どんな音でもイカしたローファイ・サウンドに仕立て上げるレトロ・サンプリング音源、LIVEN Lofi-12発売開始

日本の電子楽器メーカー、SONICWAREがローファイ・サウンドに特化したGrooveboxマシン、LIVEN Lofi-12(ライブン・ローファイ12)を11月23日に発表すると同時に発売を開始しました。これは16bit-12kHz/24kHzサンプリングとともに、12bitサンプラーモードを搭載しているため、まさに80年代後半に登場したAKAIのS900やMPC 60のようなサウンドを作れるのが大きな特徴。最大4秒のサンプリングが可能であり、スタート/エンドポイント、アタック/リリース、ピッチ編集も本体だけで編集可能となっています。

もちろんサンプリングしたサウンドは自動でキーボードにアサインされるので、簡単に演奏させることもできるし、4トラックのステップシーケンサを使ってパターンを組んでいくことも可能。これをほかのLIVENシリーズやKORGのvolcaシリーズなどと接続して同期演奏することもできるし、当然PC上のDAWとMIDIで連携させていくことも可能です。さまざまなエフェクトを搭載するとともに、カセットテープサウンドにするTAPEシミュレータやレコードサウンドのようにするVINYLシミュレーターなどが搭載されているのもユニークなところ。かなり豊富な機能を搭載していますが価格は、これまでのLIVENシリーズと同様24,800円(税込)と非常に手ごろであるのも嬉しいところです。発売に先駆けて、そのLIVEN Lofi-12を少し試すことができたので、どんな機材なのか紹介してみましょう。

SONICWAREから、LIVENシリーズの新機種、Lofi-12が発表と同時に発売になった

SONICWAREは、東京・池袋にある日本のベンチャー楽器メーカー。同社が最初の自社製品、ELZ_1を発表したのが2018年1月のNAMM SHOWで「日本の小さなガジェットシンセ、ELZ_1がNAMMでお披露目!」という記事で紹介したこともありました。その後、手ごろな価格で存分に楽しめるGroovebox、LIVENシリーズを製品化していき「チップチューンからFMサウンドまで、日本のベンチャーSONICWAREが開発したガジェット型シンセ、LIVEN 8bit warpsが誕生」という記事で紹介したりもしました。

4月にクラウドファンディングが実施されたSmplTrekの出荷がちょうど今週スタートしたタイミング

さらにLIVENシリーズとは別に、「ゲームボーイ風小型サンプラー、SmplTrekの詳細が明らかに。小さいながら楽しくスゴイ機能が満載」という記事でも紹介したSmplTrekをリリースするなど、次々とユニークな楽器を開発し、世界的にも注目が集まっているメーカーです。そのSmplTrekの出荷が今週スタートしたところですが、間髪を入れずにリリースしたのが今回のLIVEN Lofi-12というわけなのです。

実際、どんな音がする、どんな機材なのか?SONICWAREがオフィシャルのPVを作っているので、まずはこちらをご覧になってみてください。

かなり、いい味を出していると思いませんか?実際、デモソングがいろいろ入っているので試しに鳴らしてみたら、どれもまさにこんな感じの気持ちいいLo-Fiサウンドなんです。以下のビデオが、それですね。

Lo-Fiサウンドが流行る昨今ですが、Lo-Fiサウンドを制作するには、80年代とかのレトロ機材を入手しなくてはならない……というのが基本にあったように思います。そうした中、最新のLo-Fiサウンドマシンが登場した、というわけなのです。

手前が今回登場したLIVEN Lofi-12、奥がLIVENシリーズの初代機LIVEN 8bit warps。大きさ形状はほぼ同じ

まずは外見からチェックしていきましょう。LIVENシリーズは、私もLIVEN 8bit warpsを以前購入したので、これと並べてみると、大きさ形状は同じ色違いであることがわかります。なんとなくAKAIのS900を彷彿させる色合いなのもグッとくるところです。サイズ的には297mm(W)×176mm(D)×48mm(H)で約790gなので、大きめのお弁当箱といった感じでしょうか。

単3電池x6本で駆動させることも可能

単3電池x6本で駆動させることができるほか、volcaと同じ9VのDCでも動かすことができます(ACアダプタは付属してません)。本体右上にライン出力、ヘッドホン出力がありますが、内蔵スピーカーも搭載されているので、モノラルではありますが本体だけで結構大きな音で鳴らせるのも楽しいところです。MIDIの入出力、SYNC信号の入出力も搭載されていますね。

LIVEN Lofi-12の右上にはスピーカーが内蔵されているので、本体のみで鳴らすことも可能

では、実際にどんな楽器なのかもう少し具体的に見ていきましょう。LIVEN Lofi-12には128個のサンプル・メモリー・スロットが装備されており、そこに80種類のローファイ・プリセット・サンプルが収録されています。各種楽器サウンドやドラムサウンド、またループ素材など入っていて、即戦力として使えそうではありますが、80種類という数字からもわかる通り、これだけで曲を作っていくというよりは、あくまでも使い方サンプルであって、自分でサンプリングしていくのが、LIVEN Lofi-12の肝である、ということのようです。

プリセットとして80種類のサンプリングデータも収録されている

前述の通り16bit/12kHzおよび16bit/24kHzが選択できるようになっていて、Lo-Fiサウンドの12kHzの場合最大で4秒のサンプリングが可能で、スタンダードな24kHzの場合は2秒までのサンプリングが可能となっています。

そのサンプリングはライン出力の左にある3.5mmのライン入力を通じて行います。マイクからサンプリングしたいという場合は、スマホで録った後にスマホと接続して取り込んだり、外部のミキサーなどを介して行うのがよさそうですね。samplingというボタンを押すと、サンプリングREADYの状態になるのですが、こうすると、通常は16ステップシーケンサの動きなどを表示する16個のLEDがレベルメーターになり、これを見ながらレベル調整をした上でサンプリングできるというのもユニークな点。

samplingボタンをオンにすることで、サンプリングモードに入る

サンプリングすると、原音がC4のキーに割り振られ、鍵盤を弾いていけば、それに伴ってピッチが変化するとともに、テンポも動いていきます。とっても単純なサンプラーなわけですが、この仕組みを用いて、さらなるLo-Fiサウンドを作っていくというテクニックも!たとえば本来33回転のLPレコードを45回転で再生したものをサンプリングします。これを5半音下、つまりG3のキーを押して再生すると約33回転になるのですが、このとき元のレコードの音とはちょっと違うんですよね。HipHopでよく聴かれるザラついたダークなLo-Fiサウンドになるので、うまく活用すると応用範囲は広そうです。以下実際、どんな音が作れるかの例を3つ紹介してみましょう。

 

ドラムビートをサンプリングして12bitサンプラーモードで再生
⇒ 鍵盤で5半音下げて再生

曲の一部をサンプリングして12bitサンプラーモードで再生
⇒ ピッチを徐々に下げていき、-267centで再生

レコードノイズの入ったストリングスをサンプリングして12bitサンプラーモードで再生
⇒ サスティンループを設定し、鍵盤で5半音上げて再生

 

このようにサンプリングしたサウンドを実際に使うに当たっては、やはり、スタートポイントやエンドポイントの調整やループポイントの設定など、ある程度のエディットは行いたいところです。PC上で動作するソフトサンプラーであれば画面上でマウスを使って簡単にできてしまいますが、LIVEN Lofi-12でも、結構簡単に設定できるようになっています。

付属のSAMPLE&EDIT用オーバーレイシートを被せることで、サンプリングデータのエディットもしやすくなる

そのためには、まず付属のSAMPLE&EDIT用のオーバーレイシートを本体に乗せるのがポイント。その上で、音を聴きながらノブを調整していくと、簡単にスタートポイントやエンドポイント、ループポイントの設定はもちろん、ピッチの調整だったり、サステインループの設定やリバースの設定もできてしまうのです。アタックやリリースなどエンベロープジェネレータの設定も手軽にできてしまいます(アタックやリリースなどエンベロープジェネレータの設定はオーバーレイシート必要なし!)。

一方、12kHzと24kHzというサンプリングレートだけでなく、ビット深度を16bitから12bitに変更することができるのも、LIVEN Lofi-12の面白いところ。これは、サンプリング時は16bitで録っておいて、あとで使う際に12bitにすることができるので、エフェクト的に利用することが可能です。この際、全体を12bitにするというのではなく、トラックごとに16bitにするか12bitにするかを設定できるというのも、うまく考えられていると感心します。

funcボタンを押しながら、左の12bitボタンを押すと、ローファイな12bitサウンドになる

たとえばステップシーケンサを利用してトラックを作成した後、ビートだけを12bitにする、といった使い方が可能なのですが、こうすることで、80年代のサンプラーを使ったような立ったサウンドになり、すごく気持ちいい音になるんです。

そのシーケンサですが、LIVEN Lofi-12に搭載されてるのは4トラックのステップシーケンサで、LIVENシリーズの第2弾であったFM音源、LIVEN XFMゆずりの強力で使い勝手のいいシーケンサになっています。プリセット音色はもちろん、自分でサンプリングした音源であっても簡単にパターンを組んでいくことが可能で、効率よくトラックを作り上げていくことができます。

使いやすく、効率よく制作作業が進められるLIVEN Lofi-12

またこのシーケンサにはパラメータロック&サウンドロック機能が装備されているのも重要なポイントです。DAWでいうところのオートメーション設定ができるので、フィルターを動かす情報を記録することも可能になっているのです。LIVEN Lofi-12の場合、サンプルのレイドバック・パラメータでスネアの音をもたらせたり、スタート・パラメーターをステップごとに変えてサンプル・チョップ的に使ったりするのが面白いかもしれませんね。

そしてもう一つ紹介してチェックしておきたいのがエフェクトです。LIVEN Lofi-12には、各トラックごとに独立して利用できるエフェクトと、全体にかけられるマスターエフェクトの大きく2系統があります。

トラックエフェクトとしてはコーラス、フランジャー、ディレイ、ディストーション……など、下記の計11種類があり、2つのノブを使ってパラメータも自由に変更できるようになっています。


フィルターやLFOなどの調整と合わせてエフェクトを活用することで、かなり幅広い音作りができそうです。一方、これらとは別に全体にかけらられるマスターエフェクトがあるのですが、LIVEN Lofi-12では、これをリバーブと呼んでいます。実際、下記の通りで、ホール、ルーム、アリーナ、プレート、トンネル、インフィニティと6種類のリバーブがあるのです。

が、7番目がカセットテープ・シミュレーター、8番目はレコード(Vinyl)シミュレーターとなっていて、カセットテープのザラついたサウンド、プチプチ・バチバチいうレコードの音を再現するまさにローファイ・エフェクトとして使えるようになっているのです。どう使うかはアイディア次第ではありますが、12bitサンプリングや12kHzでのLo-Fiサンプリングと合わせて活用することで、グっとくるサウンドを作っていくことができそうです。

SYNC端子接続することでvolcaなど、リズムマシンやシーケンサと同期演奏ができる

以上、SONICWAREの新マシン、LIVEN Lofi-12について触り部分を簡単に紹介してみましたが、いかがでしょうか?実際には、ここで説明できていない数々の機能があるので、試してみれば、いろいろな発見があって驚くことと思います。もちろん、各種ドラムマシンやシーケンサとの同期もできるし、MIDIを通じてDAWとの連携させることも可能です。

そんなLIVEN Lofi-12は本日11月23日から発売が開始されており、SONICWAREのショップからの購入であれば、送料込みで24,800円となっています。これだけの機能、性能でこの価格はちょっと安すぎでは……と少し心配になってしまいますが、年末のお買い物としてはうってつけのガジェット。品切れにならないうちに入手してみてはいかがでしょうか?

※2023.1.22追記
LIVEN LoFi-12の新ファームウェア version 2.0登場

1月22日、SONICWAREからLIVEN LoFi-12用の新ファームウェア、version 2.0がリリースされ、ユーザーに無償配布されています。これを利用することにより、以下の3つの機能が追加される形になっています。

●リサンプリング
パターンやトラックのリサンプリングはもちろん、演奏のリアルタイムサンプリングも実現
●オートスライス
新開発 Downbeat Divider*で簡単にサンプルをオートスライス、ドラムトラックとして演奏可能
●リミックス・エフェクト
パフォーマンスで威力を発揮するビートリピーター『R.MIX』をマスターエフェクトに搭載

詳細はこちらからご確認ください。
https://ja.sonicware.jp/pages/liven-lofi12#version2-new

【関連情報】
LIVEN Lofi-12製品情報

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