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ゲームサウンド制作の現場でOmnisphere 3はこう使われている!サウンドディレクター・大島香織さんに聞く、音源を超えた活用法

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Spectrasonicsの人気ソフトシンセ、Omnisphere 3(国内総代理店:ディリゲント)。豊富なサウンドライブラリと強力なシンセエンジンを武器に、多くのミュージシャンやプロデューサーに愛用されていますが、実はゲーム業界でも重要なツールとして活躍していることをご存じでしょうか。今回は、『SIREN: New Translation』『MARVEL VS. CAPCOM: INFINITE』『ヘブンバーンズレッド』など数々のゲームタイトルでサウンドディレクター/デザイナーを務めてきた大島香織さんに、ゲームサウンド制作の現場におけるOmnisphere 3の活用法について話を聞きました。

興味深いのは、大島さんのOmnisphere 3の使い方です。多くのミュージシャンが「音源」として使うのに対し、大島さんは「音源」としてだけではなく「サンプル加工ツール」や「エフェクトツール」などとして活用しています。自分で録音した音や、ライブラリから持ってきた素材をOmnisphere 3に読み込み、グラニュラーシンセシスやFXを駆使して、現実には存在しない効果音を作り上げていくのです。「闇属性の攻撃」、「光の魔法」といった、ファンタジーゲームならではの非現実的なサウンドを生み出すには、極端な音作りができるツールが必要だと大島氏は言います。音楽制作とは異なる、効果音制作という視点から見たOmnisphere 3の新たな可能性を探ります。

サウンドディレクター/デザイナーの大島香織さん

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EA、ソニー、カプコン、グリーグループを経て独立

大島香織さんは、ゲーム業界で30年以上にわたりサウンド制作に携わってきたベテランです。専門学校卒業後、エレクトロニック・アーツ・ビクター(EA)で2年間、ローカライズ版のサウンド制作に従事。その後、ソニー・コンピュータエンタテインメント(現ソニー・インタラクティブエンタテインメント)に転職し、途中イギリス留学を挟んで14年間在籍しました。ソニー時代には、パズルゲーム『I.Q Final』やホラーゲーム『SIREN: New Translation』などを手がけています。

その後、カプコンに7年間在籍し、東京サウンドチームの立ち上げに関わり、『MARVEL VS. CAPCOM: INFINITE』などを担当。さらにグリーグループのライトフライヤースタジオ(WFS)に6年間在籍し、現在話題の「ライトフライヤースタジオ」と「Key」が贈るドラマチックRPG『ヘブンバーンズレッド』のサウンドディレクターを務めました。2024年からはフリーランスとして独立し、法人化。現在も『ヘブンバーンズレッド』を含む複数のタイトルで業務委託としてサウンドディレクションを担当しています。

こちらが大島さんがサウンドディレクション/デザインを手がける『ヘブンバーンズレッド』の最新のプロモーション映像です。

サウンドディレクターとサウンドデザイナー、2つの顔を持つ仕事

――まず、ゲーム業界におけるサウンド制作の仕事について教えていただけますか。

大島:サウンドディレクターとサウンドデザイナー、2つの役割があります。私は両方やっていますね。サウンドディレクターとしては、プランナーやディレクターから上がってきた企画に対して、どう音を鳴らすか、どういう曲を入れるか、どこにボイスを入れるかなど、サウンド全体の方向性を提案し、制作する立場です。言われた通りにやるだけでなく、『ここはこうした方がいい』と積極的に意見を出していくのがサウンドディレクターの役割ですね。

――一方、サウンドデザイナーとしては?

大島:実際にディレクションを元に効果音を作り込んでいく作業です。チームで制作することが多く、できるだけ各デザイナーの方の持ち味が行かせるよう、割り振って作業をしていきます。

ライブラリ音源、フォーリー、シンセ、使い分けて効果音を作る

――ゲームの効果音制作には、どんなアプローチがあるんですか。

大島:大きく分けて3つあります。1つ目はライブラリ音源を加工して作る方法、2つ目が実際の音を録音する『フォーリー』、もう1つはシンセサイザーを使った音作りです。

――フォーリーはどのように作っていくのですか?

大島:カットシーンなどクオリティの高い映像には、プロのフォーリーアーティストにお願いすることもあります。カプコン時代の同僚の会社で、フォーリーステージを持っているて、そこをよく使っています。以前は映画の撮影所内のスタジオに行っていましたが、今はゲーム業界出身の方が運営しているスタジオも増えて、よりフォーリー収録が身近になってきました。

――簡単なフォーリーは自分でも?

大島:そうですね。家でレコーダーを使って録ったり、フォーリーステージだけ借りて自分たちで録ったりもします。この間なんてジェンガの音を急に録れって言われて、近所の子供がいる家に借りに行きました(笑)。

――では、シンセを使うのはどんな場合ですか。

大島:現実にないものが多いんです。特にゲームは戦ってることが多いので、光の攻撃とか、火・氷・闇といった属性の表現は、シンセを混ぜていかないと作れません。スポーツゲームなどリアルな世界を描くゲームはフォーリー中心、ファンタジーやSF系のゲームはシンセを多用する、という使い分けをしています。

Omnisphere 3を「音源」ではなく「サンプル加工ツール」として使う

――今回の本題ですが、Omnisphere 3をどのように使われているんですか.

大島:私の場合、Omnisphere 3を音源として使うというより、サンプル加工ツールとして使っています。自分で録った音や、ライブラリから持ってきた音をOmnisphere 3に読み込んで、そこで加工していくんです。

インポートした波形をUNISONでぶっとい音に加工する

――具体的にはどのような使い方になるのでしょうか?

大島:まずProToolsで録音した音や、UVIなどのライブラリから持ってきた音をオーディオファイルとして用意します。それをOmnisphere 3のサンプラー機能に読み込んで、グラニュラーシンセシスやFX、フィルターなどを駆使して加工していきます。

インポートした波形をグラニュラーでく思い切り変化させていく

リングモジュレーターなども、かなり効果的にサウンドを変化させるので、よく使っていますね。

リングモジュレータで音を加工することも多い

――こうした音作りにおいて、何かコツなどはあるものですか?

大島:昔から、作業する際にBehringerのPA用のEQを使ってるんですよ。歴代のこの製品を使っていて、現在はDEQ2496 ULTRA-CURVE-PROというものを使っています。といっても、EQとしてはまったく使っておらず、リアルタイムに周波数成分を表示してくれるFFTのモニターとして使ってるだけなんですよ。ほかにいい機材がないので、使い続けてますが、これを見れば一発で聴こえにくい低域が出すぎているとか、この音を立たせたいが、その帯域に他の音が集中しているから整理しないと…といった感じで視覚的にチェックできて便利なんですよね。

大島さんが、周波数分析用測定器として使っているBehringerのPA用のEQ、DEQ2496 ULTRA-CURVE-PRO

――例えばどんな音を作るんですか?

大島:闇属性の攻撃音を作る時は、低めの唸るような音をサンプリングして、Omnisphere 3でさらに低いとぼけがちな音の輪郭をはっきりさせたり、フレイバーを加えていきます。Omnisphere 3のFXは本当に極端にかかるので、『これでもか!』というくらい攻めた音作りができるんです。また、こうしたエフェクトを音源の中で使うだけでなく、独立したエフェクトプラグインとしても使えるのが非常に便利でもあります。特にローファイ系のエフェクトが、個性的なものがたくさんあり、ボイスのポストプロダクションにも使用し易く気に入っています。

エフェクトだけを独立したプラグインとして使えるのも便利

――音源として使うのではなく、加工ツールとして?

大島:そうですね。またOmnisphere 3の良いところは、プリセットの音がそのまま使えるというより、エンジン自体が優秀なことです。サンプルを持ってきて加工する際、元のピュアな波形から始められるので、音質が劣化しにくいんです。オーディオファイルを何度も加工すると音質が落ちていきますが、Omnisphere 3の中でならかなり攻めた処理をしても破綻しません。

UserAudioで波形をドラッグ&ドロップでインポート

Omnisphere 3で加工した後は、ProToolsで仕上げ

――Omnisphere 3で作った音は、そのまま完成ですか?

大島:いえ、Omnisphere 3である程度形を作ったら、ProToolsにバウンスして、そこから空間系やフィルター系のプラグインをかけていきます。最近はFabFilterをよく使っています。リミッター系でグリグリいじったり、リバースをかけたり。

――ワークフロー全体を教えていただけますか?

大島:こんな感じです。まず、フォーリー録音やライブラリからサンプル素材を用意します。それをOmnisphere 3に読み込んで、シンセエンジンで加工。次にProToolsにバウンスして、FabFilter、Waves Horizonなどのプラグインで仕上げます。最後に、ゲーム用のミドルウェア、私の場合はCRI ADXを使うことが多いですが、それを使用しゲームに実装していきます。

――納品形態はどうなるんですか。

大島:PVの場合は2Mixにして納品しますが、カットシーンやゲーム内の単発の効果音は、ゲーム実装自体が納品になります。

UVIとOmnisphere 3、使い分けのポイント

――他にも使っている音源やサンプラーはありますか?

大島:現在メインで使っているのは、UVIとOmnisphere 3です。UVIのライブラリは本当に豊富で、ウーシュ音とか基本的な効果音素材が揃っています。使い慣れているので、急いでいる時はUVIを使うことが多いですね。でも、Omnisphere 3を使う割合はどんどん増えてきています。

――現在の比率は?

大島:効果音制作全体で言うと、フォーリーやライブラリなどのアリネタと、シンセを使った音作りが半々くらい。そのうち音作りの半分以上は、今Omnisphere 3に入れ替わってきている感じです。

――UVIのFalconも使われているそうですね。

大島:はい、Falconも同じような使い方をしています。ある程度いじったらバウンスして、ProToolsでプラグインをかけていく流れは同じです。

Omnisphere 3の「ライブラリ」も効果音素材として優秀

――Omnisphere 3のサウンドライブラリも活用されているんですか?

大島:はい、Omnisphere 3のライブラリから、効果音に使えそうな音を探すこともあります。特に『これに使える』とカテゴライズされているものは、そのままサンプル素材として使えることが多いです。音質も非常に良いので、サンプルライブラリから持ってくるより、Omnisphere 3の純粋な波形から始めた方が結果が良いんです。

――どうやって探すんですか。

大島:Omnisphere 3のブラウザで『Dark』『Atmospheric』といったキーワードで検索して、効果音のベースとなる音を探します。聴いたことがありそうな音でも、そこからさらに自分で加工していくので、最終的にはまったく違う音になります。高音質なサンプルから始められるのは本当に大きいです。

過去に使ってきたシンセ機材の歴史

――ちなみに、これまでどんなシンセを使ってこられたんですか。

大島:最初に買ったのは、学生時代のRoland D-70です。まだ作曲家になれると思っていた時代でした(笑)。その後、AKAIのサンプラー S3000iを買って。通信カラオケの、耳コピデータ化のバイトが流行っていた時代にRolandのSC-88も使っていました。

――仕事を始めてからはどんなシンセを?

大島:会社の機材を使うことが多くなりました。ハードのサンプラー時代は、ずっとAKAIを使っていました。学生時代にはQuasimidiのQUASARも使っていましたし、EA時代にはOberheim Matrix-1000、ソニー時代前期にはKORG ProphecyやNord Lead 2を他の人の機材を借りて波形化したこともあります。まあ、もともとハードのシンセには思い入れがあまりなく、音が波形になって初めて思い入れが生まれるんですけど(笑)。

――ソフトシンセの時代に入ってからは?

大島:Native InstrumentsのBatteryを長く使っていましたが、FMシンセも触りました。でも結局、サンプラー系が中心でしたね。そして現在は、Omnisphere 3、Falconを中心に、ProToolsとの組み合わせで効果音制作を行っています。

ゲームサウンド業界にもOmnisphere 3ユーザーは多い

――ゲーム業界でのOmnisphere使用率はどうなんでしょうか。

大島:みんな持ってると思いますよ。ゲーム業界の人がいなかったら、売り上げ成り立たないんじゃないかってくらい(笑)。ゲームサウンド業界では、Omnisphereだけでなく、PhasePlantなど、極端なエディットができるプラグインが好まれる傾向にあります。

――なぜ「極端なエディットができる」ことが重要なんですか。

大島:ゲームは現実にない音を作ることが多いので、普通のプラグインでは物足りないんです。Omnisphere 3のFXは本当に極端にかけられるので、『これでもか!』という音作りができる。それが私たちには必要なんです。

音源を超えた使い方、DTMerにも応用できる可能性

今回の取材を通じて、Omnisphere 3の新たな可能性が見えてきました。音楽制作での「音源」としての使い方だけでなく、効果音制作における「サンプル加工ツール」としての使い方。高音質なサンプルエンジンと、極端な加工にも耐える FX エンジン。これらの特徴が、ゲームサウンド制作の現場で高く評価されているのです。

大島さんによれば、リバースしてスタートポイントをすずらしアタックをつけてバリエーション作成…といった使い方も

大島さんのような使い方は、実はDTMerにとっても参考になるはずです。自分で録音した音や、他のライブラリから持ってきた音をOmnisphere 3で加工することで、オリジナリティの高いサウンドを作ることができます。

「音源として完成されたプリセットを使う」だけでなく、「サンプル加工ツールとして自分だけの音を作る」というOmnisphere 3の、もう一つの顔が見えてきました。

ちなみにサウンドデザイン業界では「Spectrasonics製品は規約的に効果音には使えない」という噂が広まっていて、購入をためらっている人もいるようです。念のため発売元のディリゲントに確認してみたところ、そうした規約は存在せず、明らかな誤解とのこと。プラグイン内部のサンプルデータなどをそのまま効果音として使うの当然NGですが、Omnisphere 3で作った音は効果音としても音楽としても自由に使うことができますよ。

【関連情報】
Omnisphere 3製品情報

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