Windowsの音質を阻害するカーネルミキサー

前記事、【DTM用語の基礎知識】ASIOドライバって何?では、WindowsでDTMをするのなら、何も考えず「ASIOドライバを使う」のだ、ということを書きました。でも、ドライバを変えるだけで本当に音質がよくなったり、悪くなったりするのでしょうか? ここではその点について考えてみたいと思います。

もともとオーディオをデジタルで扱っているわけですから、オーディオインターフェイス自体が同じであれば、ドライバが変わってもレコーディング時やプレイバック時に音質が変化することはないように思えます。確かに、ASIOドライバだろうとMMEドライバだろうと、音質に劇的な変化が生じるわけではありません。しかし、モニターヘッドフォンなどを使ってよく聴いてみると、確かに音が微妙に違って聴こえるのは事実です。ちょっとオカルト的なニュアンスに思われるかもしれませんが、ここにはみなさんもよくご存知の大きな阻害要因があるのです。


それが、Windowsのシステムに組み込まれている
・カーネルミキサー
というものです。英語で書けば、Kernel Mixer。略してK-Mixerなどと呼んだりもしていますが、これはWindowsがシステム的に持っているオーディオミキサーのことです。ユーザーインターフェイス的には、誰もがよく目にするあのミキサーです。

このミキサーのおかげで、Windowsの各アプリケーション間での音量バランスを簡単に取ることができて便利なのは確かですが、DAWや波形編集ソフトなどDTM系の音楽制作ソフトにおいて使うとなると、やはり問題を感じます。

そう、DAWなどに搭載されているミキサー機能は、それ自体をいかに高音質にするのかで、各社ともしのぎを削っています。たとえば16bitの分解能の音でもミキサー部では24bit処理した上で、できるだけ音質を損なわないように演算処理を行う……といった工夫をしているわけです。しかし、そうやって作り出したオーディオ信号を、おそらく音質はまったく考慮していなそうな設計のWindowsのカーネルミキサーなどを通してしまったら……、やはりせっかくの高音質処理も台無しになってしまうでしょう。本来、カーネルミキサー上で、再生するデバイス、または録音するデバイスの音量設定を最大にしておけば、変なボリューム演算をされず、なんら音的な変化なしに録音したり再生したりできるはずですが、実際には何か妙な処理がされ、音が変質してしまうのです。

だからといってMicrosoftにカーネルミキサーの高音質化を求めても筋違い。それならば、カーネルミキサーを介さずに直接DAWなどのアプリケーションとオーディオインターフェイス間でやりとりすればいいのです。その発想で作られたのがASIOドライバだったわけです。

しかし、カーネルミキサーを通さないという方法は何もASIOだけではありません。Cakewalkが開発したWDMドライバを用いたカーネルストリーミングというのも、同じ考え方です。さらに、Windows Vista SP1移行にWindowsに実装されたWASAPIというのも、その考え方に基づくものなのです。
DTMにおいてはカーネルミキサーは百害あって一利なし、というわけなのです。

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