昨年秋にリリースされて、大きな話題になったiZotopeのプラグイン、Neutron(ニュートロン)。人口知能=AIで音作りをしてくれる夢のプラグイン、ということで「興味は持ったけど、よくわからないので、試してはいない」という人も多いのではないでしょうか?実は私自身も、チェックしなくては…と思ったまま数か月が経ってしまっていました。

AIがさまざまな分野で話題になる昨今、DTMステーションでもAIを使ったマスタリングツール、LANDRを何度か取り上げていましたが、AIプラグインのNeutronとはどんなものなのでしょうか?これはDTMユーザーにとって使えるソフトなのでしょうか?遅まきながら、実際に試してみたので、その音なども交えつつ、紹介してみたいと思います。


AIで音作りができるというNeutronがホントに使えるのか試してみた 

まずNuetronとは何なのかを簡単に説明しましょう。これはボーカルドラムベースギターピアノ……などなど各オーディオトラックの音を整えるために挿すことを目的とした統合型のプラグインで
イコライザ
コンプレッサ(2種類)
トランジェントシェイパー
エキサイター
から成り立っています。


Neutronは5つのエフェクトから構成されたプラグインとなっている

LANDRが出来上がった2ミックスに対して人工知能でマスタリングするというのに対し、Neutronは各トラックレベルでの音作を人工知能で行うツールなんですね。


ここではWindows版のCubase Pro 9にインサーションする形で使ってみた

またNeutronはWindowsでもMacでも使うことが可能で、VST2VST3Audio UnitsAAXRTASと各プラグイン環境で動作するから、CubaseStudio OneLiveAbilityBITWIGPro ToolsLogicFL STUDIO……とほとんどどんなDAWでも使うことができるシステムなのです。動作環境の詳細についてはiZotopeのWebサイトにあるのでそちらを参照してください。


EQはもちろん、コンプもエキサイター、トランジェントもすべてトラック内容を元に最適なパラメータを自動で割り出してくれる 

普通であれば、各トラックごとに音を聴きながら、イコライザのパラメータをいじったり、コンプレッサで音圧の調整をしていく作業が必要になるわけで、実際に手動でひとつずつ設定することも可能なのですが、Neutronはそれを人工知能によって自動で行ってくれるというのです。


使い方はいたって簡単。「Track Assistant」というボタンを押して再生するだけ! 

具体的にいうと、プラグインを挿した後、「Track Assitanat」というボタンを押すと、人口知能が動き出し、トラックを再生すると、それを判断した上で、5種類あるエフェクトのうちどれを使うのか、各パラメータはどのように設定するのかを自動的に選んだ上で、それぞれのパラメータも自動的に設定してくれるというものなんです。


10秒ほどアイコンの渦がクルクル回りながら考えている間に裏でパラメータが設定されていく  

言っている意味が分かりますか!?音作りをコンピュータが自動的に行ってくれ、最適化してくれるというのです。「だって、そんなもん好みがあるだろ!」、「曲ジャンルによって音作りも違ってくるのでAIで行うなんて無理だろ!」と意見はあると思うし、私自身もそのように思います。でも、AIがそこをうまい具合にやってくれるというんですよ……。実際どんなものなのか、ドラム、ギター、ベースの各トラックに挿して試してみた結果が以下のものです。


どうですか?ボーカルは芯のある声になって、少し明るい感じになっているし、ドラムやギターはいい感じにまとまってますよね。ベースはそれほど大きな音の変化はないように感じましたが、少しエッジがしっかりしたように思います。また結果を見てみると、5つあるエフェクトのうち、どれを使うかはトラックによって変わってくるので、エキサイターがトランジェントシェイパー、コンプレッサなどが使われていたり、使われていなかったりします。

ちなみに、人工知能が考えている時間は10秒程度。試しに、LANの接続を切り離してみてもちゃんと動作してくれたので、LANDRのようにクラウド側での処理ではなく、あきらかにPC内でのローカル処理となっているようです。


同じトラックに対して何度か試してみたが、結果はほぼ同様のものになる

もしかして、占いみたいにランダムに設定しているのでは……!?」と思って何度か同じトラックで試してみましたが、結果はほぼ同じになるので、ちゃんと解析した上で各パラメータを設定しているんですね。

実際に、解析してパラメータを設定するまでにかかる時間は10秒程度(Skylake Core i7を使って組んだマシンを使ってます)。きっとプロのレコーディングエンジニアが行っても最低でも5分程度はかかるだろうし、DTMに慣れている人でも、これだけのことをするなら、かなりの時間を要するのではないでしょうか?


初心者にはなかなか難しいパラメータ設定を自動で行ってくれるのはとっても嬉しいところ

しかもDTM初心者となれば、そもそもどのエフェクトを使えばいいのか、イコライザやコンプなど、どこをどのように調整すればいいのか、さっぱり見当もつかないのが実際のところではないでしょうか?


必要に応じてパラメータを手動でいじってみるのもOK

それを10秒程度で自動で行ってくれるNeutronはやはりプラグイン革命といっても過言ではないシステムだと思います。実際、いくつか試してみたところ、いい具合に設定してくれるんですよ。もし、求める方向と違うとか、もうちょっと高域を抑えたいとか、アタック感を強く出したい…といった要望があれば、とりあえずできた設定を元に手動で構成すればいいのですから、かなり便利ですよ。


100点でないにせよ、及第点な設定は自動でしてくれる 

何人かのエンジニアさんにも話を聞きましたが、みなさん概ね高評価。「これで完璧とはいえないけど70点~80点くらいのものができるように思います」という声も返ってきているので、やっぱり人工知能くん、すごいです。


エフェクトの使い方を学ぶ上でもNeutronは大きな助けとなってくれる

DTM初心者といわず中級者であっても、イコライザやコンプレッサなどの設定はなかなか難しいものですから、Neutronを使って、どのように設定すればいいのか勉強するという意味でも大きな利用価値があるように思います。

Neutronが設定をしてくれた後の音と、プラグインをバイパスさせた音を聴き比べつつ、その設定でどのように音が変わるか、どのエフェクトがどのように機能するのかを知ることができますからね。その上で自分の好みに合わせた調整を行えば、非常に効率よく、目的に合ったミックスができるのではないでしょうか?

「70~80点の音が作れるなら、下手に自分が手を下すより、すべてのミックスをNeutronにお任せしちゃうのがいいのでは……」と考える人もいると思いますが、Neutronには万能ではない点もあるのが大きな注意点。


各トラック個別の調整であるため、音量はユーザーがある程度チェックする必要がある

確かにトラックの音作りという面では、なかなかうまいことやってくれるのですが、あくまでも1つのトラックの音だけを見ているため、トラック間の音量的なバランスはとってくれないのです。実際このNeutronを通すと聴いた感じの音圧が上がるものや、反対に下がるものもあり、事前にレベル調整していたプロジェクトにNeutronを挿すと、バランスが崩れてしまうこともありうるです。

AutoGainというパラメータがあるので、これである程度のことはしてくれているのですが、やはり音量バランスだけは手動でチェックする必要があるというのが、Neutron活用の一つのポイントかもしれません。すでにDAW側でバランスを取っているのであれば、Neutronの出力ゲインを調整して、オリジナルと聴感上の音圧差がないようにしておくといいですね。


せっかくなので、ミックス後のマスタートラックにもNeutronを挿してTrack Assitanatを動かしてみた

このようにNeutronは、各トラックに挿して使うプラグインなわけですが、せっかくなので、ちょっと試してみたことがあります。それは、これをマスタートラックに挿してTrack Assitanatを使うとどうなるのか…ということ。結論からいうと、これもいい感じに聴いてくれるんですよ。音圧を思い切り上げるための使い方というのではなく、音のバランスを整えるためという意味で、やはり80点を作りだしてくれるので、マスタートラックを含めてNeutronを利用するというのもよさそうですよ。


マスタートラックもいいバランスに仕上げてくれた

ところで、Neutronにはもう一つ、EQ設定をしていく上で非常に有効な機能が装備されています。それは「マスキングメーター」という機能です。マスキングとは、別々のトラックが重なり合った結果、周波数的にぶつかりあって、聴こえにくくなる効果を意味するのですが、普通に聴いても、どこがぶつかっているのか簡単には分からないですよね。プロのレコーディングエンジニアだと、その辺をすぐに見つけ出して調整してくれますが、普通のDTMユーザーだとなかなか難しいところです。


マスキングメーターを使うと、ぶつかり合っている周波数帯を視覚的に示してくれ、そこを調整することが可能

このNeutronでは、「Masking」というボタンを押して、トラックを指定すると、マスキングされている周波数帯域を視覚的に知らせてくれ、ここで「Learn」ボタンを押せば、そのマスキングを解消するようなEQ設定に自動でしてくれるのです。ある意味、これだけのためにNeutronを買っても損はない機能だと思いますね。


Advanceに入っているコンプレッサ
 
なお、Neutronには標準版のNeutronという製品のほかにNeutron Advancedという製品、さらにはMusic Production Bundle IIという3ラインナップが存在します。Neutron AdvanceはNeutronのほかに、ここで使われているエフェクトを1つの手動のプラグインとして独立させた高機能版が4種類、さらにはこれを最大7.1chサラウンドで使うための機能が搭載されたものとなっています。


Advanceに入っているトランジェントシェイパー

このNeutron AdvancedにiZotopeの主要プラグインであるOzone 7 AdvancedNectar 2 Production SuiteVocalSynthTrash 2 ExpandedRX Plug-in PackInsightを加えた、まざにiZotope全部入りパックが、Music Production Bundle IIとなっています。

個人的には、Neutronの面白さはTrack Assitanatを使った人工知能による調整機能だと思うので、Advancedではなく標準版で十分かな…と思う一方、Ozone 7やRXなども入っているMusic Production Bundle IIは価格的にみて、かなり魅力的に思いました。 

どれを選ぶか悩ましいところではありますがNeutronには10日間、製品版と同様に使える試用版もあるので、まずはこれを試しすところから始めてみてはいかがでしょうか?

【関連情報】
Neutron製品情報
Neutron試用版
【価格チェック】 
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