1フェーダー・フィジコンの本命、UF1がSSLから登場。メーターも搭載で使い勝手は抜群

SSLSolid State Logic(ソリッド・ステート・ロジック)から、まさに本命といえる1フェーダーのフィジカルコントローラー、UF1が発表され、6月10日より国内での発売が開始されます。価格はオープンプライスですが、実売価格は税込み99,990円と、DTM用途のフィジコンとして安くはないですが、コンソールの老舗であり、本家ともいえるSSLの機材だけに、まさにホンモノのコントローラー。モータードライブで動く、100mmストロークのタッチセンシティブ・フェーダーは、業務用スタジオにあるフェーダーそのものです。

特筆すべきは大小2つのカラー液晶ディスプレイが搭載されており、ここにアナログ風VUメーターや、トゥルーピーク対応レベルメーター、フェイズスコープなどが表示できるという点。もちろんDAW側のトラック名を表示させたり、現在の小節・拍・Tick番号を表示させたり……といったことも可能です。HUI/MCU に対応し、CubaseStudioOneLUNALiveProToolsLogicPyramixのテンプレートを搭載しているから、手持ちのDAWに簡単にセッティングできるのも嬉しところです。そのUF1を発表前のタイミングで借りることができたので、具体的にどんなもので、どんな機能なのか、レポートしてみたいと思います。

SSLから1フェーダーのフィジカルコントローラー、UF1が登場

ご存じの通りSSLは、歴史あるイギリスのコンソールメーカーであり、長年世界のプロ用機材をリードしてきた会社であり、同社のコンソールは世界中で3,000以上のスタジオに入っているのだとか…。レコーディングスタジオにあるSSLコンソールは、まさに憧れの機材ではありますが、価格的にも大きさ的にもDTM環境に持ち込むのには無理がある……というのが誰にもの認識ではありました。

が、ここ最近SSLはDTM用の機材を次々とリリースしており、プロもアマチュアもこぞって導入を進めています。中でもオーディオインターフェイスのSSL 2およびSSL 2+は3~4万円という手頃な価格ながら、SSLのサウンドを手元にDAW環境で簡単に実現できるということで、大きな話題となりました。DTMステーションでも「UF8に続きUC1もリリース。DTM市場に本気で殴り込みをかけてきたSSLがベース機材と位置付けるSSL 2/SSL 2+」という記事で紹介したことがありました。

SSLの2in/4outのUSBオーディオインターフェイス、SSL 2+

また昨年は「簡単セッティングなのに、SSLのサウンドクオリティを誇るピラミッド型USBマイクConnexの実力」というで紹介したSSLサウンドを実現する小さなピラミッド型マイクをリリースするなど、ユニークな製品をいろいろ出してきているのです。

USB接続で簡単に使え、SSLサウンドを作り出すさまざまなモードを持つ卓上型マイク、Connex

そうした中、ついに来た!という感じのフィジカルコントローラー、UF1がSSLから発表されたのです。もっともSSLによるDTM環境向けのフィジカルコントローラーはこれが初、というわけではありません。先ほどの記事の中でも紹介していた通り、8つのフェーダーを搭載したUF8や、アナログメーターを装備したコントローラーであるUC1といった機材をすでに発売しているので、すでに導入した、という人も少なくないと思います。

今回発表になったSSLのUF1。メタリックボディーでかなりガッチリしている

UF8とUC1をセットで導入したいところではあるけれど、2つ買うと30万円近くになってしまうし、かなりのスペースがとられるため、「ウチのデスクに載せられない…」と断念してしまった方も少なくないと思います。それに対し、UF8とUC1を合わせて、グッとコンパクトに、さらに使いやすくして、10万円以内に抑えた…というのがUF1なんです。ちょっと、そのフェーダーの動きなどをビデオに録ってみたので、ご覧ください。

著作権の関係で音は出していないのですが、スムーズに動いている感じが分かると思います。では、具体的にUF1は、どんな機能でどう使うのか、概要を紹介していきましょう。

UF1は、傾きをつけない形での平置きも可能

まずこのUF1、メタリックシャーシになっていて、非常にガッチリしたボディーになっています。斜めに傾けた形になっていますが、購入したときの状態では傾きはなく、平置きです。足になる部品が付属しているので、これをネジで取り付けるのですが、取り付ける位置によって、傾きを自由に変えることができるというのも、よくできているところですね。

付属の金具を取り付けることで、傾きがつけられるようになっている。どこにねじ止めするかで傾きの角度も変えられる

本体とコンピュータはUSB-Cのケーブルで接続します。付属しているのはUSB-C同士のケーブルとなっていますが、手持ちのUSB-AとUSB-C端子のケーブルで接続してみても問題なく動作させることができました。

コンピュータとはUSB-Cで接続。THRUと書かれたUSB-A端子はハブとして使える。中央のケーブルはACアダプタからの電源

モータードライブフェーダーと、液晶ディスプレイが2つに、カラーLED内蔵ボタンがいろいろ搭載されているためなのか、USBバスパワーだけでは動作しないようで、付属のACアダプタの使用が必須のようでした。

なお、UF1にはUSB-Aのスロットが用意されているのですが、これはUF8などと同様で別の機器とカスケードするためのもののようです。実際には普通のHUBとなっているようなので、ここにiLokなどを挿すといった使い方もできました。

UF1を使うには、まずSSL 360°を起動させておく必要がある

このUF1を使うためには、まずコントローラソフトであるSSL 360°というアプリをMac、もしくはWindowsにインストールします。起動させると、UF1が接続していることを認識し、ここで各種設定を行っていくことになります。

設定において、利用するDAWを設定。必要に応じて3つまで設定し、使い分けることが可能

まずは、どのDAWを使うのか設定します。実はV-MIDIポートというのを使い分けることで、同時に3つまでのDAWを設定できるのも面白いところ。それぞれLAYER 1、LAYER 2、LAYER 3と別々に細かく設定していくことができますが、ここではCubaseおよびStudio Oneでデフォルトのテンプレートを使って試してみました。

3つあるレイヤーにどのDAWで使うかを設定

ここまで設定したら、DAW側の設定です。DAWでMCU=Mackie Control Universalを指定して、その入出力にV-MIDIポートを指定するのです。

各DAW側でMackie Controlとして、UF1を指定し、MIDIの入出力を設定する

LAYER 1を選んだら入出力はV-MIDI 1、LAYER 2であればV-MIDI 4、LAYER 3ならV-MIDI 9とするようですね。ここまでできたら準備完了。もう、UF1は完全に自分のDAWと連携しているので、トランスポートボタンを押せば、即、再生、ストップ、録音、早送り…などができるし、その上のボタンで、サイクル設定やメトロノーム設定などもできるし、シフトボタンをおせば、READ、WRT、LTCHといった操作も可能になっています。

設定できれば、トランスポートボタンもすぐに使える

また上にある大きなジョグホイールを使えば、曲のカーソル位置をクルクル操作で動かしていくことができます。その際、上のSCRUBボタンをオンにしておけば、スクラブ再生もできるんですね。この辺り、DAWでマウス操作をしているとできないことが、簡単に実現できてしまうので、自分の使ってるDAWってこんなことまでできるのか!と思わず感心してしまいます。

ロータリーエンコーダーでDAWのカーソル位置を動かしていくことができ、SCRUBをオンにしておけばスクラブ再生が可能

そして、やはり一番の注目はフェーダーでしょう。この100mmストロークのタッチセンシティブフェーダーを動かすと、DAW側のミキサーのフェーダーが動き、DAW側のフェーダーを動かせば、UF1のフェーダーが動く形で完全連動しています。

モータードライブで動く100mmストロークのフェーダーはタッチセンシティブになっている

デフォルトではDAWのCh.1のフェーダーと連動していますが、隣にあるCHANNELノブを回していくと、順番にチャンネルを切り替えていくことができます。

CHANNELを回すことで、フェーダー操作するチャンネルを切り替えることができる

この際、上のディスプレイにはトラック名が表示されており、右側の大きいディスプレイには、右4つのチャンネルのトラック名も表示されています。

チャンネルを切り替えると、液晶には、どのチャンネルをいじっているのかトラック名で表示される

SOLOボタンでソロ、CUTボタンでミュート、SELボタンで選択ができ、上のノブでPANを動かすことができます。またMASTERボタンを押せば、各チャンネルではなく、マスタートラックを操作するモードに切り替わる形になっています。

FX SENDを選ぶと、各ノブでセンド量を調整できるようになる

一番上には5つのボタンが並んでいますが、これを切り替えることで、各ノブの役割を変えていくこができます。たとえばCubaseの場合、PAN、FX SEND、EQ、STRIP、SMPTE/BEATSとなっており、FX SENDを選べば、各センド量を調整できるし、EQにすると、ミキサーコンソールの各チャンネルに搭載されているEQの周波数、ゲインを動かしていくことができるなど、DAWの中身をUF1から直接コントロールしていくことができるのです。

EQを選べば、各ノブでEQの周波数やゲインを調整できる

フェーダーだけでなく、ジョグホイールもチャンネルの切り替えノブも、各パラメーターを動かす5つのノブも、すごく操作感が気持ちいいのもUF1の特徴です。まさに業務用のプロ機材を使っているという感じで、いいですね。

MODE切り替えをしていくことで各ノブの役割や画面を切り替えていくことができるのですが、やはり目を引くのがメーター表示です。

UF1に付属しているプラグイン、SSL METERをDAWに組み込んでおく

実は、UF1には前述のSSL 360°というアプリのほかに、SSL METERというVST/AU/AAX対応のプラグインが付属しているのですが、これがUF1のディスプレイと連動する形になっているのです。

SSL METERのプラグイン表示にあるレベルメーターとフェイズスコープがUF1のディスプレイにも表示される

マスタートラックなどにSSL METERを挿しておくと、DAW側でメーターが動作するようになりますが、UF1のMODEボタンを何回か押して、メーターモードに切り替えると、DAW側のSSL METERと同じものが、ここにリアルタイムに表示されるようになるのです。

アナログメーターのモードに切り替えると、VUメーターが表示される。設定を変えるとPPMメーターにもなる

デフォルトではOVERVIEWということでレベルメーターとフェイズスコープが表示されますが、ANALOGUEにすると、アナログのVUメーターが表示されます。これも設定切り替えでPPMメーターに切り替えることも可能。さらに、RTA=リアルタイムアナライザに切り替えてスペクトラム表示もできるなど、見ていてもカッコいいんですよね。

さらに切り替えるとSSL METErのRTA=リアルタイムアナライザーが表示される

マニュアルがまだ手元になくて、とりあえず触ってみた感じなので、全機能を理解できてはいなそうですが、とにかく使いやすく、触って気持ちよく、そしてカッコいい、SSLのUF1。「そろそろ、フィジカルコントローラーが欲しいな」と思っていた方にとって、最高の選択肢が登場したのではないか、と思います。

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