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  • ローランド、三木純一社長インタビュー~シンセのゲームチェンジャ製品、JUPITER-X/Xmはどのように誕生したのか

先日「JUPITER-X/Xm、FANTOM、GROOVEBOX、Roland Boutique……、Rolandがシンセ関連の新製品を大量に発表!」という記事で、ローランドの秋の新製品を紹介しましたが、その目玉製品のひとつ、JUPITER-Xmがまもなく11月16日に発売となります。このJUPITER-Xmそして来春発売予定の61鍵フルキーボードタイプであるJUPITER-Xの2機種、実はローランドの社長である三木純一さん発案の製品なのだとか。

もともと開発畑出身の三木さん、社長になった今でも、新製品の開発には人一倍の思い入れがあるようで、常に新しい製品企画を考えているそうです。そうした中、これまでにない、まったく新しい発想のシンセとして浮かんだアイディアがJUPITER-X/Xmだったとのこと。そのアイディアをベースに社内で特別チームを編成し、約2年がかりで開発してきたのものが、ようやく発売を迎えることになったのです。先日、そのJUPITER-X/Xm開発のプロジェクトリーダーでもある社長の三木さん、そして基礎技術部長の田中郁生さん、第3開発部製品リーダーの永田晃弘さんの3人にお話しを伺いました。

ローランドの三木純一社長自ら、企画し、開発したJUPITER-XおよびJUPITER-Xm

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お話を伺ったのは浜名湖のほとりにある、ローランドの研究所。インタビューに先駆けて社長の三木さんが、JUPTER-Xmを使ったデモ演奏をしてくれたので、まずはこちらをご覧ください。

「こんな感じで、楽器が弾けない人でも、適当に弾くだけでそれっぽく演奏できるのがJUPITER-Xmの面白さの1つなんですよ」と三木さん。さっそくインタビューに行ってみましょう。

JUPITER-X/Xmの開発者、3人にインタビュー。左から田中郁生さん、社長の三木純一さん、永田晃弘さん

--JUPITER-X/Xmの話の前に、三木さんのプロフィール的なことをお伺いさせてください。以前にお話しをさせていただいた際、もともと開発出身だとおっしゃっていましたが、これまでどんな製品に関わってこられたのですか?そもそも、どういう経緯でローランドに入られたのですか?
三木:1977年、ローランドが、まだ大阪の小さなベンチャー企業だったころ、初の大卒新規採用を行った際に入社しました。大学は工学部の電気・電子出身で、大手家電メーカーに入ろうか…と考えていたのですが、楽器を作る会社があるというので、見学会に参加したところ、何やら怪しげなところで、大学の同好会みたいな雰囲気だったんですよ(笑)。子供のころから、モノづくりは好きだったし、音楽も好きだったので、これは面白そう、と入社したのがスタートです。最初は生産ラインに入ったり、修理や調整を行ったりしていましたが、その後、技術研究所的なところへ異動しまして、最初に携わったのがMC-4のデータストレージ関連の開発でした。

--ええ?シーケンサの元祖ともいえるMC-4の開発ですか?
三木:MC-4のコアを作っていたわけではなく、カセットテープにデータを記録したり、それを読み込んだりする部分ですね。その後、大きな仕事としては1986年発売のステージピアノ、RD-1000のコア部分の開発です。当時のローランド最先端デジタル技術であるSA(Structured Adaptive)音源を搭載したものですが、そのLSIチップの開発やそこに載せたサウンドの開発を行いました。当時は、厳密な役割分担があったわけではなく、誰が何をやるかは適当(笑)。「オマケにコレもやっておいて」という感じで、空いている人が何でもやっていたので。でも、そのころに音屋さんが初めて誕生したころであり、私はその後、音作りをメインに担当していました。ローランド初のサンプラーであったSシリーズを出す際には、ライブラリを作らなくちゃいけないというので、ピアノ、バイオリン、ギター……と片っ端から録音しては、ループポイントを設定してサンプルライブラリにして……なんてことをしてましたね。その後、プロダクトリーダー制という製品開発体制になってからはピアノのリーダーになり、さまざまな製品を見るようになっていきました。

ーー本当に、ローランドの歴史的機材をいろいろと手掛けてきたわけですね。さて、ここから本題のJUPTER-X/Xmについてお伺いします。これは三木さんのアイディアだと伺っていますが、どんな考え方で生まれてきた製品なのでしょうか?
三木:私が社長になったときに、まず最初に命題としてあったのはブランド力の再向上。ローランドファンのみなさんに喜んでもらえる製品を作るとともに、新しいお客さんも開拓していく必要がある。もともとローランドは、世の中にないまったく新しいものを生み出すことを実現してきた会社です。ミュージくん、ハードディスクレコーダーなどもその一例です。やはりゲームチェンジャとなる商品を作っていく必要があるということで、EL CajonAerophoneなどを生み出し、ヒット製品となり、社内でもゲームチェンジャ製品が作れるという自信もついてきたのですが、シンセのところだけが手薄になっていたのです。従来の延長線上でまともにやるのではなく、趣向を大きく変える必要があるのではないか、と。シンセのゲームチャンジャって何だろう……と考えていったのです。以前、現場での開発として最後に担当していたのがV-Combo VR-09というシンセとかオルガンを一体化したものだったんですが、やや、やり残した思いがあるんです。これにワークステーション的なものを入れられたら……なんて当時考えていたので、そんな思いがよぎりました。一方で、社内の開発スピードを飛躍的に上げるにはどうすればいいか、という課題もありました。アイディアはあるけれど、リソースが足りなくて開発に着手できないというケースがままあるのです。

ーー開発スピードの向上というのは、電子楽器の世界に限らずどこのメーカーでも求めることだとは思いますが、そう簡単にいくものではありません。
三木:そこで打ち出したのは各機器で利用できる共通音源コアを作ろうというものです。従来はピアノはピアノ、シンセはシンセ、ドラムはドラムとして別々に音源をつくっていました。これを1つに統合して共通プラットフォームすれば効率は上がる。クルマメーカーがグローバルプラットフォームと言っているのと同じ考え方です。こうすることで、1つ1つの楽器の開発時間を飛躍的に向上させることができます。1つのチップからピアノもシンセもドラム作れるようにできないか、そんなことを並行して考えていたのです。

--その昔、PCMが普及しだした当時、どの楽器も同じ音色が載っていて、特徴がなくなるという時代がありました。それに近いことをする…という意味なのですか?
三木:共通音源コアを使うというのは、同じ音源を載せるということではないのです。この共通音源コアは、いわゆるSoC(System on Chip)というもので、複数のDSPブロック、複数のCPUほか、音源を構成するのに必要なモジュール、ライブラリを1つにまとめた専用ハードウェアです。ここにはローランドがこれまで蓄積してきたノウハウを詰め込んでおり、非常に効率的に新しい音源を作ることを可能にしているのです。そのために開発したのがBMC(Behavior Modeling Core)という最新のチップです。今後これを各楽器に載せていくわけですが、各楽器ごとに、まったく異なるサウンドを出していくことが可能になっているのです。

ーーシンセのゲームチェンジャ製品というのも、簡単な話ではないと思いますが、ここはどのようなアイディアだったのですか?
三木:シンセ好きの人やプロのサウンドデザイナー、キーボードプレイヤー……といった多くの人たちと会って「いま市場に出ているシンセで一番気に入っているものは何ですか?」といったことを聞いていました。すると、”複数のアナログシンセを重ね合わせて弾くのが楽しい。最近のシンセサイザーだとProphet XやMoog Oneはそういうことが一台でできる”ということをみなさんおっしゃるんですね。アナログシンセの音は素晴らしいけど、ある程度のバリエーションからは広がらないからこそ、違うシンセで音を重ねてレイヤーしていく。でも、アナログシンセは重たいから、重ねて置くのが大変で……なんて声も。この辺に何かヒントが隠されているのでは……と考えていました。その一方で、みなさん同様、私もスマホを愛用しているのですが、スマホを使うようになってから、メチャメチャ面倒くさがりになったように思うのです。仕事から帰って、寝るまで食卓でスマホをいじってるし、動画もスマホ内蔵のスピーカーで鳴らして見ていて、わざわざ外部スピーカーなど使わない。もし食卓でシンセを弾くとしたら、小さくしないとダメだし、ACアダプタ使うのも面倒だからバッテリー内蔵する必要があるし、ヘッドホンも面倒だからスピーカー内蔵しないとダメなのでは……なんて考えていったのです。

--確かにシンセマニアの方の家に行くと、たくさんのアナログシンセが重ねられていて……というのを見かけますが、リビングでカジュアルに弾くというのとはだいぶイメージが離れてますよね?
三木:何がゲームチェンジャになるのだろう……とモヤモヤと考えていたころ、アメリカに出張に行ったのです。その出張時の休日に、とあるファミリーのドライブに招かれて同乗したのですが、その社内で娘さんが持ち込んだウクレレを弾きだし、家族が「朝日のあたる家」を合唱し始めたとき、「これだ!」と思ったんです。ウクレレほど完璧なものはないな、と。アコギじゃクルマに持ち込めないけど、ウクレレならそのまま弾いてすぐに音が出せて、しかもメロディも伴奏も……。この手軽さとシンセをレイヤーしていくというアイディアを1つにまとめれば、ゲームチェンジャーになりうるシンセが作れるのではないかと。ここまでずっと1人で考えていたのですが、その後、永田や田中などにも入ってもらって、具体的にしていったのです。
永田:私が入ったのは1年半くらい前ですね。三木のかなり強い思いもあったので、これを素直に実現していこうと、製品としての絵を描くところから参加しました。私自身は以前、TR-8、TB-3、VT-3、SYSTEM-1といったAIRAシリーズを手掛けた後、やはり三木発案のGO:KEYSやGO:PIANOなどの開発に携わってきたのですが、このアイディアはすごく良さそうだ、というのは直感的に感じました。が、実際に形にするのは難しいな、とも。要件としてはバッテリー駆動、Bluetooth内蔵、スピーカー/アンプ内蔵でいながら、数多くの異なるシンセサイザが入っていて、複数のシンセサイザを同時に鳴らすことができる……。でも、本当にそんなものが実現できるのだろうか、と。

--かなりの無茶ぶりというか、普通に考えると不可能なオーダーではありますね(笑)。

田中:そこに大きく効いてきたのが、私のほうで先に進めていた共通音源コアとなるBMCチップです。これを使うことで、複数のシンセをレイヤーすることができます。ただ、要望としてきたのは、個性あるシンセの音を複数重ねろ、と。でも、元々のミッションは共通化。これは、もはやトンチだな、と思いましたよ(笑)。BMCチップ上で動く、共通音源としてZEN-Coreというものを作っていたのですが、これは守備範囲の広いものにしていたので、これを活用する一方で、ABM=Analog Behavior Modelingという往年の名機をモデリングする機能も作り、これをBMCチップ上で実現させよう……と開発したのです。これによってJUPITER-8、JUNO-106、JX-8P、SH-101などの音を正確にモデリングしています。

--やや混乱してきましたが、BMCチップがハードウェアで、ZEN-CoreやABMはファームウェアと捉えればいいですか?またABMというのは、以前、AIRAやRoland Boutiqueで搭載していたACB=Analog Circuit Behaviorテクノロジーと同じものなのですか?
田中:BMCチップはハードウェアで、ZEN-CoreやABMがファームウェアという捉え方で大丈夫です。ローランドでは、これまで数多くの音源を培ってきましたが、その全部を統合した形で、いろいろな音源のノウハウ、アイディアのいいところどりしたのがZEN-Coreです。その中は大きくいうと、DSPによる波形まで計算するバーチャルアナログ音源、XVみたいなウェーブフォームを使ったPCM音源の2通りが入っているのです。しかし、それとは別に、JUPITER-8やJUNO-106などをモデリングする音源も搭載しているのですが、これはACBとは別ものです。確かにACBを使うという方法もあったのですが、ACBは当時の回路を1つ1つ信号処理に置き換えていくというもので、1つ1つ作っていく専用音源のアプローチであり、処理パワーも非常に重くなってしまいます。それに対し、JUPITER-X/XmではそもそもJUPITER-8やJUNO-106などは、どんな波形で、どのノブを動かすとどのように振舞うのか、その特性を調べた上で、出音がそのようになるよう調整していくというアプローチをとりました。どちらもアナログのいい音を目指すけれど、それぞれ得意、不得意はあります。いい、悪いではなく、テイストの違いでしょうか。そもそも、複数のシンセをスタックするという命題もあるので、負荷が軽くて出音を近づけることのできるモデリング方法を選択しました。

--たとえばJUPITER-8のサウンド、JUNO-106のサウンドといったときに、AIRAやBoutiqueに劣るものではない、と。
永田:ACBと比較してどちらが良い、というものでは無いですね。振る舞いからのアプローチとはいえ、フィルターの特性など重要なモジュールは同様のモデリングを行っていますので、非常にリアルなサウンドが再現できています。
田中:モデルバンクというところに、ABMでモデリングしたJUPITER-8、JUNO-106、JX-8P、SH-101のさまざまな音色がプリセットとして入っています。BMCチップ1つで、それらを最大4つまで同時に動かすことができるので、4レイヤーまで重ねて、さらにリズムも同時に鳴らすことを可能にしています。これによって、アナログシンセを複数重ねたのと同様の威力を発揮できるわけです。

ーーところで、このJUPITER-XmのFILTERを見ると、VINTAGE FILTERとして、R、M、Sってありますよね?これは、Roland、MOOG、SEQUENTIALってことですよね?
三木:RはもちろんRolandのRですが、まあM社、S社を意識して作っているということですね(笑)。これは永田の発案なんですよ。
永田:単純にType I、II、IIIなどとするというてもあったけれど、シンセ好きからすればR、M、Sとしたほうが楽しいですよね。もっともRといっても、ここにはいろいろなRモデルがは入っており、たとえばJUPITER-8のときと、SH-101のときでは可変範囲だったり、カーブも違う別モノなんです。MとSについては固定ですが、オリジナルを再現するという意味では徹底的にこだわっています。

ーーこのABMによるシンセサウンドの再現、その4種類のシンセ以外にも、さまざまなものをモデリングできそうにも思いますが、JUPITER-X/Xmでは、この4種類だけを搭載した、ということなのですか?
三木:ここに、オプションとして別のモデルを追加できるようにすることを計画しています。やはりアナログシンセ好きの方にとっては、使いたい機材はいろいろあるでしょうから。具体的にどのモデルを再現するかは発表できる段階ではありませんが、ぜひ楽しみにしていてください。他社製品まで手が出せるかどうかはわかりませんが、いろいろやっていきたいですね。インタビューした方からはデジタルシンセではありますがJD-800なんて声も大きかったですね。
永田:ビンテージにとらわれず、いろいろなシンセをここで再現していきたいですね。実は、JUPITER-X/Xmにはマイク端子も用意されており、ボコーダー機能も搭載されているんです。これはVP-330などを再現したものではなく、あくまでもJUPITER-X/Xmのボコーダー機能です。しかし今後は、VPシリーズのモデルはもちろん、JUPITER-8やJX-8Pをボコーダー化する、といった面白いアプローチも検討したいですね。

ーーもう一つJUPITER-X/Xmで面白そうなのが人工知能を利用したというアルペジエーターです。ちょっと触ってみて、不思議に感じましたが、これはいったいどういうものなのですか?
永田:これは演奏感知型マルチ・パート・アルペジエーター、「I-ARPEGGIO」という機能です。難しい楽器演奏を、なんとかサポートしていくのも電子楽器の使命です。AIRAにおいてオートフィルを入れるScatterという機能を搭載しましたが、これをさらに発展させることで、誰でも音楽演奏を楽しくできるようにすることを目指しました。アイデアを詰めた上で開発したAIエンジンを使い、アルペジオをドライブしています。このエンジンは、自由な鍵盤演奏から抽出したリズム情報を元に、数多く用意しているパターンの中から音楽的に適合するものを選択して、アルペジオ演奏に反映させています。そのため適当に弾いても、あたかもそのリズムで気持ちいいアルペジオが鳴るように感じられるのです。自動作曲しているというと大げさですが、弾いた演奏に応じてリアルタイムにアルペジオフレーズが生成されるため、単に内蔵のフレーズ・パターンを再生しているものとは異なるのです。
三木:このI-ARPEGGIOを使うことで、ハッピーアクシデントで、いいフレーズが弾けちゃうようなこともありますが、「あ、今のよかった!」なんてこともあると思います。普通なら、それはしっかり記録していない限りは消えていってしまいますが、JUPITER-X/Xmは裏側で録音し続けており、短時間分は残っているんです。だから、「今のフレーズだ」って思ったところで止めて、そこを取り出してDAWに持っていく、なんてこともできるんですよ。

ーーそういえば、JUPITER-X/XmにはBluetoothも搭載されているという話でしたが、これは何に使うものなんですか?
三木:とくにJUPITER-Xmはリビング、食卓で楽しめるシンセにしたいという思いがあり、搭載しました。Aerophoneを作った際にも搭載したのですが、スマホに入っている曲を再生しながら演奏するとか、YouTubeを流しながらそれに合わせて演奏したい、というニーズは高いと思います。これと同じことをJUPITER-X/Xmでも実現しようというわけなのです。これならDAWすら不要で、すぐに楽しむことができますからね。
永田:Bluetooth-MIDIにも対応させていますので、ワイヤレスでMIDI接続も可能です。これでGarageBandの音源を鳴らすこともできますが、今後音色エディタなどと接続して使えることを想定しています。。

ーーアナログシンセサイザのモデル追加という話もありましたが、最後に、JUPITER-X/Xmを今後どう発展させていくのかなど、教えていただけますか?
三木:まだ計画があるわけではありませんが、ユーザーのみなさんの要望を聞きながら考えていく予定です。オプション製品も作って、ハード用プラグインのように、好きな音源を自由に追加できると楽しいですよね。究極はシンセサイザをユーザーがデザインできるところまで持っていければいいな、と。JUPITER-X/Xmですべて実現できるかは分かりませんが、電子楽器を将来的にはそこまで持っていきたいと考えています。

ーーありがとうございました。

 

Commentsこの記事についたコメント

1件のコメント
  • 佐田

    難しい用語が多くてよくわかりませんが、なんか皆さん楽しそうですね

    2019年11月16日 12:21 午前

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