• なぜ新発売のRME Fireface UCX IIは165,000円という価格なのに、人気で入手困難なのか?

すでにご存じの方も多いと思いますが、8月にRMEのUSBオーディオインターフェイス、Fireface UCX IIが国内発売元のシンタックスジャパンから発売になりました。大きさ的には他社の多くのオーディオインターフェイスと同様、1Uハーフラックサイズのものですが、直販価格で165,000円(税込)と、10倍近いもの。しかし、発売と同時に各楽器店とも即完売で、いま注文しても納期は2022年1月以降と簡単には入手できないものとなっています。

私個人的には、前モデルのFireface UCXを昨年購入したばかりでのフルモデルチェンジにショックを受けているところで、この際、やはり買い替えるべきか悩んでいるところ。その入手困難なFireface UCX IIを借りることができたので、前モデルと比較しつつ、なぜこんなに高いRME製品が飛ぶように売れているのか、このFireface UCX IIの魅力がどこにあり、どういう人が購入すべき製品なのか、ちょっと考えてみたいと思います。

RMEの新製品、Fireface UCX IIを試してみた

RMEは1996年に設立されたドイツの老舗メーカーで、世界中のプロの間で幅広く使われているオーディオインターフェイスやAD/DA、MADIやDante、AVBなどのインターフェイスを開発・販売しているメーカー。その音質には非常に定評があり、国内ではいわゆるピュアオーディオファンからも人気が高く、オーディオ雑誌などでも頻繁に取り上げられているちょっと珍しいメーカーでもあります。ピュアオーディオファンの人たちが使うのは、DA側の出力機能だけで、AD側の入力機能はまったく使っていないので、もったいないなぁ……と思っていますが、DAだけとっても、この値段に見合う価値が十分にあると見ているようですね。

8月に行ったDTMステーションのアンケート「どのメーカーのオーディオインターフェイスをメインに使ってる?」の結果がこちら。他社の10倍近い価格でもシェアはSteinberg/YAMAHAに次ぐ2位で14%というのは、RME製品がいかに人気が高いかを示している証拠だと思います。

2021年8月のDTMステーションのアンケート「どのメーカーのオーディオインターフェイスをメインに使ってる?」の結果

そのRMEの人気が高い理由の一つとして、製品寿命が長い、ということもありそうです。進化の速いコンピュータの世界、オーディオインターフェイスも数年に1度ラインナップを見直してモデルチェンジが図られることが一般的ですが、RMEでは同じ製品を10年近く作り続けているんですよね。たとえばFirefaceUCX IIの前モデルであるFireface UCXの場合2012年3月に発売され、新モデルが2021年8月ですから9年5か月のロングラン。新モデルが登場した今も、中古価格がほとんど下がっていないというのも購入したユーザーにとってはうれしいポイント。

新製品のFireface UCX II(上)と従来製品のFireface UCX(下)

Firefaceシリーズの初代モデルで2004年に発売されたFireWire接続のFireface 800も後継のFireface 802が出たのが2014年で10年。今でも使っている人は多く、今でも中古で10万円程度で流通していることを考えると、いかにRMEが高い評価を受けているかがわかると思います。

DTMで音楽制作をしているプロミュージシャンにインタビューすることがしばしばありますが、やはりRME製品を使っているケースは非常に高く、そうした方々の間でも、やはり今回のFireface UCX IIは大きな話題になっているようです。

Fireface UCX IIのリアパネル

前述のとおり、Fireface UCX IIは1UハーフラックのUSBオーディオインターフェイスで、大きさ的には前モデルとほぼ同じ。ただ入出力はこのサイズの多くのオーディオインターフェイスと比較しても多く20IN/20OUTという仕様になっています。「なぜ、こんなサイズにそんなにいっぱいの入出力があるの?」と不思議に思う方もいると思いますが、その内訳は以下のようになっています。

入力 出力
MIC/LINE 2
LINE/INST 2
LINE 4 6
HEADPHONE 2
ADAT 8 8
オプティカルS/PDIF 2 2
コアキシャルS/PDIF 2 2
AES/EBU 2 2

水色がアナログの入出力で、黄色がデジタルの入出力。このデジタルのうち、ADATとオプティカルS/PDIFはどちらかを使う形であるため、ADATを使ったとして20IN/20OUTとなるのです。前モデルのFireface UCXは18IN/18OUTだったので2つずつ増えた格好になっています。ただし、リアパネルを見比べるとわかる通り、端子の形状・配置はかなり変わっており、新モデルではAES/EBUやコアキシャルS/PDIFはブレイクアウトケーブル経由となっています。

AES/EBUとコアキシャルS/PDIFは付属のブレイクアウトケーブルを使う

やはりみなさん一番気になるのはその音質だと思います。オーディオインターフェイスの音質って、なかなか目に見えるものではなく、自分で聴き比べてみるか、評判をチェックするくらいしか知るすべがありませんが、先日、私が連載しているAV Watchの記事でRMAA Proというツールを使ってチェックしてみたところ、やはりほかの製品を圧倒する高性能を発揮していたことが確認できました。詳細は、その記事内のデータを見ていただきたのですが、ここで行っていたのはアナログの入力と出力を直結させて測定信号を流すというテスト。

つまり入力側と出力側を足し合わせた評価ですが、とにかく低ノイズで、低域から高域までフラット。確かにピュアオーディオファンが納得するだけのピュアな音質であることが確認できました。またすべてにおいて前モデルのFireface UCXよりも少しずつ成績がよくなっているのも重要なポイント。前モデルも極めていい成績ではあったのですが、SteadyClockFSという高性能なクロックシステムを入れたこともあってか、従来のものを超えるオーディオインターフェイスをRMEが作ったということなんですよね。

もちろん、これについてどう評価するかは人によって違うと思います。これだけクリーンな音であるということは、この機材による味付けというのはない、ともいえるわけです。まあ、ここで行ったのはラインの入出力での評価でマイクプリをしっかり見ているわけではないですが、「この機材を通すと特有の音になる」のではなく「この機材を通してもまったく音が変わらない」ことを売りとした機材なんですね。

つまり音作りはこのオーディオインターフェイスで行うわけではなく、プラグインやアウトボードのエフェクトなどを使って行い、とにかく正確に音を捉え、正確に音を出力することを実現する機材である、というわけなのです。

では、Fireface UCX IIでは音作りができないのか?というとそうではないんです。このオーディオインターフェイス内部にDSPを搭載しており、そのDSPを使い、各入力チャンネルおよび出力チャンネルそれぞれにEQとコンプをかけることが可能になっているのです。

Fireface UCX IIのフル機能にアクセスできるTotalMix FX

その操作を司るのがRME TotalMix FXというソフト。上中下と3段構成で、RMEのオーディオインターフェイスをミキシングコンソールに見立てて細かく操作ができる強力なコントロールソフトで、ここにEQやコンプが組み込まれているのです。このTotalMix FXについて細かく解説していくと、膨大な量になってしまうし、さまざまなところで解説されているので、ここでは割愛しますが、これはあくまでもFireface UCX IIの中身をコントロールするもので、コンピュータでオーディオ処理をしているのではないというのが重要な点。使い方にはちょっとクセがあり、初めてこの手のものを触る初心者には、ちょっと難解ではありますが、これがRMEの面白味でもあるんですよね。

入力、出力の各チャンネルにコンプやEQを設定することができる

さて、先ほどのAV Watchの記事の中ではWindowsのASIOでのレイテンシーのチェックも行っていますが、これもほぼ最高性能。ただし、ZOOMのUAC-2など一部の機器と比較すると負けてしまう数値ではありました。というのも、RMEではバッファサイズに余裕を持たせており、最近の他社製品のように4Sampleとか8Sampleは設定できず、44.1kHzにおいて48Sampleが最小。多少、パワーの低いPCであっても、音切れせずに使えるように、こういう仕様にしているんですね。まさに業務用機器としての設計です。このバッファサイズであっても、以下のようなレイテンシーを実現しているのは驚異的ともいえそうです。

サンプリングレート バッファサイズ レイテンシー
44.1kHz 48samples 3.56msec
48kHz 48samples 3.27msec
96kHz 96Samples 3.06msec
192kHz 192Samples 2.97msec

※このレイテンシーは入力レイテンシーと出力レイテンシーを足し合わせた実測値です。

ところで、このFireface UCX IIになって大きく変わったのが本体の操作性。今回、カラーLCDが搭載され、ここで各チャンネルの入出力をレベルメーターで確認できたり、各チャンネルのボリュームや入力ゲインを見ながら調整できるようになったことで、操作性は格段に向上しています。前モデルでも7セグメントのLEDは搭載されていましたが、それと比較すると圧倒的に使いやすいですね。

Fireface UCX IIではカラーLECが搭載されおり、操作性、視認性が大きく向上している

また機能面において、新たに追加された大きなものが、DURecという機能。これはリアにあるUSB Type Aの端子にUSBメモリを挿すことにより、ここにすべての入出力を記録できるようになったのです。これは上位モデルであるFireface UFX IIやUFX+などには搭載されていた機能で、オーディオインターフェイスとして使いながら、それと並行しながらUSBメモリに録音できるので、バックアップ機能としても使えるというものです。

リアパネルにUSBメモリを挿すことができ、ここに各入出力チャンネルの信号を録音できる

具体的には前述のTotalMix FXの右下にあるRecordViewというボタンを押すと、画面モードが切り替わり、各入力チャンネル、出力チャンネルに録音ボタン、再生ボタンが現れます。この録音ボタンを点灯させた上でスタンバイさせ、全体の録音ボタンをUSBメモリにWAVファイルとして記録されていきます。

TotalMix FXで、どのチャンネルをレコーディングするかを設定し、録音していく、おとができる

また録音終了後に再生ボタンを押せば、それぞれを再生することが可能になります。この際、入力チャンネルで再生をすると、そのチャンネルの入力の変わりに、USBメモリーから音が出る……という仕掛けになっているんですね。

ちなみに、録音した結果は何チャンネルであっても1つのWAVファイルになるようになっています。そのため、この録音した結果のWAVファイルをWindowsやMacに取り込んだ場合、マルチチャンネルWAVに対応したDAWや波形編集ソフトであれば、そのまま開いて音を出すことも可能になっているのです。

録音した結果のWAVファイルはマルチチャンネルのデータになっている

以上、簡単ではありますが、RMEの新製品、Fireface UCX IIについて見てみましたが、いかがだったでしょうか?165,000円を高いと見るか、安いと見るかは人それぞれだと思いますが、私は値段相応の非常に優れた機材だと思います。音質面という意味では、前モデルも十分な性能を持っていたので、急いで買い替えるべきかは悩ましいところですが、カラーLEDを搭載した操作性は絶対にいいし、DRec機能も魅力的なところではあります。

ちなみに、私自身、長年、RME製品は買おうか、どうしようか……と悩みつつ、絶対的な価格の高さから見送っていたのが正直なところ。しかし、あるとき発売元のシンタックスジャパンの担当者と話をしていて、「とはいえ、個体差によって、微妙な差はありますよね」と言ったところ、彼は「RMEには個体差は絶対にありません。もちろん、同じことを何度繰り返しても絶対に同じ結果になります」と真剣に主張したのを聞いて、やっぱりこれを買おうと思ったのです。RME製品にはDIGICheckという計測・解析ツールが利用できるようになっていますが、まさにこれを持っておくことで、計測器としても使えてしまうんですよね。

どこに魅力を感じるかは人それぞれだと思いますが、Fireface UCX IIも非常に優れた機材であることは間違いなさそうです。そしてきっと、これもこの先10年近くは現役機材として販売されていくことだと思います。

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Fireface UCX II製品情報
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