イケボのAI男性ボーカル「MYK-IV」がVoiSonaでリリース。よりリアルになったVoiSonaの新エンジン2.x Betaも試験的運用を開始

すでにご存じの方も多いと思いますが、7月13日、テクノスピーチからAI歌唱ソフト「VoiSona」の新たなボイスライブラリとして男性ボーカルの「MYK-IV」(エムワイケーフォー)がリリースされます。これはシンガーソングライターでありドラマーであり、作詞家、作編曲家、そしてボカロPでもあるマイキ@maikidrum)さんの声を元に作られたAIシンガー。

価格はこれまでのVoiSonaのボイスライブラリと同様で、年間ライセンス6,600円(月間の場合は880円)。この金額で、商用利用も可能となっています。今回、このMYK-IVのリリースに併せ、「無料お試しキャンペーン」も実施されています。申し込み期間は7月13日正午から7月19日23:59までの7日間限定とはなりますが、これにより申し込みから1か月間、MYK-IVを無料で利用することが可能となっています。またこのMYK-IVでは、まだ試験的な運用とのことではありますが、より高音質な2.xという、開発途中の新エンジンによるボイスバージョンも搭載されているのが大きなポイントです。このVoiSonaの2.x Betaとは何なのかも含め、テクノスピーチの代表取締役である大浦圭一郎さん、エンタメ事業部プロデューサーである塚田恵佑さんにオンラインインタビューの形でお話を伺ってみました。

7月13日、ドラマ―シンガー「マイキ」さんCVによるAIシンガー、「MYK-IV」がVoiSonaでリリース

マイキさんの声を元にした男性ソングボイス、MYK-IV

VoiSonaのエディタ画面。このエディタ本体(および標準搭載シンガー「知声」)は無料で入手できる

--今回のMYK-IV、コードネームのようなボイスライブラリ名になっていますが、これがどんなものなのか、まずは簡単に概要を教えていただけますか?

テクノスピーチ エンタメ事業部プロデューサー 塚田恵佑さん

塚田:今回のMYK-IVは、ドラマーシンガーである「マイキ」さんの声を元に作ったボイスライブラリです。マイキさんはドラマー、シンガー、ボカロPなどとしても幅広く活躍されている方です。そのマイキさんの歌声を、深層学習等のAI技術を使って声質やクセ、また歌い方をリアルに再現したボイスライブラリとなっています。
ボイスライブラリ名ですが、マイキさんはアーティスト名義「マイキ」、ボカロP名義「マイキP」を使い分けておられるので、それに次ぐ歌唱ソフトとしての名義「マイキV」を提案したい、と考えたのが最初の着想です。設定に即したアンドロイドの型番のようなイメージと、弊社4番目のキャラクターという意味も込めて「MYK-IV」と名付け、正式名称をもじった愛称が「マイキV」である、という形にしました。
その歌声については、マイキさんご自身がボカロPとして発表した人気楽曲「バイメーバイメー」をMYK-IVに歌わせたデモ曲があるので、こちらをお聴きいただくと、雰囲気が分かると思います。

「バイメーバイメー」covered by MYK-IV (2.0 Beta)

--非常にカッコイイ歌声ですね……。
塚田:とてもキレのあるハイトーンで、艶やかな歌唱スタイルが魅力の男性シンガーとなっています。VoiSonaのエディタの豊富な編集機能を用いて、ピッチ、タイミング、ビブラート、声質を細かく調整することで、自分だけのMYK-IVを作り出すこともできます。

「バイメーバイメー」の編集画面。ピッチやタイミングなどに細かい調整が加えられている

--キャラクターもテクノスピーチさんで作られているのですか?

塚田:はい。知声、機流音、AiSuuと同様に弊社で制作を行っています。MYK-IVはキャラクター設定をまず弊社で作成し、それを元にキャラクターデザインとメインビジュアル制作をイラストレーターのLAM@ramdayo1122)さんにお願いしました。マイキさんの「ドラマ―シンガー」という肩書を想起させるギミックと、アンドロイド的な要素をMIXする方針で設定を作成しました。マイク兼用ドラムスティックと、ドラムパッド兼用衣装を装備していて、ひとりセッションが出来る、という設定などがまさにそれですね。

<MYK-IV(読み:エムワイケーフォー) プロフィール>
ドラマーシンガー「マイキ」の歌唱AIを搭載したアンドロイド(愛称:マイキV)。手に持ったドラムスティックはマイク兼用。衣装にあしらわれた幾何学模様はスピーカー一体型のドラムパッドになっており、音色も自由にカスタマイズできる。ヒマになるとひとりセッションをはじめがち。
身体年齢:18歳 身長:170cm

--マイキさんを採用したソングボイスを作ることになった経緯はどんなことなのでしょうか?
塚田:VoiSonaβ版が出た昨年6月頃にVoiSonaのPR動画(https://youtu.be/rOGIGgo9FqM)を出していただいた、というのが、マイキさんとのつながりの最初です。知声を使ってマイキさん自作曲の打ち込み実演をしていただきました。現在もVoiSonaトップページに当時のマイキさんバナーがあり、最新のMYK-IVバナーと並べていますね。マイキさんご本人からもVoiSona化に際して、コメントをいただいております。

はじめまして、マイキPと申します!
普段合成音声ソフトで曲を作ったり、歌ったり活動してるんですが、なんと僕の声がロイドになっちゃいました!!
マイキVは中音域から高音域が得意な合成音声ソフトとなっております!!
アップテンポで爽やかな曲などにピッタリだと思いますので、ぜひ使ってみてください!!

高音質化を実現したVoiSonaの新エンジン、2.xとは

--アンドロイドの設定とはいえ、歌声は、本当にリアルですね。
塚田:今回、MYK-IVのボイスライブラリには、VoiSona現行エンジンによるボイスバージョン「1.0.0」、「1.1.0」に加えて、開発途中の新エンジンによるボイスバージョン「2.0 Beta」および「2.1 Beta」が試験的に搭載されています。先ほどのデモ曲「バイメーバイメー」カバーも「2.0 Beta」によるものでした。音質の向上について言及いただいているコメントも多く、有難かったですね。

MYK-IVのボイスバージョン選択画面

--今回の2.0 Beta、2.1 Betaとはどういうものなのでしょうか?
大浦:詳細については論文として発表しており、これが音声・音響処理分野で世界最大の国際学会であるICASSP(International Conference on Acoustics, Speech, and Signal Processing)で採択されています。ニュースリリース(https://www.techno-speech.com/news-20230601a)でもVoiSonaの知声と機流音のデモデータ入りで本人の声と、それを元に音声合成した声の比較を掲載しているので、ご覧いただけると面白いかと思います。これまで使っていた1.xとは中身が異なるエンジンとなっており、声を作り出す仕組みの中のある部分(人間でいうと声道の近辺)にニューラルネットワークを導入したことで、この音質を実現しています。昨今、音をよくするための手法が色々と提案されているのですが、とにかく音質を向上させるために「どんな音の高さでも出る」とか「声質=ジェンダーパラメーターを自由に変えられる」とか「ハスキー感を変えられる」などのコントローラビリティを犠牲にする手法も多いです。一方、今回の手法はこれまで使ってきたボコーダーの柔軟性を維持しつつ、そのままいい音が出るので気に入っています。提案手法は6月の国際学会で採択になったので、それを今回はじめてMYK-IVで取り入れてみた、というわけです。

テクノスピーチ 代表取締役 大浦圭一郎さん

--実際使ってみても、非常にリアルで、いい音です。1.x.xは無しでで、2.xだけでもよかったようにも思いますが……。
大浦:いえ、まだやはり試験的な運用なんです。まず、計算量が大きく上がるため、その部分でユーザーのみなさんに受け入れてもらえるものなのか……。実際、3年前のノートPCで実行すると実時間の0.3倍を要するのです。そのため3トラックまでなら音飛びせずに処理できるのですが、実際の使用ではDAWと併用することが多いと思うので、その場合、DAWにもCPUパワーを持っていかれます。またエフェクトを使うと、そちらにもパワーがかかるため、もたつく可能性もあるだろうと思います。そうした状況下において、すぐに2.xにして、大丈夫なのか手探りな部分もありました。また、音質はよくなっているのですが、ピッチの端のほうでケロり易いという問題もあり、その辺もまだ調整中な面もあるんです。とはいえ、今後は2.xへ移行していく方向で開発を進めています。

--というと、既存のボイスライブラリである、知声や機流音、AiSuu……なども2.xにするということですか?
大浦:まだ製品といえる段階ではありませんが、ゆくゆくはアップデートでMYK-IVに正式実装させていきつつ、ほかのVoiSonaボイスに対しても、徐々に対応させていきたいと考えています。

--そこで、もう一つ気になるのは、2.xのエンジンはVoiSonaだけのものなのか、CeVIO AIでも採用されるのか…という点です。
大浦:もちろん良いものができたら、CeVIOプロジェクトに限らず、どのクライアントにも技術提供していくつもりですので、今後新規に制作するボイスライブラリは2.xで制作する予定です。ただ、すでにCeVIO AIのボイスライブラリは未発表のものも含めてかなりの数になっているので、これまで制作したのものまですべて2.xで作り直す、というのはコストを考えると現実的ではないというのはあります。
とはいえ、「さとうささら」「#kzn」「結月ゆかり 麗」のようにCeVIO AIとVoiSonaのクロスプラットフォーム製品もありますし、まずはその辺りから順に2.x対応できないかどうか、社内検討・各所相談できればと考えています。

MYK-IV無料お試しキャンペーンは7月19日まで

--話は、またMYK-IVに戻りますが、今回また無料で試せるキャンペーンを実施するんですね。
塚田:はい、以前実施したのと同様の「無料お試しキャンペーン」を実施いたします。以前、機流音やAiSuuでのキャンペーンのとき、「気づいたらキャンペーンが終わっていた」といった声をたくさんいただいたことから、申し込み期間を4日間から7日間に増やしました。具体的には7月13日正午のリリース時から7月19日23:59まで受け付けを行います(キャンペーンページ:https://voisona.com/license/myk-iv_ja_JP_song/)。この期間にお申込みいただいた方は、そこから1か月間、MYK-IVを無料でご利用いただけます。ぜひ、奮ってご参加いただけたらと思います。

MYK-IV無料のお試しキャンペーンページ

--1か月の無料期間が終了したら、自動でサブスク購読を開始する形になるんでしょうか?
塚田:いえ、もともと自動更新設定のON/OFF切替は可能でしたが、今回はさらに少し変更しています。まず、キャンペーンページの下部にある「年間プランにお申込みへ」ないし「月間プランにお申込みへ」を押してください。これにより1か月間サブスクプランが0円にてご購入いただけます。このご購入後、クレジットカード登録画面に遷移しますが、今回、この登録をスキップ可能としています。クレジットカード登録をスキップした場合、無料お試し期間終了後に自動解約される形になります。一方で、クレジットカード登録を頂いた場合は、これまでと同様、無料お試し期間終了後は最初に申し込んでいただいたプランで自動更新となります。もちろん、自動更新ON/OFFの切替も可能です。

--サブスクにおける無料サービスとしては、異例の太っ腹に思いますが……。
塚田:当社としては、まずはできるだけ多くの方にVoiSonaの存在、そして今回のMYK-IVを知っていただき、その良さ、面白さを知っていただきたいという想いがあります。これまでは当初組んでいたサブスクリプションのシステム上、クレジットカード登録が必須だったのですが、クレカを持たない方や登録に抵抗がある方などの声も聞こえてきておりまして、それで知ってもらう機会を失うよりも、まずはたくさんの方に試してみていただきたいという想いで、開発チームと相談してシステム変更をしてもらいました。
それでもしご興味持って頂けた場合、現状サイト上ではやはりサブスク開始にクレカ登録が必要になってしまうのですが、VoiSona公式BOOTHショップにて取り扱っているサブスクカードをご購入いただければ、クレカ登録は不要で、カード記載のクーポンコード入力で1年ライセンスが使える形になっています。ぜひ、この機会に、MYK-IVを使っていただければと思います。

--MYK-IV以降のVoiSonaの展開についてもお伺いしてよろしいでしょうか?
塚田:エンタメ事業部としては、VoiSona純正ボイスライブラリの拡充に力を入れていきたいと考えています。今までは知声・機流音・AiSuu・MYK-IVのような弊社シンガーか、 さとうささら・#kzn・結月ゆかり 麗のようなCeVIO AIから来たシンガーのみでしたが、VoiSona発のサードパーティボイスライブラリも既にいくつか決まっているものがありますので、楽しみにお待ちいただければと思います。

大浦:CeVIO AIからクロスプラットフォーム化されるボイスライブラリも、今後増えていく予定です。また、今年9月にはVoiSona正式リリース1周年を迎えますので、そこでまた何らか新しい動きをお届けできれば、と考えています。

--ありがとうございました。

7月18日のDTMステーションPlus!はMYK-IV特集、ゲストにマイキさんも登場

DTMステーションの姉妹コンテンツである生放送番組、DTMステーションPlus!において、VoiSonaのMYK-IVを特集します。この番組では今回取材させていただいた大浦さん、塚田さんとともに、MYK-IVの中の人であるマイキさんにもゲスト出演いただく予定です。

DTMステーションPlus!第222回
配信日時:2023年7月18日 20:00~22:00(特集は21:00~22:00)
【 YouTube Live 】

【ニコニコ生放送】https://live.nicovideo.jp/watch/lv342076268

【関連情報】
VoiSona MYK-IV製品情報
MYK-IV無料お試しキャンペーン

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