まだMIKU STOMPをご存じない方もいると思うので、まずは製品概要を簡単に紹介しましょう。これは「ギターでミクが歌う!世界初!ボーカロイド・エフェクター」としてコルグが発売する、ギター用の機材です。
見た目は、まさに足元に置くギター用のエフェクターなわけですが、「エフェクター」という言葉から想像できるものとは、だいぶニュアンスが違う製品です。そう、まさにギターのプレイに合わせて、初音ミクが歌ってくれるボーカロイドなんですね。
MIKU STOMPに内蔵されているヤマハの約12mm四方のIC、NSX-1
その歌声は、すでに発売されている学研のポケット・ミクと基本的には同じで、ヤマハのNSX-1というICを用いて発音するもの。この際、ギターの音そのものは出力されず、ギターからの音程や音長、音強情報を検出して歌うようになっています。
どうですか?演奏をしてくれたのはコルグの新入社員でPR課に現在研修中の金子隼輔さんです。これ、MIKU STOMPの歌声をアンプから出したものを、iPhoneのビデオ機能、iPhone内蔵のモノラルマイクで収録したもの。そのため、ギターが弾く生の弦の音も聴こえていると思います。この両方の音を聴くと、どんな変換がされているのかがなんとなく分かりますよね。
「普段からヤマハさんとはお付き合いがあるし、ICの売り込みなんかもあります。ウチも楽器メーカーなので、各社の音源チップはいろいろ試しているけど、やっぱり歌うのは面白いなぁ、と。これを使って製品作ろうと思っただけで、それがヤマハさんのチップだという意識はまったくありませんでした。もっとも社内でプレゼンテーションしたときは、『ヤマハさんのを使うの!?』とは言われましたが、『ええ、使いますよ!』って返したくらいです」と、あっけらかんとしています。
「でも、僕がやったのは、そのくらいで、後はほとんど全部、開発の加藤に任せっきりでした(笑)。ちなみに、最初にNSX-1についてヤマハさんとやり取りしたのは昨年の1月か2月。まだNSX-1を搭載した製品は何も出ていないころで、いくつかのサンプルを作った上で5月にクリプトン・フューチャー・メディアさんのところに相談しに行ったんですよ」と坂巻さん。
「そう、最初に例の“ウドン”と呼ばれるヤマハさんの開発ツールキットをお借りして、いろいろなプロトタイプを作ってみました。そのうちの1つがギターを弾くと歌うというものだったのです」と話すのは開発の加藤さんです。
「やっぱり、弾くと歌うというのって楽しいじゃないですか。またVOCALOIDは、PCでいろいろ設定しないと歌わせられないため、敷居が高く感じられる面がありますが、ギターを弾くだけで歌わせられるなら、簡単でいいなって。クリプトンさんも賛同してくれました」(坂巻さん)
さて、ここで気になるのは、ギターの奏法とミクの発音の関係です。これについても、金子さんにデモ演奏をしてもらったので、ご覧ください。
スタッカート的な速弾きにもついてくるし、チョーキングでは、音程が変わったところで次の発音に入る一方で、ビブラートの場合は、発音は次へ進まずに音を伸ばすなど、なかなかうまくできていますよ。ただし、発音できるのはあくまでも単音。コードを“ジャーン”って弾くと、おかしくなっちゃいますね(汗)。
MIKU STOMPの右サイドは電源スイッチ機能も兼ねるInputがあるのみ
一方のRandom2は外国語風モードとのこと。加藤さんによると、クリプトンさん側からのアイデアにより、いろいろな外国語っぽく聞こえる単語を適当に持ってきてカタカナにして200単語程度登録してあり、こちらは本当にランダムに繋いでいるのだとか…。そのため、意味はなく、まったくのデタラメではあるけれど、なんとなく外国語っぽく歌ってくれるそうです。
そして、MIKU STOMPにおける強力な機能といえるのがiPhoneを用いた歌詞の転送技術です。これは無料でダウンロード可能な歌詞転送アプリ「Lyrics for MIKU STOMP」を用いて行うのですが、これもちょっと驚きのシステムになっていました。
Phrase1~3にスイッチを合わせてペダルを長押しすると、転送モードに入ります。この状態であらかじめiPhoneの歌詞転送アプリに仕込んでおいた歌詞を、ギターのピックアップ部に聞かせるのです。まあ、聞かせるといっても、iPhoneが日本語を発音してくれるというのではなく、「ピーヒョロヒョロヒョロ、ガーーー」という昔のモデムが発していたような音。これをiPhoneのスピーカー部ではなく受話部分で聞かせるのです。
「いろいろ試してみた結果、受話部分のほうがより正確にデータが送れるようです。またギターによってピックアップやトーンの具合が異なるので、うまくデータ転送できる設定を見つけてみてください」(加藤さん)とのことです。この転送により、Phrase1~3それぞれに約6,000文字ずつ歌詞を独立して入力することができます。
ここで入力できるのはカタカナ、ひらがな、およびローマ字。基本的にはVOCALOID EDITORで入力するのと同じなので、「こんにちは」ではなく「こんにちわ」といった具合。またローマ字はあくまでもローマ字であり、VOCALOID専用の発音記号には対応していないようですね。
なお、このMIKU STOMPについて、10月21日21:00からのニコニコ生放送、「第16回DTMステーションPlus!」でも実演・特集する予定ですので、よかったらぜひご覧ください。
※MIKU STOMPはソフトウェアの容量制限上「初音ミク」のソフトウェアより抜粋した歌声表現を搭載しております。実際のソフトウェアの表現と異なる部分がござい ますので予めご了承ください。
【価格チェック】
◎Amazon ⇒ MIKU STOMP
◎サウンドハウス ⇒ MIKU STOMP
【関連情報】
コルグMIKU STOMP製品情報
初音ミクについて(ピアプロキャラクターズ公式サイト)
第16回DTMステーションPlus!