ハードシンセをクラウド接続して機能拡張するRoland Cloud Connectが誕生。JUPITER-X/Xmが2.0になり、ボーカルシンセ機能搭載可能に

Rolandがまた新たなシステム、Roland Cloud Connectという製品を発表しました。これはハードシンセをRoland Cloudに接続し、Roland Cloud上のコンテンツをハードシンセに送り込んで機能拡張するためのもの。製品パッケージは1年間のRoland Cloud Proメンバーシップが利用できる権利と、Wireless Adapter WC-1というUSBドングルから構成されています。

そのRoland Cloud Connectを活用するシステムの第一弾としてJUPITER-XおよびJUPITER-Xmが対応し、ここにSound Packを転送できるようになると同時に、新たなModel Expansionとして誕生したVOCAL DESIGNERというボーカルシンセ機能を追加搭載できるようになったのです。そのRoland Cloud Connectに対応するため、JUPITER-XおよびJUPITER-XmのシステムVer.2.0がリリースされ、11月17日よりユーザーは誰でも無料でバージョンアップできるようになります。ハードウェアシンセとクラウドサービスを連携させるという、これまでにないユニークなシステムですが、実際に少し試してみたので、紹介してみたいと思います。

ハードシンセをRoland Cloudに接続するシステム、Roland Cloud Connectが誕生。第一弾としてJUPITER-X/Xmが対応

Rolandから発表されたRoland Cloud Connectは、現時点においてはJUPITER-XおよびJUPITER-Xmを拡張するためのシステムです。このJUPITER-XおよびJUPITER-Xmについては、以前「ローランド、三木純一社長インタビュー~シンセのゲームチェンジャ製品、JUPITER-X/Xmはどのように誕生したのか」といった記事でも紹介したことがありましたが、ZEN-Coreエンジンを搭載した新設計のシンセサイザ。いずれも基本的な機能的・性能は同じですが、フルキーの61鍵盤(セミウェイテッド鍵盤、アフタータッチ対応)を搭載した大きいモデルがJUPITER-Xで、ミニキーの37鍵(コンパクトタイプ、ベロシティ対応)を搭載したのがJUPITER-Xmです。

フル鍵盤・61鍵のJUPITER-X

このJUPITER-X/Xmはハードウェアのシンセサイザではありますが、これまで何度かのアップデートを繰り返し、最新版がVer.1.50となっていましたが、今回Ver.2.0になったのです。このアップデート自体はUSBメモリーを利用することで、ユーザーであれば誰でも無料で行うことができます。具体的にはアップデート用のファイルをWindowsやMacを用いてダウンロードした上で、USBメモリーにコピー。それをJUPITER-X/XmのUSB MEMORY端子に接続することで、アップデートできるのです。

ミニ鍵盤37鍵のJUPITER-Xm

過去のアップデートではRoland Cloudで配信されているサウンド・コンテンツに対応したり、JUPITER-X Editorに対応するなどの機能強化が図られてきましたが、今回のVer.2.0ではRoland Cloud Connectを介し、Model Expansionという新たな音源を追加できる機構を取り入れているのです。

Model Expansionについては、「無料で使えるRolandのDAW、Zenbeatsの新バージョンに搭載された音源ZC1と、ZENOLOGY ProやJUPITER-X/Xm、FANTOMとのシームレスな関係」や「小室哲哉さんが音色番号53を駆使したRoland JD-800、30周年を記念してプラグインで復活!もちろん全プリセットも完全復元!」という記事で、ソフトウェアシンセのZENOLOGYを拡張する機能として利用できるとともに、JUPITER-X/Xmとの連携ができることを紹介していました。しかし、今回のVer.2.0になったことで、まったく新しいModel Expansionの追加が可能になったのです。

ここでModel Expansionを追加するために登場してきたのが、冒頭で紹介したRoland Cloud Connectという製品です。

Roland Cloud Connectは

Roland CloudのProメンバーシップ 12か月分

Wireless Adapter WC-1

の2つから構成されています。

でも、中には「Roland Cloudって何?」と思う方もいると思います。Roland Cloudの詳細は以前の記事「クラウド型のソフト音源サービス、Roland Cloudが大きく進化し、国内でも本格スタート。現行ハードウェア製品と音色互換を持つソフトシンセZENOLOGYもリリース」という記事を参考にしていただきたいのですが、簡単にいえば、数多くのRolandのソフトシンセやエフェクト、サウンドライブラリを使うことができるサブスクリプション型のサービス。またPC上で利用するだけでなく、JUPITER-X/Xmのようなハードウェアシンセでも利用できるコンテンツもここで提供されているのです。

そのRoland CloudにはFree、Core、Pro、Ultimateという4つのメンバーシップ・プランがありますが、そのうちのProの場合は年間99ドル、Ultimateの場合は年間199ドルという料金体系。そのProを1年間使える権利が、Roland Cloud Connectに入っているため、実質的にはProメンバーシップのサブスクリプションに加入するとWireless Adapter WC-1がもらえてしまう、お得なパッケージともいえるわけです。

USBで挿してスマホとやりとりを可能にするWireless Adapter WC-1

そのUSBドングルであるWireless Adapter WC-1は今回、初登場のアイテムでWi-Fi接続タイプのデバイスとなっています。これをスマホと接続して操作することでModel ExpansionをJUPITER-X/Xmへ追加することが可能になるのです。

JUPITER-XまたはJUPITER-XmのリアにWC-1を接続

そのModel Expansionの第1弾として登場するのがVOCAL DESIGNERというボーカルシンセ/ボコーダー。実際、どんな音源なのか、デモビデオがあるのでこちらをご覧ください。

ビデオを見ていただくと分かるとおり、予めWC-1をJUPITER-Xに取り付け、スマホを用いてVOCAL DESIGNERの機能を追加をした上で、利用しています。音を聴くと分かったと思いますが、従来からあるVP-03などとは異なる新しいタイプのボーカルシンセ/ボコーダーです。


スマホ側でアプリを起動し、VOCAL DESIGNERのModel ExpansionをJUPITER-X/Xmに転送

もっとも、このVOCAL DESIGNERを追加する際、Roland Cloud Connectを使用しない方法も用意されています。それはLifetime Keyと呼ばれる買い切り型のVOCAL DESIGENRを入手し、USBメモリーを使って機能追加する方法です。VOCAL DESIGNERのLifetime Keyの価格は149ドルであり、これを購入すれば期限なく使えるので、どちらがいいかはユーザーによって分かれるところ。サブスクリプションは好きじゃない、という日本人ユーザーも多いので、買い切り型が用意されているのは嬉しいところです。

このVOCAL DESIGNERは、ヘッドセットやマイクを接続し、このマイクを通じて音声を入力することで、ボコーダーサウンドを得ることができます。

JUPITER-X/Xmにヘッドセットを取り付ければボコーダーとして使える

また数多くのプリセットが用意されているので、これを選ぶだけでも先ほどのデモビデオのように、ユニークなサウンドを得ることができるのですが、もちろん本体の液晶画面を通じて細かくエディットしていくとができます。

液晶画面上で音色のエディット作業も可能

このようにJUPITER-X/Xmは、まるでプラグインを追加するかのように、Model Expansionを使い新しい音源機能を追加できるようになったのですが、この小さなディスプレイだけだと、音色づくりなどは、なかなか操作しづらいのも事実。そこでWindowsやMacとUSB接続した上で、JUPITER-X Editorを用いることで大きな画面で数多くのパラメータをグラフィカルに確認しながら細かくコントロールできるというのも重要なポイントです。

JUPITER-X Editorを使ったほうがより効率的に、また見やすくエディットができる

アルゴリズム、オシレーター、フィルター、LFO……と細かくパラメーターを動かすことができ、またエフェクトについても設定できるようになっています。

JUPITER-X EditorでVOCAL DESIGNERの膨大なパラメーターを調整できる

こうした点を見ても、Roland Cloud Connectにより、PC上のソフトウェアとJUPITER-X/Xmというハードウェアがシームレスの関係になっているのが実感できます。ZEN-Coreというエンジンを使っているからこそ実現できていることでもありますが、ハードとソフトの垣根のない新しい世界だと思います。現時点ではModel ExpansionはVOCAL DESIGNERのほかに、JD-800もあり、これをJUPITER-X/Xmで利用することも可能です。今後きっと新たなModel Expansionが登場してくるはず。そこはもちろんZENOLOGYとも大きく関係してくるはずですが、今後どんなModel Expansionが登場するのかも楽しみにしたいところです。

【関連情報】
Roland Cloud Connect製品情報
VOCAL DESIGNER製品情報
JUPITER-X製品情報
JUPITER-Xm製品情報
Roland Cloudサイト

Commentsこの記事についたコメント

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です