ドイツ製、アメリカ製を中心に海外ソフトばかりのDAWの中で、実質的に現在唯一の国産DAWといえるのが、インターネットのABILITYです。3年前にSinger Song Writerからの大幅な機能向上で上位版のABILITY Proおよび標準版のABILITY Elementsとして名称も新たに誕生したこのDAW、その後も着実に成長を続けてきました。

そして10月10日、これまでのバージョン2.0(正確にいうと何度かのアップデートがあったことで2.02.8というバージョン)から2.5になり、さまざまな機能強化がなされました。このバージョンアップはABILITY 2.0 ProユーザーもABILITY 2.0 Elementsユーザーも無償で行うことができる太っ腹企画。さっそくその新バージョンを試してみたので、どんな機能強化がされたのかその概要について紹介してみたいと思います。


ABILITY ProおよびABILITYが2.0から2.5へ無償バージョンアップ
今回の2.5へのバージョンアップの内容は、かなり多岐にわたるのですが、まずは非常に目立つ、プラグインの追加という点から見ていきます。無償でのバージョンアップではありますが、完全に新規のプラグイン音源がABILITY Proでは2つ追加されています。


ABILITY Pro 2.5を試してみた

ABILITY Proのみで追加されたのが、ドイツの人気プラグインメーカー、LinPlugのシンセサイザ、MorphoXです。これは膨大なモジュレーション・オプションを備えた非常に強力な減算式シンセサイザ。


2つの音色をモジュレーション・ホイールでモーフィングできるLinPlugのMorphoX

最大のポイントは、モジュレーション・ホイールを使用することで、2つの音色をリアルタイムに、そしてスムーズにモーフィングできてしまうということです。16ステップのシーケンサも内蔵しているため、これ1つでかなりのプレイができてしまいます。参考までにそのデモサウンドが以下のものです。



もう一つABILITY Proで追加されたのが、やはり同じくLinPlugのマトリックスシンセサイザ、Octopusです。これはオシレータ/フィルタの周波数変調による合成のためのマトリクスと、一般的なモジュレーションのためのマトリクスで構成されたデュアルマトリクス方式のシンセサイザ。


マトリックスシンセサイザのLinPlug Octopus

音を合成するための主要コンポーネントは、インストゥルメントの8つのオシレータ、サンプラー、2つのフィルタ、32のエンベロープです。これによってFMサウンドはもちろん、非常に複雑なサウンドまで作り出すことが可能となっています。


ステップシーケンサにベロシティをグラフィカルに調整可能な機能が追加された

個人的にABILITY 2.0になって追加された機能として気に入っていたのがドラム打ち込みな便利なステップシーケンサですが、これも機能強化されています。これまでも1ステップごとにベロシティ値を設定することは可能でしたが、今回の2.5では、ベロシティ値を棒グラフ上に表示させることが可能になりました。


ベロシティーの動きを直線的に指定することも可能

しかもマウス操作でベロシティの変化を直線的におこなったり、選択したノートに対してゲート(GT)ベロシティ(VEL)デビエーション(DEV:発音するタイミングの調整)を指定・変更することなども可能になっています。


従来、ピアノロールはこのように背景はモノクロで表示されていたが……

このMIDI関連の機能強化において、なかなか面白いと思ったのが、ピアノロール画面における「コード構成音で背景色を色分け」というものです。ABILITYでは、もともとコードトラックを持っていて、ここにコードを指定することができましたが、そのコード指定がピアノロール画面の背景色を変化させるのです。といってもAmが赤、Cが青、D7が黄色……というようなものではなく、コードのルート音、第3音、第5音、第6/7音の色を指定するというものです。


「コード構成音で背景色を色分け」をONにすると、コードに従った形で色指定されるようになった

具体的にはこのような色付けになるので、コードに対して、どのような音の構成になっているのか、視覚的に確認することができるのです。つまりコードに乗っているのか、外れた音なのかが分かるというわけですね。


ウェーブエディタで指定部分だけを拡大表示することが可能に

もうひとつ、エディット機能として便利に感じたのがオーディオ波形表示を行うウェーブエディタにおいて、範囲してした部分だけを拡大表示できるという機能。個人的には「SHIFT+マウスホイール」みたいな操作で拡大縮小できるともっと便利かなと感じたのですが、全体を表示させつつ、指定の部分だけを細かくチェックしたり修正できるというのは、ほかのソフトにもあまりない発想で、いいなと思った次第です。


従来、旗の角度は自動指定されていたが…


ABILITY 2.5では水平にすることが可能になった

そのほかにも譜面作成エディタで旗を水平に固定できるようになったり、一小節ごとに幅を調整できるようになるなど、細かなところで、さまざまな改良がされていて、ABILITYがまだまだ進化していることを感じさせてくれます。


譜面作成エディタで、小節ごとに幅を調整可能になった

そうした機能強化の中、やはり今の時代への対応という意味で非常に大きかったのが、DDPエクスポートへの対応です。DDPとは、CDのプレス工場などにマスターを渡す際に用いるデジタルフォーマットで、ここ何年かで国内でも急速に広まった方式です。

従来はCD-Rにマスターを焼いて持ち込むという方法が主流でしたが、DDPを用いればネットでの受け渡しも用意であり、データエラーや音質劣化などの危険性もないので、絶対的に便利な機能ですが、まだDAW自体がDDP出力機能を持っているものは少ないのが実情です。


ABILITY ProのCD作成機能にはDDPエクスポート機能が追加された

そうした中、今回ABILITY Pro限定ではありますが、DDPエクスポート機能を装備したことで、同人CDなどを作成する上でプレス工場にスムーズにデータを渡せるようになったわけです。必要あれば、CDの商品コードであるISRC/EANの設定もできるし、各曲間の時間設定はもちろんのこと、フェードの指定などもできるようになっています。

このDDPエクスポートはCD作成機能の中に追加されたのですが、CD作成機能という仕組み上、CD-Rドライブがないと起動できない仕様になっています。が、DDP出力が目的であれば、必ずしもここでCDを焼かなくてもいいと思うので、ぜひ次のアップデートでは、アラートは表示させたとしても、CD-Rがないマシンでも起動できるようになるといいな、と。


ABILITY Pro 2.5でDDPエクスポートしたデータをWaveLabで読み込んだ結果、完全に再現することができた

なお、試しにABILITY 2.5 ProのDDPエクスポート機能で出力したDDPデータをSteinbergのマスタリングソフト、WaveLab Pro 9で読み込んでみたところ、完全な形で再現することができたので、互換性という面においても間違いはないようですね。


メディアブラウザにフレーズのプレビュー機能が搭載、オーディオの場合は波形を表示


MIDIフレーズの場合は、スコアが表示される


そのほかにもABILITY 2.5 Pro、ABILITY 2.5 Elementsにバージョンアップしたことで、オーディオルーティングでGROUPトラックからGROUPトラックへのルーティングが可能になったり(Proのみ)、メディアブラウザでフレーズのプレビューができるようになっています。


コントロールの入力を選択する


選択した方式で、ボリュームカーブなどコントロールを描くことができる

さらにソングエディタにコントロール入力の入力方法が追加(Proのみ)されたほか、ミキサーにおいてマウスホイール、キーボードの矢印キーでコントロールの値の変更可能になったり、ピアノロールで楽器名編集が可能になるのなど……、さまざまな機能が追加されています。


グループトラックからグループトラックへのルーティングも可能に

こうした機能が、現行のABILITY 2.0 Pro、ABILITY 2.0 Elementsのユーザーであれば、誰でも無料で手に入れることができるので、ぜひ試してみてください。またこれを機会に使ってみたいという新規ユーザーの場合も、当面は、ABILITY 2.5 Pro、ABILITY 2.5 Elementsのパッケージが発売されるわけではなく、2.0のパッケージを購入し、ネット上で自動アップデートがかかる、という形になっていますので、心配は不要ですよ。

今後もABILITYに関する新しい情報などがあれば、紹介していきたいと思います。

【関連情報】

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