• ステージ上で5人のプロが共同でゼロから楽曲制作!?月蝕會議×山田高弘の「月蝕會議 音楽クリエイター夜會」が面白かった

5月18日に全員が作詞・作曲・編曲家でありアーティストでもあるバンド形態の音楽ギルド月蝕會議(げっしょくかいぎ)が、「月蝕會議 音楽クリエイター夜會」というイベントを今年2022年5月に7周年を迎えた「下北沢ろくでもない夜」で開催しました。月蝕會議といえば、複数の人が集まって共同で音楽制作するco-write(コーライト)を積極的に行っており、過去には、上坂すみれ「踊れ!きゅーきょく哲学」、ももいろクローバーZ『月色Chainon』/劇場版「美少女戦士セーラームーン Eternal」主題歌、ヒプノシスマイク……などの作品に携わってきました。

「月蝕會議 音楽クリエイター夜會」は、co-writeの枠組をメンバー内から更に拡大し、ゲストに各音楽ジャンルで活躍中のクリエイターを迎え、月蝕會議とゲストクリエイターとでもco-writeすることで音楽を楽しもうというイベント。その第1回目のゲストは、ラブライブ!「Snow halation」でも知られる作曲家の山田高弘さん。2時間の中で、プロの裏側事情など音楽クリエイターが勉強になるような話をしながらも、「月蝕會議 音楽クリエイター夜會」のテーマソングを完成させるという内容がとても面白かったので、どんなイベントだったのか紹介していきましょう。

月蝕會議×山田高弘 トークイベントが開催された


月蝕會議については、「これは音楽業界に入り込むチャンス!? プロの音楽クリエイター集団“月蝕會議”によるオンラインサロンに潜入してみた」、「制限時間90分!?リアルタイム編曲を実施するという前代未聞の音楽プログラム、“月蝕會議の作曲會議”」といった記事でも取り上げてきたので、ご存知の方も多いと思いますが、全員がバリバリの作詞・作曲・編曲家でもあるというユニークなバンド。

改めてメンバーを紹介すると、バンマスで、数多くのアニソン、アイドル曲を作り出すヒットメーカーでエンドウ.@endo_jp)さん。元Hysteric Blueのドラマーで、鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMISTの作詞などをする一方、数多くの舞台音楽も手掛ける楠瀬タクヤ@takuyakusunose)さん、神田沙也加さんとのユニットTRUSTRICKでメジャーデビューしその多くの楽曲の作曲・編曲を担当したBilly@Billy_Gu)さん、数々のアーティストへのサウンドプロデュースしている正体不明の謎過ぎるヒーロー鳥男さん、そして、現在は非常勤メンバーとなったNIRGILISのVo&Keyとして2003年メジャーデビューしTVアニメ「交響詩篇エウレカセブン」のOP主題歌「sakura」を作ったことでも知られる岩田アッチュさん、そして月蝕會議の歌唱担当キリンさん。

プロのクリエイター集団 月蝕會議

そうそうたるメンバーが揃っているクリエイター集団であり、バンドであるのが月蝕會議なわけですが、冒頭でも書いたように普段楽曲提供や音楽制作する際はco-writeと呼ばれる共同作業によって音楽を作っています。co-writeとは、作曲や編曲家、作詞家……など、複数の人が集まって共同で音楽制作すること。co-writeという言葉は知っているという方もいるかもしれませんが、実際どうやって進めていくのか、分からないところも多いと思います。今回のイベントでは、どうやってプロがco-writeしているのかも観ることができたので、さっそくレポートしていきます。

今回のイベントは下北沢ろくでもない夜で行われた

第1回目となる月蝕會議 音楽クリエイター夜會は、下北沢ろくでもない夜というライブハウスで行われました。開催は、会場とYouTubeLiveの同時生放送が行われ、どちらも無料で参加できるイベントだったのも面白いところ。スタートは、とエンドウ.さん、Billyさん、鳥男さん、楠瀬タクヤさんが、お酒を持って「こんばんは!」と登場。まずはメンバー紹介、次に乾杯が行われ、楽しい雰囲気でイベントが進んでいきます。

乾杯からイベントがスタート

そしてゲストとして登場したのは、ラブライブ!の人気曲であるμ’sの「Snow halation」の作曲者 山田高弘(@_yamadaman_)さん。もともと月蝕會議メンバーとも交流のある山田高弘さん。「僕たちは、山ちゃんと呼んでたり、業界では山田マンと呼ばれてます!」とエンドウ.さん。それを受けて「一生懸命作曲を頑張って、生業としています。主に歌モノを作っています!」と山田高弘さんからの自己紹介。以前、飲みの席で月蝕會議に入りたいと言ったこともあったそうで、断れたから「日蝕サミット」を作る!と宣言したというエピソードも楠瀬タクヤさんから飛び出したりもしました。

今回のゲスト、ラブライブ!の人気曲であるμ’sの「Snow halation」の作曲者 山田高弘さん

「普段山ちゃんは、どうやって音楽作っているの?」というエンドウ.さんからの質問に対して「まず依頼があってから、音楽を作るタイプなので、思いついたときに曲を作ることはあまりないです。曲が浮かぶというより、絞り出すタイプで、ピアノやギターを弾きながら歌って曲を作っていくことが多いです」と山田高弘さん。一方、鳥男さんは「僕は海外でco-writeを行ったりするのですが、そのときは依頼なしに曲を作ることが多いですね。何もないところから、今日の天気や食べたものからヒントを得て作っていくということもします」と、それぞれメンバーの曲作りへのスタンス、考え方が聞けたのも面白いところ。

そして、イベントは曲作りパートに移行していきます。どうやって作っていくんだろう…と興味津々でみていたところ、5人で、今回どんな曲を作るか雑談的な話し合いからスタート。明るい、暗い、テンポ感、テーマ……など、まずは方向性を考えていきます。山田高弘さんの提案で、テーマは音楽クリエイター夜會のテーマソング。曲調としては、エンドウ.さんの案でSnow halationみたいな感じの歌モノで、明るくもあり、切ないような曲にしようと決定。月蝕會議では、こういった曲調の曲を作ることはないらしく、そういった意味でもゲストとともco-writeするという化学反応に期待感が高まります。

バンマスで、ギタリストのエンドウ.さん

そんなことを話しているうちに鳥男さんが、さっそくコードを弾いていきます。まずはキーを決定していこうとなり、EとAのキーを鳥男さんが演奏し、YouTubeLiveのコメントからもアンケートをとり、参加者みんなでキーをAに決定しました。キーを決めてた後に「キーの印象ってありますよね」と鳥男さんからの投げかけに対し、「ディレクターさんが半音下げて、という提案があったりすることがありますが、雰囲気変わっちゃうんだよね……」といった、クリエイターならではの悩みあるあるを山田高弘さん。「これって結構ある話で、楽曲のオーダーを受け作った後に演者さんがライブで歌うとなると難しいとか、キャラソンだとこのキャラではこのキーは辛いとかがあったりして、1音下げたりするのですが、最初のイメージから違う形でリリースされるとか、よくある話なんですよ」と、エンドウ.んから、ほかではなかなか聞けないエピソードも。

正体不明な謎のヒーロー、鳥男さんはキーボード、ベースを弾きつつCubaseでどんどん作り上げていく

また「キリンちゃんは、トップの音がFまで出るのですが、一般的にアイドルグループとかだとトップノートをCまでに収めることがほとんどです。最低音も1オクターブ内にしたりする、ドからドまでのオーダーがあったりもよくありますよ。Aメロからサビまでの盛り上がりを1オクターブで作るので、そこは腕の見せ所ですね」とエンドウ.さん。鳥男さんから「男性アイドルグループだとトップはG#ぐらいにしますね」といった、プロならではの会話も飛び交っていました。

「最近のK-POP系では、AメロBメロサビという構成はなくなってきていますけど、日本の歌謡曲やアニソンはこの構成で盛り上げていくという様式美があるので、これにのっとっていきましょう」というエンドウ.さんの提案をもとに鳥男さんがAメロのコードを弾いていき、山田高弘さんがメロディを歌ったり、楠瀬タクヤさんがテンポを182に決めて、ドラムパターンを考えていったり……と、すごい勢いでどんどんオケが完成していきます。Bメロでは、Billyさんがギターでコードを作り、メロディの前に曲構成をまず完成させていきます。この間にも鳥男さんの爆速なDTM操作で、Bメロが形になり、「これは売れるでしょ!細田守さんが見えましたよ!」と山田高弘さんが興奮する場面もありました。

ギタリストのBillyさん

そうしている途中にも、なるほど、そうなんだ!となる話が多数飛び交っており、エンドウ.さんから「co-writeは、こうやって5人で集まったりするのですが、いいと思う!、といっているだけでも参加したことになり、クレジットされるんですよ。あきらかに誰か1人が頑張っているように見えても、そこはいいっこなしの世界です。トランペットだけ入れた人、それ以外のすべてを担った人など、働きに差があってもみんなで作ったという扱いにするのがco-writeの実際のところです」

ほかにも分数コードの話で、「3度の音をルートにした上にコードを乗っけることで、RADWIMPSっぽくなる」「この分数コードを使うとプロの音になる。だから、アレンジの話が来たら、まずは分数コードに差し替えることで、クライアントにプロっぽくなりましたといってもらえる」「アーティストからのアレンジを依頼されたときにすでに分数コードが使われていると、どうしていこうか考える」またコードについて「3度メジャー7th(E7)は青春感が出るコードなんだよねと、槇原敬之さんのプロデューサー木崎賢治さんがいっていた」「ボイシングを工夫して、テンションを乗っけたり、add9を足すとエモくなるよ」など、ノウハウなども披露。

ドラマーの楠瀬タクヤさん

「スノハレの時代には、BメロはPPPHというパンパパンヒューとノリを求められることが多かった」というエンドウ.さんの発言に対し「これアーカイブに残らないんでしょ?」と前置きをしたうえで、山田高弘さんが当時の裏話を暴露したり、その日リアルタイムで観ていた人しか聞けないような面白い話もありました。

続いてサビのコード進行に入っていく中、エンドウ.さんが原型を考え、それを鳥男さんがおしゃれなコードに変化させていくといった様子も観ることでき、「コードは迷ったら、コードが呼ぶ方に進めていく」といった名言も飛びだしたりしながら、サビの進行も決定。時間が迫ってきているということもあり、またしても怒涛の勢いで鳥男さんが、ピアノやドラムを打ち込んでいき、Aメロからサビまでの尺は89秒に。これについて「アニメのオープニング・エンディングは業界フォーマットで90秒に決まっていることがほとんどです。これは慣例らしいのですが、曲の余韻とか前後の余白を含めて、89秒で作るのが当たり前のルールになっています。そして鳥男さんぐらいになると、適当に作っても89秒になってしまうんですよ。いろいろな曲構成はありますが、それを89秒に収めるテクニックはクリエイターならいつか必要になってきますよ」と、エンドウ.さん。山田高弘さんと鳥男さんは、どうやっても89秒に収まってしまう「89病」にかかっているといった、あるある?話も。タイムストレッチをしたり、長い余韻を付けたり、急に曲が終わったり、頭に長い効果音が付いていたり……、明日からアニメのオープニング・エンディングを聴くときに気になっちゃいそうな、クリエイター以外の人でも楽しめるトークも交わされていました。

キリンさんもYouTubeのコメントで参加

そして、Aメロからサビのオケが完成したところで質問コーナーへ突入。会場に来ていた方には、質問の紙が配られており、そこからいくつかの質問に回答。「作詞、作曲、歌唱をする上で、大切にしていることは?」という質問に対して、山田高弘さんは「曲を作って、グッとくるかこないかを大切にしています。グッとくるというのは、自分の心の琴線に触れるかどうか、できたタイミングは自分しかいないので、まずは他人でなく自分でジャッジしています。作家というのは、自分で作った曲はいいと思って生み出しているので、愛があるんですよ。そしてそこには自信があるんですよ。だから、その曲を使わないディレクターさんに会ったら、相性がよくないんだなーと思うようにしています」とのこと。

一方エンドウ.さんは、「僕が作詞、作曲、歌唱をする上で、大切にしていることは、クライアントが納得するかです。この世で一番嫌いなのが、リテイクなので、自分のポリシーを曲げてでもリテイクがないように作ります。クライアントの納得=プロジェクトの納得なので、そこは大事にしています」とのこと。対照的な答えでしたが、プロの考え方はそれぞれなのですね。これからプロを目指す方にとって、第一線で活躍する人の考え方は参考になると思います。

「作詞、作曲、歌唱をする上で、大切にしていることは?」という質問に本気で回答

そうこうして、質問への回答中に鳥男さんがイントロも含めた、1コーラスのバックトラックを完成させました。まずはみんなで、その音源を聴いてみることに。聴き終えた後、会場は大きな拍手に包まれ、「アニメのオープニングの絵が見えた!」と、月蝕會議メンバーと山田高弘さんは大興奮。そしてここから、メロディを作っていきます。メロディを作っている最中に「今のメロは、Bメロまで飛び越えているのですが、グループの楽曲だったらほかのボーカリストを被せたりするとプロっぽくなるので、ぜひ覚えておいてください」と山田高弘さん。YouTubeLiveのコメントでも参加していた、キリンさんにここで電話を掛け、みんなでメロディと歌詞を考え、見事時間内に楽曲が完成。

Cubase上にIK Multimedia AmpliTube、BFD、Spectrasonicsなどを起動して使っていた

そして楽曲が完成した後は、月蝕ショッキングと題し、今後呼びたいゲストにその場で電話。まず楠瀬タクヤさんが電話したのは、BiSやBiSHらWACK所属グループのサウンドプロデューサーでスクランブルズの代表、松隈ケンタ(@kenta_matsukuma)さん。実際にできた楽曲を電話越しに聴いて、「Aメロの6小節目のコードがアマチュアじゃないコード感でした!びっくりしましたね」といった、一聴して各セクションの感想を述べてた辺り、プロは流石だなと思いました。こういった着眼点も参考になりますね。そして、松隈ケンタさんに出演オファーするシーンもあり、次回出演決定!?今からすでに第2回目の開催が楽しみです。

キリンさんに電話するシーンも

エンディングに入り、この日の「月蝕會議 音楽クリエイター夜會」は無事終了。イベントが終わった後、月蝕會議メンバーと山田高弘さんに感想を一言ずつ聞いてみました。


エンドウ.さん
「今回非常に楽しかったです。初めてゲストと一緒にco-writeしたので、とてもエキサイティングでした。今後ゲストによって、やり方は変わると思うので、すごく楽しみですね」
「エンドウ.さんが仕切ってくれたり、鳥男さんがオペレーションしてくれたので、楽な立場で参加させていただきました(笑)。それぞれの持ち味を活かして、時間内に楽曲を作るのは、本当にスポーツみたいでした。今日は楽しかったです。ありがとうございました」

 

Billyさん

 

鳥男さん
「時間が足りなかったですね……。なにも決まってなかった中で、最終的に着地させることができてよかったです」
「co-writeは、これまでも配信したり、オンラインサロン月蝕會議室のチャットでも様子を流していたりしたので、楽しいイベントになるだろうなと思っていました。今回初めてゲストを呼んでのイベントだったので、未知の部分があったのですが、結果吉と出て、双方にいい影響があったのはよかったです。ゲストが入ることはco-writeにとって、めっちゃいいことですね」

 

楠瀬タクヤさん

山田高弘さん
「今日は楽しかったです!これまでco-writeしたことがなかったのですが、時短になるし楽だな、と思いました。ずっとco-writeチームを作ることは計画しているので、今後形にして行けたらいいなと改めて感じました」

 

【関連情報】
月蝕會議 official website

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