Dorico 2.0はドイツのSteinbergが開発し、ヤマハが発売する楽譜作成ソフトです。Steinbergというと、やはりCubaseのイメージが強いのですが、DoricoはCubaseのスコア機能が強化されて独立した……というわけではなく、イギリスのまったく別のチームがゼロから開発したソフトであり、まさに打倒Finale、Sibeliusというイメージで開発された正統派の楽譜作成ソフトです。
とはいえ、Steinbergのソフトですから、CubaseやNuendoの資産を有効活用し、発展させていくというのは当然の流れであり、今回のDorico 2.0ではそうした面が色濃く出てきています。主な進化ポイントを中心に見て行きましょう。
まず一つ目はNuendo 8そして、Cubase 9に搭載されているビデオとの連携作業を実現した、という点です。「楽譜作成ソフトにビデオ搭載って、何のため??」と不思議に思う方も少なくないと思いますが、これは劇伴作家さんであったり、劇伴の演奏のために楽譜を見ながら指揮をする人のための機能。まさにDTMステーションPlus!でご一緒している作曲家であり、レコーディング代棒指揮(作曲家の代わりにレコーディング用の指揮をすること)もこなす多田彰文さんを思い浮かべてしまいましたが、そうしたプロの方々が使うための機能ということのようです。
ビデオボタンをクリックすることでマーカーを打っていくこともできる
一方、Doricoは印刷する楽譜を作成することを主眼に置きつつも、CubaseのようなMIDIシーケンス機能も充実させてきており、再生画面を見ると、まさにDAWかMIDIシーケンサか……という雰囲気になっています。
パっと見、Cubaseを彷彿させるMIDIトラックが並ぶ画面
もちろん、ここの各トラックをどのVSTインストゥルメント(ソフトウェア音源)で再生するか、どの音色を使うかは自由に設定できるし、Dorico Proにはマルチ音源 HALion Sonic SE 3のサウンド 1,300 以上、さらにはオーケストラ音源 HALion Symphonic Orchestraライブラリーが付属しています。そのため、これで一通りのMIDI演奏ができるのです。
さらに今回の新バージョンでは、MIDIのオートメーション機能が搭載されました。これは譜面側とは直接関係しないのですが、より臨場感のあるMIDI演奏を可能にするため、ダイナミクスやPAN、モジュレーションなどを設定して自由に動かすことができるようになったのです。その意味でもCubase的になったといっていいと思います。
一方、楽譜において重要な要素である拍子記号の表示方法を3種類から選ぶことができるようになりました。従来通り、個々の譜表に表示できるだけでなく、括弧内の組段すべてをまとめて中央に大きな拍子記号として表示することができたり、組段の上に拍子記号を表示することも可能となったのです。
これにより、どこで拍子が変わるのかをより分かりやすく強調する効果ももたらし、結果として演奏しやすい楽譜になるというわけです。
この見やすいという面では、新たに手書き風フォントが追加されています。さすがに漢字やひらがななどの日本語フォントはありませんが、コード表記をしたり、英語でのタイトル表記に利用することで、柔らかいニュアンスの楽譜を作れそうです。
フォントを選択して、手書き風な文字にすることもできる
こんな感じにリズムだけを入れたコード譜を簡単に作成することができる
またossiaは譜表の上や下に表示して、演奏が困難な箇所に対して代わりのフレージングや装飾音のガイドを表すものですが、そうしたこともDorico Proで表記しやすくなっています。さらに鍵盤楽器やマレット打楽器などのために、曲の途中で譜表を追加したり、減らすといったケースがありますが、こうしたことにも対応しています。
2つのパートを1つにまとめてしまう機能、反対に2つに分ける機能なども装備している
【関連情報】
Dorico 2.0製品情報
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Dorico Pro | Dorico Elements | |
記譜 | ||
臨時記号 | 標準、ダブル、微分音、カスタム | 標準、ダブル |
小節番号 | 複数フォーマット | 一種類 |
小節線の種類 | 豊富に対応 | 縦線、複縦線、終止線、繰り返し線 |
音部記号 | 26 プリセット | 7 プリセット |
音符 / 休符のカスタムグルーピング | 〇 | - |
括弧のカスタマイズ | 〇 | - |
コード記号 | 9 プリセット、カスタマイズ可能 | 1 プリセット |
キュー | 〇 | - |
ストリングスの Dividi | 〇 | - |
扇状連桁、ステムレット | 〇 | - |
調号 | フルカスタマイズ可能 | 最大 7 フラット/シャープ |
符頭 | 30 プリセット、フルカスタマイズ可能 | 30 プリセット |
オクターブ線 | フルカスタマイズ可能 | 限定 |
オシア | 〇 | - |
楽器毎の譜表の数の変更 | 〇 | - |
ページ番号 | カスタマイズ可能 | 自動 |
ペダル記号 | フルカスタマイズ可能 | 限定 |
奏法 | カスタマイズ可能 | 220 プリセット |
リハーサルマーク | カスタマイズ可能 | 限定対応 |
無音程打楽器楽譜 | カスタマイズ可能 | 限定対応 |
再生 | ||
内蔵音色 | 2000以上 (8GB ライブラリー) | 1500 (2GB ライブラリー) |
HALion Symphonic Orchestra | 〇 | - |
記譜の解釈 | カスタマイズ可能 | 固定 |
浄書 | ||
専用の浄書モード | 〇 | - |
縦間隔の編集 | 〇 | - |
リズミックな間隔の編集 | 〇 | - |
個々の要素をグラフィカルに調整 | 〇 | - |
カスタマイズ可能な浄書設定 | 〇 | - |
連桁、声部の初期設定 | 〇 | - |
テキストフォント | フルカスタマイズ可能 | 限定 |
音楽フォント | 〇 | - |
音符間隔の設定 | フルカスタマイズ可能 | 限定 |
譜表、組段の間隔 | フルカスタマイズ可能 | 自動 |
カスタマイズの可否 | ||
ページレイアウト | 〇 | |
音符間隔 | フル調整可能 | 限定 |
調号 | 〇 | - |
臨時記号 | 〇 | - |
奏法 | 〇 | - |
符頭 | 〇 | - |
テキストフォント | フルカスタマイズ可能 | 限定 |
音楽フォント | 〇 | - |
コード記号 | 〇 | - |
記譜オプション | カスタマイズ可能 | 固定 |
浄書オプション | カスタマイズ可能 | 固定 |
再生オプション | カスタマイズ可能 | 固定 |
記譜と編集 | ||
パートまとめ、拡張 | 〇 | - |
声部への貼り付け | 〇 | - |
フィルタリング | フル | 限定 |