IK Multimediaから、ある意味DTM用のハードウェアの究極版ともいえる機材、iRig Keys I/Oが発売になりました。これはUSB-MIDIキーボードでありながら、ここに24bit/96kHz対応のオーディオインターフェイスを装備しているので、DTMをする上でこれさえあればOK!という、これまでありそうでなかった製品なんです。

機種としては25鍵モデルのiRig Keys I/O 25(実売価格:28,000円前後)と49鍵モデルのiRig Keys I/O 49(実売価格42,000円前後)の2種類ですが、ここにはSampleTank 3のフル・バージョンをはじめ、ビンテージシンセ音源のSyntronik Pro-V、ミキシング / マスタリング用プラグイン・スイートのT-RackS 4 Deluxeなど、IK Multimediaの人気ソフトがバンドルされており、その合計金額がハードウェア価格の倍以上という、メチャクチャな設定になっているんです。でも、実際オーディオインターフェイスとキーボードが合体していて使い勝手はいいのか、持ち運びは可能なのか、バンドルソフトはホントに使えるものなのか、などチェックしてみました。


IK MultimediaのiRig Keysシリーズはミニ鍵盤のiRig Keys、フル鍵盤のiRig Keys Proなど、さまざまなラインナップが揃っており、私自身iRig KeysはPCでもiPhone/iPadでも使えるコンパクトなキーボードとして愛用しています。そのiRig Keysの新製品として、今回発売されるのが、フル鍵盤サイズのボディーにオーディオインターフェイス機能を収めてしまったというiRig Keys I/Oです。

49鍵のiRig Keys I/O 49、枠部分が細く、本体が非常に小さくまとまっている

見た目からもわかるとおり、周りの枠部分がほとんどなく、設置面積がすごく小さくてすむんですよね。最近のスマホやタブレットもベゼル部分が細くなり、全面液晶パネルという機種が増えてきていますが、まさにそんな印象です。IK Multimediaによれば面積的にみて競合製品より30%(25鍵)もしくは50%(49鍵)小さいとのことですが、確かに狭い日本の住環境・DTM環境を考えるとなかなかうれしい設計ですよね。


25鍵モデルのiRig Keys I/O 25

しかも、この小さなサイズにも関わらず、オーディオインターフェイス機能が搭載されているのと同時に、見てもわかる通りMIDIコントローラ機能もしっかり装備されているのです。いろいろな機能があるので順番に見ていきましょう。

まずメインであるキーボード部分について。私は今回49鍵モデルを入手して試してみたのですが、いわゆるライトウェイト鍵盤というタイプであり、キータッチもすごくいい感じです。手元にRolandのA-300PROというものがありますが、それと比較してもそん色ない感じです。確かに枠部分はほとんどないけれど、デスクにおいてみても不安定に感じられることはまったくないですね。


ピッチベンド、モジュレーションはタッチセンシングのスライダーとなっている

一方、ピッチベンド、モジュレーションについては、本体左側にタッチセンシングのスライダーという形で用意されています。「やっぱりホイール式がいい!」という人もいるとは思いますが、使ってみた感じ「これで十分いい!」という印象。結果として小型・軽量化につながっているわけですしね。


オクターブ、プログラムチェンジもタッチセンシングスライダーで切り替える

さらにその右にも同じタッチセンシングのスライダーが2つあります。ここにはOCT、PROGと書かれていることもわかるとおり、オクターブシフト、プログラムチェンジ用のものとなっており、これも使いやすかったです。その他のMIDIコントローラ系については、後ほど紹介しますが、iRig Keys I/Oの左側のリアにはペダル用の端子もついているので、手持ちのペダルが接続できるというのも重要なポイントでしょう。


PCやiOSデバイスとの接続は付属の専用ケーブルを用いる

PCやiPhone/iPadと接続するのは、ほかのIK Multimedia製品と同様にミニDIN端子を用います。そしてこれには製品付属のLightningケーブルもしくはUSBケーブルが必要となります。このケーブルがないと接続できないというのは注意点です。とくに外に持ち出してライブやスタジオで使うといった場合に、絶対ケーブルを忘れないようにしないといけないですね。

ちなみに、このケーブルは、IK Multmediaのオンラインストア(通常製品には課金されるイタリアからの送料が、付属パーツに限り送料無料となっています)や国内正規代理店フックアップのオンラインストアでも購入できるので、予備として持っておくと、紛失時やツアー中の断線などの事故に対しても安心かもしれません。


ACアダプタが利用できるほか、底面に単3電池を4本入れて使うことも可能

ここで重要なのは電源です。一般的なPCと接続する場合は、USBバスパワーで動作するのでいいのですが、iPhoneやiPad、また省電力型のタブレットPCなどと接続する場合、これからの電源供給では賄えません。そこで、こうした機器と接続する場合はACアダプタが利用できるほか、単3電池4本で駆動させることもできるので、持ち歩いて使う際にも便利ですよね。

その持ち運びに関してですが、枠部分が小さいことが影響しているのか、すごく軽量なのもうれしいところです。今回使ったiRig Keys I/O 49の場合、2.18kgです。25鍵なら1.26kgなので、トートバッグにでも入れて持ち歩ける大きさ・重さですよ。それだけにケーブルを紛失しないように注意しなくちゃいけないのですが……。


付属のスタンドを利用することで、iPadやiPhoneをぴったりフィットさせて設置できる

このケーブルに関していうと、iPhoneやiPadで利用する場合は専用のスタンドが付属することもあって、この長さで十分なのですが、PCとの接続においてはちょっと短すぎるかな…とは思いました。ノートPCをすぐそばに置くのであればいいのですが、とくにデスクトップPCと接続する場合など、この長さだと取り回しがきかないため、USBの延長ケーブルを用意するかUSBハブなどを利用して延長するのが必須となりますよ。


iRig Keys I/Oのリアに装備されているオーディオインターフェイスとしての入出力端子

では、オーディオインターフェイス部分について見ていきましょう。前述のとおり、iRig Keys I/Oには24bit/96kHz対応のオーディオインターフェイス機能が搭載されています。入出力という面からみると1IN/2OUTという仕様になっており、入力端子、出力端子ともすべてリアパネルにまとまっています。

この入力はコンボジャックとなっており、キャノンのマイクケーブルも接続できるし、ラインもギター/アンプのHi-Z入力にも対応しているオールマイティー。Hi-Zボタンはないから、ハイ受けでローを兼ねるという仕様ですね。+48Vというファンタム電源ボタンも搭載されているからコンデンサマイクの接続も可能だし、もちろんダイナミックマイクもOK。ステージに持って行ってDAWを介す形でキーボードを弾きながら歌うという使い方にもピッタリというわけです。入力においてはGAINノブも用意されているから、これで入力レベルを調整できるようになっています。

一方、出力はステレオのTRSバランスのラインアウトが用意されているほか、3.5mmのステレオミニのヘッドホン出力があり、それぞれに同じ信号が出るようになっています。つまり自宅ではラインアウトをモニタースピーカーに接続し、ステージではPAへ、という使い方ができるし、もっと気軽にヘッドホン/イヤホンでモニターすることができるわけです。細かな音質測定をしたわけではないですが、音を聴く限り、クリアなサウンドで、なんら問題ない、と感じました。普段に利用するオーディオインターフェイスとして考えて十分な性能を持っていると思いますよ。

ただ100点満点のオーディオインターフェイスか、というといくつか妥協せざるを得ない点が2つありました。1つ目は出力レベル調整専用のノブがないこと。「ALT+DATAノブ」での調整なので、慣れないと、「あれ?ボリュームは?」と焦るので、ここは使い方をしっかり覚えておく必要がありそうです。


個人的には久しぶりにASIO4ALLをインストールして使ってみた

もう1点はドライバがなく汎用となっていることです。これはメリットとデメリットの表裏一体であり、MacでもWindowsでも、またiPhoneやiPadでも接続すれば即使え、いちいちドライバをインストールする必要がないのはすごく便利です。ただし、Windowsに限って言うと、この仕様だとASIOドライバが使えないんですよね。


96kHzでバッファサイズを64Samplesに設定しても安定的に動いてくれた

とはいえ、ASIOが使えないとDTM用にはまったく使えないことになってしまいます。そこで、フリーウェアのASIO化ツール、ASIO4ALLを久しぶりにインストールして試してみました。Windows 10で使ってみましたが、結論からいえば完璧。96kHzでの動作でバッファサイズを64samplesに設定してもまったく問題なく、レイテンシーも極めて小さい感じです。この辺はIK Multimediaとしてもっと積極的に説明してもいいのでは…と思いました。


iRig Keys I/Oに用意されているトランスポートボタン

iRig Keys I/OのMIDIキーボード機能、オーディオインターフェイス機能に加え、もう一つ重要な機能がMIDIコントローラーとして機能です。4つのタッチセンシングのスライダーの右には4つのトランスポートボタン、7セグのインジケーター、さらにプッシュ式のノブが1つ、タッチセンシング機能も備えたノブが4つ並んでおり、これらを使ってDAWのフェーダーを操作したり、ソフトシンセの音色パラメーターをいじっていくことも可能です。


左側がプッシュ式ノブ、右の4つはタッチセンシング機能付きのノブ

IK MultimediaのSampleTankなどは、とくに設定をいじらなくて、即フィルターなどに使えるようになっていましたが、必要に応じてコントロール・チェンジの割り当てを変更することも可能となっています。


一番右側には、叩く強さで色が変わるパッドが8つ装備されている

そして、iRig Keys I/Oにおいて、無視できないというか、人によっては、こっちが本命と捉える人がいてもおかしくないのがバンドルソフトです。いまどきMIDIキーボードやオーディオインターフェイスにソフトがバンドルされているのは、珍しくもなんともないですが、普通はLEとかSEとかいう名前の機能限定版がオマケとして付属するものですよね。ところが、このiRig Keys I/Oは、ホンモノがついてきちゃうんですよ。具体的には以下のとおりです。


iRig Keys I/O 49 iRig Keys I/O 25
Windows/Mac用


SampleTank 3フルバージョン プレイバックサンプラー
Miroslav Philharmonik 2 CE オーケストラ音源
Syntronik Pro-V Prophet-5,10モデリングソフト音源
T-RackS 4 Deluxe ミキシング&マスタリングエフェクト
Ableton Live 9 Lite DAW
Studio One Prime DAW
iPhone/iPad用
SampleTank プレイバックサンプラー
Miroslav Philharmonik-Mobile Edition オーケストラ音源
Syntronik Pro-V-Free Instruments Prophet-5,10モデリングソフト音源

だいぶ以前に「iPhone/iPad用37鍵ミニキーボード、iRig KEYSは反則ワザ的オマケ付!?」という記事を書いたことがありましたが、その伝統は今も残っていて、さらに強化されていたんですね。


Ableton Live 9 Lite上でSampleTank 3を動かしてみた

単純に金額計算すれば、iRig Keys I/O 49の場合、総額約97,000円相当、iRig Keys I/O 25でも約77,000円相当となるのですから、ちょっとスゴすぎですよね。このうちStudio One Primeについては、そもそも無料のソフトですから、ここに載せるまでもないものですが……。


Prophet-5サウンドを思う存分にならせるPro-Vも付属

ちなみに、iOS版のSampleTankの場合は、まずフリー版のSampleTank CEをインストールし、起動後にiRig Keys I/Oの製品登録をしておいた自分のIDとパスワードを入力すると、フルバージョンにアップグレードされるという仕掛けになっています。

リリースされたばかりのT-RackS 5ではなく、その前の4だが、強力なエフェクトとして存分に活用可能

いずれにせよ、うれしい大サービス的なオマケだと思いますよ!

【価格チェック&購入】
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●Windows/Mac用
●iPhone/iPad用