つです」と水引さん。

各オペレータの波形をサイン波以外に設定できる

このようにDXを再現しているという点だけでも嬉しいアプリなのですが、実は機能的にいうと、当時のDXと比較して遥かに進展しているんですよ。オペレータ的には4つで、DX7のような6オペレータではないものの、DXシリーズの場合、各オペレータの波形はサイン波に固定されていました。それに対し、このDXi FM synthesizerでは、それぞれのオペレータに独立して、いろいろな波形を割り当てることが可能になっています。
搭載されているステップシーケンサ

また、3つのパターンを組むことが可能なステップシーケンサを搭載しているというのも大きなポイント。さらに最新版では、演奏した内容をレコーディングしてWAVファイルとして保存するといった機能まで搭載しているという優れものなのです。

演奏内容のレコーディングも可能になっている

FM音源の音作りのコツを掴んでくると、このアプリの、パラメータの少なさが物足りなくなってくるはずです。アプリで物足りなくなったら、ハードウェアや VSTiのFMシンセにステップアップして、もっともっと奥深い、FM音源の世界にチャレンジして欲しいな、と思っています」(水引さん)。

たった170円のアプリで、かなり楽しむことができるので、もし持っていない方は、ぜひすぐにでもインストールしてみてはいかがでしょうか?

【関連情報】
DXi – the FM synthesizer for iPhone/iPad(水引さんブログ)

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