4,998円のソフト、「ほぼ全自動 耳コピ支太郎」の実力は!?

昨年の記事「作曲できてボカロみたいに歌もうたえる」で「ほぼ全自動 作曲支太郎」という作曲支援ソフトを紹介しましたが、同じ会社から、今度は「ほぼ全自動 耳コピ支太郎」なるWindows用ソフトが4,998円という価格で発売されました。

名前のとおり、今度のソフトは耳コピを支援してくれるようですが、耳コピの自動化(それは耳を使ってないからコピーか!?)はやはり誰もが求める夢の技術。RolandのR-MIXSony Creative SoftwareのSpectraLayers ProカワイのBand Producerなど、各大手メーカーが最新の技術を投入して挑んでいる世界でもあります。それをこんな安価なソフトでどこまで実現できるのでしょうか?ちょっと使ってみまた。

ほぼ全自動 耳コピ支太郎で、どこまでの解析ができるのか?



ほぼ全自動 耳コピ支太郎」が発売されたのは2月8日でしたが、その存在は読者の方から掲示板への書き込みで知り、メーカーに問い合わせてサンプル版をお借りしました。ちょうど同じタイミングでICONの記事にもなっていたので、ご覧になっていた方も多いのではないでしょうか?
ほぼ全自動 耳コピ支太郎のパッケージ

最初、画面を見て「ちょっと難しそうなソフトなのでは……」とも思っていたのですが、実際に使ってみると「ほぼ全自動」というとおり、使い方はとっても簡単。「何でもできる魔法のツール」とはいえませんが、耳コピ支援ツールとしては、結構役に立ちそうなので、どんなツールなのかを見ていきましょう。
まずは耳コピのための素材を用意します。WAVがあればベストですが、CD、MP3、AACなどの音楽データだけでなく、MPEG、MP4、MOV、FLVなどの動画データでもOKというのもポイント。さすがにYouTubeやニコ動のURL指定ということはできませんでしたが、動画対応というのはちょっと嬉しいところです。これらを付属の音楽変換ツールを使ってあらかじめWAVに変換しておくのです。なお、CDの場合は、リッピングツールというやはり付属のソフトでWAVに吸い上げておきます。
付属の変換ツールでMP3やFLVなどをWAVに変換する
その後、こうして作られたWAVを中核となるソフト、耳コピ支太郎へドラッグ&ドロップで持っていくのです。すると、設定画面が表示されますが、とりあえずそのままOKをクリックすると、スペクトル分析画面が登場してきます。そう、これを見ると、なんだか難しそうなものに見えますよね。でも、たったこれだけで第1段階の耳コピが終了しているんですよ。
WAVファイルを読み込んだだけで、とりあえずの解析がされる
そう、画面左側を見ると鍵盤が表示されているのがわかると思います。そして曲の進行にしたがって中で使われている音がピアノロール風に表示されているわけなんですよね。ただし、この段階ではテンポもわからないし、すべての楽器の音が画一的に表示されてしまっています。

そこでこれにテンポの設定をします。といっても、これも簡単。曲を再生しながら、SHIFTキーを押してスペースキーをトントンと叩いていくことで、テンポが設定されます。

これで準備が完了したので、ここから第2段階目の解析に入ります。その第2段階として用意されているのが「コード検出」と、音符として取り出す「自動採譜」です。

テンポが設定されたら、さっそくコード検出

コードトラックを表示させておき、「コード検出」を実行するとダイアログが表示されますが、とりあえずOKをクリックすれば解析し、画面上にコードを表示させることができます。もし、ある程度使うコードの絞込みができるようであれば、これを設定しておくことで、正解率が向上します。また、1拍ごとに検出するのか、1小節ごとでいいのかなどの設定もできるようになっています。

小節番号下に表示されるコードトラックに解析したコードが表示される

またコード検出後は、そのコードに合わせてMIDIを鳴らすことも可能です。外部MIDI音源があるとベストですが、ない場合はMicrosoft GS Wavetable Synthを選択して音色を選ぶことも可能。この場合、レイテンシーの設定をしておくと、うまくタイミングを合わせて原曲とコードを合わせて鳴らすことが可能になります。
解析結果を演奏するためのMIDIデバイスなどの指定ができる
実際試してみたところ、リズムがしっかりしていて、コードがハッキリしている曲だと、それなりに、いい結果が出てきますね。曲を聴いて、すぐにコードがわかる人は別として、バンドスコアとかを見ないとさっぱりコードが分からない…という人にとってはかなり役に立つのではないでしょうか?

一番細かい解析で1拍ごとなので、あまり激しいコード変化や複雑なコードを使っていると、正解率は落ちていくようです。

1音1音を解析する自動採譜も基本的にOKをクリックするだけ

一方、「自動採譜」も単純に選んで、OKをクリックするだけ。こちらは、コードではなくMIDIの音符に変換してくれるのですが、これは最初の解析結果の明るい色、つまり強い音が音符として採用される仕組みになっているんですね。感度を変えることで採用する音の強さの境目を変更することができるほか、もしベースを音符かしていくのであれば、音階の範囲で低い音程を、さらに単音モードに設定するといい感じに拾ってくれます。

音の強いところが音符として検出される。感度の設定も行うことができる

このようにして取り出した結果は、原曲と合わせて再生することもできるし、MIDI単独で鳴らすこともできるし、MIDIファイルとして出力し、DAWでエディットするといったことも可能。とはいえ、この単純操作で完璧な耳コピができるのではなく、あくまでも支援ツールであるから、過剰な期待は禁物ですが、「曲の中でこの部分の音が分からない…」というときは視覚的に見せてくれるので、かなり重宝すると思いますよ。

一方、現在のこの手の技術を客観的に見て評価すると、この価格からは信じられないほどの高性能だと思います。ほぼ全自動で、ここまでのことができれば、十分過ぎるほどではないでしょうか?

また、ここでは「ほぼ全自動」な使い方だけを紹介しましたが、センターキャンセルによってボーカルを消してからの解析やグラフィックイコライザで音質を調整してからの解析、さらには視覚的に音符を抜き出す機能や自分でコードをエディットする機能など、かなり豊富な機能が用意されています。

なお、冒頭のICONの記事にもありましたが、ほぼ全自動 耳コピ支太郎の中核ソフトは、あっきーさんという方が開発したフリーソフト「WaveTone ver.2.51」がベースになっており、機能はWaveToneとほぼ同じ、とのこと。ただし、このパッケージ版であるほぼ全自動 耳コピ支太郎には、前述の音楽変換ツールやリッピングツールがバンドルされているほか、70ページに渡るしっかりしたマニュアルも同梱されていていますから、とくに初心者にとってはパッケージ版がお勧めですよ。

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Commentsこの記事についたコメント

9件のコメント
  • はなまる

    無粋なツッコミですが、変換ツールの画像内でYouTubeからダウンロードしたと思われる……
    ダウンロード違法化など何かと厳しい世の中ですので、無用なトラブルを避けるためにもお気をつけください。

    2013年2月19日 11:21 AM
  • 藤本健

    はなまるさん
    ありがとうございます。

    2013年2月19日 11:39 AM
  • じょるのじょばーな

    はじめまして。ちょっとしつもんしたいのですがよろしいでしょうか。
    このソフトでドラムを読み込むとどのような感じに読み込まれるのでしょう?生ドラムのパターンをmidi変換するのに使えるのかなーとそう言う興味があるのですが。

    2013年2月19日 8:06 PM
  • 藤本健

    じょるのじょばーなさん
    こんにちは。
    ドラムには対応してないみたいですね。
    あくまでも検出するのは音程のようで、決まった音階を持たないドラムの場合はうまく検出することはできませんでした。

    2013年2月19日 8:42 PM
  • じょるのじょばーな

    藤本さま
    ご返答ありがとうございます。
    残念ですが、地道に打ち込むしかなさそーですね。
    ありがとうございました。
    また、何か良い方法があれば記事にしてください。

    2013年2月19日 10:22 PM
  • TM STUDIO

    藤本さん、遅くなりましたが、レビューありがとうございます。
    金額的にも高いソフトではないので、とりあえず買って試してみます。
    多分、曲の種類で使いやすい、使いにくいの差があるのかと思います。
    リズムが取れないのは残念ですが、リズムについてのみ解析してくれるようなアプリもあれば便利ですねぇ。誰か作ってくれないかなぁ。

    2013年2月23日 10:15 AM
  • 藤本健

    TM STUDIOさん
    こちらこそ、いい情報を教えていただきありがとうございました!
    また、何か面白いソフトやハードなど見つけたら教えてください。

    2013年2月23日 10:18 AM
  • はじめまして

    wavetonという似たようなフリーソフトがあります
    違いはありますか?

    2013年2月24日 8:47 AM
  • 藤本健

    はじめましてさん
    こんにちは。記事に書いたとおりですよ。

    2013年2月24日 11:30 PM

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