MIDIの父、梯郁太郎さんがCOME BACK!! 電子楽器メーカー、ATV始動

梯(かけはし)郁太郎さんをご存じですか?ローランドの創業者であり、元社長、元会長。数多くの電子楽器、シンセサイザを生み出してきた天才エンジニアであり、1983年にMIDIを生み出した張本人。そのMIDIの功績が称えられ、2012年には「テクニカル・グラミー・アワード」を受賞されており、名実ともに世界の電子楽器業界における第一人者ともいえる人物です。

その梯さん、昨年はローランドの現経営陣と経営方針の違いが明確になってしまい、袂を分かつ、という事態になったのです。そのため、多くの人たちが心配していたのですが、本日11月6日、大きな動きがありました。そう、梯さんが新たなメーカーである、ATV株式会社を設立し、電子楽器や映像機器を出していくことが明らかになったのです。東京・水道橋にあるホテルで新製品発表会が開催され、ここで電子ドラム音源ビデオコンバータがお披露目されたので、その内容について、まずは速報としてレポートしてみましょう。

新楽器メーカー、ATV株式会社の設立を発表した、梯郁太郎さん


ATVという会社、実はいきなり設立されたというわけではないんです。2013年に梯さんが出版した「サンプルのない時代に」という書籍の出版のために設立した「アトリエビジョン株式会社」が前身となっており、そこから若い技術者とともに独自に製品開発を進めてきたのです。その開発してきた最初の製品がほぼ完成したことから、社名をアトリエビジョンからATVに変更して、新たなスタートを切ったというわけなのです。


新会社、ATVのロゴも発表になった

ATVはファブレス企業として工場を持たないながらも、すべてMADE IN JAPANでの製品展開をしていくとのこと。梯さん自身は、ATVの会長で、社長は元ローランドのエンジニアである室井誠さん。ほかも主に元ローランドの方が中心となってなりたっているようです。


発表されたATVの役員

私も、以前、アトリエビジョンで梯さんにお話しを伺ったこともありましたが、現在85歳にして、バリバリの現役のエンジニア。電子楽器、技術のことになると、本当に目を輝かせてお話しされるのが、印象的な方です。その梯さんが、このお歳で、新たなビジネスをスタートさせるというのは、頭が下がる思いです。


以前、アトリエビジョン時代にお話しを伺ったときの梯郁太郎さん 

ATVはファブレス企業として、工場を持たない企業としてスタートするけれど、すべてMADE IN JAPANでのモノ作りをしていくとのこと。また、最近は、あまり公の場に登場しない梯さん。多くの人前に立つのは、グラミー賞受賞以来とのことですが、ここで発表した、第一弾の新製品が
   aD5

というエレクトロニックドラム音源だったのです。


ATVの第一弾製品となる電子ドラム音源、aD5

なんでシンセではなく、電子ドラムなの??」とも思ったのですが、実は、電子ドラムというか、リズムマシンは梯さんにとって、ターニングポイントとなる機器のようです。ご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、梯さんは1960年にエース電子工業という電子楽器メーカーを設立しており、この会社で最初に出したのがリズムマシンでした。

さらに1972年に設立したローランドでも最初に出したのがリズムマシンだったとのことで、今回が三度目の正直ということになるのでしょうか……。



aD5の中枢部には独自の高品位なサウンドエンジンが搭載されている

aD5はATV独自の音源技術により、これまでの電子ドラムにないナチュラルで高音質なサウンドを実現している」とのこと。 このaD5の中枢にあるサウンドエンジンにより、ハイレゾのステレオサウンドを低レイテンシーで発音できるようしてあり、従来のドラム音源とは明らかに次元が異なるとのこと。

V-DrumsやDTXなど最適なものを組み合わせて使うことができる

ユニークなのは、このaD5へのトリガー入力は、ローランドのV-DrumsやヤマハのDTXなど、各社のトリガーパッドに対応しており、メーカーにこだわらずに好きなパッドを自由に使えるという点。つまり手持ちの電子ドラムの音源部をグレードアップしたり、aD5をコアに各社のパッドを自由に組み合わせた自分だけの オリジナル電子ドラムセットを組むことができるという点です。


もちろんPCと連携して使うことも可能 

もちろんPCとUSB接続して、DAWからコントロールしたり、MIDIで外部シーケンサからコントロールするなど、さまざまな使い方もできるようです。

リアパネルのD-SUB端子からドラムパッドのトリガーへ接続する
なお、DTMステーションというか、私の守備範囲外なので、詳しくはATVのサイトなどをご覧いただきたいのですが、今回
   AV-5SAV-3シリーズ

というビデオコンバータや
A-PRO4
というビデオミキサーなども新製品として発お表しています。電子楽器と映像機器という2つを柱にしていくという点でも、ローランドと同様のようですが、今後、楽器業界の中で、ATVがどんなポジションを築いていくのか、注目していきたいところです。


映像系の機材も発表された

aD5の価格や発売時期は、まだ未定とのことですが、オープンプライスということでまだ発表されませんでしたが、「価格やスペックでは競争をしない」と話をしていたのでやや高級路線なのかもしれません。また、来年初頭の発売を目指すとのこと。製品発売が近づいてきたころにでも、より詳しい情報を記事にできればと考えています。

なお、先日の「DTMユーザー、ミュージシャン必見!『Think MIDI 2015』が12月に開催」という記事でも書いた通り、梯さんは12月12日のThink MIDI 2015でも冨田勲さんや服部克久さん、千住明さん、そして松武秀樹さんとともにパネルディスカッションを行う予定ですので、梯さんを一目見たいという方は、ぜひそちらもチェックですよ!


Think MIDI 2015のパネルディスカッションにも梯さんが登壇する予定 

またATVは11月18日~20日に幕張メッセで開催されるInterBEEにも出展するようですので、そこで実機を見ることもできそうです。

【関連情報】
ATV株式会社

Commentsこの記事についたコメント

5件のコメント
  • 事実は正確に

    MIDIの共同開発者であり、アカデミー賞共同受賞者でもあるデイブ・スミス氏もお忘れなく。

    2015年11月6日 4:24 PM
  • 魅力は明確に

    格好いいデザインであり、これだけでも気になるが音声もお忘れなく。

    2015年11月6日 9:21 PM
  • ねむねむ☆

    85歳で起業とは凄い。
    ローランドとはあんなことになってしまったけれど、
    それでもやりたいことがあるのでしょうね。
    頭が下がります。

    2015年11月6日 9:52 PM
  • アクアパッツァ

    85歳でも目を輝かせて話せる事があるっていうのは素敵ですね。
    そういう人の想いを受けて、自分たちも音楽を目を輝かせて楽しみたいですよね。

    2015年11月7日 12:34 AM
  • 藤本健

    魅力は明確に さん
    そうですね。ぜひ、そのサウンドも掲載したかったんですが、
    梯さんの意向もあり、そこでの録音が禁止されました。
    ハイレゾで、すごいダイナミックスを持った音を、いい加減に録音して、公開されてしまうと、本来の価値が見えなくなってしまう…というお考えのようです。ぜひ、実機が店頭に並んでから、自分の耳で聴いてみてください。
    実際に見た感想としては、とにかくリアルな生ドラムな音で、驚きました。

    2015年11月7日 10:10 AM

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