とっても小さなMiniも誕生。モニター出力機能も備えた多機能キーボード、iRig Keys 2シリーズが超便利

さまざまなメーカーから数多くのUSB-MIDIキーボードが出ている中で、他メーカーとはちょっと異なる路線を進んで人気を集めているのがイタリアIK MultimediaiRig Keysです。私自身、iRig Keysを長年愛用していましたが、IK Multimediaは昨年9月に新シリーズのiRig Keys 2およびiRig Keys 2 Proをリリース。さらに先月新たにiRig Keys 2 Miniという25ミニ鍵盤のとっても小さなモデルを発売し、現在3つのラインナップとなっています。

そのiRig Keys 2 Pro、iRig Keys 2、iRig Keys 2 Miniの3製品を並べて使ってみたので、iRig Keys 2シリーズとはどんなものなのか、他社製品と何が違うのか、そして3製品がどう違い、どう選べばいいのかなど、いろいろチェックしてみたので、紹介してみましょう。

iRig Keys 2シリーズ、3モデルがラインナップ

IK MultimediaのiRig Keysというと、iPhoneやiPadで使えるMIDIキーボードというイメージを持っている方が多いと思います。事実、その通りで付属のLightningケーブルを使えば直接つなぐことができ、他社製品のようにLightning-USBカメラアダプタなど必要ありませんし、iPhone/iPadからのバスパワーで動作させることができるのが大きな特徴です。

もちろんiPhone/iPad専用というわけではなく、WindowsやMacと接続して使うこともできるオールマイティーなMIDIキーボードです。

付属ケーブルで直接iPhoneやiPadに接続できるのがiRig Keys 2の大きな特徴のひとつ

また、新シリーズであるiRig Keys 2の他社製品との決定的な違いが、ステレオミニのヘッドホン出力端子を装備しているという点。そうiRig Keys 2は単なるUSB-MIDIキーボードではなく、オーディオインターフェイス機能も兼ね備えた珍しいキーボードなのです。

以前、「これはDTM周辺機器の究極の形か!?オーディオIF機能を備えたMIDIキーボード、iRig Keys I/Oはやっぱり反則ワザのオマケ付きだった」という記事で、iRig Keys I/Oというキーボードを紹介したことがありました。このiRig Keys I/Oの場合はオーディオの入力も出力もできる仕様となっていたのに対し、iRig Keys 2シリーズは出力のみで、入力機能は装備していません。そのため正確にはオーディオインターフェイス機能は呼べないかもしれませんが、MIDIキーボードとセットで利用したいのは、普通はオーディオ出力機能。ソフトウェア音源を鍵盤で弾いた音を、レイテンシーが小さい状態でモニターしたいというのが一番のニーズですから、それにマッチした機能が搭載されているというわけです。

iRig Keys 2(上)と従来モデルであるiRig Keys(下)

これまで使っていた初代のiRig Keysと、新しいiRig Keys 2を並べてみるとこんな感じ。同じ37鍵盤のミニキーボードではありますが、デザイン的にも機能的にも大きく変わっているのが見て取れると思います。この2機種のキータッチを比較してみると、似た感じではあるもののiRig Keys 2のほうが若干重めになっており、よりしっかりした鍵盤になった印象。ピッチベンドやモジュレーションホイールも同様です。

そのiRig Keys 2シリーズそれぞれのスペックの違いを簡単にまとめたものが以下の表です。

iRig Keys 2 Pro iRig Keys 2 iRig Keys 2 Mini
鍵盤 37フル鍵盤 37ミニ鍵盤 25ミニ鍵盤
Volumeノブ
Octaveボタン
Programボタン
Setupボタン
Push式データエンコーダー
4+4ノブ
ピッチベンド
モジュレーションホイール
サステインべダル端子
MIDI入出力 TRS 2.5mm IN/OUT
ヘッドホン出力 ステレオミニ
USB端子 microUSB
サンプリングレート 44.1kHz、48kHz、88.2kHz、96kHz
量子化ビット数 16bit / 24bit
サイズ(mm) 605x212x77 518x139x54 324x139x54
重量(kg) 1.87 0.87 0.58
市場想定価格 20,000円 18,000円 14,850円

これを見ても分かる通り、それぞれ違いがあるわけですが、各ノブやボタン類に関しては3モデルすべて共通となっており、大きさも形も一緒。とくに新たに用意されたノブは従来のiRig Keysにはなかったもので、シンセのパラメータを調整したり、DAWのミキシングコンソールを調整することなどに利用可能です。

3モデルともボタンやノブの数や大きさ、形状は共通

各モデルでの大きな違いの1つとして、iRig Keys 2 Miniのみはピッチベンド、モジュレーションホイールおよびサステインペダルの端子がない点が挙げられます。これによってコンパクトさを実現しているようです。

OCTボタンを同時に押すことで、EDITモードに入り、さまざまな設定ができるようになる

ボタンやノブの数はこれだけではありますが、鍵盤の上に、数字やMIDI CH、VEL、TRANSP……などさまざまな表記があることからも分かるとおり、鍵盤を利用しながら、さまざまな設定が可能。また、各ノブにはあらかじめコントロールチェンジ番号が割り当てられていますが、それらの設定を変更することも可能になっています。

DATAと書かれたノブはPUSH式エンコーダー、1~4のノブはMIDI CCが割り当てられており、左のボタンで5~8に変更可能

iRig Keys 2のリアパネルを見ると、右から順に

ペダル端子
microUSB端子
ヘッドホン出力
MIDI OUT端子
MIDI IN端子

と並んでいます。初代iRig Keysにはなかったヘッドホン出力が搭載されるとともに、MIDIの入出力が装備されたわけです。

iRig Keys 2 Proのリアパネル

初代iRig KeysにはmicroUSB端子とは別にMIDI-DIN端子があり、iPhoneやiPadと接続するには、これを用いて付属の専用ケーブルを使ってつなぐ必要がありました。しかし、iRig Keys 2ではWindowsやMacと接続するmicroUSB端子からiPhoneやiPadに接続できるようになりました。そのためには付属のLightning-microUSBケーブルを使う必要がありますが、これによって、よりスマートになった感じです。

従来のiRig Keys(下)はMINI DIN端子経由でiPhone/iPadに接続したがiRig Keys 2(上)はmicroUSB端子経由

ちなみにUSB Type-C端子のiPad Proの場合、[microUSBーUSB Type-C]というケーブルが必要になり、それがiRig Keys 2 Miniには付属しているものの、iRig Keys 2 ProおよびiRig Keys 2には付属していません。試しに手元にある、市販の[microUSBーUSB Type-C]のケーブルを使ってみたところ、問題なく使うことができました。

USB Type-CのiPad Proとは市販のmicroUSBーUSB Type-Cケーブルで接続できる

同様にAndroidスマホやAndroidタブレットでもUSB Type-C接続であれば、これで使うことができます。一方、私の手元にあるAndroidスマホは、先日、rakuten mobileのキャンペーンで実質無料でゲットしたGalaxy A7というもの。これの端子がmicroUSBであるため、それに適したケーブルがありません。そこで、いわゆるOTGケーブルを用いてGalaxy A7側のmicroUSBをUSB Type Aに変換。その上で付属の[microUSBーUSB Type A]ケーブルで接続してみたところ、MIDIキーボードとしてもオーディオ出力としても、バッチリ使えることが確認できました。

手持ちのAndroidスマホ、Galaxy A7ともOTGケーブル経由で接続できた

さて、このiRig Keys 2シリーズはiOSやAndroidだけでなく、WindowsやMacでも活用できるというのも重要なポイント。MIDIキーボードとしてはもちろん、オーディオ出力機能も使えるので、デスクトップ環境での利用はもちろん、ノートPCで持ち歩く際にもオーディオインターフェイスを用意することなく利用できるのは大きなメリットです。オーディオ入力がないのでレコーディングはできませんが、キーボードを弾いて音を鳴らすという意味では必要十分な機能を備えているといっていいと思います。

USB-MIDIキーボードでありながらヘッドホンへのオーディオ出力ができるのは非常に便利

ところで、以前紹介したオーディオ入出力を持つiRig Keys I/OはiOSおよびmacOSで使う分には問題なかったのですが、Windowsにおいてはドライバがなく、DAWなどで利用する場合にはASIO4ALLを入手して使わなくてはならない、という欠点がありました。これはiRig Keys I/Oに限らず、以前に紹介したオーディオインターフェイスのiRig StreamやiRig Pro DUOさらにはiRig Micシリーズなどでも同様で、WindowsでDAWを使っている人にとっては許容しがたい大きな問題でした。

ユーザー登録するとIK MultimediaサイトからiRig ASIO Driver for Windowsのダウンロードが可能

しかし今年4月30日、ついにIK MultimediaはiRig ASIO Driver for WindowsというiRigシリーズ共通で使えるASIOドライバをリリースし、Windows環境でも安定して使えるようになりました(ユーザー登録した人だけがダウンロードできる形になっています)。そのiRig ASIO Driver for WindowsはiRig Keys 2シリーズでも同様に使うことができるので、実際にWindows 10環境で試してみました。

iRig ASIO Driver for Windowsをインストールしてみた

その結果、44.1kHzのサンプリングレートにおいてバッファサイズ8サンプルにまで縮めることが可能で、非常に低レイテンシーで動作させることができました。もちろんん、8サンプルであっても、音が途切れるようなことはなく、とても快適に使うことができました。その意味ではiOSに関係なく、WindowsのためだけにiRig Keys 2シリーズを購入する価値も大きいと感じました。

バッファサイズを8サンプルまで縮めることができる

このように、iRig Keys 2はiOS、Android、Mac、Windowsとあらゆる環境で快適に利用できるオーディオ出力機能付きのUSB-MIDIキーボードなわけですが、それぞれの環境用に便利なソフトウェアがいろいろとバンドルされているのも重要なポイントです。具体的には以下のソフトウェアです。

Windows/Mac SampleTank 4 SE 通常17,980円の製品のフル機能
iRig ASIO Driver for Windows 低レイテンシーのASIOドライバ
iPhone/iPad SampleTank for iPhone/iPad  無償CS版にて58音色をアンロック
iGrand Piano for iPhone/iPad Free版にてRock Piano 1をアンロック
iLectric Piano for iPad Wurly Stage Chorusをアンロック
Cubasis LE デモ版がアンロックされてLEに
Android iGrand Piano for Android  Free版にてRock Piano 1をアンロック
iLectric Piano for Android Free版にてWurly Stage Chorusをアンロック

実際試してみても分かる通り、SampleTankやiGrand Piano、iLectric Piano などパワフルなものがいっぱい。WindowsおよびMac版のSampleTank 4 SEなどはソフト単体で購入すると17,980円(税込)もするものなので、これを買うつもりなら、それだけで元が取れてしまうし、iRig Keys 2 Miniならお釣りが来てしまうほどのメチャメチャな価格設定。iPhone/iPad版のCubasis LEについては以前「iPhoneでも使えるCubasisが3.1にVerUP。ようやくまとも使えるようになったCubaseライクなDAWはLEがお勧め」という記事を書いているので、詳細はそちらを参照してください。この記事の時点では発売されていなかったiRig Key 2 Miniでも同様に解除することが可能です。

17,980円で販売されているSampleTank 4 SEが付属していて価格逆転現象が起きている

そうSampleTank 4 SEはSampleTank 4本体のフル機能に加え、厳選された2,000種類のインストゥルメントを使用でき、25 GBの新作サウンドを含む合計30 GB以上のライブラリーを収録するという強力なサンプラー。iRig Keys 2に並ぶ4+4のノブを動かせば、それがSampleTank4と連動しているので、とっても使いやすく快適。もちろん、ほかのDAWなどとの連携も簡単に行うことが可能となっています。

とにかく多機能で、非常に便利で快適に使うことができるIK MultimediaのiRig Keys 2シリーズ。導入する価値の大きいMIDIキーボードだと思います。

※2020.09.24追記
2020.09.01に放送した「DTMステーションPlus!」から、第158回「apollo solo / apollo solo USBでプロのサウンドをあなたのDTMに!」のプレトーク部分です。「とっても小さなMiniも誕生。モニター出力機能も備えた多機能キーボード、iRig Keys 2シリーズが超便利」から再生されます。ぜひご覧ください!

【関連情報】
iRig Keys 2シリーズ製品情報

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1件のコメント
  • mame

    最新iPadでiRig keys I/Oが使えなくなったようなので、これを買ってみました。
    何かと便利で重宝しております。

    2020年8月25日 1:22 PM

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