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U87にも匹敵する!? Earthworksのハンドヘルドコンデンサマイク、4万円のSR117と12万円のSR314をボーカル録音で徹底比較

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アメリカのマイクメーカーEarthworks(アースワークス)のハンドヘルド型コンデンサマイク、ハイエンドのSR314(121,000円税込:7月31日まで96,800円税込)とエントリークラスSR117(41,800円税込:33,000円税込)。どちらもライブからレコーディングまでこなせるSRシリーズのボーカルマイクで、SR314は国内ではKing Gnu、海外ではArctic Monkeysが愛用し、SR117は第39回TEC Awardの拡声用マイク部門を受賞するなど、すでにプロの現場で高い評価を得ています。

今回この2本を、シティポップやAORを現代に蘇らせるバンド、Velvet-RangeのボーカリストHannah Lily(ハナ・リリー)さんに、松原みきさんの名曲「真夜中のドア〜Stay With Me」を歌っていただく形で録り比べてみました。録音をお願いしたのは、サウンド・アーツのエンジニア岩崎光希さん。場所は、以前DTMステーションでも紹介した中目黒のレコーディングスタジオ、NOAHが運営する「REC STUDIO」。ハンドヘルドながら、エンジニアから「定番のU87と比べられる」という声も出たこの2本、実際どんなマイクなのか紹介していきましょう。

dbx創立者が生んだマイクメーカーEarthworksのハンドヘルドコンデンサSR117(左)とSR314(右)

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スピーカーを追い求めて、マイクにたどり着いたEarthworks

Earthworksの創業者、David Blackmer(デヴィッド・ブラックマー)さんは、コンプレッサの名機dbx 160などで知られるdbxの創立者であり、1971年に同社を設立して、VCAやRMS検出回路といった、今もプロオーディオの土台になっている技術を世に送り出した人物。そんなBlackmerさんが1979年にdbxを売却したあと、ニューハンプシャーの片田舎に移り、1995年に立ち上げたのが、今回紹介するEarthworksです。

測定用マイクからボーカル、ドラム録り用まで幅広く展開する、Earthworksのラインナップ

測定用のマイクとしてのイメージがあるEarthworks、実はもともとマイクメーカーを目指して始まった会社ではありませんでした。Blackmerさんが最初に作ろうとしていたのは、自分が本当に納得できる音で鳴るスピーカー。ところが、各社のツイーターを聴き比べているうちに、スペック表には現れない音の違いが、耳ではっきり分かってしまったのだそう。

スピーカー用に音を測ろうとして、たどり着いたのがマイク作り

そんな中、Blackmerさんは「このスペック表に現れない音を測れるマイクが世の中にない」と気づき、それなら自分で測定用マイクを作るしかないと開発に乗り出します。さらに、そのマイクをきちんと駆動するためのマイクプリまで自分で手掛け、そうして一つずつ作っていくうちに、いつの間にかスピーカーではなく、マイクのメーカーになっていたというわけなのです。

可聴域を超える帯域まで伸びる特性と音の立ち上がりの速さがEarthworksマイクの特性

この出発点が測定用マイクだったという点は、Earthworksのサウンドを理解するうえで重要なポイント。というのもBlackmerさんは「人の聴覚にとって意味のある情報は20kHzで終わらない」という考えの持ち主で、可聴域とされてきた20kHzを大きく超える帯域まで伸びる特性や、音の立ち上がりの速さに、徹底してこだわり続けてきました。そのためEarthworksには50kHzまで捉えられるマイクもあり、今回のSR314が30kHzまで録音できるのも、こうした思想を受け継いだものといえます。

小さなダイアフラムが生む「速さ」。SRシリーズに共通する設計思想

SR314とSR117は、価格も指向性も異なる2本で、心臓部のダイアフラムも、SR314が14mm、SR117が10mmとサイズが違います。とはいえ、一般的な大型ダイアフラムのコンデンサが25mm前後あることを思えば、どちらもかなりの小径。

一般的なボーカルマイクよりも小径のダイアフラム。SR117(左)が10mm、SR314(右)が14mmと、測定用マイク譲りの小ささ

ちなみにダイアフラムを小さくする利点は、インパルス応答とセトリングタイムにあります。インパルス応答というのは、スネアの一打や声の子音のような、ごく短く鋭い音に、マイクがどれだけ忠実に反応できるかを表すものです。理想は、音が来た瞬間にパッと立ち上がり、余計な揺れを残さずスッと止まる、という動き。

そして、反応してから余計な揺れが収まるまでの速さを表すのがセトリングタイムで、ここが短いほど、前の大きな音の揺れが後の音をにじませにくく、立ち上がりも減衰も正確に捉えられます。軽くて小さいダイアフラムほど、この素早い動きが得意で、Earthworksも、このインパルス応答とセトリングタイムの速さを、設計の中心に据えてきたメーカーです。ただ、もちろん小さければいいわけでもなく、一般にダイアフラムは小さいほど感度が下がりやすくなります。そこでEarthworksはカプセル全体を作り込むことで、感度を大きく犠牲にすることなく、小径ならではの速い反応と素直さを引き出しているのです。

エントリークラスのSR117とハイエンドのSR314。同じハンドヘルド型でも、指向性も価格も異なる2本

そしてもう一つ、SRシリーズで共通しているのが、フラットな周波数特性です。高域だけはモデルによって少し膨らみ方が違いますが、基本的には素直な特性になっています。小さいダイアフラムだと低域が痩せるのでは、と心配になりますが、実際の特性表を見ても下までフラットなのが確認できます。さらにスーパーカーディオイドやカーディオイドといった指向性を持ちながら、軸から多少ずれても音色そのものが大きく変わらない点も、このシリーズの優れたところです。ライブ用途を念頭に置いている分、吹かれや大音量に対する耐圧も高く取られています。

SR314の周波数特性

SR117の周波数特性

ハイエンドのSR314と、エントリーのSR117

では、2本の違いを具体的に見ていきましょう。上位モデルのSR314は「The instrument for vocalists」(ボーカリストのための楽器)を掲げるカーディオイドのコンデンサマイク。ステンレス製ボディにクラスAのアンプ回路を積み、20Hz〜30kHzというワイドな周波数特性を持ちます。最大入力レベルは143dB SPL、セルフノイズは20dB SPL(A特性)。

ステンレスの削り出しによる質感のあるボディ

ちなみにカラーバリエーションは、シルバーのステンレスのほか、ブラックボディにステンレスメッシュを組み合わせたタイプ、オールブラックのタイプと、3種類の仕上げから選べるようになっています。

SR314は、3つのカラバリがある

一方のSR117は、スーパーカーディオイドのコンデンサマイク。20Hz〜20kHzの特性に、最大入力140dB SPL、セルフノイズ20dB SPL(A特性)というスペック。指向性がより狭い分、ハウリングへの強さや、軸から外れた音の抑え込みに磨きが掛かっています。「コンデンサの音を持ちながら、ダイナミックマイクの安心感で使える」というのがメーカーの打ち出すコンセプトで、風切り音や破裂音、歯擦音の抑制も強化されています。

コンデンサの音を持ちながら、ダイナミックマイクの安心感で使えるSR117

より狭い指向性で扱いやすそうなSR117のほうがエントリークラス、というのは少し意外に感じるところですね。なお、SR117のようなスーパーカーディオイドは、真後ろよりも斜め後ろの135度あたりのほうが、音をよく遮ります。逆に真後ろは思いのほか音を拾ってしまうので、モニタースピーカーはそこを避け、少し角度をずらして置くと安心ですよ。

以下の比較表を見ると、感度はSR314のほうが約12dB高く、これが2本の扱いで一番大きな違いになります。セルフノイズはどちらも20dB SPL(A特性)で同等、最大入力もSR314が143dB SPL、SR117が140dB SPLと、SR314がわずかに上です。岩崎さんも録音時に「ゲインで15dBくらい違う感覚」と話していましたが、これはおもに感度の差によるもの。感度が高いSR314は出力そのものが大きく、少ないゲインでもしっかりした録音レベルが得られます。一方のSR117は、その分ゲインを多めに上げて使うことになります。なお、どちらもコンデンサマイクなので、使うには48Vのファンタム電源が必要です。

項目 SR314 SR117
クラス ハイエンド エントリー
マイクタイプ コンデンサ コンデンサ
指向特性 カーディオイド
スーパーカーディオイド
周波数特性 20Hz〜30kHz 20Hz〜20kHz
ダイアフラムサイズ 14mm 10mm
感度 -34dBV/Pa
-46dBV/Pa
最大入力レベル 143dB SPL 140dB SPL
セルフノイズ 20dB SPL(A特性)
20dB SPL(A特性)
重量 680g 380g
価格(税込) 121,000円 41,800円

中目黒のREC STUDIOで「真夜中のドア」を録ってみた

さて、ここからは実際のサウンドを聴き比べて行きましょう。録音に使ったのは、冒頭でも触れた中目黒のREC STUDIO。RMEのフラッグシップ、Fireface UFX IIIを中核に、プロの現場と遜色ない機材が破格の料金で常設されています。以前DTMステーションでも「プロ機材完備のプライベートレコーディングスタジオが中目黒に誕生。NOAH運営のREC STUDIOは常識外れの1時間1,650円!」という記事で紹介したスタジオで、自宅録音に限界を感じているDTMユーザーには心強い場所となっています。

録音は、NOAHが運営する中目黒の「REC STUDIO」で。RMEのFireface UFX IIIを中核にしたプロ仕様の環境が、破格の料金で使える

今回の信号の流れはとてもシンプル。マイクからRME Fireface UFX IIIのマイクプリへ直結し、それ以外の色付けは挟んでいません。録り音そのものにはEQもコンプも掛けておらず、ラフミックスのものだけ1176タイプのコンプやリバーブを薄く掛けている程度。また歌詞によっては吹かれなどで、低域が膨らむ場面もあったため、Pro Tools上で軽くローカットを入れています。マイク本来の素の音をできるだけそのまま捉える、という狙いの録り方をしています。なお、歌のみを再生している動画では、一切エフェクトを掛けていないデータを使用しています。

マイクからRME Fireface UFX IIIのマイクプリへ直結し、色付けを挟まず素の音をそのまま録音した

楽曲は、シティポップの名曲として近年改めて世界中で聴かれるようになった、松原みきさんの「真夜中のドア〜Stay With Me」。これをHannah Lilyさんに、SR314とSR117の2本で歌っていただきました。普段、こうしたハンドヘルドのマイクでわざわざ歌をレコーディングすることは多くありませんが、実際に録ってみると、どちらも十分にボーカル録りで通用する音でした。

SR314とSR117の2本で、松原みきの「真夜中のドア〜Stay With Me」を歌っていただいた

オケに乗せたミックスと、ボーカルだけのソロの2パターンで、YouTubeにアップしています。ソロは、先ほど触れたとおりエフェクトを一切掛けていないデータなので、マイクが捉えた素の質感がそのまま聴けます。まずはエントリークラスのSR117。上がオケに乗せたミックス、下がボーカルのみのソロです。

続いて、ハイエンドのSR314。こちらも上がミックス、下がソロになります。

聴き比べてみて、いかがでしょうか?今回の録り比べで改めて見えてきたのは、この2本の扱いやすさ。どちらもハンドヘルドなので周りの音を拾いにくく、エアコンのノイズや車が走る音など気にせず、宅録でも気軽に使えそうだと感じました。しかも音色そのものがボーカル向けに整えられているので、普段のコンデンサマイクのように後からEQで大きく補正しなくても、すんなりオケに馴染んでくれます。録りからミックスまで自分でこなす人にこそ、ぜひ試してほしい2本ですね。

音そのもので比べると、やはり軍配が上がるのはSR314。とはいえ、ここは好みや音楽のジャンル次第で、SR117のフラットで素直な鳴りがしっくりくる場面も、きっとあるはずです。SR117もSR314も、レコーディングはもちろん、そのままステージにも持っていける1本というのが、なんとも心強いところ。ちょっと気をつけたいのは、SR117に比べSR314は吹かれにやや弱いこと。ただこれも、ローを少し切ったり、録音時にポップガードを立てたりすれば、解決できるところではありますね。

U87と比べられる音。ボーカリストとエンジニアが感じた2本の違い

またHannah Lilyさんに、歌った感想を聞いてみました。
「SR314の方が歌いやすく感じました。しっかり響きはあるのに硬すぎず、その中でも、自分の取りたい音がきちんと聴こえてくるんです。マイクによっては音を捉えづらい、ということがあるのですが、響きと、音の取りやすさが両立しているのがとてもよかったです。硬くなりすぎないのに、自分の出している声がそのまま、芯のある音で返ってくる感じがしました」

Velvet-RangeのHannah Lilyさん

続いて、録音を担当した岩崎さんに、エンジニアの立場から2本の音の違いを伺いました。
「好みもあると思いますが、SR314はU87と比べられるマイクだなと感じました。抜けのよさ、そして解像度の高さ、そこが一番の魅力かもしれませんね。一方のSR117は、ヘッドホンで聴いても高域が強く出すぎるわけではなく、むしろこちらのほうが聴きやすく、とてもフラットな印象でした。またSR117は録音時にゲインをかなり上げたので、ダイナミックマイクに近い感覚で扱うイメージでしたね。僕はリハーサルスタジオで配信を担当することもあるので、コンデンサでこういうタイプがあると嬉しいです。ドラムがすぐ近くで鳴っているような、被りの多い現場でもコンデンサを使いたい場面や、プリプロでの収録などで使ってみたいです」

「SR314はU87と比べられる」と評する、録音を担当したサウンド・アーツの岩崎光希さん

歌を担当していただいたHannah Lilyさん

歌ってくれたHannah Lilyさんは、東京・銀座のケネディハウス銀座を拠点に活動するバンド、Velvet-Range(ベルベット・レンジ)のボーカリストです。ジャパニーズ・シティポップの名曲や洋楽AORを、LEDパネルを使った映像演出とともに現代に蘇らせる、音と映像が一体化したステージを展開しています。最新の出演スケジュールは、各SNSやケネディハウス銀座の情報をチェックしてみてください。

シティポップやAORを現代に蘇らせるバンド、Velvet-Range

・Velvet-Range(Instagram):https://www.instagram.com/velvet_range_band
・Hannah Lily(YouTube):https://youtube.com/@hannah_lily2230
・Hannah Lily(Instagram):https://www.instagram.com/hannah_lily223

2026年のVelvet-Rangeライブ予定

6月24日(水) 7月9日(木) 7月23日(木) 8月25日(火)
9月10日(火) 9月24日(木) 10月8日(木) 10月22日(木)
11月5日(木) 11月26日(木) 12月3日(木) 12月17日(木)

6月1日~7月31日、Earthworks Vocal Mic Promo 2026実施中

以上、Earthworksのハンドヘルドコンデンサマイク、SR314とSR117について、Hannah Lilyさんの歌を通して紹介しました。スピーカー作りから出発し、測定用マイクで培った速さと素直な特性を、ライブとスタジオの両方で使えるボーカルマイクへ落とし込んだのがこの2本。解像度と抜けのよさで応えるハイエンドのSR314と、フラットさと扱いやすさ、そして手の届く価格が魅力のSR117。ボーカリストが「歌いやすい」と感じ、エンジニアが「U87と比べられる」と評するハンドヘルドコンデンサというのは、なかなか出会えるものではありません。

そんなSR314とSR117を含めたEarthworksのボーカル用マイクが2026年6月1日~7月31日の期間限定でセールが行われています。価格は20%オフでSR117の場合、通常税込で41,800円が33,000円、SR314は通常121,000円が96,800円となっています。この機会にチェックしてみてはいかがでしょうか?

【関連情報】
Earthworks SR117製品情報
Earthworks SR314製品情報
Earthworks Vocal Mic Promo 2026情報

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コメント

  1. pepe より:

    ノイマンと比較して欲しかったですね。