2人の作曲家が別々に作った曲を同時に再生すると、新たな1つの楽曲として聴こえる!?斬新な作曲をした浅田祐介さんと守尾崇さんにインタビューしてみた

2つの異なる曲を同時に再生すると、まったく新しい1つの楽曲になる。そんな斬新な2つの楽曲が、男性アイドルグループ、BATTLE BOYSのシングル『NEXT ZONE(TYPE-A)』、『NEXT ZONE(TYPE-B)』としてリリースされました。それぞれを作曲したのはCHARAのサウンドプロデューサーや自身も歌手としてデビューした経験のある日本の音楽プロデューサー浅田祐介@USKE_ASADA)さん、浜崎あゆみ、ケツメイシ、mihimaru GTなどの楽曲を手掛けた守尾崇@morio_morio)さんの二人。各CDにはタイトル楽曲である『NEXT ZONE』のほかに、TYPE-Aには守尾さん作曲の『Identity』、TYPE-Bには浅田さん作曲の『Alterity』というカップリング曲が収録されています。これらは別々の曲であるのにも関わらず、同時再生することでもう1つの楽曲として成立するんです。

また歌詞にも秘密があり、2つの曲を同時に再生すると別の意味をもった歌詞が浮かび上がってくるといった仕掛けもしてあるとのこと。その2曲が合体した楽曲は、10月20日から特別バージョン『Our Story』としても発売されています。そんな不思議な楽曲について、2人で作曲した話や歌詞の秘密について伺うことができたので、紹介してみましょう。

今回の楽曲を作曲した浅田祐介さん(左)と守尾崇さん(右)

BATTLE BOYSはEBiDAN(恵比寿学園男子部)の研究生の中から選抜されたメンバーで構成されるグループ。メンバーは固定されず、ファン投票やYouTubeの再生回数、プロフィール・ページ表示回数、ライブ・イベントや特典会での活躍状況……などによって、その時々の選抜メンバーで構成されるグループです。そのBATTLE BOYSの4thシングル『NEXT ZONE』が9月にリリースされたのですが、これまでにないユニークな試行が凝らされているのです。

男性アイドルグループのBATTLE BOYS

前述の通り、『NEXT ZONE(TYPE-A)』、『NEXT ZONE(TYPE-B)』という2タイプのシングルCDとなっており、それぞれに収録されたカップリング曲が普通ではないスタイルの作曲、そして作詞がされているのです。まずは、それぞれの楽曲の触りだけを聴いてみてください。


いかがですか?それぞれ、バンド系、エレクトリック系と全然違う曲調の、まったく異なる楽曲ですよね。これをそれぞれダウンロードするか、CDからWAVをリッピングした上で、テンポ110でDAWに読み込んで、同時に再生すると……、まったく新しい曲として生まれ変わるのです。

2つの別々の曲をDAWに流し込んで再生すると、新しい曲が生まれる

その新しい曲としてリリースされたのが、こちらの特別バージョン『Our Story』です

ものすごく面白いので、ぜひそれぞれをダウンロード購入し、DAWで実験してもらいたいのですが、作曲を手掛けた浅田さん、守尾さんにお話しを伺ったので、紹介してみましょう。

 

--まずはこの企画がスタートした経緯について教えてください。
浅田:一番最初この企画の話を聞いたのは、今年の3月ごろにスターダスト・レコードのBATTLE BOYS担当プロデューサーに呼び出されたときです。そこの場所に着いたら守尾もいて、別々で作った2曲を一緒に再生すると、別の1曲になるような曲を作れないか、と言われたんです。面白い企画だなと思う一方、それは1曲を1人で書いて、それを2つに分けたほうが早くできるし、いいんじゃないかとも考えたんです。だけど、それだと予定調和になって面白くない。2人で作れば、何か新しいことが起きるかも…と。まあ守尾とは昔からの長い付き合いなので、なんとなくできる気がしたんですよ。

--まあ、クラシック曲も含め、まったく異なる曲でもコード進行が同じものをテンポを合わせればマッシュアップは可能だと思いますが、そういうことですか?
守尾:単にコードが合うというのではなく、合わせることで調和し、完全に1つの作品にすることを目指しました。
浅田:今回作曲を俺と守尾で、歌詞はまた別の2人で行ってます。その作詞の2人はウチの事務所の作詞家なんですが、こうした体制での曲作りは過去なかったのではないでしょうか?作曲側は直接会って一緒に作ることは、ほとんどしませんでしたが、作詞家2人は会っていろいろ作業しつつも、かなり迷ってましたね。

浅田祐介さん

--作詞家も別々なんですね。
浅田:それこそ最後のほうで俺と守尾と作詞家2人で集まったときに、俺らメロディーのタイミングずらすから、2曲を合わせたときに別の歌詞が浮かび出るようにしろ、ってむちゃぶりしましたね(笑)。
守尾:合わせると、歌詞が掛け合いのように響く中、あるところで、各歌詞とはまったく関係のないキーワード「この声が絆さ」というものが浮かび上がってくる秘密の仕掛けがされているんです。

--そんな仕掛けがしてあるんですか!ちなみに曲のコンセプトについても教えてください。
浅田:ステージに上がっているときは輝いているけど、普段は自信が持てない演者と、普段の生活がいけてないけど、ステージの上で輝いている人を見ると勇気をもらえる視聴者というのがコンセプトです。この2つの接着剤として「この声が絆」という歌詞が生まれて、歌う声と応援する声を表現しています。

--一方で作曲側の話に移るのですが、先ほど浅田さんと守尾さんは、別々に作業していたとのことですが、どのように楽曲を制作していったのですか?
守尾:最初は何回か会ってどんな感じにするか話して、一応一緒に作ろうと思ったんです。ですが、一緒に作っていたら「これ1人で作るのと変わらないんじゃない?」となったので一緒につくるのは止めようとなり、最初のイントロのコードだけ決めて、その日は帰りました。その後は、お互い少しできたらスタンダードMIDIファイルを投げ合って、進めていきました。コードのベーシックな部分は同じにして、テンションとかベースラインはお互い変えるかもという形で、和音トラックとメロディートラック2つの計3トラックでやり取りし、基礎部分を作っていきました。

守尾崇さん

--先に基礎的な部分やメロディーを作ってから、アレンジに進んでいったということなんですね。
守尾:当初は曲のどこかで変拍子を入れこんで、表と裏がひっくり返るなんてアイディアもあったのですが、音楽的に難しかったですね。
浅田:基本の構造はシンプルにして、アレンジをどうするか考えたときに、まずお互いのジャンルから決めていきました。それこそ1回目に守尾との打ち合わせで、ちょうどイントロの最初のコードを決めたときに、守尾がエレクトリック系で俺がバンド系というのを決めました。
守尾:アレンジ開始した際もあまり先に完成させてしまうと、どこで崩れるか分からないということもあり、アレンジが少しできたらその都度2mixを投げ合っていましたね。

『Identity』は守尾さんのスタジオで作業

--ちなみに、お二人はDAWは何を使っているのですか?
守尾:祐介はStudio One、僕がDigital Performerと、2人とも使っているDAWが違うので、あくまでプロジェクトファイルじゃなくて、2mixでのやり取りでした。

--DAWを共通化するとか、マルチトラックのWAVとかステムでやり取りするのではなく、2mixで、ですか!送られてきた2mixはどう扱っていたのですか?
浅田:送られてきた2mixを一旦自分のプロジェクトファイルに貼って、音がぶつからないか確認しながら、作業していくという感じです。かなり調整が必要なのでは……と心配したのですが実際に曲と合わせてみると、ほとんど、ぶつかることなく進んでいった印象はありますね。
守尾:この歳だからなのか、長年の付き合いだからか、お互いの手の内を予想しながら制作できるんですよ。送られてきた音を聴いて「こうきたか!」と呼応しながらの作業だったから、うまくいったのだと思います。ミックスに関しては、各曲それぞれ別々にミックスしてもらって、後から合体させました。担当していただいたダッチママスタジオのエンジニア 高桑心さんも最初は「それぞれ別でミックスしたものを足して大丈夫?」という感じだったのですが、いざ合わせてみたら「意外と平気だね!」と。それこそ、音使いだったり、音のチョイスがナチュラルにお互いを気にして作っていたからでしょうね。

『Alterity』は浅田さんのスタジオで作業

--すごいですね。それこそ、キックとか、ベースとかはぶつかりそうに思うのですが…
浅田:キックは正直重ならないようにすることは無理なので、周波数帯を分けることで音が濁るのを回避しました。守尾がエレクトリックサウンドなので、キックのスーパーローは使うだろうなと思って、俺はキックを口径の小さいBFDのキットを選んで、アタックを調整しつつ、ローミッド寄りのキックサウンドに仕上げました。このキックを重ねた音色は、EDM系とかでキックをスタックするときのイメージと同じですね。
守尾:キックの周波数帯域をこちらがもらったので、その代わりベースは譲りました。そうやって、直接話してはないのですが、送りあった音源をお互いが聴きつつ、単体の曲だけで聴いたときでも「何か足らないな」と、思われないように仕上げました。
浅田:譲ってもらったベースに関しては、最初IK MultimediaのMODO Bassで仮りで打ち込んで、「どこかのタイミングで生に差し替えるからね」と、音だけで伝えたり、アコギを先に入れて「この周波数帯いただきました」というメッセージを言葉を介さず伝えながら、アレンジを進めていきました。

守尾さんはDAWにDigital Performer、音源にPigments、Repro-1、Diversionなどを使用

--まさに阿吽の呼吸ですね。ちなみに守尾さんは音源はなにを使ったのですか?
守尾:最終的にリードシンセとサビのベースはMOOG Minimoog Voyagerへ差し替えましたが、基本はかなりの量のソフトシンセを使ってますね。KORG Korg Collection – Polysix、SOUND ACADEMY Ana 2、ARTURIA Pigments、KV331 SynthMaster、DS AUDIO Diversion、TONE2 Icarus、VENGEANCE SOUND Avenger、XFERRECORDS Serum、U-HE Repro-1…などなど。

--一方で浅田さんはどんな音源を使ったのですか?
浅田:あまりソフトシンセは使ってないです。ドラムはFXPANSION BFD3を使って、ピアノはXLN AUDIO Addictive KeysとNATIVE INSTRUMENTS Alicia’s Keys。ストリングスはNATIVE INSTRUMENTS Symphony Series – String Ensemble。あとは、XFER RECORDS Serumをシンセ・ベルに使ったくらいですね。

浅田さんはStudio Oneを使って制作

--いろいろな試行錯誤もありつつ作っていった『Identity』と『Alterity』ですが、2mixのやり取りだけで、最後の方までいったのですか?
守尾:TD前に先に祐介がパラデータを書き出してきたので、それをもらって細かい部分は最終調整しました。ベースがくってるところなどをデータを並べて目で確認しつつ、音が濁らないように直していきました。その後、ミックスのためにエンジニアさんに僕のパラデータを送りました。
浅田:なんで先にパラデータを出したかというと、「俺はもうこれで確定だから、あとは頼むよ」というメッセージです(笑)。

--そこまでの歌はどうしていたのですか?
守尾:一番最後の詰めのときは、本人が歌ったデータでしたが、その前までは仮歌をステムでもらって使っていました。
浅田:最初の仮歌は作詞家が歌ったのですが、本人じゃなきゃイメージが湧かなかったりするんですよね。仮歌と本人ではレンジ感が違ったりするので、本人の歌が入った後に入れる楽器を調節したりしましたね。

--ありがとうございました。

以上、浅田さんの『Alterity』と守尾さんの『Identity』そして、合体した曲の『Our Story』の制作について、お話を伺ってみました。よかったら、ぜひ実際の手持ちのDAWに『Alterity』、『Identity』を流し込んで『Our Story』をミックスして聴いてみてください。それぞれをミュートしたり、レベルを変えたりすると、この面白さを味わえると思います。

なお10月20日を皮切りに、BATTLE BOYSのリリースイベントが予定されているほか、タワーレコードが主催するイベント「タワー・アカデミー」において11月15日、守尾さん、浅田さんが講演し、この曲を深く紐解くとのことなので、興味のある方は足を運んでみてはいかがでしょうか。
【関連情報】
BATTLE BOYS/バトルボーイズ公式サイト
NEXT ZONEリリースイベント情報
タワー・アカデミー情報

【ストリーミング】
◎LINE MUSIC ⇒ Alterity
◎LINE MUSIC ⇒ Identity
◎LINE MUSIC ⇒ Our Story

【楽曲購入:ダウンロード】
◎iTunes Store ⇒ Alterity
◎iTunes Store ⇒ Identity
◎iTunes Store ⇒ Our Story
◎Amazon Music ⇒ Alterity
◎Amazon Music ⇒ Identity
◎Amazon Music ⇒ Our Story

【楽曲購入:CD】
◎Amazon ⇒ NEXT ZONE(TYPE-A)
◎Amazon ⇒ NEXT ZONE(TYPE-B)

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