2021年にFenderがPreSonusを買収してから約4年が経過しました。日本国内での販売体制も大きく変化し、2024年6月末にはハードウェア製品の取り扱いがエムアイセブン(現ジェネレックジャパン)からフェンダー・ミュージックに移管されました。一方、2024年10月のStudio One 7の登場のタイミングでArtistエディションが廃止されたことの影響で、オーディオインターフェイスなどのハードウェアにバンドルされるソフトウェアがサブスクリプション版のStudio One Pro+となり、製品によって期間が異なるなど非常に複雑な状況となっていました。それが最近になって大幅に見直しが図られ、現在では永続版のStudio One Pro 7やStudio One Artist 6が付属するという画期的な仕様に変更されています。これは業界でも類を見ない太っ腹な内容となっているのです。
この新体制、新ラインナップについて、フェンダー・ミュージック株式会社でジャパン プレソナス ビジネスディベロップメント ディレクターを務めるフィリップ・クレッグ(Philip Clegg)さんにお話を伺いました。PreSonusの日本での販売体制やバンドルソフトの内容がどうなっているのか、よくわからない人も多かったと思いますし、正直なところ私自身もよく分からない状態が続いていました。今回のインタビューで、ようやくその全貌がハッキリわかったので、その状況を紹介していきましょう。

フェンダー・ミュージックに行って、PreSonus関連の状況について話を聞いてみた
Fender傘下での新体制、ハードウェアとソフトウェアで棲み分け
――まず、現在のPreSonusの日本での販売体制について教えてください。
フィリップ:2021年にFenderがPreSonusを買収し、現在PreSonusはFenderの一事業部という位置づけになっています。日本では長い間エムアイセブン(現ジェネレックジャパン)さんにPreSonus製品全般を扱っていただいていましたが、2024年6月末でハードウェア製品の取り扱いを終了し、その後はフェンダー・ミュージックが取り扱う形になりました。

2021年11月1日にFenderがPreSonusの買収を発表している
ただし、Studio One単体に関しては引き続きジェネレックジャパンさんが販売を継続しています。つまり、ハードウェア関係はFender扱い、ソフトウェア単体はジェネレック扱いという棲み分けになっているんです。
――ハードウェアがFender扱いになったことで、ラインナップに変化はありましたか?
フィリップ:はい、いろいろ変化は出てきています。エムアイセブンさん時代には日本で発売されていなかったQuantumシリーズが、フェンダー・ミュージックでの扱いになってから国内でも販売されるようになり、おかげさまで大きな好評をいただいています。

PreSonusのハイエンドなオーディオインターフェイス、Quantumシリーズ
Quantumシリーズは32ビット/192kHzのハイレゾ録音に対応し、超低レイテンシーを実現したオーディオインターフェイスです。ラインナップとしては、2in/2outのQuantum ES2から、最上位の26in/32outのQuantum HD8まで、幅広いニーズに対応できるよう揃えています。
PreSonusのハイエンドUSBオーディオインターフェイス、Quantumシリーズ
PreSounsのハードウェア製品の取り扱いがフェンダー・ミュージックになってから、日本でも本格展開が始まったQuantumシリーズ。32ビット/192kHzのハイレゾ録音対応と超低レイテンシーが特徴の、PreSonusが誇るプレミアムオーディオインターフェイスのシリーズとなっています。ラインナップとしては大きく以下の4製品となっています。またQuantum ES 2にモニタースピーカーのEris 3.5、コンデンサマイク、モニターヘッドホンなどをセットにしたQuantum Ultimateといった製品ラインナップもあります。
Quantum ES2
24bit/192kHz 2in/2out (税込実売価格:38,500円)
エントリーモデルながら、Quantumシリーズの高音質を手軽に体験できるモデル。コンパクトなUSB-Cインターフェイスで、デスクトップでの音楽制作に最適。
Quantum ES4
24bit/192kHz 4in/4out (税込実売価格:59,950円)
デスクトップに置くコンパクトなオーディオインターフェイスながら、4in/4outを装備。よりパワフルな音楽制作を実現。
Quantum HD2
32bit/192kHz 20in/24out (税込実売価格:86,350円)
ハーフラックサイズのボディーにadat2系統の入出力を装備するなど、計20in/24outを実現したモデル。32bit/192kHzに対応し、より高品位なサウンドを実現。
Quantum HD8
32bit/192kHz 26in/30out (税込実売価格:159,500円)
シリーズ最上位モデル。大規模なレコーディングセッションにも対応できる豊富な入出力と、プロスタジオレベルの音質を提供する。
サブスク版から永続版へ、ハードウェアバンドルの大転換
――Studio One 7になって、そのラインナップは大きく変わりましたよね。
フィリップ:そうですね。以前に「事前発表からの予測を覆す超大幅バージョンアップを実現。Studio One Pro 7、発売スタート!」の記事でも取り上げていただきましたが、Studio One 7の登場と同時に従来あったPrimeとArtistが廃止され、現在はProのみの展開となっています。これについては従来通りジェネレックジャパンさんが販売しており、永続版の「Studio One Pro 7」と、サブスクリプション版の「Studio One Pro+」の2つのエディションがあります。
――そして今回の大きなトピックが、ハードウェアにバンドルされるStudio Oneの内容変更ですね。これは販売体制の移管とは別のタイミングでの変更だったのでしょうか?
フィリップ:はい、その通りです。販売体制の移管とバンドルソフトの変更は別々のタイミングで行われました。Studio One 7が登場した際、Artistエディションがなくなったため、ハードウェアにバンドルされるのはサブスクリプション版のStudio One Pro+になっていました。製品によって6ヶ月版だったり1年版だったりと、非常に複雑な状況でした。
しかし、最近になって大幅な見直しが図られ、現在は製品に応じて、上位機種にはStudio One Pro 7の永続版が、エントリー機種には前バージョンであるStudio One Artist 6の永続版がバンドルされるように変更されました。
――永続版ということは、フルバージョンが付いてくるということですか?
フィリップ:その通りです。これは業界でも類を見ない内容だと自負しています。従来のサブスクリプション版では、期間が終了すると使えなくなってしまいましたが、現在の永続版なら一度登録すれば永続的に使い続けることができます。
Studio OnePro 7については、登録してから1年間はフリーアップデートで最新版に更新できます。1年を経過すると更新はできなくなりますが、サブスクリプションとは違って使えなくなるわけではありません。そのバージョンで固定される形ですが、使い続けることが可能です。
製品リストで確認、ハードウェアにバンドルされるStudio Oneのラインナップ
――具体的にはどの製品にどのバージョンが付くのでしょうか?
フィリップ:製品ごとに異なりますので、詳細は製品リストをご覧いただければと思います。大まかに言うと、上位機種にはStudio One Pro 7が、エントリー機種にはStudio One Artist 6が付属します。
Thunderboltインターフェイス | バンドルDAW |
Quantum 2626 | Studio One Pro 7 |
USBインターフェイス | バンドルDAW |
AudioBox GO | Studio One Artist 6 |
AudioBox GO Creator | Studio One Artist 6 |
AudioBox USB 96 25th | Studio One Artist 6 |
AudioBox USB 96 25th Studio | Studio One Pro 7 |
AudioBox USB 96 25th Ultimate | Studio One Pro 7 |
AudioBox USB 96 25th Complete | Studio One Pro 7 |
ioStation 24c | Studio One Artist 6 |
Studio 24c | Studio One Artist 6 |
Studio 68c | Studio One Artist 6 |
Studio 1824c | Studio One Pro 7 |
Quantum ES Ultimate | Studio One Pro 7 |
Quantum ES 2 | Studio One Pro 7 |
Quantum ES 4 | Studio One Pro 7 |
Quantum HD 2 | Studio One Pro 7 |
Quantum HD 8 | Studio One Pro 7 |
ミキサー製品 | バンドルDAW |
StudioLive AR8c | Studio One Pro 7 |
StudioLive AR12c | Studio One Pro 7 |
StudioLive AR16c | Studio One Pro 7 |
StudioLive 32SC | Studio One Pro 7 |
StudioLive 32SX | Studio One Pro 7 |
StudioLive 32S | Studio One Pro 7 |
StudioLive 64S | Studio One Pro 7 |
StudioLive 16R | Studio One Pro 7 |
StudioLive 24R | Studio One Pro 7 |
StudioLive 32R | Studio One Pro 7 |
StudioLive 16.0.2USB | Studio One Pro 7 |
コントローラー製品 | バンドルDAW |
ATOM | Studio One Artist 6 |
ATOM SQ | Studio One Pro 7 |
FaderPort | Studio One Pro 7 |
FaderPort 8 | Studio One Pro 7 |
FaderPort 16 | Studio One Pro 7 |
例えば、FaderPort V2でもStudio One Pro 7が付いてきますし、Quantum ES-2でもStudio One Pro 7が手に入ります。一方、AudioBox USB 96のようなエントリーモデルにはStudio One Artist 6が付属します。Artist 6のほうはフリーアップデートのサービスはありませんが、今後もずっと使い続けることが可能です。
――対象となるハードウェアの範囲はどうなっていますか?
フィリップ:オーディオインターフェイス、コントローラー、ミキサーが対象となります。ただし、Erisシリーズのスタジオモニタースピーカーは対象外となっています。

ErisシリーズなどモニタースピーカーはStudoi Oneバンドル対象外だが、オーディオIF、コントローラ、ミキサーは対象となっている
――この変更はいつから実施されているのですか?
フィリップ:実は、PreSonus本社のポリシーとしては4月から変更されていたのですが、日本での正式なプレスリリースとしては2025年7月3日発表となりました。これまで少し分かりにくい状況が続いていましたが、ようやく整理されたという感じですね。
複雑だった従来システムから大幅にシンプル化
――以前のバンドル内容から大幅な改善ですが、その背景は?
フィリップ:従来のバンドル内容は確かに分かりにくく、ユーザーのみなさんにとっても我々販売側にとっても混乱の元でした。Studio One 7登場当初は、Studio One Pro+の6ヶ月版、1年版など複数のバリエーションがあり、製品によって期間が異なったりと、誰もが理解に苦しんでいたのが正直なところです。
しかも、サブスクリプション版だったため、期間が終了すると使えなくなってしまうという問題もありました。今回の変更で、非常にシンプルになりました。上位機種にはPro 7、エントリー機種にはArtist 6。そして、どちらも永続版。これなら誰にでも分かりやすいですし、ユーザーにとってのメリットも明確です。
――フェンダー・ミュージックの取り扱いになってから、その他に何か変化はありますか?
フィリップ:販売体制がしっかりと整ったことで、より積極的なプロモーションが可能になりました。また、価格面でも見直しを行い、一部製品では値下げも実施しています。グローバルでの価格調整により、より適正な価格設定になったと考えています。
エントリーモデルが好調、Studio One Pro 7バンドルで上位機種も高いコストパフォーマンスに
――最近、円安や世界的な物価上昇などの影響もあり、各社ともオーディオインターフェイス類の価格高騰が気になっています。PreSonusのオーディオインターフェイスの売れ行きはいかがですか?
フィリップ:確かに以前と比較すると、高くなってしまったものもありますが、おかげさまで、価格の手頃なモデルは好調です。たとえばStudio 24cなどのエントリーモデルは安定した売れ行きを見せています。一方、高価格帯のQuantumシリーズについては、まだこれからという感じですが、今回のStudio One Pro 7をバンドルという付加価値で、より多くの方に検討していただけるのではないか、と期待しているところです。

相変わらず売れ行き好調のエントリー機、Studio 24c
――最後に、DTMステーション読者に向けてメッセージをお願いします。
フィリップ:PreSonusの日本での体制についてやや分かりにくい状況が続いていましたが、国内で組織も整い、フェンダー・ミュージックとして、PreSonusハードウェアをしっかりとサポートしていく体制が整いました。また、今回のStudio Oneバンドル内容の大幅改善により、これまで以上に魅力的な製品ラインナップになったと自負しています。
特に、これからDTMを始めたい方や、DAWソフトの乗り換えを検討されている方にとって、オーディオインターフェイスとフルバージョンのStudio Oneが一緒に手に入るというのは、非常に大きなメリットだと思います。ぜひ、この機会にPreSonus製品をご検討いただければと思います。
――ありがとうございました。
7月21日DTMステーションPlus!でQuantumシリーズやStudio Oneを特集
今回記事で紹介したPreSonusのオーディオインターフェイス、Quantumシリーズをはじめ、各種最新のPreSonusハードウェアと、それにバンドルされるStudio One Pro 7の最新版やStudio One Artist 6について紹介するニコニコ生放送、YouTube Live同時配信の番組を放送します。ゲストには、フェンダー・ミュージックのフィリップ・クレッグさん、そしてStudio Oneといえばこの人、作曲家の田辺恵二さんをお迎えしてお送りいたします。お楽しみに。
【日時】2025年7月22日 20:00~22:00
【ニコニコ生放送】https://live.nicovideo.jp/watch/lv348242106
【YouTube Live】https://youtube.com/live/qajVpuMcCq0
【関連情報】
PreSonusサイト
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