Cubaseユーザーはもちろん、他DAWユーザーも持っておくべきドラム音源、Groove Agent 5の威力

SteinbergGroove Agentという音源をご存知ですか?CubaseユーザーならGroove Agent SEというエントリー版が標準で入っているので、知っているとは思いますが、見た目がMPC風な4×4のパッドなので「EDM系のツールなんだよね」と思って、放置していたという人も多いのではないでしょうか?

昨年11月、Cubase 10とほぼ同時にリリースされた最新版のGroove Agent 5(税込み実売価格:17,820円)はアコースティック系でも大きな威力を発揮してくれる超強力なドラム音源になっており、エレクトリック系やHip-Hop系、エスニックなどを含め膨大な音色ライブラリを備えているのと同時に、莫大なリズムパターンを備えています。しかも音作りに関する機能も充実していて、ほかのドラム音源にはないサウンドを作り出せる音源です。WindowsにおいてはVST2、VST3、AAX、MacにおいてはVST3、AU、AAXのプラグイン環境で動作するので、どんなDAWとも連携させることができるドラム音源なんです。またSteinbergの全部入りプラグイン音源集、Absolute 4(54,000円)にも収録されている音源。実際どんなものなのか紹介してみましょう。


Steinbergのドラム音源、Groove Agent 5

まずは、そのGroove Agent 5に新たに搭載されたThe Kitというアコースティックドラムキットの音を少し聴いてみてください。

いかがですか?パワーもあって、とってもいいドラムですよね。これはドイツ・ベルリンのスタジオ「Teldex Studios」で録音したドラムキットだそうで、Pearlのキックとスネア、Yamaha Maple Custom タム、4枚の Zildjian クラッシュ、Istanbulのライド、Paiste のスプラッシュ……などが使われています。

The Kitで使われたドラムキット構成

これらをNeumannのU47 FET、U87、U67、SchoepsのMK4、AudioTechnicaのATM-25……といったマイクをセッティングし、SSL9000Jのミキシングコンソール、Fairchild 670やUrei1176などのコンプを使って丁寧に収録しているそうです。

The Kitのレコーディングに用いられた機材

このThe Kitだけで20.77GBものサンプリング容量となっているのですが、Groove Agent 5はすべてネットからダウンロードする形でのインストールのため、かなりの容量となります。ある程度は圧縮されていると思いますが、インストーラを見ると、Groove Agent 5本体は299.53MBと小さいけれど、サンプリングデータやフレーズデータなどを含むコンテンツのほうは31.14GBありますから、光回線でも、ダウンロード&インストールには1時間近くかかりますよ。

The Kitだけで20.77GB、その他も合わせたダウロードデータ容量が31.14GBにもなる

そのGroove Agent 5を起動すると、4×4のパッド画面が出てきますが、ここでThe Kitのデータを読み込んでみると、メイン画面にはドラムキットが現れ、ここをマウスでクリックすれば音が鳴るようになっています。


画面はスタンドアロンで起動させたときの初期画面

まあ、一言でThe Kitといっても、実は、いろいろなセッティングのドラムキットが用意されており、それぞれによってまったく異なるドラムキットにように鳴ってくれます。

The Kitを読み込むと、画面にはドラムキットが表示される

また、このドラムの画面の下にはROOM、OVERHEAD、REVERB、TUNE、ATTACK、HOLD、DECAYといったパラメータが表示されます。これはスネアなのかキックなのか、ハイハット、クラッシュなのか……などによって変わってきますが、これらのパラメータを触ることで、自分の好みに合わせて自由に音色をいじれるのもGroove Agent 5の特徴。同じスネアでもいろいろなマイク、いろいろな角度から収録しているので、パラメータを変えることで、かなり音が変わるんですね。


リズムフレーズを好みの感じに合わせて作り出してくれるスタイルプレイヤー

さらに単に音色が入っているだけでなく、リズムパターンも膨大に用意されていて、それらを曲中で簡単に使うことができるのもGroove Agent 5の特徴の一つです。膨大にあるので一つ一つフレーズを選んでいくのもいいのですが、スタイルプレイヤーという画面を使うことで、より自分のニーズにあうフレーズを作り出すことが可能となっています。ここではMAIN、INTRO、ENDING、FILLなどから目的のものを選ぶと同時に、Complexity=複雑さ、Intensity=力強さといったパラメータを動かしていくことで、パターンを大きく変化させていくことができます。実際、そのSTYLEで作ったパターンのデモがあるので、ちょっと聴いてみてください。

こんなパターンが簡単に出来てしまうのですから、リズム作成は苦手という人にも便利そうですよね。そして出来上がったパターンをDAW側のMIDIトラックへドラッグ&ドロップすれば、それでもう普通のMIDIデータとして扱うことができるので、とっても便利ですね。


パターンを編集したり、新たに入力できるステップシーケンサも搭載されている

Groove Agent 5自身にステップシーケンサ機能も装備しているので、自分で打ち込んでいくこともできるし、あらかじめ用意されているパターンをエディットするといったことも可能になっています。

The Kitのほかにもさまざまなキットが用意されている

もちろん、これらはThe Kitに限ったことではなく、数多く収録されている各音源に共通することですが、せっかくなので、ほかのキットの音も聴いてみてください。そう、Groove Agent 5には30以上のエレクトロキットが収録されていています。


ドキュメントを見ると

Rawtekk、Audeka、zKlang、Joe Fordなどのエレクトロミュージックアーティストや、若手プロデューサーによる新しいキットの数々。ビートパターンだけではなく、ベースやメロディの断片、ヒットやノイズも含んでいます

とあるので、いろいろな使い方ができそうですね。

このようにGroove Agent 5は、用意されている音色やパターンを読み込んで使う上で、とっても楽で便利なのですが、自分だけのドラムキットを作りたいという人にとっても、ほかのソフトにはない、強力な機能を備えています。


読み込んだ音色をトーン部分とノイズ部分に分解できるDecompose機能

中でもすごいのが、Decomposeという機能です。Groove Agent 5では、各パッドに読み込む音を1つ1つ指定できるのですが、その読み込んだ音をDecomposeという機能を使うことで、音程を持つトーン(Tonal)部分と、音程を持たないノイズ(Noise)部分に分解することができるのです。その上で、TonalとNoiseのバランスを調整することはもちろんのこと、Tonalの音色のみを調整していく…といったこともできるのです。


フィルターで音色調整

その音色の調整としては、まずフィルターがあるので、これで大きく変化させることが可能です。しかもこのフィルターもClassic、Tube Drive、Hard Clip、Bit Red、Rate Redと複数の特性の異なるフィルターがあるので、かなり違った音色にすることができます。


ピッチの調整も可能

さらに、ピッチをいじることもできれば、エンベロープを調整することもできるなど、まさにシンセサイザとして音色をとことん、いじっていくことができるので、かなり楽しく遊ぶことができますよ。

ベロシティーレイヤーを組むことも可能。この画面では1つのパッドに5段階で設定している

なお、1つのパッドに最大32のベロシティーレイヤーをつけることができるので、叩く強さによって、鳴らす音をいろいろと切り替えることもできるし、重ねて音をだすことも可能など、調整項目は、本当に数多く用意されています。

それでも、まだ物足りないというのであれば、Groove Agent 5にはレコーディング機能というか、かなり高度なサンプリング機能も装備されているので、身近な音をサンプリングして加工するとか、より本格的に自分だけのドラムキットを作っていく、といったことも可能になっています。

これだけのコンテンツ、機能を備え、どのDAWでも利用できるドラム音源が17,820円という価格ですから、持っておいて損はなさそうですよね。またSteinbergではこのGroove Agent 5をはじめ、HALion 6、The Grand 3,HALion Sonic Orchestraなど計12の音源を1つのパッケージにまとめたAbsolute 4という製品も出しているので、せっかくならいろいろ揃えておきたいという人、また以前のHALionからアップグレードするという人にとってはお得なセットといえそうです。

 【関連情報】
Groove Agent 5製品情報
Absolute 4製品情報
【価格チェック】
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◎Amazon ⇒ Groove Agent 5
◎サウンドハウス ⇒ Groove Agent 5
◎Steinberg Online Shop ⇒ Absolute 4
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Commentsこの記事についたコメント

1件のコメント
  • ・・・

    自分はCUBASE付属のGroove Agent SE5しか持っていませんが、とても良いですよね。
    ドラム音の録音とか(関係ないですけどシンセの音色とか)DAWも黎明期というような
    ものが終わり、業界標準的な高品位の評価のものが定まり、、、みんながそれを真似する
    つまり同じようなものを作り出す(作り出せる)状況に、なりつつあると思います。
    情報化社会のグローバル化で、突出した企業というものが、追いつかれ気味ではないで
    しょうか?

    それで、CUBASEの付属音源だったり、新発売されたAbsolute 4なりで「本当にもうこれで
    十分。様々なサードパーティーへの高額出費、要らないのでは」というような事を、感じて
    います。エフェクトのプラグインも含めてですね。「まだまだトップ製品はトップ」と
    プロのエンジニアさんなどは確信的に思ってらっしゃるのでしょうけど、DAWをやる人の
    多くは「作家になれないかな~」などと夢想しているわけで、そういう人はプラグインが
    多数発売されるようになった直近でも、逆に、多くの製品は不要になりつつあるのではと、
    思えてなりません。自分はAddictive Drumsを愛用していますが、友達がもし1から始める
    なら、Groove Agentで十分っぽいよと、助言したいという感じです。
    個人的な感想で、大変失礼しました。

    2019年1月29日 7:33 PM

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