YAMAHAの定番モニターヘッドホンHPH-MT8。最近プロを含む多くのDTMerが利用するようになった理由とは?

YAMAHAHPH-MT8というモニターヘッドホンをご存知でしょうか?約6年前に発売されたモデルであり、最近、多くのプロも使う定番的な存在となってきているので、DTMユーザーでも利用者が増えているため、「毎日使ってるよ!」という方も少なくないと思います。このHPH-MT8をはじめとするMTシリーズには、エントリーモデルのHPH-MT5、ミドルレンジのHPH-MT7というラインナップが用意されていますが、その中でも圧倒的人気なのは、フラグシップモデルであるHPH-MT8。

モニターヘッドホンは、安いものは1万円以下から高いものになると10万円ほどしますが、HPH-MT8は比較的入手しやすい価格帯。プロも信頼する出音を体感できるので、コストパフォーマンスが高い製品だと思います。実際私もHPH-MT8を数年使っており、とても使いやすいヘッドホンだと実感しています。壊れる気配もなく、長く使えるので、本格的にDTMを始めるのであれば、持っていて損のない製品だといえます。そんなHPH-MT8を改めてではありますが、ほかのラインナップとともに紹介していきましょう。

YAMAHAが発売する、モニターヘッドホンMTシリーズ


HPH-MT5、HPH-MT7、HPH-MT8は、HPH-MT220というモニターヘッドホンの後継モデル。HPH-MT220の次の世代として、まずHPH-MT7が発売され、その後HPH-MT5とHPH-MT8が登場したという歴史があります。以前「YAMAHAのモニターヘッドホン、HPH-MT220の後継、MT8を試してみた」という記事でも書いたように前々からHPH-MT220は使っていたのですが、この記事をきっかけにHPH-MT8を使い始め、今でも愛用しているお気に入りモデル。そろそろイヤーパッドがへたってきているので、YAMAHAから発売されている純正のイヤーパッドに変えようかなと思っているところです。イヤーパッドは音質や装着感に影響があるため、純正が手軽に購入できるのは重要ポイントですね。

左がHPH-MT8、右がHPH-MT220

個人的には、業界標準であるMDR-CD900STは軽さが好きなので、HPH-MT8と併用しているのですが、しっかり音を聴きたいときは圧倒的にHPH-MT8使うことが多いです。900STは、耳の圧迫感が少ないので、付け外しが簡単という理由から、レコーディング時などに利用しています。ただ高域はしっかりしているけれど、低域が苦手なので、ベース音などを確認する際には、両手でハウジング部分を強く耳に押し当てないと分からないし、それでも正確な音として捉えるのが難しいです。無理に900STでいい音に鳴るようにベースを調整し、スピーカーで確認すると低域が鳴り過ぎになってしまうという問題点もあります。

普段使用している900ST(左)と数年使い続けたHPH-MT8(右)

一方HPH-MT8は、全帯域がフラットで、バランスが取りやすいのです。また、ノイズチェックといった作業も行えるぐらい、しっかりモニターすることも可能で、音の立ち上がりも抜群。YAMAHAならではの出音で、中音域の解像度が高く、低音域も自然に再生してくれます。

音楽制作におけるパフォーマンスが高いモニターヘッドホンHPH-MT8

そんなHPH-MT8は、よく使っているのですが、気になったのはHPH-MT5やHPH-MT7がどういったヘッドホンなのかということ。YAMAHAの担当の方にお願いしたら、この2機種をお借りすることができたので、見ていきましょう。

エントリーモデルのHPH-MT5(左)とミドルモデルのHPH-MT7(右)
まずはHPH-MT5ですが、これはHPH-MT8と同時期に発売されたということもあり、イヤーカップが長方形になっています。イヤーパッドは、耳を包み込むタイプの少し固めの合皮で、シリーズ共通の3次元のアームピボット構造と長さ調節が可能なスライダーを装備しているため、頭にフィットします。装着した感じ900STに近い重量でありつつも、フィット感はHPH-MT5の方が上。それこそ、900STと同じような使い方に適していると思います。

HPH-MT8と同様にイヤーカップが長方形になっている

なおドライバは、HPH-MT8が45mmドライバなのに対し、40mmドライバが採用されおり、周波数レンジは20Hz~20kHzとなっています。ケーブルは、着脱式で3mのストレートケーブルが付属。カラーリングは、黒のHPH-MT5と白のHPH-MT5Wが用意されています。音質については、最後に全シリーズ通して紹介していきます。

ハウジングの色違いで、黒のHPH-MT5(左)と白のHPH-MT5W(右)が用意されている

次は、HPH-MT7です。これは、HPH-MT5とHPH-MT8より先に発売されたモデルなので、少し仕様が違います。分かりやすいのはイヤーパッドで、ほかの2モデルが長方形である一方、こちらは円形。なおドライバは40mmドライバで、周波数レンジは15Hz~25kHz。また、ケーブルが着脱式ではなく、このモデルだけ折り畳み式でないなどの違いがあります。

HPH-MT7のみ円形のイヤーカップを採用したモデルになっている

カラーは、黒のHPH-MT7と白のHPH-MT7 Wがあります。中間モデルであるものの、ほかの2機種と結構違いがあるHPH-MT7。音質にも大きな違いがあるのか気になるところ。

こちらもハウジングの色違いで、黒のHPH-MT7(左)と白のHPH-MT7 W(右)が用意されている

そして最後にHPH-MT8。以前の記事でも概要を紹介していますが、改めて機構について紹介すると、まずイヤーパッドがプロテインスキンという特徴的な合成レザーであり、適度な湿り気と革のような滑らかさを持っていて、とっても肌触りがいいです。夏の季節に使っていても蒸れることなく快適に装着することができます。

適度な湿り気と革のような滑らかさを持ち、プロテインスキンという特徴的な合成レザーを採用している

またスライダーがこのモデルのみ段階的に調節可能なので、毎回同じ場所に調節することができます。HPH-MT5と同様にホールド感が高く、ちょうどいい締め付けで、ヘッドホンがずれたりすることはありません。ただ、少し問題なのは重量。このモデルは、ケーブルなしで350gとそこそこな重さがあります。イヤーパッドやヘッドバンドの完成度が高いので、慣れてしまえば重さを感じないのですが、初めて着けたときにはちょっと重く感じるかもしれません。なお、HPH-MT7は360gなので、HPH-MT8とほぼ同じ重さです。

慣れれば気にならないが、HPH-MT8は少し重めのモデルとなっている

ケーブルは着脱式で、3mのストレートケーブルと1.2mのカールケーブルの2種類が付属。カラーは黒のみ。HPH-MT5と同じ折り畳み式となっているので、付属のキャリングポーチに入れて、持ち運びも可能です。

折り畳み式なのでキャリングポーチに入れて簡単に持ち運べる

さて、音質について紹介していきましょう。結論から書くと、3機種とも音の傾向は同じ。仕様が異なるHPH-MT7でも、音の全体的な雰囲気は統一されていました。あくまで、この3機種を比較した音質の話になりますが、HPH-MT5はシリーズの中で最もレンジ感が狭く、低音域が出ている印象。このシリーズの特徴でもある音の立ち上がりのよさを持っているので、リズム楽器が聴き取りやすいですね。特にボーカル、ドラム、ベースなど、センターに配置される音をモニターしやすいので、楽器やボーカルのレコーディングに使いやすいと思いました。

HPH-MT5は、楽器やボーカルのレコーディング向け

HPH-MT7は、HPH-MT5よりもバランスがよく、低音域はHPH-MT5より控え目で、HPH-MT8よりは出ています。高音域に関しては、HPH-MT7よりも若干キラキラしているようにも感じます。こちらもアタック感がよく、十分ミキシング用途で使えるモデルだと思いますが、どちらかとリスニング寄りの出音です。こちらの音の方が、HPH-MT8よりも好きな方もいるかもしれませんね。それこそ、作曲中はこちらを使った方が楽しく制作できると思います。

作曲時やリスニング用途にHPH-MT7は向いている

HPH-MT8は、やはり全体のバランスが抜群ですね。実は音の傾向としては、900STとも近いのですが、HPH-MT8の方が全体的に一枚上手。ミキシング、マスタリングに使うのであれば、これ一択になると思います。まとめると、HPH-MT5は軽くて持ち運びが簡単、音質面から見ても、レコーディング時のモニター向け。HPH-MT7は、リスニング用途でもモニター用途でも使いたい方向け。HPH-MT8は、レコーディング、ミキシング、マスタリング……など、音楽制作する方向けですね。

最近プロやDTMerがHPH-MT8を使っている背景には、音質のよさも含め、コストパフォーマンスの高さが理由にあると思います。装着感もよく、ケーブルは着脱式で、純正のイヤーパッドも簡単に買えるなど、業務用として使用していくのに大切な要素も揃っているのです。比較的入手しやすい価格帯なので、最悪持ち出して紛失してしまったり、故障しても、再度購入しやすいのは、日常的に使うのであれば大事なポイント。実際にHPH-MT8を利用しているユーザーからは高い評価なので、次世代のスタンダードなモニターヘッドホンとしての地位を築き始めているといえますね。

以上、MTシリーズについて紹介しました。これらのシリーズは一時入手しにくかったようですが、現在供給は安定しているそう。ぜひ一度試してみてはいかがでしょうか?

【製品情報】
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