氏家克典さんにArturiaのアナログシンセ、MicroBruteについて聞いてみた
氏家:発表の直前に、ArturiaのCEO、Fredericが日本に来たときに見たのが最初です。ただ、以前から話は聞いていたし、もともと小さいのが欲しいって、要望はしていたんですよ。
氏家さんに、いろいろなノウハウを教えてもらうことができました
氏家:たとえばBruteFactorというフィードバックによってサチュレーションとリッチな倍音を作り出す機能とか、ノコギリ波に「揺れ」を付加するUltrasawとか、三角波に強烈なハーモニクスを付加するMetalizerとか……普通のアナログシンセを作ると場合に思いつかないようなアイディアがいっぱい盛り込まれているんですよ。MetalizerなんかはFM音源のアイディアを取り入れているけど、うまいよね。
氏家:そういう誤解をしてしまう人は多いと思うけど、シンセサイザとしては基本的に同じなんですよ。パッと見だと、EG(エンベロープジェネレーター)は1つだけだし、オシレーター関係もパラメータが減っている。そしてフェーダーがツマミになるなど、削りに削った機能削減版のように見えちゃうかもしれないけど、中身はそうじゃない。オシレーターはノコギリ波、三角波、矩形波の3種類だし、Steiner-Parkerフィルターを搭載してるし、構造的には同じなんです。だから出音もまったく同じ。見た目上そぎ落とされた面はあるけど、それを補うためのエッセンスがいろいろと盛り込まれているのがMicroBruteの魅力なんです。
氏家:まずはサブオシレーター。これはMiniBruteもあって1オクターブ下の音が入れられるようになっていた。だけど、MicroBruteのは、12時の方向にあるとレベル0で、左に回していくと1オクターブ下の音が入っていき、右に回すと5度下の音が入ってくる。絶妙なアイディアだよね。5度下を使うと、いい感じの倍音が増えてくるんですよ。これはMiniBruteにはできないからね。またUltra sawに関していうと、MiniBruteには揺らす機能のRateとズラす量を決めるAmountという2つのパラメータあったけど、揺らぎすぎても気持ち悪いので、結局使う位置って決まってたんですよ。ところがMicroBruteでは最初からその定位置が指定されていて、ベストポジションをキープしながら使える。レベルを増やすとグワァーーって音を厚くすることができるから、これは便利ですよ
氏家:これも面白いんですよ。まずデフォルトの状態だとADSRはVCFにかかっています。MiniBruteにはVCA専用のEGがあったけど、ここにはない。ついでにいうとLFOはVCOにかけるのがデフォルトであり、これでビブラート効果が出せるようになっています。まあ、これだけだと機能を削ったということになるんだけど、MicroBruteにはMiniBruteにはないモジュレーションマトリックス=MOD MATRIXというのがあるんですよ。
氏家:そう、ArturiaのMinimoogをエミュレーションしたMiniVにも、こうしたMOD MATRIXがあるけど、それをハードで実現しているわけです。EG(盤面の表記はENV)とLFOの出力があって、これをMetal、Saw、Sub、Pitch、Filter、PWMのそれぞれに入力することができる。付属しているのは1:1のケーブルだけど、ここは単なるCVの電圧信号を送るだけだから、1:2とか1:3に分岐するケーブルを用意すれば、LFOをPitchとSawに突っ込むといったこともできるわけ。場合によっては、ほかのシンセに接続してもいいよね。このMOD MATRIXのおかげで音作りの自由度という面ではMicroBruteのほうが上回ってしまっています。
右上部分にあるMOD MATRIX。シンプルなCV信号なので、外部機器との接続も可能
氏家:さらにMiniBruteより優れているのはシーケンサ。MiniBruteにはアルペジエータはあったけど、ちちらは64ステップのシーケンサになっており、簡単に入力することができる。しかも、そのシーケンスパターンを8つまで記録でき、スイッチで切り替えて使うことができます。入力も単純にキーボードから入れていくだけなので簡単ですよ。
【追記】
※初出時、8ステップ×8シーケンス=64ステップと書いてしまいましたが、最大64ステップのシーケンスが8パターンという構成でした。
氏家:後ろ側を見るとわかるようにUSB入力もMIDI入力もあるから、どちらでも利用できますよ。この辺はMiniBruteも同じです。ただし、MicroBruteに、MIDI出力はないけどね。
【追記】
※初出時、MiniBruteにもMIDI出力がないように読める文面になっていましたが、私の間違いでした。
氏家:ただし、こっちはミニ鍵盤でMiniBruteはフル鍵盤。弾きやすさという面ではMiniBruteのほうがいいんだけどね。そういえば、Arturiaに対して要望を出していて実現できなかったのが電池駆動。これだけ小さいのにするなら、ぜひ電池で動くようにしてほしいと頼んだんだけど、無理だったみたい……。
無理に大きなMiniBruteを片手で持ってポーズをとってもらった
--氏家さん以外、あまりそういう要望がなかったからだとか…?
氏家:いや、そうじゃなくて、技術的に難しかったそうです。デジタルシンセならいくらでもできるけど、これは本当にすべてアナログ回路でできているんで、どうしても電力を食うんですよ。実際、オシレーターだって安定するまで電源を入れてから10分程度はかかるし、その分電力を食っているということです。その点まで含めてアナログシンセの面白さを味わってもらえるといいですね。
氏家:今回はタダで教えちゃったけど、ホントはマンツーマン・レッスンを有料でやってるんですよ!基本的にはウチのスタジオに来てもらって1時間10,500円という料金になっているほか、都内のスタジオに出向いての出張レッスンや地方であればSKYPEを通じてのレッスンなんかも行っています。
--氏家さんのレッスンを受ける方法が、正式にあったんですね。失礼しました。今日は、本当にありがとうございました。氏家さんのレッスンに興味のある方はぜひ、氏家さんのサイトからお問い合わせください!
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