元Roland社員たちで立ち上げた伊Dexibellの最高峰のステージピアノ、VIVO S9。ピアノの共鳴音やハンマーノイズさえも再現するT2Lモデリング音源の実力

9月末イタリアのキーボードメーカー、Dexibell(デキシーベル)から最高峰のステージピアノVIVO S9(税抜実売価格:410,000円)が日本でも発売されました。同社はヨーロッパの元Rolandの社員たちが集まって2013年に設立したメーカーで、アコースティック楽器とデジタル楽器の境目をなくす楽器作りを目指しているとのこと。そのDexibellが作り出したVIVO S9は、すべてイタリアでハンドメイドされ、鍵盤も伊FATARの88鍵を搭載し、ムービングフェーダーやツマミ、ボディーなど、すべてにおいてこだわり抜かれた作りとなっています。その中枢には、DexibellオリジナルのサウンドエンジンT2Lを搭載。T2Lによるグランドピアノサウンドは、共鳴音やハンマーノイズ、ペダルノイズなどをリアルに再現し、まさにアコースティック楽器との境目をなくしています。

T2Lはグランドピアノの他にも、アップライトやエレクトリックピアノ、オルガンなどの音色が搭載されており、そのすべてを24bit/48kHzクオリティーで表現。同時発音数は無制限で、最長15秒もの時間をサンプリングした波形を収録しているなど、ハードウェア音源として他に類をみない強力な機材となっています。実際、どんな音がするのか、どんな工夫が凝らされているのかなど、その表現力、サウンドを交えつつ、どんな機材なのか紹介してみましょう。

イタリアのDexibellの最高峰ステージピアノ、VIVO S9

さっそくですが、先月開催されたDexibell製品発表会でのデモンストレーター、Ralf Schink(ラルフ・シンク)さんによる演奏をご覧ください。

いかがですか? iPhone 11 Proで直撮りした映像ですが、VIVO S9の表現力の高さが感じ取れるのではないでしょうか? 冒頭でお伝えしたようにこの表現力の高さは、T2Lというサウンドエンジンがその中核を担っているわけです。T2LとはTrue 2 Lifeの略とのことで、サンプリング技術とモデリング技術を融合させたもの。ハードウェア的にはクアッドコアのプロセッサが処理しているため、同時発音数が無制限という能力を誇っているのです。

VIVO S9などに搭載されているT2Lテクノロジーのサウンドエンジンボード

一般的な電子ピアノも同時発音数は128音程度あるので、これで十分そうにも思えますが、音色やエフェクトを途中で切り替えると、どうしても音切れが生じてしまいます。しかしT2Lエンジンでは、そうした場合も音切れがなく、また処理性能の高さゆえに切り替え時に生じるレイテンシーも最大3msecに抑えられなど、数々の工夫が凝らされています。また最長15秒のサンプリングした波形を再生するので、余韻をループさせて伸ばす音源とは違い、変なうねりなどなく、すごく自然なサウンドとなっているのです。そして24bit/48kHzで再生される音は、すごく弱いタッチから、強い打鍵の音まで表現でき、ダイナミクスの幅の広さはホンモノのグランドピアノに引けを取りません。

先日行われたDexibellの新製品発表会

さてこのT2Lモデリング音源は、本物のグランドピアノを弾いたときに起こる、ダンパーノイズやキーオンノイズ、キーオフノイズ、ピアノ弦の共鳴……なども、リアルに再現しています。どういう風に楽器を弾いたら、どのようにノイズや倍音がでるか、モデリングで解析し、そこにサンプリングした素材を再生することにより、本来あるべき楽器特有のノイズを組み合わせ、より生き生きした音を実現しているというのです。またこれらの共鳴音やノイズの量は好きに変えることができるので、アコースティックピアノでは再現できない表現も可能なのも面白いところ。次の動画では、それらの実演を交えてながら、T2Lについて紹介しています。

途中でラルフさんが話していましたが、ハンマーの硬さを変えたり、調律を微妙に変えることで、いろんなタイプのグランドピアノを再現しています。中くらいのコンサートホールのピアノだったり、ロックやジャズピアノ、ハンマーをやわらかめにすることでロマンティックピアノサウンドを再現するなど、さまざまなバリエーションが揃っています。

88鍵ハンマーアクション鍵盤を採用したVIVO S7 PRO

そんな表現力を持つT2Lサウンドエンジンですが、最高峰で木とプラスチックのハイブリッド鍵盤を採用した88鍵のVIVO S9に搭載されているだけでなく、88鍵ハンマーアクション鍵盤を採用したVIVO S7 PRO、73鍵ハンマーアクション鍵盤のVIVO S3 PROのほか、電池駆動が可能な68鍵の軽量コンパクトモデルのVIVO S1、さらにはモーター駆動のドローバーを搭載したオルガン、COMBO J7、スピーカーを内蔵したクラシックオルガンのCLASSICO L3、そしてコンパクト音源モジュールのVIVO SX7と今回一斉に発売となった、DEXIBELLの各機種にも搭載されているため、音源としては、すべて同様の性能、表現力を持っているのです。

スピーカーも内蔵したオルガンであるCLASSICO L3

そんなVIVOシリーズやCOMBO J7、CLASSICO L3を開発したDexibellは、イタリアで楽器機材やステージ照明などを製造しているPROELという会社の傘下のブランド。冒頭でも紹介した通り、元Rolandの社員が集まって作った技術集団。Rolandでの経験も含め、チームメンバーは全員25年以上の楽器業界での経験を持つのだとか。Dexibell製品はすべてイタリアで設計から製造まで行い、イタリアの職人ひとりひとりが1台の製品を作り上げていることを誇りとしています。

一番安価なのは音源モジュールであるVIVO SX7。音源としてはT2L搭載という意味でまったく同じ

そしてDexibellのゴールはアコースティック楽器とデジタル楽器の境目を無くしていくということ。それは、決してアコースティックピアノの代わりになるものを作るのではなく、アコースティックピアノを演奏するときの情熱だったりパフォーマンスがデジタルピアノでも完璧に発揮できるようにするというのがポイントとのことです。

スリムボディーで電池駆動するVIVO S1

そうして細かな部分まで作りこまれたDexibell製品およびVIVO S9に搭載されているパネルは操作性に優れていて、音色によってもっとも重要なパラメータがAUDIO FXの2つのツマミに配置されたり、VIVO S9やCOMBO J7に搭載されているムービングフェーダーでは、オルガン音色のプリセット時にドローバー・セッティングになったり、MIDIコントローラーとしても活用できます。次の動画では、冒頭でハード部分の紹介、さらにいろいろな音色や音のレイヤー、ユーザープリセットを紹介しています。

Dexibellのステージピアノは、内部にオーディオインターフェイス機能を持っているので、iPadやPCと繋いで、外部のMIDI音源を鳴らすことが可能です。そのオーディオインターフェイス、細かくチェックはできていませんが、発表によればレイテンシーも少なく高音質である、とのこと。外部で立ち上げた音源のツマミをDexibellのステージピアノのツマミに割り当てることができたり、無料のiOS専用エディターアプリDexibell VIVO Editorを使って、VIVOシリーズの各パラメーターを編集するなど、便利に使うことができそうです。

iOS専用エディターアプリDexibell VIVO Editor

さらに、Dexibellは1音色に対して通常の3倍以上のメモリーサイズを使用する「プラチナム・サウンド・ライブラリ」というのも用意していて、たとえばエレピ1音色に800MB以上使用しているなど、贅沢な作りとなっています。これは今入っている音源を全部消して、その容量を使って、5音色のみしか扱えない巨大なモンスターライブラリとなっています。音色は、グランドピアノ4種類と Rhodes Mark1 88鍵の合計5種類。現在Pleyel (プレイエル) という1850年代のピアノを博物館から借りてきて、その音をサンプリングしているとのことです。

73鍵ハンマーアクション鍵盤のVIVO S3 PRO

もちろんサウンドライブラリの中身は後から自由に追加や入れ替えが可能なので、消したからといって使えなくなるわけではないですよ。さらにいうと、最初からプリセットに入っている音源以外にも、DexibellのHPから追加サウンドをダウンロードしたり、サウンドフォント形式で作成したプリセットファイルを読み込むことも可能。最後にこれらPlatinum Sound Libraryを交えて、実演した動画となっています。

以上、イタリア、Dexibellが国内発売した製品群について紹介してみましたが、いかがだったでしょうか? 気軽にポンッと変える価格帯ではないですが、まずは楽器店などでデモ機を試してみてはいかがでしょうか?

【製品情報】
Dexibell製品情報

【価格チェック】
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