プロの制作現場を支える縁の下の力持ちとして多くのユーザーに愛用されているVienna Ensemble Pro(ビエナ・アンサンブル・プロ)。オーストリアのVienna Symphonic Library社(VSL)が開発するこのツールは、同じネットワークまたはLANケーブル1本で複数のPCを接続し、CPU負荷を分散させるという画期的なソリューションを提供してきました。そのVienna Ensemble Proが、2019年リリースの前作バージョン7以来、久しぶりのメジャーアップデートを果たし、Vienna Ensemble Pro 8およびVienna Ensemble Pro 8Vとして登場しました。
今回のバージョンアップでは、従来の手順を一新する接続の簡略化や、現代の制作フローに合わせた機能強化が図られています。特に注目なのは、映像機能を省いて価格を抑えた無印の「8」と、フル機能を搭載した「8V」という2つのラインナップになったこと。これにより、大量の音源を立ち上げてオーケストラを作曲するプロフェッショナルだけでなく、一般的なDTMユーザーにとっても導入のハードルが下がりました。また、VIENNA SUITE PROといった有料プラグインも統合されています。
そんなVienna Ensemble Pro は現在、発売を記念したイントロセールを実施中で、2026年3月2日(日)までの期間限定、SONICWIREでは25%OFFとなっています。3月3日以降は23%の値上げが実施される予定とのことなので、今がお得に入手できるチャンス。通常価格27,390円(税込)のVienna Ensemble Pro 8が20,460円(税込)、通常価格54,890円(税込)のVienna Ensemble Pro 8Vが41,140円(税込)となっています。実際にこのツールを使って、DAWの負荷分散やテンプレート管理をしたり、PCを2台連結させたり、Pro ToolsでVSTプラグインを使ったりと、どのようなメリットがあるのか試してみたので、紹介していきましょう。
そもそもVienna Ensemble Proとは何をするソフトなのか
DTM歴が長い方なら一度はその名を聞いたことがあるかもしれませんが、改めてVienna Ensemble Pro、略してVEPがどのようなソフトなのか解説しておきましょう。一言でいえば、これは「ミキシングホストアプリケーション」です。
通常、DAW上でソフトシンセやエフェクトを大量に立ち上げると、CPU負荷が高まり、動作が重くなったり、最悪の場合は音が止まってしまったりします。そこで、VEPを使うことで、その処理をDAWから切り離し、別の場所で実行させることができるのです。
最大の特徴は、LANケーブルを使って別のPCに処理を肩代わりさせられる点にあります。たとえば、手元のMacBook ProでDAWを操作しつつ、重たいオーケストラ音源の発音処理は、LANで繋がったWindowsのデスクトップPCに行わせる、といったことが可能になるのです。DAW側からはあたかも自分のPC内で鳴っているかのように扱えるため、ユーザーは裏側で別のPCが動いていることを意識する必要がありません。PCのスペック不足に悩む人にとって、まさに救世主のような存在なのです。
映像機能搭載の「8V」と、シンプル機能の「8」の違い
今回のバージョン8における大きなトピックは、製品ラインナップが「Vienna Ensemble Pro 8」と「Vienna Ensemble Pro 8V」の2つに分かれたことです。
これまでのVEPは純粋に楽曲制作だけを行うユーザーにとってはオーバースペックな部分もありました。そこで機能を省き、純粋にプラグインホストとしての機能に絞ったのが無印の「Vienna Ensemble Pro 8」です。
一方、「Vienna Ensemble Pro 8V」は、従来のVEPのフルスペック版という位置づけです。映像の再生機能など、ポストプロダクション業務に必要な機能が網羅されています。
Vienna Ensemble Pro 8:通常価格27,390円(税込) セール価格20,460円(税込)
映像再生機能はなし。一般的な楽曲制作向け。
Vienna Ensemble Pro 8V:通常価格54,890円(税込) セール価格41,140円(税込)
映像再生機能などを搭載した上位バージョン。
一般的なDTMユーザーであれば、価格も手頃な無印の「8」で十分なケースが大半だと思われますが、映像に合わせて音をつける作業を行う方は「8V」を選ぶのが正解というわけです。
ここで一つポイントとなるのが、Ableton LiveやBitwig Studioなど、映像機能があまり強力ではないDAWを使っているユーザーにとってのメリットです。こうしたDAWの場合、映像に合わせてBGMを作ろうとするとフォーマットの制限や同期のズレに悩まされることがありますが、「8V」を導入することで、快適な映像同期環境を手に入れることができます。DAW側で映像を扱うのではなく、VEP側に映像処理を任せてしまうというわけです。
10年前のWindows PCをMacの外部音源として復活させる
さて、ここからは実際にVEP8を使って、どのようなことができるのか実験してみます。今回用意したのは、メインで使用しているM1 MaxのMacBookProと、10年ほど前に購入した古いWindowsPCです。CPUは2015年発売のi7-6700。なお、Mac側のDAWにはFender Studio Pro 8を使用しました。
この実験の狙いは、MacとWindowsという異なるOSを混在させること、そして古いPCを専用音源モジュールとして再利用することです。最近は使わなくなっていたWindows PCですが、ここにVEP8のServerソフトをインストールし、フリーのソフトシンセとして有名な「Synth1」を立ち上げてみました。
手順は驚くほど簡単です。まず双方のPCにVEP8をインストールし、同じルーター、もしくはハブにLANケーブルで接続します。Windows側でサーバーアプリであるVEP8 Serverを起動し、Synth1をインサート。そしてMacのDAW側のインストゥルメントトラックに「Vienna Ensemble Pro」プラグインを立ち上げます。なお、Wi-Fiでも接続自体は認識されますが、膨大なオーディオデータをリアルタイム転送する際は、実用的な速度と安定性を確保するために有線LAN接続がおすすめ。
すると、Mac側のプラグイン画面に、ネットワーク上のWindows PCが自動的に表示されるので、「Connect」ボタンを押すだけ。これだけで接続完了です。以前のバージョンでは固定IPアドレスの設定など、ネットワークの知識が必要で少し敷居が高かったのですが、今回のバージョンからはそうした面倒な設定が一切不要になり、自動検出してくれるようになったのは非常に大きな進化です。
実際にDAW上で打ち込むと、Windows側でのSynth1が鳴り、その音が遅延なくMacに戻ってきて出力されます。今回は10年前のPCを使っていますが、これをたとえばゲーム用のハイスペックPCなどにすれば、たくさんの音源を使用することができますね。
AAX環境でVSTプラグインを使う
このMacとWindowsの連携、実は単に「CPU負荷を分散する」以上の大きなメリットがあります。それは「DAWのプラグイン形式の壁を越えられる」という点です。
たとえば、業界標準のDAWであるPro Toolsは、プラグイン形式としてAAXのみをサポートしており、VSTやAUプラグインは直接読み込むことができません。しかし、VEP8を使えばこの制限を回避できます。
仕組みとしては、Pro Tools上で立ち上げるVEPプラグイン自体はAAXに対応しています。しかし、VEP Server側、つまりホスト側はVSTやAUプラグインをホスティング可能です。つまり、Pro ToolsからVEPを経由することで、間接的にVSTやAUプラグインを使用できるようになるのです。
また今回のバージョンではVST3のホスティングにも完全対応しているので、最新のプラグインも問題なく動作。「使いたいフリーソフトがあるけどVSTしか対応していないからPro Toolsで使えない……」と諦めていた人も、VEP8を介すことで、Windows PC上のVSTプラグインをPro Tools上で鳴らすことが可能になります。これは、クロスプラットフォームで制作を行うユーザーにとって強力な武器になるはず。
DAWの負荷分散やテンプレート管理
「うちはパソコン1台しかないから関係ない」と思った方もいるかもしれませんが、実はVEPは1台のPC内で完結させる使い方でも大きなメリットがあります。
一見、手間が増えるだけのように思えますが、ここには「プロセスが分かれる」という重要な意味があります。まず大きなメリットとして挙げられるのが、CPU負荷の分散です。最近のDAWはマルチコアへの最適化が進んでいますが、それでもトラック数が増えたり重いプラグインを多用したりすると、処理が特定のコアに偏ってしまい、PC全体の性能を使い切れないことがあります。
しかし、VEPを使うことでDAWとは別のプロセスとして処理が行われるため、CPUのマルチコア性能をより効率的に引き出すことが可能になります。「DAW上で直接鳴らすとノイズが乗るけれど、VEP経由なら余裕で鳴らせる」というケースもあります。
そしてもう一つ重要なのが、クラッシュの回避です。DAWがクラッシュする原因の多くはサードパーティ製プラグインにあると言われていますが、VEPを使えば、万が一プラグインが原因でクラッシュしても、落ちるのはVEP側だけで、DAWは巻き込まれずに済みます。つまり、制作中のプロジェクトデータ、たとえばMIDIやオートメーションなどは無事というわけです。この安心感は計り知れません。
また、VEP8には「Preserve」、すなわち保持という機能があります。これはDAWのプロジェクトを閉じても、VEP上で読み込んだ音源の状態をキープしておける機能です。たとえば、ある作品で30曲作らなければならないとします。通常なら曲、つまりプロジェクトを変えるたびに数GBのオーケストラ音源を読み込み直すため、5分、10分と待たされることになりますが、VEPを使っていれば音源は立ち上げっぱなしでOK。DAW側のプロジェクト切り替えは一瞬で終わります。
実はこれだけでも元が取れる!?高品位な統合エフェクト群
今回のアップデートで見逃せないのが、強力なエフェクトプラグインが内蔵されたことです。なんと、VSLが誇る高品位エフェクト・スイート「Vienna Suite Pro」の全プラグインと、名門スタジオの響きを再現するコンボリューション・リバーブの無料版「Synchron Stage Reverb SO」が標準搭載されているのです。
Vienna Suite Proといえば、単体で購入すると数万円はするプロフェッショナルなエフェクトバンドル。EQ、コンプレッサー、リミッターといった基本ツールから、アナライザーなどのユーティリティまで網羅されており、その音質の良さには定評があります。これらは「Vienna Ensemble Pro内でのみ使用可能」という制限こそありますが、VEPをミキシングコンソールとして使う場合、追加投資なしで最高級のミックス環境が手に入ることになります。これだけでもソフトの価格以上の価値があるといっても過言ではありません。
最後にライセンス管理についても触れておきましょう。以前のVSL製品は専用のUSBドングル「Vienna Key」が必須でしたが、現在はiLokシステムに移行しています。VEP8もiLokに対応しており、物理的なドングルキーであるiLok USBだけでなく、iLok Cloudでの認証も可能。これにより、ドングルを持ち歩かなくても、ネット環境さえあればスタジオや外出先でライセンスを認証して使用することができます。
以上、Vienna Ensemble Pro 8および8Vについて紹介しました。かつては「設定が難しそう」「プロだけの機材」というイメージもあったVienna Ensemble Proですが、今回のバージョン8で接続周りが劇的に簡単になり、導入のハードルが一気に下がりました。Apple Siliconへのネイティブ対応やVST3対応といった基本スペックの向上に加え、統合された「Vienna Suite Pro」エフェクトを活用するだけでも十分な導入価値があります。
眠っている古いPCをサブマシンとして復活させるもよし、1台のPCで堅牢な制作環境を構築するもよし。さらにPro ToolsでVSTを使うといった裏技的な活用も可能です。VEP8は、マシンスペックの限界を突破し、より自由な制作環境を提供してくれる強力なツールでした。
冒頭でも紹介した通り、2026年3月2日(日)まで、25%OFFのセール期間中となっています。この機会を逃すと、冒頭でも書いたように23%の値上げが行われてしまうので、CPU負荷に悩んでいる方や、より効率的な制作フローを求めている方は、ぜひこのタイミングで導入を検討してみてはいかがでしょうか。
【関連情報】
Vienna Ensemble Pro 8
Vienna Ensemble Pro 8V
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