DJ機器の最大手メーカー、AlphaTheta(アルファシータ:旧Pioneer DJ)のTORAIZブランドのコード進行生成マシン「Chordcat」(税込実売価格38,500円)。その最大の特徴であるコードレコメンド機能、Chord Cruiser(コードクルーザー)を、そのままDAW上で使えるようにしたプラグイン「Chord Cruiser」が公開されました。Windows/Macで動作するVST3およびAudio Units形式のMIDIプラグインで、11万通りのコード進行データベースを用い、選んだコードに続く“次のコード”を次々とお勧めしてくれます。
このChord Cruiserは現時点では単体販売は行われておらず、Chordcatを持っているユーザーなら製品登録をするだけで無料でフル機能が使えるというもの。誰でもダウンロードできるTrial版も用意されており、コードのレコメンド機能自体は制限なく試すことができます。作ったコード進行はドラッグ&ドロップでMIDIデータとしてDAWに持っていけるほか、MIDIファイルを読み込むこともできるなど、DAWユーザーにとってかなり使いやすいツールになっています。実際にCubase、Studio Pro、Ableton Liveで試してみたので、どんなものなのか紹介していきましょう。
Chordcatの心臓部、コードレコメンド機能をDAWに
DTMステーションでも以前「音楽制作をもっと直感的に。革命的なコード進行生成マシン、Chordcat誕生。12月10日までクラウドファンディング実施中」という記事で紹介しましたが、Chordcatは2024年11月に東京楽器博でお披露目され、Makuakeでのクラウドファンディングで大きな話題になった機材です。その後、2025年7月に一般販売がスタート。今年1月には「【NAMM 2026レポート1】クラファンから1年、大幅進化したAlphaTheta TORAIZのコード進行生成マシン、Chordcatの実力」という記事で、ファームウェアアップデートによる進化の様子もお伝えしました。
そのChordcatの最大の特徴が、選んだコードに続くコードをお勧めしてくれるChord Cruiserという機能。音楽理論が分からなくても、お勧めされたコードを耳で確かめながら選んでいくだけで、自分のイメージに合ったコード進行を作っていけるというものです。
AlphaThetaによると、ChordcatユーザーからはこのChord CruiserをDAW上でも使いたいという声が非常に多かったとのこと。Chordcatユーザーを対象にしたアンケートでも、ハードウェアとプラグインの両方が欲しいという回答が多く寄せられていたそうで、ハードとソフトを使い分けたいというニーズは大きいようです。そうした声を受けて開発されたのが、今回のプラグイン版Chord Cruiserなのです。
対応OSはWindows 10/11(64bit)およびmacOS 14 Sonoma以降で、プラグインフォーマットはVST3(64bit)とAudio Units。メーカーの動作確認済みDAWとしてはAbleton Live 12以降、Cubase 15以降などが挙げられていますが、今回試したところStudio Pro(旧Studio One)でも問題なく動作しました。
Chordcatユーザーは製品登録するだけでフル機能に
Chord Cruiserは、Chordcatの製品ページからダウンロードできます。プラグインを使うにはAlphaThetaアカウントでのログインが必要で、DAWでChord Cruiserを読み込むとログイン画面が表示されます。その際、アカウントにChordcatが製品登録されていれば、すべての機能が使えるフル機能版として起動する仕組みです。
手順としては以下のとおりです。
- AlphaThetaのWebサイトでアカウントを作成する
- Chordcatの製品登録をする(製品シリアルのラベルは、Chordcat本体の電池蓋を外したところに貼られています)
- Chord Cruiserをインストールし、DAWで起動してAlphaThetaアカウントでログインする
なお、アカウント作成時にXやGoogleのアカウント連携を使うとパスワードが設定されないため、プラグインへのログイン時にパスワードを別途設定する必要が出てきます。メールアドレスでのアカウント登録をしておくのがスムーズです。また一度ログインすれば、DAWを閉じてもログイン状態は保持され、次回からは自動的にログインされます。
一方、Chordcatを持っていない人や製品登録が済んでいない人は、Trial版として使うことができます。Trial版ではプラグイン名が「Chord Cruiser Trial」と表示され、以下の機能が制限されます。
- コードセットの追加・上書き保存・削除ができない(あらかじめ用意されたコードセットのみ使用可能)
- シーケンスパターンの追加・上書き保存・削除ができない
- MIDIインポート/MIDIエクスポートが使えない
ただし、コードのレコメンド機能自体は制限されていないので、Chord Cruiserがどんなものなのかを体験するには十分。Trial版で試してみて、気に入ったらChordcatの購入を検討してみる、というのもいいと思います。
音源は内蔵していないので、音源プラグインと組み合わせる
ハードウェアのChordcatは145種類の音色と16種類のドラムキットを内蔵していますが、プラグイン版のChord CruiserはMIDIデータを出力するだけで、音源は内蔵していません。そのため、Chord Cruiserだけを立ち上げても音は出ず、別の音源プラグインと組み合わせて使う必要があります。ちょっと特殊な使い方ではありますが、考え方さえ分かれば難しくはなく、どのDAWでもやることは基本的に同じです。
まずChord Cruiserを読み込んだインストゥルメントトラックを作成します。次に、音源として使いたいインストゥルメントで、もうひとつインストゥルメントトラックを作成します。ここでは先日「49ドルのガジェット風シンセ「WINNETKA」が面白い!強力なボコーダーを搭載し、まさかのハードウェア化も進行中」という記事で紹介したWINNETKAを使ってみました。そして、WINNETKA側のトラックのMIDI入力をChord Cruiserに設定すればOKです。
Chord Cruiser側のトラックからはMIDIの送り先を選べないので、受ける側である音源側のトラックの入力で、Chord Cruiserを指定する、というのがポイントです。Cubase、Studio Pro、Ableton Liveの3つで試してみましたが、いずれも同じ考え方で動作しました。
ただし、Ableton Liveの場合はもう1か所設定が必要です。MIDI Fromの下にあるチャンネル設定がデフォルトで「Pre FX」になっているので、ここも「ChordCruiserPlugin」に変更します。これで、Chord Cruiserで鳴らしたコードがWINNETKAから鳴るようになります。
コードセットを選び、レコメンドされたコードでコード進行を組み立てる
では、実際の使い方を見ていきましょう。まず画面左上のコードセット選択メニューで、好みのジャンルのコードセットを選びます。80’s Synth Pop、House、Future Bass……とChordcat本体と同じコードセットが用意されており、選ぶとそのジャンルをイメージしたコード進行が画面下のコードストック部に読み込まれます。コードストック部には最大13個のコードを並べることができ、クリックするとそのコードが鳴ります。
ここからがChord Cruiserの真骨頂。コードストック部のコードをクリックすると、そのコードに続くコード候補が画面中央のコード候補エリアにずらりと表示されます。1ページに最大32個のコードが表示され、候補が多い場合はページを切り替えて見ていくことができます。候補をクリックして響きを確かめ、気に入ったコードがあれば、それをコードストック部へドラッグ&ドロップ。これを繰り返していくことで、自分だけのコード進行を作っていけるわけです。
コード候補エリアの左にあるレコメンドモード切替ボタンを「Cruiser」から「Voicing」に切り替えると、次のコードではなく、選んだコードの構成音を変えたボイシングのバリエーションを提案してくれます。同じコードでも響きをちょっと変えたい、というときに便利な機能です。
さらにFILTERSで、候補を絞り込むことも可能です。上段のC〜Bのボタンでルート音を、下段の3〜6のボタンで和音数(構成音の数)を指定すると、条件に合わないコードが濃いグレーで表示されます。
また画面下の鍵盤部には、選んでいるコードの構成音が緑色で表示されます。ここで鍵盤をクリックして音を追加したり削除したりして、コードを直接編集することも可能です(1つのコードは最大6音まで)。データベースにないコードになった場合でも「Original Chord」として扱われ、そこからさらにレコメンドを受けることができます。キーとスケールを設定しておけば、スケール外の音を含むコードが濃いグレーで表示されるので、曲のキーに合わせてコードを選ぶ際の目安にもなります。
このほか、コードストック全体をオクターブ単位や半音単位で上下させたり、ランダムボタンでコードストックにコードをランダムに並べたりすることも可能です。
プラグイン版ならではの「パフォーマンスモード」
プラグイン版のChord Cruiserで新たに搭載されたのが、パフォーマンスモードという機能です。画面上部のMODEを「Standard」から「Performance Mode」に切り替えると、コード候補エリアが左右2つに分かれて表示されます。
左のエリアには、コードストック部で選んだコードに続くコード候補が表示されます。ここでコードを選ぶと、そのコードに続く候補が右のエリアに表示され、右でコードを選ぶと、今度はそれに続く候補が左に表示される……という仕組み。つまり、左右のエリアを交互にクリックしていくだけで、レコメンドされたコードを連続して鳴らしていけるのです。お勧めのコードをたどりながら、まさにコードの海をクルージングしていく感覚で、思いがけないコード進行に出会えるのが面白いところです。
また、パフォーマンスモードでは、コードストックエリアのランダムボタンがコード記録ボタンに切り替わります。これをオンにすると、左右のエリアで選んでいったコードが、コードストック部の空いているスロットに順番に記録されていきます。気持ちよく弾けた流れを、そのままコード進行として残しておけるわけですね。
最大8小節のシーケンサーでパターンを作る
画面右側にはシーケンスエリアがあり、コードストック部やコード候補エリアのコードをドラッグ&ドロップしてステップに並べていくことで、シーケンスパターンを作ることができます。1ページ(1小節)が4×4の16ステップで、最大8ページ、つまり8小節までのパターンを作成可能です。ステップごとにゲートレングス(1〜32ステップ)とベロシティ(0〜127)を設定できるので、コードを長く伸ばしたり、刻んだりといったことも自在です。
RECボタンを押してシーケンスパターンを再生しながら、コードストックやコード候補エリアのコードを鳴らしていけば、リアルタイムに記録していくことも可能です。シーケンスはDAWの再生・停止に連動し、テンポもDAWのBPMに従います。
さらにChordcat本体でもおなじみのランニングダイレクション機能も搭載。Right/Down/ClockWise/CounterClockWiseの4つの進行パターンに、Reverse(逆再生)とSwitchBack(折り返し再生)を組み合わせることで、全16パターンの再生方向を設定できます。同じコードの並びでも、再生順序が変わることで思いがけないフレーズが生まれるのは、Chordcat譲りの楽しいところです。
MIDIファイルのドラッグ&ドロップで、DAWとの行き来が自在に
Chord Cruiserを使っていて、とても便利だと感じたのがDAWとの連携です。作ったシーケンスパターンは、画面右上にある「MIDI Ex」(MIDIエクスポート)のエリアをつかんで、DAWのMIDIトラックやインストゥルメントトラックにドラッグ&ドロップするだけで、MIDIデータとしてそのまま貼り付けられます。デスクトップなどパソコン上にドロップすれば、MIDIファイル(.mid)として保存することもできます。
さらに、その隣の「MIDI Im」(MIDIインポート)のエリアにMIDIファイルをドラッグ&ドロップすると、その内容をシーケンスエリアに読み込むことができます。特に便利なのが、以前MIDI Exで書き出したMIDIファイルを読み込んで、作業の続きができること。DAWで作ったコード進行を読み込んで、そこからChord Cruiserのレコメンドで別の展開を探ってみる、といった使い方も可能です。
ハードウェアのChordcatの場合、作ったデータをDAWに持っていくには、MIDIでリアルタイムレコーディングするか、Chordcat Managerを使ってSMFに変換する必要がありました。それと比べるとプラグイン版は格段に手軽。Chord Cruiserでコード進行のアイディアを練って、気に入ったらそのままDAWに取り込んでアレンジを進めていける。DAW上で動くプラグイン版ならではのメリットといえそうです。
なお、このMIDIインポート/エクスポート機能はTrial版では使えず、Chordcatを製品登録したアカウントでログインすることで利用可能になります。
外部MIDIキーボードからも演奏可能
マウスでクリックするだけでなく、外部のMIDIキーボードからChord Cruiserを操作することもできます。割り当ては、コードストック部の1〜13番目がC2(ノートナンバー48)〜C3(ノートナンバー60)、コード候補表示部の1〜32番目がC4(ノートナンバー72)〜G6(ノートナンバー103)。またA3(69)でページ戻り、B3(71)でページ送りができます。パフォーマンスモードでは、左のコード候補エリアがC4(72)〜D#5(87)、右のエリアがC6(96)〜D#7(111)に割り当てられます。
かなり広い音域を使うことになるので、鍵数の多いキーボードのほうが使いやすいですが、鍵盤で弾くような感覚でコードを選んでいけるのは楽しいところ。画面右上の「?」ボタンを押すと、どのノートがどの操作部に割り当てられているかが画面上に表示されるので、それを見ながら操作するといいでしょう。
フォーラムで意見を募集中。東京楽器博にも出展
このChord Cruiserは、今後もアップデートが計画されています。現時点ではChordcat本体とプラグインの連携機能はありませんが、そうした要望もAlphaThetaには届いているとのこと。今回、プラグイン化を求めるユーザーの声に応える形でChord Cruiserが誕生したように、ユーザーの声を受けて育っていくソフトウェアになりそうです。
そのフィードバックの窓口となるのが、AlphaThetaのコミュニティサイトにあるChord Cruiserのフォーラムです。日本語、英語の両方に対応しており、要望や質問を書き込むと、AlphaThetaのスタッフが随時対応してくれるそうです。使ってみて気になった点や、こんな機能が欲しいといった意見があれば、ぜひ書き込んでみてください。なお、このフォーラムからもインストーラーやマニュアルをダウンロードすることができます。
またChordcatでは、製品登録したユーザーを対象に、DAWの「Ableton Live Lite」を無償で提供するキャンペーンも継続中です。DAWを持っていない人でも、Chordcatを購入すればLive LiteとChord Cruiserがそろうので、すぐにDAWでの音楽制作を始めることができます。
さらに、10月31日、11月1日に開催される「東京楽器博 2026」には、AlphaThetaがChordcatとChord Cruiserを出展するとのこと。2024年の東京楽器博でお披露目されたChordcatが、プラグイン版とともに同じ舞台に戻ってくるというわけです。会場で実際に触ってみることもできるので、興味のある方はぜひ足を運んでみてください。
なお、Chordcatの公式Xアカウント( @Chordcat_ )では、製品の使い方や制作に役立つTipsを日々発信しています。今後は、Chord Cruiserに関する情報もこちらで順次公開予定とのことで、続報が気になる方は今のうちにフォローしておくのがよさそうです。
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