新設計ドライバー搭載、DSP処理性能2倍となった、自動音場補正システム内蔵のモニタースピーカー iLoud MTM MKII

爆発的な人気を誇る、IK MultimediaのモニタースピーカーiLoud MTMの後継機種、iLoud MTM MKIIが発表されました。内蔵DSPの処理性能が2倍になったことにより、iLoud MTM最大のポイントであった、自動音場補正システムはより強化され、さらにX-MONITORソフトウェアにも対応。X-MONITORはフラグシップモデルiLoud Precisionシリーズが誕生した際に開発されたソフトで、これによりiLoud MTM MKIIの音場補正をより精密に行うことが可能となっています。

また、スピーカー自体の性能もブラッシュアップされており、新しいウーファーとツイーターを採用したことにより、周波数レンジや再生能力が向上。最大SPLも初代の110.5 dBから112.5 dBへと拡張されています。さらに垂直方向への音の広がりが制御され、床やデスク、天井の反射を低減。一方、水平方向への音の広がりを拡大することで、より広範囲でのスウィートスポットを実現しています。なお価格は、iLoud MTM MKII 2本とARC MEMS測定用マイクロフォン1本のセットで、希望小売価格 148,500円(税込)。プロの作曲家、エンジニア絶賛だったiLoud MTMの次世代機iLoud MTM MKIIが、どのように進化したのか紹介していきましょう。

iLoud MTM MKIIが遂に発表された

コンパクトな筐体はそのまま、ドライバーが進化し、DSP処理能力も2倍になった

新登場したiLoud MTM MKIIは、見た目は大きく変わっておらず、コンパクトなサイズ感、デザインコンセプトはそのままに、中身がかなり進化しています。そもそもiLoud MTMは、iLoud Micro Monitorの上位モデルとして開発されたモニタースピーカーで、1インチのツイーターを2基の3.5インチウーファーで挟み込んだ特徴的なデザインをしています。そんなミッドウーファー、ツイーター、ミッドウーファーという上下左右対称のMTM設計。さらには、ウーファー/ツイーター間のタイムアライメントによって、近距離でモニターしても低音域、高音域が同時に耳に届くため、何時間でも疲れないリスニングを可能としています。

仮想同軸とも呼ばれるMTM設計により、ニアフィールドでもウーファーとツイーターの再生音が分離せず、一点から鳴っているように聴こえる体験ができるのは、iLoud MTMならでは。そんなiLoud MTMの出音、サイズ感、簡単に音場補正できることから、大人気を博したわけですが、それが発売から5年経った今、より強力なモニタースピーカーへと進化したのです。

仮想同軸とも呼ばれるMTM設計により、一点から鳴っているように聴こえる

まず、スピーカーの要ともいえるツイーターとウーファーは新しく設計され、周波数特性は48Hz~28kHz(+/-2dB)に拡張。また、このコンパクトサイズからは想像できないを36 Hzまでの低音再現能力を有しています。さらに最大SPLも初代の110.5 dBから112.5 dBへと拡張。2倍のサイズ感、2倍の価格のスピーカーに匹敵するローエンドとリニアな位相特性を備えており、クリアで透明なサウンド、驚異的な音量と超フラットなレスポンスを実現しています。高精細度で焦点の合った音像を実現するために、垂直方向への音の広がりが制御し、床やデスク、天井の反射を低減。水平方向への音の広がりを拡大することで、より広範囲でのスウィートスポットを作り上げています。

さらにスピーカーとしての基本性能だけでなく、DSP処理性能も2倍へと進化しています。最新のアルゴリズムにアップデートされたARC自動音場補正機能を内蔵し、初代よりもより正確なルーム補正を実現。また、フラグシップモデルiLoud Precisionシリーズに採用されていた、X-MONITORを使えるようになり、より精密な音場補正を行えるようになっています。X-MONITORがiLoud MTM MKIIで採用されたことにより、ユーザーは、本体背面パネルCAL/PRESETボタンによるPCを必要としない迅速なキャリブレーションと、X-MONITORソフトウェアを使った精密なキャリブレーションを行えるようになったのです。

測定用のマイク、ARCマイク

柔軟な設置方法。イマーシブ環境にも対応

そんな進化したiLoud MTM MKIIですが、柔軟な設置方法は初代譲り。そもそも大きさは同じ機能や出力を持つスピーカーの30%~50%小さく、重量は2.5kg。付属のスタンドは、設置面からのアイソレーターとして機能するだけでなく、0~20度の角度をつけることが可能となっているので、スピーカースタンドの上でもデスクの上でも、自由に配置できます。また、横置き用のゴム製設置台が用意されているため、作業スペースに合わせたベストなセッティングを行えます。また底面にはマイクスタンド設置用のネジ穴もあり、FOHで使用するコンソールに合わせて設置したり、ブームスタンドに取り付けてオーバーヘッドスピーカーとして設置することも可能。専用ブラケット(iLoud MTM Wall / Ceiling Mounting Bracket 希望小売価格 8,800円税込)も別売りされているので、スタジオの天吊り、壁掛け用として使うこともできます。

横置きでも、縦置きでも、マイクスタンドでも、自由に設置できる

価格はARCマイク付き、ペアで148,500円(税込)

価格は、iLoud MTM MKII 1本のiLoud MTM MKII – Singleで、希望小売価格74,800円(税込)。これは、ARC MEMS測定用マイクロフォンは付属していません。なので、多くの方はiLoud MTM MKII 2本と、ARC MEMS測定用マイクロフォン1本のセットiLoud MTM MKII – Pairの希望小売価格148,500円(税込)を選ぶ形となりますね。また、iLoud MTM MKIIがいろいろな形で設置できることから気付いていた方もいるかもしれませんが、iLoud MTM MKIIはイマーシブオーディオ制作環境にもおすすめなのです。キャリブレーションもDolbyの規格に準拠したマルチモニターセットアップに対応しており、iLoud MTM MKII 11本と、ARC MEMS 測定用マイクロフォン1本のセットiLoud MTM MKII – Immersive Bundleも希望小売価格 748,000円(税込)で展開されています。またキャリングケースiLoud MTM Travel Bagも8,800円(税込)で発売中です。

イマーシブオーディオ制作環境にも対応

キャリブレーション機能を試してみた。やはり最高だった

さてここからは、実際にキャリブレーションを試してみたので、その様子を紹介してみましょう。まずは、X-MONITORを使わず、簡単かつ迅速にキャリブレーションする方法から。この方法では左右のスピーカーをリスニングポイントの1点で測定するようになっており、外のスタジオにiLoud MTM MKIIを持ち込んだり、収録や配信現場など、時間がタイトな場合におすすめの方法となっています。

まずはマイクスタンドなどを使って自分が音を聴く位置=リスニングポイントに付属ARCマイクを設置。そして付属ケーブルを使って片方のスピーカーのARC MIC INと接続します。

マイクケーブルをARC MIC INに接続する

するとマイクにあるLEDが緑色に点灯。その後、接続したスピーカーのリアにあるCAL/PRESETというボタンを長押しします。すると、スピーカーフロントにあるLEDが白く点灯している状態から白色の点滅状態に変化するので、再度CAL/PRESETボタンを押します。

リアパネルのCAL/PRESETボタンを押してキャリブレーションを行う

その後やや大きな音で「ピュイーン」という音が4回ほど鳴ります。これによって音の測定を行っているのですが、うまく行くと一旦LEDは緑になり、通常の白の点灯へ。これでキャリブレーション完了。もう片方を同じ手順で行えばOK。実際にキャリブレーションする前は、私の環境では150Hz辺りがかなり飛び出して聴こえていたのですが、そこが整えられ、物凄くクリアないい音になりました。低音が濁っていたり、高域のキレが悪かったり……、設置している部屋の環境によって、その感想は変わってきそうですが、これだけ手軽にキャリブレーションできるのは最高です。PCを立ち上げなくてもスピーカーとマイクだけで完結するのも嬉しいところですね。

ちなみにリアパネルは、初代から大きくは変わっておらず、低域レンジ調整、LF(低音域)/ HF(高音域)調整、入力感度、キャリブレーションセレクターが搭載されています。なお、追加部分としてはマルチチャンネル環境でのサブウーファーとのシステム構築のために80Hzでの低域カットオフに対応をしました。キャリブレーションによるフラットな特性だと、どうも低域が物足りなく感じるとか、高域をもっと出したいという場合、LF、HFというスイッチを使って簡単に調整することも可能です。ちなみにiLoud MTM MKIIの入力端子は初代同様XLR/標準対応のコンボジャックとなっています。

リアパネルには80Hzでの低域カットオフが追加された

X-MONITORを使ったキャリブレーションは、より精度が高かった

続いては、X-MONITORを使ったキャリブレーションを紹介していきましょう。こちらは、PC上でX-MONITORを立ち上げ、4点での測定をすることにより、先ほどのキャリブレーションよりも精度良く補正を行うことができます。また定番スピーカーのエミュレーションも搭載されているので、異なるリスニング環境でミックスを確認することも可能となっています。またカスタムEQも搭載しているので、リアパネルでLF、HFスイッチを操作するよりも、より詳細な調整を行うこともできます。こちらの方法は4点での測定となるので、じっくり時間のあるスタジオ常備システムに使うのがおすすめですね。

さて、X-MONITORを使う場合は、まずリアのUSB端子からPCと接続を行います。

USB端子からPCと接続

続いてX-MONITORを立ち上げると、iLoud MTM MKIIを自動で認識します。ちなみに先ほどキャリブレーションした結果が画面に表示されてました。緑がキャリブレーション前、オレンジがキャリブレーション後、飛び出すぎていた150Hz辺りが、きちんと抑えられていましたね。

緑がキャリブレーション前、オレンジがキャリブレーション後

そして、先ほどと同様にiLoud MTM MKIIに直接ARCマイクを接続して、Calibratinボタンをクリックします。

先ほどと同様にARCマイクをiLoud MTM MKIIに接続

すると、キャリブレーションの画面が表示されるので、説明に従って進めていきます。

画面に従って進めていく

前述の通りX-MONITORでは4つのポイントで測定していきます。

X-MONITORでは4つのポイントで測定を行う

両スピーカーのキャリブレーションを終え、実際に聴いてみると、たしかに1ポイントでキャリブレーションしたときよりも高い精度で、フラットなサウンドを再生してくれました。ちなみにこの4点での測定ですが、マイクの位置を固定したまま左右4回ずつ測定したほうが音がいいという意見も、iLoud MTM MKIIを試したプロのエンジニアからあったそう。4ポイント測定できるからといって、必ずしも4箇所で測定しなければいけない、というわけではないみたいです。いずれにせよ、1ポイントでキャリブレーションするよりも、4ポイントの方が音がいいのは確かですね。

X-MONITORを使ってキャリブレーションした結果

さらにX-MONITORでは、スタジオ定番モニターのエミュレート、スマホやテレビのスピーカーからの出音を再現することも可能です。キャリブレーション後の音にそれぞれのエミュレートが反映されるようになっています。数もそこそこ豊富に揃っていますよ。適当に選んでみると、ビジュアル的にも分かるようになっていますね。

さまざまなモニタリング環境を再現できる

以上、iLoud MTM MKIIについて紹介しました。持ち運んだ先で、改めてキャリブレーションを行うと自分の部屋で聴いたのと同じ音にすることができる、しかもそれが手軽、というのはなかなか魅力的ですよね。スピーカーをちゃんと鳴らすには、本来部屋の環境づくりが重要ですが、やはり個人だと限界があります。そんなとき、キャリブレーション機能があれば、いい音を鳴らすことができるのです。一度体験してしまったら、もう元には戻れない、iLoud MTM MKIIをぜひ試してみてはいかがでしょうか?

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