すでにニュース記事などで、ご覧になった方も多いと思いますが、4月1日、ヤマハの大人気ライブストリーミングミキサーであるAG03、AG06の後継機となるAG03 MK2(税込実売価格:18,700円前後)、AG06 MK2(同:23,100円前後)が発売され、6月にはAGシリーズの新ラインナップとなるAG01(同:29,700円)が発売される予定です。従来機種であるAG03、AG06の発売は2015年5月と、もう7年も前に登場した機材ですが、ずっと人気の機種で、コロナ前からずっと品薄な製品ではありました。それが最初の緊急事態宣言のあとには、オークションなどで定価の倍以上が付く人気製品となるなど、ある種、社会現象的なものにまでなりましたが、最近ようやく落ち着いてきたところでした。
そこに、AG03、AG06の後継となるものが発表され、気になっている人も多いのではないでしょうか?、これ、見た目はよくありそうな小型ミキサーだけど、まさに“羊の皮を被った狼”ともいえるもので、配信ユーザーにとってはもちろん、DTMユーザーにとっても非常に面白い機材に仕上がっているのです。まだ発売が少し先のAG01も含め、これら新製品を発売前に借りることができたので、実際どんな機材なのか試してみました。
いまさら解説するまでもありませんが、従来機種であるAG03やAG06は個人のネット配信ユーザー、ゲーム実況ユーザー、さらにはYouTuberなどにとって、もっとも人気のあるオーディオ機材として、7年に渡り、君臨してきたハードウェアでした。たとえばAG03は小さいクセに、実質7chの入力を持ったミキサーであり、オーディオインターフェイスとなっていると同時に、ループバックをスイッチ操作で簡単にできるというのが、人気のポイントでした。また、ボタン一つでマイクにリバーブをかけたり、コンプやEQをかけられるなど、配信をする上でのマイク入力へのケアが非常に優れており、他社製品を圧倒していたのです。
その後継機種が誕生したということで、何が変わったのか、という観点でAG03 MK2、AG06 MK2を見ていきましょう。私も手元にずっとAG03の初音ミクモデル、そしてAG06があり、いろいろな場面で活用してきたのですが、初音ミクモデルとのデザインの違いはともかくとして、パッと見は新旧モデルを並べても、間違い探しレベルで、ソックリです。
ブラックカラーのAG03 MK2(左)と初音ミクモデルのAG03(右)
カラバリとして両機種ともに従来からのホワイトと、新たなブラックの2ラインナップがそろっていますが、入出力端子や、ノブ、スイッチなどは、だいたい同じです。とはいえ、よく見るといろいろ違いもあるのですが、最初に気づくのは、USB端子が従来のUSB Type BからUSB Type-Cに変わったという点。
AG06 MK2はUSB Type-C(左)なのに対し、前モデルのAG06はUSB Type B(右)
両機種ともiPhone/iPadなどでも使えるように、補助電源用にmicroUSBの端子も装備していましたが、今回は両方ともUSB Type-Cになっています。
Windowsの場合、新しくなったYamaha Steinberg USB Driverをインストールする
なお、AG03 MK2、AG06 MK2ともにUSBクラスコンプライアントなデバイスとなっているので、USB接続すればWindowsでもMacでも、またiPhoneやiPadでも即使うことが可能です。ただし、Windowsの場合、標準のドライバだとDAWで利用できないため、基本的にはヤマハサイトからダウンロードできるASIOドライバをインストールするようにしましょう。
一方で、多くの人たちが絶賛しているのはマイク入力用のCh.1(AG06ではCh.1とCh.2)にMUTEボタンが装備されたこと。確かに、配信中に、マイクを急にミュートしたい、というケースはよくありますので、これがあるのは安心ですね。
AG06 MK2の場合、MUTEボタンがCh.1、Ch.2それぞれに搭載されている
うまくできているなと思うのは、MUTEボタンを押しても、ギター/LINE入力や、AUXからの入力、そしてループバックには何ら影響を与えず、マイクだけがミュートされるという点。DTMステーションの生配信番組であるDTMステーションPlus!においても、マイクだけをミュートするということは頻繁にあるので、これがワンタッチでできるのは、「さすが、よく分かってる設計だな!」と感じるところです。
AG06 MK2では、Ch.1、Ch.2両方に対してファンタム電源供給ができる
もう一つ、このマイク周りでいうと、AG06ではCh.1のみに+48Vのファンタム電源をかけることができたのに対し、AG06 MK2ではCh.1とCh.2の両方にファンタム電源をかけられるようになったので、2本のコンデンサマイクが利用可能になったという点。2、3人で配信したい…という場合には、やはりコンデンサマイクが2本欲しいところなので、これは嬉しいポイントだと思います。
STREAMING OUTを切り替えることで、PC側に送る信号を切り替えることができる
一方で、見た目にはよくわからないのですが、地味に素晴らしい進化を遂げているのがAUX入力です。従来のAUX入力は単純に3.5mmのステレオミニでのライン入力だったのが、新機種においては4極での接続に対応したAUXになっているのです。つまり、ここを通じて、Android機器とアナログ接続し、Android機からも配信ができるようになったんですね。
AUXに4極のケーブルを接続することで、Android端末でも配信が可能になる
これまでもHEADSETというところで、マイクとヘッドホンを分離して接続する機能はありましたが、4極ケーブル1本で接続できるようになったのは非常に重要なポイント。これまでAndroidでダイレクトモニタリングのON/OFFのコントロールをするのは難しかったのですが、この4極でAndroidと接続すれば、それを簡単に実現できるようになったのも嬉しいところです。ダイレクトモニターのオン/オフのスイッチがMIX MINUSという名称に変わっている
そのダイレクトモニタリングをつかさどるのが、AG03 MK2、AG06 MK2の右下、MONITORセクションにあるMIX MINUSのボタンです。これ、従来はMONITOR MUTEという名前だったのが改名したのですが、とくに機能が変わったわけではないようです。個人的には、以前のほうが分かりやすかったのですが、DTMに関係ない配信ユーザーなどの場合だと、「ミックス音がマイナスされる」というほうが、直感的にわかりやすいということなのでしょうか……。
それ以外は、機能的には大きく変わっていないように思いますが、音を聴いてみると、微妙に違いを感じるのも事実。たとえばAG03とAG03 MK2で比較してみると、マイクゲインを大きく上げた際などのノイズが微妙に低減しているように思います。正確には低減というよりも高域が落ちて目立たなくなっているという感じですが、聴感上はよさそうですね。
一方で、内部DSPをいじるユーティリティソフトであるAG DSP Controllerは、AG Controllerへと名称変更するとともにUIが大きく変わっています。機能的には大きく変わらないものの、縦長の画面になっているので、OBSなどと並べた際にも使いやすくする、ということを意識しているのかもしれません。個人的には、以前のアンプシミュレーターのUIなどが好きだったので、ちょっとシンプルになったかな…という気はしますが、機能的にはほぼ踏襲しているようです。
簡単に紹介すると、初心者でも分かりやすくSimpleモードがあり、ここでプリセットを選択するなど、ごく簡単な操作ができる一方で、Detailモードでは、各エフェクトのパラメータを細かく設定できるようになっています。
具体的にはマイク入力に対しては、コンプとEQの設定ができるようになっています。コンプのほうはスレッショルド、レシオ、アタック、リリース、ゲインの5つのパラメータがあり、グラフを直接ドラッグする形でも、スレッショルドとレシオの調整は可能になっています。
またEQにおいては4バンドのパラメトリックEQとなっていて、各バンドごとにQ、周波数、ゲインの調整が可能。さらにそちらとは別にハイパスフィルターも周波数設定可能で、用意されている格好です。
そしてCh.2においてAG03 MK2でもAG06 MK2でもギター入力が可能になっており、そうした場合、コンプとEQに加え、アンプシミュレーターが搭載されているのが重要なポイント。プリセットもクリーン、クランチ、ディストーションなど、用意されており、必要に応じてゲインやトレブル、ベース、プレゼンスなどが調整できるので、結構な音作りが可能になっています。
ちなみに、この新しいAG Controllerは新世代のAG03 MK2、AG06 MK2で使えるほか、従来のAG03やAG06でも利用可能となっています。ただし、従来のAG DSP Controllerは新しいAG03 MK2やAG06 MK2では使うことができませんでした。
さて、もう一つの目玉製品といえるのが、6月に発売が予定されているAG01です。これはロングサイズのUSBコンデンサマイクなのですが、AG01という名前だけあり、まさにAGのマイク版なのです。
AG01のリア。マイクゲインの切り替えスイッチのほか、STREAMING OUTやMIX MINUSのスイッチがある
どういうことなのか?実はこれ、AG03 MK2のCh.1だけを抜き出し、これとコンデンサマイクを合体させたもの……というと、分かりやすいかもしれません。
ボトムにはUSB Type-Cの端子やヘッドホン端子、AUX端子が用意されている
そう、これ一つで、マイクの入力ゲイン調整やMUTEのオン/オフ、リバーブのオン/オフといった設定ができるほか、再生側の音量調整とヘッドホンレベル調整、さらにはマイクゲインの3段階スイッチ、AG03やAG06にあったストリーミング出力の切り替えスイッチ、つまりマイク入力だけをストリーミングさせるか、ダイレクトモニタをオフにしてストリーミングするか、さらにはループバックを入れて流すのか……といった設定ができるほか、ダイレクトモニタリングのオン/オフに相当するMIX MINUS MICのスイッチが用意されている、と感じです。
MUTEボタンがある点など、基本的なスイッチ類はすべてAG03 MK2、AG06 MK2と同様
とくにミキサー入力が不要ならば、これが最良の選択肢といえるようにも感じました。これならわざわざマイクを選ぶ必要はないし、それなりにチューニングされているから、すぐにプリセットでいい感じに録音できるというのもポイントです。
なお、このAG01もWindowsにおいてはAG03 Mk2やAG06 Mk2と同じASIOドライバで動作するし、AG Controllerのほうも同じものが利用できます。ただし、AG01の場合は入力1chとなっているので、2chに相当する部分は表示されない形になっています。
AG03 MK2とコンデンサマイク、ヘッドホンをセットにしたAG03MK2 LSPK
ちなみに、AG01を導入するほど割り切れないので、AG03を購入して、それに合うコンデンサマイクを探そう……という人も少なくないと思います。そういう人に向けて、YCM01というコンデンサマイク、そしてヘッドホンをセットにしたAG03MK2 LSPK(実売価格:40,700円)という機材も4月20日から発売されます。これならマイクの相性もバッチリだし、専用のヘッドホンも付属するので、一通りが機材が全部揃うので、便利なセットといえそうです。
以上、ヤマハの新AGシリーズについて、簡単にレポートしてみましたが、いかがだったでしょうか?なお以下にAG01、AG03 MK2、AG06 MK2それぞれのブロックダイアグラムを保存しておくので、ぜひ参照してみてください。
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