ドイツの老舗DTM機材メーカー、ESIが2in/2outのオーディオインターフェイスAmber i2(税込実売価格22,000円)および4in/4outのAmber i4(29,700円)が5月26日より国内で発売になりました。USB Type-C接続で24bit/192kHzの入出力に対応したAmberシリーズは、低価格ながらADCおよびDACに旭化成エレクトロニクス(AKM)のAKシリーズを搭載した高品位な設計のオーディオインターフェイスとなっています。
見た目にもインパクトのあるオレンジ色(Amber=琥珀)のノブとフロントに搭載されたディスプレイで細かな設定操作ができたり、入出力をレベルメーター表示で確認できるのも大きな特徴。とくにAmber i4は4系統の入力と4系統の出力、そして2つの独立ヘッドホン出力を自在にルーティングして、録音・再生・モニタリングのコントロールできるほか、A/Bミックス比較などにも対応できるのがポイントとなっています。そのAmber i2およびAmber i4を実際に試してみたので、どんなオーディオインターフェイスなのか紹介してみましょう。

ESIのAmber i2(上)とAmber i4(下)が国内発売された
ドイツの老舗DTM機材メーカー、ESI
昔からのユーザーなら覚えている方も多いと思いますが、ESIはかつてEGO-SYSの上位ブランドとして展開されていたドイツの老舗DTM機材メーカーです。ESIの製品は昔からドライバのルーティングなどが非常に柔軟だったのですが、この特徴は現在も変わらず受け継がれています。現在ESIは数多くの製品をラインナップしており、実は最近では以前CMEブランドで展開されていた薄型のMIDIキーボード、XkeyシリーズもESI製品として生まれ変わりました。Xkeyを含む豊富なラインナップの中で、新製品としてAmber i2とi4がローンチされたのです。

ESIにXkeyも仲間入り。数多くのDTM製品を扱っている
ESIは1990年代からオーディオインターフェイス市場に参入しており、特にPCベースの音楽制作が本格化した2000年代には数多くの製品をリリース。その中でも「MAYA44」シリーズや「JULI@」シリーズなど、プロフェッショナルからも高い評価を受ける製品を数多く送り出してきました。一時期は日本市場での存在感が薄れていた時期もありましたが、近年再び注目を集めており、今回のAmberシリーズも期待の新製品として登場となります。
フロントにディスプレイを搭載したアルミボディーのオーディオインターフェイス
Amberシリーズの最大の特徴は、製品名の由来でもある琥珀色(Amber)のノブと、フロントパネルに搭載されたディスプレイです。このディスプレイにより、細かな設定操作を直感的に行うことができ、入出力レベルをメーター表示で確認することも可能となっています。

オレンジ色で目立つ形のプッシュ型のロータリーエンコーダー
本体はアルミ製のしっかりとした筐体で構成されており、いずれも1Uのハーフラックサイズ。正確にはAmber i2が幅209mm×奥行き127mm×高さ44mmで約620g、Amber i4が幅222mm×奥行き127mm×高さ44mmで約700gと、4in/4outあるAmber i4のほうが若干横幅が長い形です。いずれもデスクトップでの使用はもちろん、モバイル環境でも使用できるコンパクトな設計となっています。

Amber i2(奥)とAmber i4(手前)
接続端子にはUSB Type-C端子を2つ搭載しており、基本的にはバスパワーで動作しますが、もう一つの端子から追加の電源供給も可能な設計となっています。これにより、スマホやタブレットなど、バスパワー供給力がないデバイスでも利用可能になります。

リアにはUSB-C端子が2つあり、右側は電力供給用
もちろんUSBクラスコンプライアントデバイスとなっているので、iPhone/iPad、Androidなどでも利用可能となっているほか、Macの場合はドライバなしで利用可能です。一方で、Windowsの場合はドライバをインストールすることで、低レイテンシーなASIOドライバが利用できる形となっています。

WindowsにはASIOドライバが用意されている
フロントパネルのディスプレイは128×64ピクセルのOLEDディスプレイを採用。明るく見やすい表示で、暗い環境でも視認性が確保されています。ディスプレイの右には先ほどの琥珀色=オレンジ色のロータリーエンコーダーが配置されており、このノブを回転させることで各レベルやゲイン設定を細かく変更することができます。また、ノブを押し込むことでメニューの選択や確定操作も可能となっています。完全なデジタルコントロールなので、レベル合わせにおける微調整も正確に行えるのも嬉しいところです。

フロントのディスプレイでレベルメーター表示ができ、ロータリーエンコーダーを用いてレベル調整も可能
AKMのADC、DACを搭載の高音質設計
低価格でありながら、AmberシリーズはADCおよびDACに旭化成エレクトロニクス(AKM)のAKシリーズを採用した高品位な設計となっているのは注目のポイントです。ご存じのとおりAKMのチップセットは高級オーディオ機器にも使用される定評のあるチップです。この価格帯のオーディオインターフェイスに搭載されることはちょっと珍しいと思います。
具体的には
– ADCチップセット:AKM AK5552VN(2チャンネル、24bit/192kHz対応)
– DACチップセット:AKM AK4454VN(2チャンネル、24bit/192kHz対応)
– ADCチップセット:AKM AK5554VN(4チャンネル、24bit/192kHz対応)
– DACチップセット:AKM AK4458VN(8チャンネル、24bit/192kHz対応)
となっており、両機種とも24bit/192kHzの高解像度録音・再生に対応。その結果、たとえばライン出力のTHD+N(全高調波歪み+ノイズ)は-102dB、ダイナミックレンジは113dBなど、プロフェッショナルな音楽制作にも十分対応できるスペックです。
ちなみにマイクプリアンプは最大+60dBのゲインを確保。コンデンサーマイクの使用に必要な+48Vファントム電源も各チャンネル独立して供給可能です。また、楽器入力に対応したHi-Z入力も備えており、エレキギターやベースを直接接続することができます。
コントロールソフトで自在に設定可能
ESIの伝統的な強みである柔軟なルーティング機能は、Amberシリーズでも健在です。Windows、Mac用に用意されている専用のコントロールソフトウェア「Amber Control」というミキサーコンソール風な画面で、入出力のルーティングや音量調整、各種設定を細かくできるようになっています。

本体だけではできない、より細かな操作・設定をAmber Controlで行うことができる
もちろん前述の本体を使って行うコントロールと完全連動しており、本体操作をすれば、このAmber Control側も動く形です。
このコントロールソフトは直感的なGUIを採用しており、マウス操作でドラッグ&ドロップするだけで複雑なルーティング設定が可能です。たとえば、DAWからの再生音をLINE OUT Aとヘッドホン2に送りつつ、マイク入力の音はダイレクトモニタリングでヘッドホン1に返す……といった設定ができるのです。

モニターのA/B切り替えなど、細かな設定を自由に行うことができる
特にAmber i4では、4系統の入力と4系統の出力、そして2つの独立したヘッドホン出力を自由にルーティングすることが可能です。録音・再生・モニタリングのコントロールはもちろん、A/Bミックス比較や複数のアーティストによる同時モニタリングなども行える柔軟性を備えており、本格的なレコーディングスタジオのような感覚で使うことが可能です。
また、レイテンシー調整機能も充実しており、ASIOドライバを使用した場合、44.1kHzでも192kHzであっても最小32サンプルというバッファサイズの設定が可能で、低レイテンシーを実現。リアルタイム演奏時のストレスを最小限に抑えることができます。

192kHzのサンプリングレートでもバッファサイズを32サンプルにまで下げることができる
またさまざまな設定ができるため、その設定結果をSnapshotとして最大8つまで保存できるというのもユニークなところ。DAWレコーディング用、YouTube Live配信用、Zoom用……と用途に応じた設定を保存しておくことで、すぐにその状態に持っていくことができるのです。

設定した結果をSnapshotとして保存することが可能
2つあるMIDI端子は入力にも出力にもなる!?
Amberシリーズのユニークな機能として、リアパネルに配置された2つのMIDI端子があります。通常のオーディオインターフェイスでは、MIDI INとMIDI OUTが固定されているのが一般的ですが、Amberシリーズでは各端子を入力・出力のどちらにでも設定することができます。
これは非常に画期的な機能で、例えば2台のMIDIキーボードを接続したい場合は両方の端子を入力に設定し、逆に2台のMIDI音源を使用したい場合は両方を出力に設定するといった使い方が可能です。また、1つを入力、もう1つを出力に設定してMIDIスルー的な使い方をすることもできます。

リアに用意されている2つのMIDI端子は入力にも出力にも利用できる
面白いことに、このMIDI端子の利用に設定する画面など何も用意されていないのです。どうやって、入力や出力を切り替えるのかというと、外部と接続することで勝手に切り替わるんですね。実はコンピュータ側から見ると、Amber i2、Amber i4とも、MIDIの入力も出力も2つずつ装備しているように見えるのです。その上で、接続先に応じて出力として利用することもできるし、入力として使うこともできる、というものなんですね。

Amber用のMIDI入力と出力が2つずつある
最近MIDIのDIN端子を装備するオーディオインターフェイスも少なくなりましたが、これだけ柔軟性があるので、これだけのためにAmberシリーズを持っておいても悪くないように思いました。
バンドルソフトも充実
ハードウェアだけでなく、ソフトウェア面でも充実したバンドルが用意されています。Amberシリーズには以下のソフトウェアがバンドルされており、購入してすぐに音楽制作を始めることができます。
波形編集ソフト:Steinberg WaveLab LE
iPhone/iPad用DAW:Steinberg Cubasis LE
マルチチャンネルFX:inTone 2 ESI Edtion
ギターアンプシミュレーター:ampLion Free
ベースアンプシミュレーター:GK Amplification 2 LE
オンラインスタジオ:JackTrip Virtual Studio 3ヶ月分(最大9000分)
付属DAWがBitwig Studioの簡易版であるBitwig Studio 8-Trackのみという点が、Cubase AI/LEやAbleton Live Liteが付属するほかのオーディオインターフェイスと比較して、やや弱いかな……と思う点ではありますが、すでにDAWを持っている人にとっては、これで十分だとは思います。

Cubasis LEも付属しているので、iPhone/iPadで利用することも可能
実際の使用感と音質評価
実際にAmber i2とi4を使用してみると、まずその操作性の良さが印象的です。フロントディスプレイによる設定変更は非常に直感的で、PC画面を見ることなくオーディオインターフェイス単体で多くの設定を変更できます。特に録音レベルの調整やモニターバランスの変更などは、リアルタイムでメーター表示を確認しながら行えるため、効率的な作業が可能です。

本体のディスプレイとオレンジ色のロータリーエンコーダーだけで、ほとんどの設定が可能
音質面では、AKMチップセットの恩恵が明確に感じられます。同価格帯の他社製品と比較しても、明らかにクリアで解像度の高いサウンドが得られ、特に高域の透明感と低域の締まり具合は印象的です。ノイズフロアも非常に低く、深夜の静かな環境でも安心して録音作業を行うことができます。

Amber i2(上)とAmber i4(下)のリアパネル
Amber i4の多出力機能は、特に複数人でのセッション録音やミックス作業において威力を発揮します。各アーティストに独立したヘッドホンミックスを提供できるため、それぞれが最適なバランスでモニタリングしながら演奏することが可能です。
現在、競争が激しい2in/2out、4in/4outのオーディオインターフェイスですが、Amber i2およびi4は、手ごろな価格ながら、高音質と低レイテンシー、操作性の良さを兼ね備えた優れた機材だと思います。初めてのDTM用にオーディオインターフェイスが欲しいという方はもちろん、2台目、3台目のオーディオインターフェイスが欲しいという人にとっても、便利に使える機材なので、検討してみてはいかがでしょうか?
【関連情報】
ESI Amber i2製品情報
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