AI音声合成ソフト、VOICEPEAKに小春六花が登場。発売は7月13日だが、CeVIO AI / Synthesizer V 小春六花ユーザーは無料でもらえる!?

昨日6月18日に配信された「TOKYO6公式生放送」で、AHSが発売する入力文字読み上げソフト「VOICEPEAK」の新キャラクタとして小春六花(こはるりっか)が登場し、7月13日から発売されることが発表されました。小春六花は、音楽業界でも話題のアニメ「ぼっち・ざ・ろっく」の主人公、後藤ひとり役の声優、青山吉能さんがCVを務めるキャラクタ。これまでSynthesizer VまたはCeVIO AIトークボイスの製品が発売されていましたが、今回新たにVOICEPEAK版の小春六花が発売される形です。
驚きだったのは、Synthesizer VまたはCeVIO AIの小春六花のユーザーであれば、VOICEPEAK版の小春六花の開発版(β版に相当)を昨日より無料でもらえるようになっている、ということ。この開発版は7月13日の発売以降も製品版同等に継続アップデートが可能で、そのまま使い続けることができる、というのです。そのVOICEPEAK版の小春六花とはどんなもので、どのような使い方ができるのか、そしてどうすれば無料入手できるのかを紹介していきます。また、ある意味CeVIO AIと競合するVOICEPEAK版をリリースすることになったのはなぜなのか、Synthesizer VユーザーやCeVIO AIユーザーに無料配布することにした理由はどこにあるのかなど、小春六花のプロデューサーであるTOKYO6 ENTERTEINMET赤迫竜一さんに話を伺ってみました。

VOICEPEAK 小春六花が7月13日より発売開始

VOICEPEAK版の小春六花がリリース、5つの感情パラメーターを搭載

小春六花についてはこれまでも「Synthesizer VとCeVIO AIトークボイスの小春六花が発売開始。実際どんな声が出せるのか試してみた」といった記事などで何度か紹介してきたとおり、TOKYO6 ENTERTAINMENT(以下、TOKYO6)が企画・開発を行い、AHSが製品の発売を行っているもの。その小春六花のCVを務めるのは声優の青山吉能(@Yopipi555)さんで、キャラクタデザインを担当するのは、人気VTuber星街すいせいの衣装デザインでも知られる手島nari(@_17meisai23)さんということもあり、これまでも多くのユーザーが使い、数多くの作品も生まれてきています。

その小春六花を自在に喋らせることができるソフト「VOICEPEAK 小春六花」が新たに登場し、7月13日から発売されることが発表されました。これもAHSが発売元で、通常版のパッケージは13,800円(税込)、AHSユーザー特別版が11,800円(税込)、そしてダウンロード版は10,800円(税込)。

VOICEPEAK 小春六花のパッケージ

VOICEPEAKについては以前「音声合成業界に激震! もはや人間の喋り声、入力文字読み上げソフトVOICEPEAKはビジネス用途でも自由に利用可能」、「もはや人と区別がつかない音声合成ソフト、VOICEPEAKがラインナップを大幅拡充。キャラクターシリーズ含め8ボイスがリリースに」といった記事で紹介したことがありましたが、テキストを入力すれば、すぐに非常に流暢な声で喋らせることができるというソフトです。今回、そのVOICEPEAK版の小春六花が誕生することになったわけですが、以下のビデオを見ると、その雰囲気がつかめると思います。

このビデオからもお分かりいただけたかと思いますが、感情パラメーターとして「ハイテンション」、「ブチギレ」、「嘆き」、「蔑み」、「ナレーション」の5つを搭載しています。これらのパラメーターを調整することにより、さまざまな声の雰囲気に仕立て上げることができるようになっています。元々、小春六花は高校2年生というキャラクタ設定になっていますが、この「ナレーション」は少し大人に成長した小春六花をイメージして作られた落ち着きのある声なのも特徴です。

感情パラメーターとして「ハイテンション」、「ブチギレ」、「嘆き」、「蔑み」、「ナレーション」の5つを搭載

商用ライセンスも用意されている

基本的に、この製品は個人利用許諾範囲内での使用となっていますが、商用ライセンスが用意されているのもポイント。個人向けが55,000円(税込)、法人/教育機関向けが99,800円(税込)になりますが、いずれも永年ライセンスとなっているので、一度購入すれば、より広い範囲での活用が可能になります。ちなみに個人がYouTubeに広告をつけることは商用には当たらないとのことなので、個人向け商用ライセンスは不要とのことです。

ちなみに、この商用ライセンスの売上金額の一部は声優事務所に渡される仕組みになっているとのことで、「音声合成ソフトは、声優の敵になるのでは…」といった議論がありますが、声優の声の利用範囲を広げるとともに、声優を応援することにも繋がる仕組みになっているのです。

CeVIO AI、Synthesizer Vの小春六花ユーザーにはVOICEPEAK版を無料提供

小春六花を喋らせるためのソフトとしては、CeVIO AIがあったわけですが、今回のVOICEPEAKは、CeVIO AI用に収録した音声を使用しているわけではなく、VOICEPEAK用にまったく新たに青山さんの声を収録しているとのこと。そのため、CeVIO AIでの喋りとは、一味違った表現が可能になっています。

とはいえ、CeVIO AIもVOICEPEAKも、文字を入力して喋らせるソフトになるわけですが、TOKYO6では今後もCeVIO AIの小春六花もVOICEPEAKの小春六花も両方並行して展開していくとのこと。

また、TOKYO6では、かなり思い切った対応として、すでにCeVIO AI 小春六花を持っているユーザーは、発売前のタイミングでVOICEPEAK 小春六花の開発版を入手できるようにした、というのです。この開発版は単にお試しというわけではなく、製品が発売される7月13日以降も使い続けることができるとのこと。
さらにCeVIO AI 小春六花だけでなく、Synthesizer V 小春六花およびSynthesizer V AI 小春六花のユーザーにも同様にVOICEPEAK開発版を無料配布するという、大々的なプレゼントを実施しています。

この開発版を入手するには、特設サイトである「VOICEPEAK 小春六花 開発版 アクティベーションコード発行申請ページ」へアクセスの上、Synthesizer V 小春六花、Synthesizer V AI 小春六花または、CeVIO AI 小春六花のアクティベーションコード(シリアルキー)を入力すればOK。これにより、VOICEPEAK版のシリアルが発行されます。

あとはVOICEPEAKの「セットアップファイルダウンロードサイト」からインストーラをダウンロードの上、シリアルを入力すると、すぐに使えるようになっています。
この特設サイトでシリアル発行ができるのは製品版発売前日の7月12日まで。別の見方をすると、それまでにCeVIO AIやSynthesizer Vの小春六花を購入すれば、VOICEPEAK 小春六花の開発版が無料で手に入れることができるチャンスともいえるわけです。
なお、7月13日に発売される製品版には、VOICEPEAK フリモメンが付属しますが、この特設サイトで入手する場合開発版には、フリモメンは付属しない、とのことです。

小春六花のプロデューサー、TOKYO6 赤迫竜一さんインタビュー

すでにCeVIO AIトークボイスを出していたのに、なぜVOICEPEAKを出すことにしたのか、既存ユーザーに無料提供することにしたのはなぜなのか、など気になることもいろいろあるので、TOKYO6の赤迫竜一さんにインタビューしてみました。

プロデューサーであるTOKYO6 ENTERTEINMENTの赤迫竜一さん

--今回、VOICEPEAK 小春六花を作ることにした背景を教えていただけますか?
赤迫:詳細はお話できないんですが、VOICEPEAKの開発に少しだけ協力させていただいたという経緯があり、VOICEPEAKのポテンシャルの高さに注目していました。そうした中、VOICEPEAK版の小春六花のお話をAHSさんからいただきました。弊社からは、同じトークの音声合成ソフトであるCeVIO AIトークボイスを今後も変わらず並行展開できること、発売から2年以上経ったタイミングでの発売であること、一定期間でいいので小春六花ユーザーの方に、製品版と変わらず継続使用でき、アップデートも可能な、開発版の無料配布を実施したい、という要望をAHSさん側に出し、各社のご協力でそれらを実現できるメドが立ったことから、制作することになりました。

--「発売から2年以上経ったタイミング」というのはどういう意味ですか?
赤迫:ソフトやキャラクタについて、発売したらそれで終わりというわけではなく、必要があればアップデートをし、育てていく必要があると考えています。そういった理由から、弊社で展開している夏色花梨と花隈千冬というキャラクタの音声合成ソフトは制作に向けてのクラウドファンディングを行った際に、それぞれ発売から2年間は制作目標のソフトのみを発売することをお約束しています。小春六花についてはそのお約束は無かったものの、夏色花梨と花隈千冬と合わせたいということがありました。

--今回、VOICEPEAK 小春六花を既存ユーザーに無償配布するという話には驚きました。これはどういう理由から実施することにしたのですか?
赤迫:VOICEPEAK 小春六花の無料配布には4つ理由があります。1つは以前、小春六花についても音声合成ソフトを制作する際、クラウドファンディングを実施させていただきましたが、その際、さまざまな理由により、希望者への返金を行った上で、トークソフトのエンジンをVOICEROIDからCeVIO AIへ変更したということがありました。その決断に関しては反対や危惧するお声もお寄せいただきましたが、その一方で、クラウドファンディングを継続して支援し、励ましてくださって、小春六花を応援していただいたり、盛り上げていただいた方々が本当にたくさんいらっしゃいます。CeVIOのファンの方たちにも温かく迎えていただき、そして発売後にもたくさんの方にご購入いただいて、支えていただいてここまで来ることができました。そういったみなさんに「VOICEPEAK版を追加で購入してください」とお伝えするのは私としては大きな違和感がありまして、期間限定配布とはいえ、まずは「こういうのもできたので良かったら使ってください」とお伝えしたかった、ということが、まず1つ大きな理由になります。

--なかなかできる判断ではないですよね。ほかにも理由があるんですね。
赤迫:2つ目の理由は、今後も継続展開していくCeVIO AIトークボイスのプロモーションにも繋げたいということがあります。実はこれから「CeVIO AI小春六花トークボイス」をご購入いただいても、7月12日いっぱいまではVOICEPEAK 小春六花開発版のシリアルを入手できます。弊社キャラクタ、小春六花、夏色花梨、花隈千冬を同じCeVIO AIトークボイスで揃えることで、3人を出す動画で制作しやすいことや、CeVIO AIならではの得意分野もあるので、CeVIO AIとVOICEPEAK両方を持つメリットもあります。先月、CeVIO AI小春六花に大きなアップデートを行いましたので、CeVIO AI版もぜひご注目いただきたいと考えております。もちろん、この無料配布の話は事前にCeVIOの運営チームにもお話させていただいており、今後もCeVIOの運営チームとは良好な関係を築きたいと考えております。

3つ目は、Synthsizer V AIのプロモーションに繋げたいということがあります。VOICEPEAKもSynthsizer VもエンジンをDreamtonics社が開発しており、楽曲にセリフパートを差し入れた時に違和感が少ないのが特徴になります。

そして、4つ目はもちろんVOICEPEAK 小春六花、そして小春六花というキャラクタ自身のプロモーションに繋がればと思っております。小春六花も発表から4年目、最初のソフト発売から3年を迎えておりますので、今年は飛躍の年にしていきたく、今までにない大胆なプロモーションも必要だと考えました。

ーーCeVIO AIでの喋りと、VOICEPEAKでの喋りに違いはあるのですか?
赤迫:やはり若干の違いがあるのは事実です。2つ目のソフトを制作するのにおいて、最初のソフトの出力音声に合わせてつくるという考え方もありますが、弊社では青山さんに演じてもらった音声合成化される前の小春六花の声を「リファレンスの音」にしていこうと考えました。どんどん人間的に進化しているAIの音声合成エンジンですから、進化していけば、担当声優が演じた声に近づいていく、それぞれの進化によってお互いが近づいていくはずだ、と考えています。ただ、現状においては、それぞれに多少の違いはあります。

--CeVIO AIを辞めてVOICEPEAKに行くわけではないんですよね?
赤迫:はい。たとえばゲームの世界においてもプレイステーションがあったり、Nintetdo Switchがあったり…と複数のプラットフォームがあり、それぞれ用に同じタイトルのゲームが出ています。音声合成の世界も多数のプラットフォームとなるソフトが生まれてきており、既にそういった時代になってきていると考えています。

--現状においてCeVIO AIとVOICEPEAKのメリット、デメリットを挙げるとしたら、どうでしょうか?
赤迫:そうですね、CeVIO AIはGUIのアップデートを地道に行ってきた結果、非常に使いやすくなっている印象です。クリエイターにとって、かゆいところに手が届く気の利いたGUIを持ち、元々強い感情表現が得意な上に大胆な声の設定も可能です。ただし、Windowsでしか使えないことと、好きな方もいらっしゃるかと思うのですが、音声合成独特の音声になってしまうこともあり、今後の改善に期待しています。そして、同じコンセプト上で制作された、弊社の夏色花梨、花隈千冬のライブラリも既に発売されていますので、3人を同じソフト上で掛け合いができるのもメリットかと思います。

VOICEPEAKの良いところはまず何よりも出音がとても自然であることが挙げられます。あとは、Windows、MacOS、Linuxにも対応しているということでしょうか。デメリットとしてはGUIがまだ発展途上であること、感情表現の効きが少し大人しい印象があります。個人的には今後Synthesizer V並のアップデートを期待しています。

ーー最後にDTMステーション同社に向けて、メッセージをお願いします。
赤迫:DTM制作においては、歌声合成ソフトであるSynthesizer Vが中心になるとは思いますが、セリフパートを作ったり、ポエトリーリーディングを作ったりする際にも便利なソフトだと考えております。Synthesizer V版小春六花のユーザーの方、これから買われる方は、まずは7月12日までの間にVOICEPEAK 小春六花をぜひ入手していただけると嬉しいです。

2023年6月18日に行われたTOKYO6 ENTERTEINMENT公式生放送

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