まったく異なる4タイプのエンジンを搭載したArturiaのオリジナルソフトシンセ、Pigmentsが第3世代に

フランスのArturia(アートリア)というと、Prophet VModular VCS-80V……と各シンセメーカーのビンテージ機材を忠実に再現するソフトを作るメーカーというイメージを持っている人も多いと思いますが、それと同時にPolyBruteやMiniBrute 2、MicroFreak……といったオリジナルのハードウェアシンセを開発するユニークなメーカーでもあります。そのArturiaが2年前、初のオリジナルソフトシンセとして、Pigments(ピグメンツ)というものを出したことは、以前「Arturiaから初のオリジナル・ソフトシンセ誕生。Wavetableとアナログシンセを組み合わせた究極のソフトシンセ、PIGMENTSとは?」という記事でも紹介したことがあります。

そのPigmentsはその後2度のメジャーバージョンアップを果たし、先日Pigments 3としてリリースされました。以前のバージョンを持っている方であれば、無償アップデートできるPigments 3は大きな進化を遂げ、1つのソフトシンセ内に、ウェーブテーブル、バーチャルアナログ、ハーモニック、サンプル&グラニュラーというまったく異なる4種類のサウンドエンジンを搭載し、これまでにない斬新な音作りができる強力なシンセサイザとなっています。実際、どんなシンセサイザなのか紹介してみましょう。

4種類のエンジンを搭載するArturiaの超強力シンセサイザ、Pigments 3

発売は4月末だったので、すでに購入した方、バージョンアップで無料入手した方も多いと思いますが、「Pigmentsって何?」という方も少なくないと思うので、まずは概要から説明してみましょう。

これはArturiaが開発した最先端シンセであり、数々の新しい要素を取り入れて作られたユニークな音源です。過去20年、Arturiaが培ってきたアナログシンセをソフトウェアで再現する技術と、最新鋭のシンセサイザ技術を組み合わせたもので、他社にはないユニークなものとなっているのです。上のビデオを見ると、その雰囲気は感じられると思います。

スタンドアロン、各プラグインフォーマットに対応

もちろんWindowsでもMacでも動作し、スタンドアロンのアプリケーションとして使えると同時に、VST2、VST3、AudioUnits、AAXと各プラグインにも対応するので、すべてのDAW環境で使える音源となっているのです。
Pigments 3のエンジンその1である、Wavetable

そのPigmentsの柱の一つとなるのがWavetableシンセシス。最近だとSERUMやWAVES Codex、HALion、またAbletn Live 11にも搭載され、今のサウンドを作る上で欠かせないシンセサイザエンジンがPigmentsに装備されています。実際、2年前、最初にPigmentsを出した際、Arturia担当者へインタビューしたときにも「Pigmentsは、Arturiaがまったく新たに開発したソフトシンセです。Wavetableとアナログシンセを組み合わせた非常に自由度の高い音源で、これまでビンテージシンセの復刻に合わせて築き上げてきた数多くのフィルタータイプを利用できるというのも大きな特徴です」と語っていました。

以前インタビューしたArutiraのマーケティング担当、ブライアン・ボーチャーズさん

また、この発言にもある通り、初期バージョンからバーチャルアナログのエンジンも搭載しており、長年Arturiaが培ってきたTAE=True Analog Emulationという技術なども活用しつつアナログシンセサウンドを作り出せ、Wavetableと組み合わせられるのが面白いところです。

シンセエンジンのその2となるのはアナログシンセのオシレーターを実現するバーチャルアナログ

が、Pigments 2、Pigments 3と進化してきた中で、さらに2つのエンジンが追加されています。ひとつがサンプル&グラニュラー。ここには数多くのサンプリング素材が入っているので、ピアノでもギターでもリアルな音が再現できると同時に、グラニュラーシンセシスという元の音を0.01秒といった単位で切り刻んで再配置するシンセサイザのエンジンが搭載されています。

その3はサンプリング音源、グラニュラー音源であるSample

そして、今回の新バージョンの目玉となるのがハーモニック・オシレーターというもので、アディティブ・シンセシスとか加算合成とも呼ばれるシンセサイザ・エンジン。アナログシンセやサンプリングシンセなどで用いられる減算合成とは大きく仕組みが異なり、複数の波形をいろいろ足し合わせていくことで音を合成するというものとなっています。このハーモニック・オシレーター、パラメーターが多く、倍音を組み合わせて音を作っていくので、狙った音を作るというのは簡単ではないのですが、逆に理論的に音を作るというより偶発的な音との出会いを楽しむ音作りであり、これはこれで面白いもの。もちろん、膨大なプリセットは用意されているから、そこから気に入ったものを選んでいく使い方もあります。

その4が今回のバージョンアップで追加された加算合成のHarmonic

Pigments 3にはそんなまったく異なる4種類のエンジンを搭載したシンセサイザなのですが、この4種類の中から2種類を組み合わせて音作りができるという形になっています。正確にはその2つに加え、サブオシレーターともいえるユーティリティ・エンジンというものも組み合わせることができるようになっています。このユーティリティ・エンジンには2つのノイズジェネレーターと、サイン波・三角波・矩形波などが出せるオシレーターがあり、これを組み合わせていく格好です。

サブオシレーターとして存在するのがUTILITY ENGINE

このように、エンジン部分というかオシレーター部分の構成を説明するだけでも、内容テンコ盛りな状態ですが、これにフィルター、エンベロープ、LFO……などなどのシンセサイザ要素、さらにはシーケンサ/アルペジエーター、エフェクト……と山ほどの機能が付いてくるのです。

2基あるフィルターは、それぞれ10タイプの中から好きなものを選択できる

フィルターは2基あり、それぞれにMini、Jup-8、SEM、Matrix-12など10タイプの中のいずれかを選ぶことが可能になっています。この名前からもわかると思いますが、Mini Moogのフィルター、Roland JUPITER-8のフィルター、OberheimのSEMやMATRIX-12のフィルターを利用できるので、シンセ好きの方であれば、これがどれだけエグいことができるシンセサイザなのか、その雰囲気を察することができるのではないでしょうか?

Pigments 3はこのようにずっとウニャウニャ動いている

ところで、このPigments 3、ハーモニックエンジンやWavetableエンジンのグラフが動くのはもちろん、画面の真ん中の段に、数多くのパラメーターが並んでいて、それらがずっとウニョウニョ動いてます。

LFO的な使い方もでき、波形を自由に作ることができるFunction

ご覧いただくとわかる通り、これらはLFOやエンベロープのほか、いろいろな波形を作り出すことができるFunctionというモジュール、ランダムに値を発生させるモジュール、複数を組み合わせたCombinationといったモジュール……といったものがあります。そして、これらをフィルターに適用させるとかオシレーターに適用させるなど、自由自在に音作りができるのも面白いところ。プリセットを読み込んで、どこがどうつながっているのかを追っていくと、もう頭が混乱してしまいそうですが、一度、Defaultというまっさらな状態にしてから音作りを始めてみると、全体構造を理解する上で、頭を整理しやすそうです。

一度プリセットからDefaultを選ぶことで、全体を初期化することができる

さらに、このシンセサイザ本体とは別にFX=エフェクトも搭載されています。ここにはFX A、FX B、AUXという3つの箱があり、フィルタ/EQ系、ダイナミクス系、ディストーション系、時間軸系、モジュレーション系…など18種類のエフェクトを設定できるので、エフェクトだけでもかなりの音作りができてしまいます。

エフェクトも18種類の中から3つを設定して使うことができる

そして、もう一つ大きいのがシーケンサ・アルペジエーターです。タブでSeqに切り替えると、ここにシーケンサ画面が現れ、これをアルペジエーターとして使うのか、シーケンサとして使うのかを選択できるようになっています。どちらも基本同じものですが、シーケンサとして使う場合はフレーズが確定され、アルペジエーターにする場合は、どのように音程が動いていくのかを指定するわけですね。

シーケンサ/アルペジエーターも搭載している

このシーケンサ・アルペジエーターは単にピッチ=ノートの動きを設定するだけでなく、ベロシティ、オクターブ、ゲートの長さ、スライドなどを個別に設定できるほか、そのシーケンスにランダム成分を織り交ぜて、複雑性をもたせることができるなど、なんとも複雑な組み合わせができます。

まあ、あまりにも多くの機能があるけれど、一気に全体を理解しようとすると、ちょっと難しく感じられるかもしれませんが、画面を見てもわかる通り、比較的シンプルで、サッパリしているので、分かってしまえば、自在に音作りができると思います。

もっとも、プリセットが膨大にあるので、まずはそれらを選んで使うだけでも十分かもしれません。

以上、とっても簡単にではありますが、Pigments 3とはどんなソフトシンセなのか紹介してみましたが、雰囲気はつかんでいただけたでしょうか?シンセが分かる人にとっては、これほど面白いネタが豊富詰まったものは、ほかになさそうですし、シンセが分からなくても、膨大なプリセットを選ぶだけで充分Pigments 3のスゴさ、面白さを実感できるはずです。価格も手ごろなので、新しい音源を探しているという人は、ぜひトライしてみてはいかがでしょうか?

【関連情報】
Pigments 3製品情報

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