日本のプラグインメーカー、DOTEC-AUDIO(ドーテック・オーディオ)が、新製品DeeTrimXをリリースしました。これは人気製品だったDeeTrimの後継となるプラグインで、従来より高音質になるとともに音楽性も向上。ターゲット音量を中心に抑揚を残して自動調整することが可能となっています。また、メインフェーダー以外にもSENSE、AMOUNT、SIDECHAINが追加され、歌はもちろんのこと、楽器に使用することもできます。
DeeTrimXを使えば、音量にバラつきのある歌を整えたり、歌を目立たせるオートメーションを自動で行うことができます。そうした処理、スキルを必要としますが、それを自動で補ってくれるし、これまで自分でやっていたという人も時間の掛かかるこの作業を簡単にできるだけでなく、後で音量を変えるようなときでもオートメーションを描き直すことなく処理できる意味でも大きな力となってくれます。そのDeeTrimXが現在イントロセールを実施中。しかもDeeTrimXに限らず、DeeMaxやDeeMMax、DeeCompressorをはじめとするDOTEC-AUDIOの全製品がセールとなっています。そんな魔法のツール、DeeTrimXについて紹介していきましょう。
DeeTrimを抜本的に開発しなおした新ソフト、DeeTrimX
まずは、DeeTrimXがどんなソフトで、どんなことをできるのかを紹介したビデオがあるので、こちらをご覧になってみてください。
これを見るとわかるとおり、音量にばらつきのあるボーカルをDeeTrimXを使うことでキレイに整えることができているのが分かると思います。ただし、コンプをかけて整えているのではなく、ボリュームを自動調整しながら整えているというのが、DeeTrimXの最大の特徴となっています。
同様のコンセプトのプラグインとして、以前DeeTrimというものがありました。このDeeTrimがリリースされた際に記事にしたのが約7年前。それから、何度もバージョンアップを続けてきたDeeTrimですが、今回DeeTrimXへと進化した理由について、開発者のフランク重虎さんは、
「ありがたいことにDeeTrimを利用してくれる方が多く、その分フィードバックも多かったんですよ。そのフィードバックを受けて、開発したのがDeeTrimXです。DeeTrimは、後のバージョンアップでVOCALボタンを追加しましたが、基本的には1つフェーダーで操作を行える、簡単操作のコンセプトで展開していました。しかし、クリエイターの使い方は千差万別なため、調整が意図したようにできない、意図しない挙動をすることがあるなど、DeeTrimの範囲外をフォローしきれなかったのです。なので、これまでオートだった部分もバランスよくセミオート化することで、問題点を解決しました」とのこと。
オンライン取材の形で話をしてくれたDOTEC-AUDIO フランク重虎さん
DeeTrimをボーカル以外、たとえばドラムなどに使っている人もいたらしく、その場合だとDeeTrimの掛りが強すぎたそう。なので、DeeTrimXでは自動調整の強度の設定であるAMOUNTを追加したとのことです。また、DeeTrimと同じような使い方をしても、DeeTrimXの方が高音質で、音楽性が上がっており、この理由としては、Vidar audioでの開発が起因しているそう。
以前「DOTECのフランク重虎さんが新ブランド、Vidar audioを旗揚げ!第1弾製品としてダンスミュージックに特化したマキシマイザ、BARRIERをリリース」という記事で、Vidar audioについて紹介しましたが、これはフランク重虎さんが立ち上げたプラグインブランド。DOTEC-AUDIOが初心者からプロまで幅広いユーザーを対象にしており、簡単操作が特徴である一方、Vidar audioは中上級者向けの製品が並んでいます。Vidar audioは、フランク重虎さんがすべて開発しているので、小回りの利く分、さまざまなチャレンジを行えるそうで、そこでの実験の数々が、DeeTrimXにも活かされ、品質が上がっているというのです。
声質、雰囲気を変えることなくボーカルの音量のばらつきを整える
さて、実際にDeeTrimXがどんな場面で活躍するのか、教えていただいたので紹介していきましょう。まずは、オーソドックスな使い方として、歌の音量にばらつきがある場合です。
「ある程度整った録音であればコンプレッサのみでも音量を整えられますが、音量差が大きい場合はスレッショルドを小さい箇所に合わせて下げるので、大きい箇所だと深く圧縮がかかります。この場合、大きい箇所のコンプ感だけ強調されてしまうので、ある程度エディットして整えたり、コンプを浅くかけてオートメーションで補うのが普通です。ただし、エディットで音量を揃える場合、それなりに時間が掛かってしまいます。そこでDeeTrimXなどのオートレベラーを使うと必要箇所のみゲインがかかるため圧縮感が少なく整えられます、また味付けのためにビンテージタイプのコンプレッサと併用した場合、音量が整っているため一定の圧縮感で味付けができるのです」とフランク重虎さん。
DeeTrimXで音量を整え、ビンテージタイプのコンプで味付けしていく
みなさんは、音量差のあるボーカルを処理するときどういった作業を行なっていますか?基本は、コンプを掛けて音量を揃えるか、波形をエディットしてある程度音量を揃えたりしていると思います。しかしこれだと、フランク重虎さんがいうように、コンプが深く掛かり過ぎてしまったり、時間が掛かってしまうので、そんなときDeeTrimXが役に立つのです。それこそ、普段からミックスを行っていて、コンプに慣れている人やエディットのスキルが高い人にとっては時間短縮になりますし、あまりミックスが得意でない人にとっては簡単にボーカルの質を上げることのできてしまう魔法のツールですよね。
ボーカルをより目立たせるためのDeeTrimX活用法
次にボーカルを目立たせる使い方です。さきほどのは、ボーカルにEQやコンプを掛ける前の下処理的な使い方でしたが、次はEQやコンプなどを掛けた後、オケに対してボーカルを引き立てるときの使い方です。
「通常はコンプやオートレベラーで音量を一定化した後、DAWのフェーダーでサビ向けのオートメーションにて底上げしますが、SIDECHAIN機能を使えば細かく自動的にオケに追従して対応できます。たとえばサビが変更になった時も、音に追従してオートメーションは書き直さずに対応できます。サビでオケの音量が上がる部分など、ターゲット音量以上が必要となる場合に自動で音量を追加でき、最も静かな展開でターゲット音量を調整すれば、その後の盛り上がりでも自動的に合わせます」とのこと。
歌い始めをオートメーションで上げたり、Aメロとサビではボーカルの音量を変えたりすることで、ボーカルを目立たせるのが一般的ですが、DeeTrimXを使えば自動的にオケに合わせ、ボーカルを引き立てることができるのです。とにかく、自分でボーカルを録音して、ミックスまで行う人にとっては、必需品といっても過言でないかもしれません。
ちなみにOBSを使った配信でDeeTrimXを使うこともできるのですが、トーク中心であれば「配信音声を最適化する画期的なツール。Dotec-Audioが生み出したOBS用魔法のプラグイン、DeeTrimCast」で紹介したDeeTrimCastがおすすめとのことでした。一方、歌配信であればDeeTrimXで音量を整えるのがいいそう。
なお、DeeTrimCastと同様にDeeTrimXもゼロレイテンシで設計されています。ちなみにDeeTrimXは、VST2/3、AU、AAX、Appleシリコンにもネイティブ対応なので、ほぼすべての環境で使用可能です。
5月31日までDOTEC-AUDIO全製品のセール実施中
DOTEC-AUDIOでエンジン以外のすべての開発を担当しているのが、飯島進仁さん。その飯島さんによると、VST2を今後もサポートするのかを伺ってみました。
「確かにプラグインメーカー各社ともVST3へ移行して、VST2を終了するところが増えています。実際Steinberg自体がVST2を終了していることを考えると、それが自然な流れだとは思います。ただ、OBSなどVST2を必要としているユーザーが一定数いるのも事実です。私たちとしては、開発ツールでVST2がビルドできる限りは続けていくつもりです。今のところやめる予定はないですね」とのこと。とくにOBSユーザーにとっては安心できるできる話ですね。ただし、このタイミングで32bit版の提供については全製品終了だそうです。
同じくオンラインでインタビューしたDOTEC-AUDIO 飯島進仁さん
ちなみに今回のUIデザインは、DeeSubBassやDeePopMaxの福田興業さんが担当しているとのこと。価格は、税別5,000円。冒頭でもお伝えしたように現在イントロセール、DOTEC-AUDIOの全製品セールも実施中です。具体的な価格は以下の通り。
なおDeeTrimXの発売にともない、DeeMax、DeeFat、DeeTrim、DeeEQがセットになったCOMBO PACKは、DeeTrimがDeeTrimXに置き換わりますが、価格は据え置き。もちろんDeeTrimを持っている人はこれからも使い続けることはできますが、アップデートや販売は終了するとのことです。
DeeMax、DeeFat、DeeTrim、DeeEQをセットにしたスペシャル・コンボセット
ちなみに今回セール対象でもあるDeeMMaxのアップデートも行われ、アルゴリズムが進化、音質がかなり向上しているそう。ぜひデモや製品のバージョンを上げて確かめてみてね、とのことでした。このDeeMMaxもかなりすごい製品なので、ぜひ「DOTEC-AUDIOが6年の試行錯誤の末にたどり着いた、理想のマキシマイザをDeeMMaxのアップデートで実現」という記事もチェックしてみてください。
【関連情報】
DeeTrimX製品情報
DOTEC-AUDIOブログ「DeeTips」
Vidar audio販売サイト