ApolloシリーズやUADプラグインでお馴染みのUniversal Audio。そのUniversal Audioが開発するDAW、LUNAが9月15日にバージョン3.0へと大きく進化し、無償版のLUNA Freeと有償版のLUNA Studio(32,835円税込)という2本立てのラインナップになりました。もともとLUNAは、無料でもトラック数などに制限のないDAW。ボカロ曲のように公式のオフボーカル音源がある曲なら、そのオケに歌を重ねて書き出し、投稿するところまでお金をかけずに済んでいました。今回の3.0では、そこに初めてでも迷わずセットアップできるLUNA Playと、好きな曲からボーカルを抜き出すステム分離が加わっています。これで、カラオケが用意されていない曲でも、練習用のオケを自分で手軽に作れるようになったのです。
ただし、既存の曲からボーカルを抜いたカラオケはあくまで練習用で、そのまま投稿に使えるものではありません。そこで効いてくるのが有償版のLUNA Studio。ステム分離が最大6パートに増え、分離した伴奏をAudio to MIDIでMIDIデータに変換できるので、一から耳コピするよりずっと簡単に自作のカラオケが作れます。さらに歌詞の書き起こしに加えてTopline Vocal TuneとMelodyneでピッチを整えられ、40万円相当のUADプラグインが付属するので、ミックスまで高いクオリティで仕上げられるのです。無料版でどこまでできて、有償版で何が変わるのか、歌ってみたの流れに沿って紹介していきましょう。
無料版と有償版は同じDAW。LUNA 3.0で変わったこと
LUNAは、Universal Audioが開発するmacOSとWindows用のDAW。もともとはApolloシリーズのユーザー向けに登場し、その後どのオーディオインターフェイスでも使える無料のDAWとして開放されてきました。入手法と基本操作は、以前の記事「廃止が決まったStudio One Primeの受け皿になる!?プロ絶賛のUniversal Audioの無料DAW、LUNA入手法と基本操作ガイド」で紹介しているので、こちらもぜひ参考にしてみてください。
さて今回のバージョン3.0では、無償版がLUNA Free、有償版がLUNA Studioという名前に整理されました。LUNA Studioは、これまでのLUNA Proが名前を変えたもので、Proに入っていたものはすべてそのまま引き継いでいます。ポイントとなるのは、LUNA FreeとLUNA Studioのベースとなる部分はすべて同じというところ。無料版だからといってトラック数に制限があったり、書き出した曲に透かしが入ったり、使える期間が決まっていたりすることはなく、録音や編集の基本操作は有償版と同様となっています。
さらに無料版にも、UADプラグインが8本付属しており、マイクプリからコンプ、リバーブ、ギターアンプ、シンセまで一通り揃った構成で、もちろんVST3とAUのサードパーティ製プラグインも読み込むことが可能。ちなみに無料で使えるUADプラグインは、過去有償で販売されていたものもあり、プロの現場でも定番になっているプラグインが含まれていますよ。
UA 1176 Classic FET Compressor
Teletronix LA-2A Tube Compressor
Vibe Analog Machines Essentials
Pure Plate Reverb
UAD Showtime ’64 Tube Amp
Century Tube Channel Strip
PolyMAX Synth
なお対応OSはmacOS 11から26まで、Windowsは10の64bit版と11です。入手方法について簡単に説明すると、UAのアカウントを作って、UA Connectをインストール、UAD Explore FREEをダウンロードするだけ。LUNA Freeはこのバンドルの一部として配布されているので、先ほどの8本のプラグインも一緒に手に入ります。ちなみに上記のプラグインは、LUNAでしか使えないというわけではなく、通常のプラグインと同様にほかのDAWでも利用可能となっているので、とりあえず入手しておいて損はないですよ。
そんなLUNAに3.0で加わった目玉の機能が、LUNA Playとステム分離です。どちらもほかのDAWなら上位グレードや有料オプションに入っていておかしくない機能で、それが無料版に含まれているのです。
では、歌ってみたの作業のどこまでが無料で、どこからが有償なのか。今回は、手持ちの曲からカラオケを作って歌を重ねる場面を想定して、順に操作していきます。全体像としては、無料のLUNA Freeで完結するのは、曲をステム分離してカラオケを作り、LUNA Playで歌を録って書き出す、という流れ。オフボーカルのオケが手に入る曲なら、これだけで公開用のデータまで作ることが可能です。そこから先、分離したパートをMIDIに変換して自分のオケに作り替え、歌を仕上げてミックスするという制作の工程は、LUNA Studioでできることとなっています。
ボーカルを抜けばカラオケが完成。無料で使えるステム分離
まず、LUNAを立ち上げると、左端にCreate、Store、Plug-Insなどのアイコンが並ぶホーム画面が開き、Createが選ばれた状態になっています。ここには新規セッションの作成と最近のセッションが並び、上部にStart Recording in Seconds、Split Stems and Jam、More Ways to Startという3つの入口があります。カラオケ作りの入口はSplit Stems and Jamなので、これをクリックしましょう。
すると、Stem Separate a Backing Trackというダイアログが開きます。上にファイルをドロップする枠があり、その下に2 Stems、4 Stems、6 Stemsの選択肢が並ぶ作り。2パートはボーカルと伴奏、4パートはドラム、ボーカル、ベース、その他という分け方で、LUNA Freeで選べるのはこの2つです。6パートはギターとピアノが加わるLUNA Studio限定。カラオケが欲しいだけなら2パートで足りますが、後でドラムやベースのバランスを組み直せるように、ここでは4パートを選択し、曲のファイルを枠にドラッグしてSeparate Stemsをクリックします。
LUNAでは、この処理をPCの中で行っているので、インターネット接続は必要ありません。ただ、後で紹介するAudio to MIDIや歌詞の書き起こしはクラウド側の処理なので、インターネットへの接続が必須となっています。
今回は3分49秒のボーカル入りの2ミックスのWAVファイルを4パートで分離してみました。処理が終わるとそのままLUNA Playの画面に切り替わり、Vocals、Bass、Drums、Otherという4つの円形のタイルが並びます。タイルにはマイク、ベース、ドラム、波形と楽器の種類に応じたアイコンと色が付くので、どれがどのパートかは一目で分かりますね。
ここで、分離の結果をタイムラインでも確認しておきましょう。左上に並ぶ3つのアイコンのうち真ん中をクリックすると、通常のタイムライン画面に切り替わります。分離されたVocals、Bass、Drums、Otherがそのまま4つのトラックとして並び、各トラックには楽器の種類に応じたアイコンと色が自動で付いている状態。クリップ名も「曲名 – Vocals」のように整理されているので、後で編集するときにも迷いませんね。
なお、このタイムライン画面からも、FileメニューのSeparate Stems from File…で分離できます。こちらは作るトラックをチェックで選べるダイアログになっていて、OKを押せば同じように4トラックが並ぶ形です。
続いて、テンポを確認します。分離した直後は、LUNA Playの上部のTempoが初期値の120 bpmのままです。ここをクリックしてDetect Song Tempoを押すと、曲のテンポが検出されます。タイムライン画面ならAssistantメニューのExtract Tempo from Entire Sessionで自動的に検出してくれます。隣のKeyも初期値のC majorのままなので、キーが分かっていればここで指定しておきましょう。
起動して数秒で歌い始められる、新しい画面のLUNA Play
カラオケができたら、次は歌を録っていきましょう。使うのは、分離が終わって切り替わったこのLUNA Playの画面。DAWで録音を始めるときに必要な工程である、トラックを作って入力を選び、エフェクトを挿す、という準備をまとめて引き受けてくれる新しい画面で、ApolloやVOLTのように対応するインターフェイスなら入力ゲインの調整まで自動です。
なお先ほど並んだ4つの円形のタイルは、それぞれが1つのトラックを表しており、タイルにカーソルを合わせると左上に録音待機、左下にミュート、右下にソロのボタンが現れ、外側の太いリングをドラッグすれば音量、タイルの下のほうをドラッグすればパンが動きます。
歌を録る前に、オーディオインターフェイスの設定も確認しておきましょう。LUNAメニューのSettingsを開くと、SETTINGSのHARDWAREタブに接続中のオーディオデバイスが一覧で並びます。使うインターフェイスにチェックを入れ、APPLYをクリックします。
次に、自分が歌うトラックを用意します。タイルの右端にある+をクリックするとメニューが開くので、New Vocal Trackを選択。するとChoose an Inputというダイアログが出るので、マイクを繋いだ入力を選んでContinueを押します。これで右端にVocalのタイルが加わります。
そして歌ってみたで欲しいのは、ボーカルの入っていない伴奏ですよね。分離したVocalsのタイルにカーソルを合わせて左下のミュートをクリックすると、タイルが暗くなってスピーカーのアイコンが赤に変わり、これでカラオケが鳴る状態になりました。後は自分のVocalのタイルの左上の丸をクリックして録音待機にし、上部の録音ボタンを押して歌うだけ。これでカラオケ音源に歌を重ねた状態ができあがります。
録った歌を整えて書き出す。ミキサーもプリセットも無料の範囲
さて、録れたらミキサー画面で整えていきましょう。左上の3つのアイコンの右端をクリックしてミキサーを開くと、Vocalトラックのインサートには最初からボーカル用のプラグインが挿さった状態。無料版であればUAD Explore FREEのプラグインで組まれたプリセットが入る形で、録った後に一から音作りをしなくても、土台ができた状態から整えていけるわけです。
ここでは、歌がオケに埋もれないようバランスを取り、Vocalのプラグインのかかり具合を調整する、といった基本的なバランス取りをしておきます。ミックスについて書き始めると、それだけで記事が1本できてしまう量になるので、ここでは深入りしませんが、LUNA Studioのプラグインを使ったミックスについては、後半で軽く紹介しますね。また歌の合間のノイズなどが気になるなら、タイムライン画面でクリップを右クリックして新機能であるStrip Silenceを選べば、無音とみなす音量と長さを決めて、歌のあるところだけをクリップとして残すこともできますよ。
バランスが取れたら書き出しです。LUNA Playに戻って右上の書き出しボタンをクリックすれば簡単にWAVで保存することができます。
ファイル形式やステムごとの書き出しを選びたいときは、タイムライン画面のFileメニューのExportを使えば、より詳細な設定をした上で書き出し可能です。
ここまでで、好きな曲をカラオケにして歌を録り、書き出すところまでが無料でできたわけですが、1つ押さえておきたいことがあります。それは既存の曲を分離したオケは、あくまで自分の練習用として使うのが基本だという点です。YouTubeなどの投稿サイトは、楽曲の著作権については管理団体との包括契約でカバーしていますが、CDや配信の音そのものに関わる原盤権は別。分離したオケは元の音源そのものなので、それを載せて公開すると原盤権に触れてしまうわけです。
歌ってみたなら、ボカロ曲のようにボカロP自身がオフボーカルのオケを公開している曲で、それを使うのが定番です。クレジットの表記や非営利といった条件が配布ページに書かれていることがあるので、その範囲で使うのがマナーですね。そのオケはタイムライン画面のFileメニューのImport…か、タイムラインへのドラッグ&ドロップで読み込めば、後は先ほどと同じ手順で歌を重ねられます。
しかも公式のオケをそのままステム分離にかければ、ドラム、ベース、その他に分かれるので、自分の声に合わせてバランスを組み直せます。ドラムが強くて歌が埋もれるならドラムのタイルを下げる、ベースだけ少し上げる、といった調整が無料の範囲でできるわけです。ただしこれはオケに手を加えることになるので、配布ページで改変が断られていないかは先に確認しておきたいところです。
一方、J-POPもシングルのカップリングや配信でインスト版が出ていることは珍しくありません。ただしそれはレコード会社の原盤そのものなので、歌ってみたに載せて公開すると先ほどの原盤権の話に戻ってしまいます。ボカロ曲のオケを使えるのは、ボカロPが歌ってみた向けに配布を認めているからで、そこが違いです。アップロードするのであれば、J-POPは自分でオケを作ることになるわけです。その作り方は、この後のLUNA Studioのところで紹介します。
以上が、歌ってみたを例にしたLUNA Freeの使い方です。カラオケ作りから練習、録音、書き出しまでが、無料の範囲で1つのDAWの中に収まっています。なお、この記事の画面はLUNA Studioで撮影していますが、両者は同じDAWなので、ここまでの画面と操作はLUNA Freeでも変わりませんよ。
LUNA Studioなら、分離したオケを丸ごと自分の音源に作り替えられる
さて、ここからは有償版のLUNA Studioで加わる機能です。練習の次に欲しくなるのは、アップロードできる自分のオケ。J-POPを歌うなら、ここが避けて通れない工程ですよね。その中心になるのが、オーディオをMIDIデータに変換するAudio to MIDI。ステム分離で6パートに分けたトラックをそれぞれMIDIに変換し、ソフト音源で鳴らし直せば、音色を自分の手持ちに置き換えたオケが作れるわけです。完璧に再現できるわけではないですが、ピアノロールで一から打ち込む手間が省けますし、最初からある程度打ち込み終わっている状態なので、初めてオケを作る人でも取り掛かりやすいと思います。
こうして自分の音源で鳴らし直したオケは、元の音源そのものではなくなるので、先ほどの原盤権の問題を回避できます。変換したMIDIに手を入れ、音色やエフェクトを自分で組んでいくほど、自分のオケになっていくわけですね。もちろん楽曲の著作権は残るので、投稿先の包括契約でカバーされる範囲で使う、という注意は必要です。
さて、まずは曲を6パートで分離していきましょう。先ほどのダイアログで6 Stemsを選べば、ドラム、ボーカル、ベース、その他に加えてギターとピアノが独立したトラックになります。コードを弾いている楽器が分かれるので、この後のMIDI変換の精度に効いてくる部分です。
続いて、テンポやキー、リージョンの開始位置などを整えたら、伴奏のトラックかクリップを右クリックしてConvert to MIDI…を選び、アルゴリズムを選んでConvertを押すと、変換されたMIDIが新しいトラックとして作られます。アルゴリズムは素材に合わせて7種類から選ぶ形で、迷ったらAutomaticにしておけばMelodyneが判断してくれます。分割されたクリップを1つのMIDIにまとめたいときは、同じダイアログのConsolidate Clipsをオンにしておきます。今回はステム分離後のデータでクリップは1つにまとまっているので、どちらでもOKです。
| アルゴリズム | 向いている素材 |
|---|---|
| Automatic | Melodyneが素材に合わせて自動で選ぶ |
| Universal | 2ミックスやオーケストラのステムなど、複数の楽器が混ざった素材 |
| Percussive | スネア、ハイハット、シェイカーなど音程のない打楽器。1音のMIDIに変換してサンプラーを鳴らす |
| Percussive Pitched | 808のキック、コンガ、タブラなど音程のある打楽器 |
| Melodic | リードボーカル、管楽器、単音のベースラインなど単旋律 |
| Polyphonic Sustain | ストリングスのレガート、オルガン、パッドなど伸びる和音 |
| Polyphonic Decay | ピアノやギターなど減衰する和音 |
またトラック側から変換するときは、ダイアログにSource Trackの項目も現れます。元のオーディオトラックを残すDo Nothing、削除するDelete Track、非表示にして無効化するHide And Deactivateの3択で、聴き比べたいならDo Nothingのままで大丈夫です。
なお変換にはCelemony Melodyneの技術が使われていて、初めて変換するときにはMelodyneのライセンスの有効化を求められます。UA ConnectにあるGet My Codeをクリックしてコードをコピーし、MelodyneのページでアクティベーションすればOK。実際に試したところ、初めてアクティベーションした際は一度LUNAを再起動する必要がありました。
伴奏トラックを一通りMIDIに変換したら、変換したMIDIトラックに音源を割り当てます。トラックのINSTにある+を押すとプラグインの一覧が開き、付属の音源と、手元にインストールされているAUやVST3の音源がメーカーごとに並びます。もちろんKONTAKTのような手持ちのソフト音源を使ってもいいですが、オケに使える音源はLUNAに付属するものだけでもこれだけあります。
| 音源 | Free/Studio | 使いどころ |
|---|---|---|
| Shape | Free | ドラム、ベース、ギター、ピアノ、エレピ、オーケストラまで入った音源集。オケの土台はこれで一通り組める |
| PolyMAX Synth | Free | アナログ系のポリシンセ。パッドやリード |
| Opal Morphing Synthesizer | Studio | アナログとウェーブテーブルを合わせたシンセ。フィルターがモーフィングする |
| Ravel | Studio | Steinway Model Bを収録したグランドピアノ。バラード系の伴奏に |
| Waterfall B3 Organ | Studio | Hammond B3とLeslie 147を再現したオルガン |
ドラムのトラックはShapeのドラムキットに、ベースやピアノはShapeやRavelに、と分離したパートごとに音源を当てていけば、オケの音色が丸ごと自分のものに置き換わりますよ。
ただ、変換したMIDIには手直しが要る部分も出てきます。ここで役立つのがコード抽出で、クリップを右クリックしてExtract Chordsを選ぶと、曲のコード進行が解析されてChordsルーラーに並びます。今回は元となる楽曲があるので、それをタイムラインに貼って、コードを抽出しましょう。ルーラーが見えないときは、ルーラー左の︙かViewメニューのRulers…でChordsをオンにしてみてください。
手直しはピアノロールで行います。MIDIクリップをダブルクリックするとタイムラインの下にピアノロールが開き、左側に選択、鉛筆、ペイントなどのツールが並ぶ作り。上部でROOTとSCALEを指定してSCALEのボタンをオンにすると、スケールに含まれる音の段が明るく表示され、スケールから外れたノートを置くと色が変わるので、外れた音が一目で分かりますよ。キーはメインのKeyルーラーに追従させることも可能です。
ノートを選んで長さを半分や2倍にする、反転する、レガートやスタッカートにするといった操作もボタンで並んでいて、下にはベロシティとMIDI CCのレーンがあります。グリッドは表示の拡大率に応じて自動で分解能が変わるAdaptive Gridで、ズームインすればそのまま細かい修正に移れます。Chordsルーラーと見比べながら、ずれたノートをクオンタイズとスケール表示で整えていけば、自分の音源で鳴るオケが形になります。伴奏だけでなく、自分の歌ったメロディをMelodicでMIDIにして、そこからハモリを作るような使い方もできますね。
ただ実際に試してみると、音色の多い曲は、Audio to MIDIにかけるだけでオケができるというわけにはいきませんでした。分離できるのが6トラックまでなので、シンセが何本も重なった曲では、同じトラックに複数の音色が混ざった状態でMIDIになります。ギターが何本も重なっている曲も同様で、どこまで手間がかかるかは曲の作り次第ですね。
それでも、何の手がかりもないところから耳コピするのとは大違い。コードはExtract Chordsで解析できていますし、メロディやベースのラインもすでにノートとして打ち込まれた状態なので、混ざった部分はそれを参考にしながら自分で組み直していけばいいわけです。パッとオケができる魔法の機能というわけではないですが、何から取りかかればいいか分からない人にとっては有用な機能だと思いますよ。
歌詞表示からピッチ補正、Synthesizer Vまで。LUNA Studioのボーカル機能
オケの打ち込みができたら、歌のほうも少し仕上げていきましょう。LUNA Studioにはボーカル向けの道具がまとめて入っていて、まず面白いのが歌詞の書き起こし。Vocalに設定したトラックのクリップを右クリックしてTranscribe Lyricsを選ぶと、歌った内容が自動で文字になり、波形の下に歌詞として並びます。再生中は今歌っている単語に下線が付き、単語をクリックすればその位置にジャンプ、ダブルクリックすれば文字の修正も可能。歌詞が並ぶ段の右端のアイコンからLyrics Browserを開けば歌詞全体を一覧して検索もできるので、直したい箇所を波形ではなく言葉で探せるようになりますよ。
ただし歌詞の書き起こしは、現在のところ英語のみの対応。日本語の歌詞への対応は、今後のアップデートに期待したいところですね。なお処理はクラウドで行われるため、インターネット接続が必要になります。
ピッチ補正には、Celemony Melodyne essentialが付属しています。ボーカルのピッチ補正といえばまずMelodyneというほどの定番で、LUNAではARAプラグインとして組み込まれています。
使い方は、タイムラインでボーカルのクリップをダブルクリックし、Warp TypeのメニューからARAを選んでMelodyneを指定するだけ。タイムラインの下にMelodyneのパネルが開き、検出されたノートが並ぶので、ノートごとにピッチとタイミングを直していけます。トラック側のWarpの欄から選べば、そのトラックのクリップ全部にまとめて適用することも可能。編集は再生時にそのまま反映されるので、書き出し直す手間もありませんよ。
これに加えて、今年6月に登場したUniversal AudioのTopline Vocal Tuneも今回から付属します。こちらはリアルタイムに補正するプラグインで、ほぼ遅延なくピッチの合った自分の声をヘッドホンで聴きながら歌えるのが特徴。録りながら整えるTopline Vocal Tuneと、録った後に追い込むMelodyneの2段構えになっているわけですね。
宅録につきものの環境ノイズには、Steinberg SpectraLayers Goが用意されています。クリックノイズやポップノイズ、低域の雑音といった不要な成分を、スペクトル表示で見ながら取り除くことができます。またNoiseWorks VoiceAssist Basicは、Aメロは声が小さくサビで大きくなる、といった声量のばらつきをAIで解析して、ボリュームのオートメーションとして自動で書いてくれるプラグインとなっています。
そしてLUNA StudioにはDreamtonics Synthesizer V Studio 2 Coreも付属しています。以前の記事「合唱制作の歴史が変わった。Synthesizer Vが実現した「16人AI合唱」という革命」でも紹介したAI歌声合成ソフトで、ノートと歌詞を入力すれば、ボーカリストがいなくても人の声に近い歌とハーモニーが作れるもの。ボイスは3つの中から1つを選んで使う形なので、仮歌を作って人に渡す、ハモリのパートだけ合成の声で埋める、といったさまざまな使い方ができますよ。
またボーカル以外では、曲のコード、テンポ、グルーヴに合わせて実際のギター演奏を鳴らしてくれるCelemony Tonalic Essentialも用意されています。ラウドネスの確認に使えるマスタリングソフト、Steinberg WaveLab Goも同梱。MelodyneからWaveLab Goまでの6本はいずれもARAプラグインで、LUNAのタイムライン上でクリップをそのまま開いて扱えますよ。
定番のミックスプラグインも付属。オケとボーカルのミックスも完結できる
オケと歌が揃ったら、最後はミックスです。LUNAを開発しているUniversal Audioは、1176やLA-2A、610といった名機を自ら作ってきたメーカーで、それらを再現したUADプラグインは世界中のスタジオで定番となっています。
多くのDAWに付属しているのは、あくまで基本的なEQやコンプ。本格的に音を作ろうとすると、サードパーティ製のプラグインを有料で買い足すことになります。LUNA Studioの場合、その買い足す側の定番プラグインが約30本まとめて付属しているので、ミックスの道具が最初から揃っているというわけですね。
そしてプラグインに加えて、LUNA Studioならではなのが、LUNA Extensionsです。これはプラグインとして挿すものではなく、ミキサーそのものに組み込まれたアナログ機材のエミュレーションで、テープのStuder A800とAmpex ATR-102、コンソールのAPI Vision ConsoleとAPI Summing、バスコンプのAPI 2500 Bus Compressorの5つが用意されています。
使い方は、各トラックのTAPEの欄でStuder A800を選ぶだけで、そのトラックはテープに録った音に。CONSOLEの欄でAPI Visionを選べば各トラックにAPIコンソールのチャンネルストリップが付き、バスやメインのSummingでAPI Summingを選べば、全トラックを足し合わせる部分までAPIコンソールを通した音になります。DAWの中にテープとコンソールを丸ごと持ち込める仕組みで、無料版で使えるのがテープのOxide Tapeだけなのとは大きな違いです。
LUNA Studioに付属しているプラグインは以下の通りです。
| 種類 | プラグイン |
|---|---|
| チャンネルストリップ/EQ | API Vision Channel Strip Collection、Pultec Passive EQ Collection、Century Tube Channel Strip、UA 610 Tube Preamp & EQ Collection、API Preamp |
| コンプ | UA 1176 Classic FET Compressor、Teletronix LA-2A Tube Compressor、Fairchild Tube Limiter Collection、API 2500 Bus Compressor |
| テープ/サチュレーション | Studer A800 Multichannel Tape Recorder、Ampex ATR-102 Mastering Tape Recorder、Oxide Tape Recorder、Vibe Analog Machines |
| リバーブ/ディレイ | Pure Plate Reverb、Galaxy Tape Echo |
| モジュレーション | Brigade Chorus、Studio D Chorus、Waterfall Rotary Speaker |
| ギターアンプ | UAD Showtime ’64 Tube Amp、UAD Ruby ’63 Top Boost Amplifier、UAD Woodrow ’55 Instrument Amplifier |
| ボーカル | Topline Vocal Tune |
| サミング | API Summing |
| 音源 | PolyMAX Synth、Opal Morphing Synthesizer、Ravel、Waterfall B3 Organ |
| MIDIエフェクト | ChordAXE Lite |
歌ってみたなら、歌にはCentury Tube Channel StripやLA-2A、1176。空間にはPure Plate ReverbやGalaxy Tape Echo、オケのまとまりにはAPI 2500 Bus CompressorやStuder A800と、定番の組み合わせが最初から揃っています。前述の通り歌のノイズと声量のばらつきはSpectraLayers GoとVoiceAssist Basicで整えておき、書き出す前にWaveLab Goでラウドネスを確認。FileメニューのExportから書き出せば、投稿用の2ミックスの完成です。
40万円相当のUADプラグインが使えるLUNA Studio。日本限定のキャンペーンも実施中
最後に、LUNA Studioの価格を整理していきます。無料版との違いをまとめると、以下のようになります。
| 項目 | LUNA Free | LUNA Studio |
|---|---|---|
| 価格(税込) | 無料 | 32,835円 |
| ステム分離 | 2/4パート | 2/4/6パート |
| LUNA Play/ピアノロール | ○ | ○ |
| Audio to MIDI | − | ○ |
| 歌詞書き起こし/コード抽出 | − | ○ |
| UADプラグイン | 8本 | 約30本(単体ライセンス) |
| LUNA Extensions | Oxide Tapeのみ | API Vision Console/API 2500/API Summing/Studer A800/Ampex ATR-102 |
| ARAプラグイン | − | 6本 |
| 付属インストゥルメント | PolyMAX Synth/Shape | PolyMAX Synth/Shape/ Opal/Ravel/Waterfall B3 |
この約30本のUADプラグインについて、Universal Audioの本国サイトに載っている単品価格を足していくと、有料のものだけで2,480ドル分、日本円にすれば総額40万円相当。前述の通りほかのDAWでも使えるので、LUNA Studioを買ってプラグインだけ普段のDAWで使う、という選び方も成り立ちますね。
そのLUNA Studioの価格は32,835円(税込)。LUNA Pro 1.0または2.0を持っている人向けには、LUNA Studio Upgradeが13,035円(税込)で用意されています。アップグレード版は注文後に専用フォームからLUNA Proの所有確認を申請し、確認後にメールでライセンスが届く仕組みです。申請にはLUNA Proのアクティベート状況が分かるUA Connectのスクリーンショットが要るので、事前に用意しておいてください。なお2026年6月1日以降に旧Luna Pro 2.0を購入/登録(※)した人は、UA本社のストアで2.99ドルのアップグレードが購入できるとのことです。
そして日本限定のキャンペーンも実施中です。2026年9月15日から9月30日までに国内の正規販売店でLUNA Studioの新規版かアップグレード版を購入した人が対象で、専用フォームから申し込むと、MIオンラインストアで使えるUADバンドルの特別クーポンがもらえます。付属の約30本に加えて、さらにUADプラグインを揃えたい人には見逃せない期間ですね。
期間限定でいえばもう1つ、LUNA Studio + UAD Native Pro Bundleもあります。LUNA StudioとUADのネイティブプラグインライブラリを組み合わせたもので、12月31日までの期間限定で65,835円(税込)。単品で買うより50%お得な組み合わせなので、プラグインまで含めて一度に導入したいならこちらが候補になりますね。
価格と期間をまとめると、以下の通りです。
| 製品 | 対象 | 価格(税込) | 期間 |
|---|---|---|---|
| LUNA Studio | 新規 | 32,835円 | 通常販売 |
| LUNA Studio Upgrade | LUNA Pro 1.0/2.0ユーザー | 13,035円 | 通常販売(要申請) |
| LUNA Studio + UAD Native Pro Bundle | 新規 | 65,835円 | 12月31日まで |
| 日本限定特典 | 国内正規店でLUNA Studioを購入 | UADバンドル用クーポン | 9月15日〜9月30日 |
以上、Universal AudioのLUNA FreeとLUNA Studioについて、歌ってみたの流れに沿って紹介しました。無料のLUNA Freeなら、好きな曲からのカラオケ作りと歌の練習、録音、書き出しまでが1つのDAWの中で完結し、オフボーカルのオケがある曲なら公開までたどり着けます。そこからオケのない曲を自分の音源で作り替え、歌を仕上げ、コンソールとテープごとミックスするところまで進むならLUNA Studio、という位置付けです。
ここでは歌ってみたを例にしましたが、分離したオケに自分のギターやピアノを重ねる弾いてみたでも、流れはまったく同じです。歌ってみたから本格的な制作へ進みたい人には、かなり現実的な選択肢だと思います。
まずは無料のLUNA Freeをダウンロードして、手持ちの曲をSplit Stems and Jamで分離するところから試してみてはいかがでしょうか?
(※)グレースピリオドキャンペーンはUniversal Audio本社都合により予告なく終了する場合があります。
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【関連情報】
LUNA Studio製品情報
LUNA Free製品情報
UAD Explore FREE(LUNA Freeのダウンロード)
LUNA Studio + UAD Native Pro Bundle製品情報
日本限定特典 申し込みフォーム
【価格チェック&購入】
◎MIオンラインストア ⇒ LUNA Studio , LUNA Studio Upgrade

































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