5次元で操作する、まったく新たな楽器、ROLI Seaboard RISEはDTMに何をもたらすのか

すでに写真やビデオで見た、という方も多いと思いますが、イギリスのROLI社からとっても不思議な形状のキーボード、Seaboard RISEが発表され、国内でもエムアイセブンジャパンを通じて発売が開始されました。このSeaboard RISEは25鍵タイプと49鍵タイプの2種類があるのですが、見ても分かる通り、明らかに普通の鍵盤とは違うんです。

 

ペッタンこな形状であり、1つ1つのキーが繋がっているから、もはや鍵盤というかキーボードとは違うものなんですよね。実際ROLIでは、KeyboardならぬKeywaveと呼んでいるのですが、その素材はフニョフニョした触感で、ここをタッチしたり押し込んだりする形で演奏するこれまでに存在していなかった、まったく新しい楽器ともいえるデバイスなんです。私も、今回初めて触ってかなり驚いたので、これがどんなものなのか紹介していきたいと思います。


不思議な感触のキーボードならぬキーウェーブ、ROLI Seaboard RISEを触ってみた

まずは、ROLIのSeaboard RISEについてまったくご存知ない方もいると思うので、以下の紹介ビデオをちょっとご覧になってみてください。

https://youtu.be/wKRzBunvFRQ

どうですか?なんか妙というか、不思議な楽器であることはすぐに分かりますよね。このビデオからも、キータッチの感触が想像できるとは思いますが…、プニョ~っという感触のウレタンのボールとソックリですよ。


指を押し込んで演奏することができる不思議な楽器 

 

このキーに触れるだけでも音が出るし、指を押し込むと変化が出るし、奥・前へと指をスライドさせても音が変わるし、横に動かしてもピッチが変わるなど、なんとも経験したことがない不思議感覚の楽器なんです。


触った感触はウレタンボールのプニョ~という感じとソックリ!

このSeaboard RISEというハードウェア単体を捉えたら、ここから直接音が出るわけではないので、これを楽器と表現するのは間違いかもしれません。そう、これはUSB接続のデバイスなので、USB-MIDIキーボードの一種といっていいでしょう。ペダル接続も可能となっており、ある種USB-MIDIキーボードの代替的に使うことも可能なのですが、これをUSB-MIDIキーボードと呼んでしまうと、あまりにも語弊がありそうなんです。その理由を見ていきましょう。


サイドにはPCと接続するためのUSB端子およびペダルとの接続端子、ACアダプタ端子がある

普通のMIDIキーボードは鍵盤が1つ1つスイッチとして分かれているのは当たり前として、ベロシティーのセンサーがあって、どれだけ速く(強く)キーを押すかを検出します。またキーを押した後にグリグリ押し込むことで、アフタータッチを検出することが可能なキーボードも存在しています。

 

それに対し、ROLI Seaboard RISEには5つのセンサーを備えているんです。具体的には
・Strike(Keywaveに触れる指の強さと速さ)
・Press(Strike後にKeywaveを押し込む持続的圧力)
・Glide(Keywave上またはリボンに沿った横方向の動き)
・Slide(Keywave上を上下する縦方向の動き)
・Lift(Keywaveから指を離す速さ)
のそれぞれ。

 

これら5つのセンサーを駆使しながら演奏することで、楽器として表現力をつけていくというのですから、まさにこれまでのキーボードとは別の楽器というのが理解いただけるのではないでしょうか?


ROLI Seaboard RISEと一体化するPC上のシンセサイザ・アプリ、Equator

 

とはいえ、ROLI Seaboard RISE自体はコントローラであって、これ自体で音を出すことができません。この5つのセンサーを駆使して鳴らすことのできる音源はどうなっているのでしょうか?


Equator起動時の初期状態ではサイン波が鳴るだけだが5つのセンサーは反応する 

それがROLI Seaboard RISEと一緒にリリースされたシンセサイザ音源、Equatorです。WindowsおよびMac上で動くこのソフトは、USBでROLI Seaboard RISEと接続するだけで、すぐに一体化し、まさに専用楽器へと変身してくれます。初期起動時は単に「ポー」とサイン波が鳴るだけなのですが、それでもKeywaveを強く押してみたり、奥や手前に指を滑らせたり、横方向に指を動かすことで、音に変化が出るので面白いですよ。

上のビデオのように、実際5つのセンサーがどのように反応しているか、リアルタイムに見えるのもEquatorの面白いところです。そしてこの5つのセンサーの動きを音源のどのパラメータに割り振るかを設定できるのが、この音源の醍醐味。


Equatorには数多くのプリセット音色も用意されているが、自分で音色を作りセンサーを割り当てるのも楽しい

Equatorには予め数多くのプリセットが用意されており、それぞれのプリセットで5つのセンサーが割り当てられているから、まずはこれらを使ってみると、演奏手法なども見えてくると思いますよ。またEquator自体、かなり高性能なシンセサイザであり、サンプリング音源×2、オシレーター×3、FM音源、ノイズジェネレーターと数々の音源=オシレーターを装備するとともにフィルター×2、エンベロープジェネレーター×2、LFO×2……とさまざまなモジュールを備えているため、かなり複雑な音作りが可能なんですよね。


3つのタッチフェーダーで、ピッチコントロール、モジュレーションコントロールができるほかKeywwaveの反応性を調整することもできる

また、ユニークなのは5つのセンサーとは別に、ROLI Seaboard RISEの左側には3つのタッチフェーダーおよび、XYパッドが用意されていること。このタッチフェーダーではKeywaveの反応性をコントロールできるほか、ピッチ、モジュレーションなどMIDI CCをアサインできるようになっています。もちろん、これらの動きもEquatorが捉えてくれますよ。

X-Yパッドも搭載されているので、これでEquatorの2つのパラメータをコントロールすることも可能 

 

ところでEquatorはスタンドアロンでも動作する音源ですが、やはりDTMユーザーならDAWと組み合わせて使いたい、という人も多いはず。もちろんEquatorはプラグインとしても動作するようになっており、WindowsならVSTプラグイン(64bit/32bit)、MacならVSTプラグインおよびAudioUnitsにも対応していますから、各種DAWで使うことができますよ。

 

もちろん、ROLI Seaboard RISEはEquator専用のデバイスというわけではありません。たとえばNative InstrumentsのKOMPLETEに含まれているような、ごく一般的なプラグイン音源をコントロールし、演奏することもできますよ。実際に、そうした音源をコントロールしているビデオがあるので、ご覧になってみてください。

https://youtu.be/8imthlzJk2s

 

実は、ROLI Seaboard RISEには、Equatorとは別にROLI Dashboardというユーティリティが用意されており、これを利用することで5つのセンサーが感知した結果を、MIDIのどのコントロールチェンジに割り振るかや、センシングした結果のカーブの動きなどを設定できるようになっているのです。


各センサーが捉えた結果をどのパラメータに割り振るかを自由に設定できるユーティリティ、ROLI Dashboard

これを活用することで、Equator以外の音源でもROLI Seaboard RISEの機能を存分に生かしたプレイができるようになるんですね。実際に、Dashboardを起動した状態で、ROLI Seaboard RISEを触ってみると、以下のようにリアルタイムに反応するのが確認できます。

さらに、ROLI Seaboard RISEにはもうひとつ強力な機能が搭載されています。それはこれがUSB-MIDIデバイスとしてだけでなく、Bluetoothでの接続が可能なMIDIデバイスとしても機能する、ということです。MIDI over Bluetooth LE(略称BLE-MIDI)については、これまでDTMステーションでも何度か取り上げてきましたが、ROLI Seaboard RISEもこれに対応しているので、iPhoneやiPadとワイヤレス接続できるほか、Mac OS Xともワイヤレス接続ができるようになっているんです。


iPad/iPhoneで使えるフリーのアプリ、NOISE 

 

一般的な鍵盤型のUSB-MIDIキーボードと違い、Keywaveに触れただけでノートオン信号を出すからなのか、反応速度が非常に速く、レイテンシーをほとんど感じないのもすごいところですね。


この丸いボタンを押してBluetoothのペアリングを行う 

 

このBLE-MIDI機能を使って、iOSの各種音源を動かすのもいいのですが、ROLI専用に作られたNOISEという無料アプリもあるので、これを使えば、5つのセンサーをフルに活用したプレイをすぐに楽しむことができますよ。

 

実は、このNOISEは、ROLI Seaboard RISEがなくても使えてしまうというのも面白いところ。NOISE単独で使う場合、センサーとしては2つだけですが、ROLI Seaboard RISE風な画面になっているので、持っていない人でも、ROLI Seaboard RISEを使ったプレイの雰囲気を体験できるのもポイントです。


NOISEとBLE-MIDI接続完了

BLE-MIDIを使ってROLI Seaboard RISEと接続するか、Lightining-USBカメラアダプタ経由で接続すると、5つのセンサーすべてが有効になって演奏することができるようになっているんですね。ちなみに、ROLI Seaboard RISEはバッテリーを内蔵しており、フル充電で約8時間も駆動できるのも嬉しいところ。これならライブなどでも心配なく使うことができますよね。

 

以上、簡単にROLI Seaboard RISEについて紹介してみましたが、いかがだったでしょうか?実際に持ってみるとわかりますが、高級な質感であると同時に、ガッチリしたボディーなんですよね。これなら10万円超というのも納得いくところではあります。

ぜひ、店頭でデモしている実物に触れてみることをお勧めしますが、今までにないプレイを実現できるUSB-MIDIデバイスなので、さまざまなパフォーマンスができそうだし、MIDIの打ち込みようデバイスとしても、5つのセンサーを活用することで、かなり面白いことができそうです。

※お知らせ
4月26日の21:00からのニコニコ生放送、DTMステーションPlus!、第54回にいてStudio One 3.2およびROLI Seaboard RISEを特集する予定です。実際に操作方法や音なども確認できるので、ぜひご覧になってみてください。
ニコニコ生放送 DTMステーションPlus! 第54回

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【関連情報】
ROLI Seaboard RISE製品情報

 

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