オープンソースのサンプリング音源フォーマット、sfzをサポートするiPhone/iPadアプリ、isfizzが400円で発売開始。MIDI 2.0にも対応

サンプリング音源のフォーマットにはNative InstrumentsのKONTAKTや、SteinbergのHALion、AppleのEXS24、IK MultimediaのSampletank……などがある中、オープンソースのsfzというものがあるのをご存じでしょうか?ネット検索してみると、sfzに対応したさまざまなライブラリが見つかり、そのほとんどがフリーでダウンロードして使うことが可能となっています。

そうした中、2024年1月2日、iPhone/iPad用のsfz対応アプリ、isfizzが400円で発売開始されました。これは数々のiOS/iPadOS対応のシンセを開発するキラキュー・テック雲英亮太(きらりょうた @kiraqtech)さんが開発したアプリ。さらにMIDI 2.0対応になっているのも大きなポイント。おそらく初のiOS/iPadOSでのMIDI 2.0にも対応音源だと思います。そこで、そもそもsfzとは何なのかも紹介しつつ、isfizzについて紹介してみましょう。

sfzを利用できるプレイバックサンプラー、isfizzがリリース

オープンソースのサンプラーフォーマット、sfz

サンプリング音源のフォーマットは昔からさまざまなものが存在していました。古くはAKAIのサンプラー用のフォーマットだったり、PC用にはGiga Samplerなんてフォーマットも存在していましたが、最近ではNative InstrumentsのKONTAKTが幅をきかせています。

もちろん競合各社のサンプラー用のフォーマットもいろいろありますが、E-mu Systemsの技術を元にSound Blasterで広まった拡張子sf2のSound Fontもその一つです。E-muのProteusのライブラリがSound Fontファイルとして公開されていたり、もちろん数多くのフリー素材もあり、愛用している人も少なくないと思います。

Cakewalk SONARに入っていたsfzプレイヤー、rgc:audio sfz

そのSound Fontとよく混同されるのが、今回のテーマでもあるsfzです。sfzはオープンソースのサンプリング音源フォーマットであり、拡張子もsfzとSound Fontのsf2とよく似ていますが、それは偶然であり、本来まったく関係ないのだとか。ルーツを追うと、もともとはrgc:audioの創設者であるRené Ceballos(ルネ・セバージョズ)氏が開発したフォーマットで、以前はCakewalkのSONARにrgc:audio sfzというsfzプレイヤーがバンドルされていたり、たしかCakewalkサイトからもフリーウェアとして配布されていたと思いますが、いまは入手しづらくなっているようですね(関係ないけど、シンガポールのCakewalkが現在無料配布しているCakewalk by Bandlabの提供を終了し、新たにCakewalk SONARをリリースするという発表を昨年10月にしていましたが、その後情報がないですね…。また動きがあれば、取り上げていこうと思ってます)。

ネット上には数多くのsfz素材がある

そのsfzの大きな特徴は、テキストファイルで構成されている、ということ。そう、このファイル自体はその音階のサンプルファイルが何というファイル名でどこに格納されているのかなどを定義したもので、音源データそのものではないんですね。つまり、サンプリングファイル群とセットにして使うもので、sfzのファイルもそうしたファイル群とセットで配布されているのが通常です。

現在、そのsfzに関する総本山的なサイトがsfz toolsというサイトになっており、英語サイトではありますが、ここに行くと各種情報が得られると思います。また、ここのリンクとしてgithub上に無料のsfzインストゥルメントのリンク集https://github.com/sfzinstruments/も用意されています。

githubからsfzライブラリをダウンロードする

実際にダウンロードするには、このgithubのページから、ライブラリのページを選択した上で、画面右上の緑色のCodeをクリックして、Download ZIPを選択することで入手可能ですよ。

Audio Unitプラグインとしても動作するisfizz

さて、ここからが本題。こうして入手したsfzのデータをiPhone/iPadに読み込んだ上で、プレイバックサンプラーとして演奏できるようにするのが、雲英さん開発のisfizzなのです。ちなみに、これは「sfizz-uiプロジェクト」というオープンソースのsfzプレイヤーをiOS/iPadOS用に移植したもの、とのこと。以下のような特徴を持っています。

– Audio Unit Extension (AUv3)
– SFZファイルの編集機能
– SFZを読み込む際にファイルをコピーしません。
– ダブルタップで値を入力、トリプルタップでリセットします
– Scala チューニングファイル(.scl)に対応
– MIDIに対応

では、実際に使ってみましょう。isfizzをダウンロードし、起動するとシンプルが画面が立ち上がります。画面下に鍵盤が表示されているので、これをタップしてみると、サイン波の音で演奏できると思います。


iPhoneで起動すると、デフォルトではサイン波の音で鳴らすことができる

MIDIキーボードを接続してみると、それを使って演奏することも可能です。Bluetooth-MIDIの場合は、右上の歯車アイコンをタップして出てくる設定の一覧の中から「Bluetooth MIDI」を見つけてOpenをタップ。ここでBluetooth-MIDIに対応したデバイスを選択すれば、そこから演奏できるようになります。

Bluetooth-MIDI機器を接続する場合は、ここをタップしてデバイスを選択

ただ、ここまではsfzというわけではなく、単に内蔵のサイン波を鳴らしただけ。ではsfzを鳴らすにはどうすればいいのか。iPhoneやiPadでsfzファイルをダウンロードしておくのが良さそうにも思いますが、やや扱いづらいため、WindowsやMacでダウンロードした上で、転送するのが良さそうです。

以前「iPhone/iPadユーザーに必須のWindows/Macユーティリティ、iMazingはパソコン連携を超快適にしてくれる」で紹介したiMazingなどを使うのもいいですが、SDカードやUSBメモリを使うのも手。isfizzは外部ストレージにも対応しているため、SDカードやUSBメモリーから直接sfzを読み込むことも可能です。

外部ストレージもサポートしているので、WindowsやMacでダウンロードしたsfzをSDカードなどで読み込ませることも可能

sfzをロードするには画面左上のファイル名の部分をタップするか、その右の「v」をタップしてLoadを選択します。ここから、目的のsfzファイルを探し出して選んでください。

sfzを読み込む

選んだあとに「Info Please select a folder which contains the SFZ file.(This is the required process.)」と表示されることがあります。その場合、SFZファイルが入っているフォルダが選ばれている状態で「開く」をタップすることで読み込むことができます。

こうしたエラーが表示されることもあるが…

画面上に並んだアイコンの中の右から2つ目のパラメータアイコンをタップすると、画面には調整可能なパラメータが表示されるので、必要に応じて調整可能です。

一方、isfizzはAudio Unit Extention、つまりiOS/iPadOSのAUプラグインに対応しているので、CubasisやLogic、Zenbeatsなどの各DAW上で動かすことも可能です。

iOS/iPadOSのDAWのプラグインとして使うこともできる。画面はZenbeats

そして、このisfizzですごいのは、このタイミングでMIDI 2.0に対応した音源になっている、ということです。使い方は右上の歯車アイコンをタップし、「Use MIDI 2.0 HD vaules」にチェックを入れること。これによって、MIDI 2.0が来た際には高分解能なMIDI情報に対応できるようになっているようです。

「Use MIDI 2.0 HD values」にチェックを入れることでMIDI 2.0対応になる

もっともまだDAW側でMIDI 2.0対応がしっかりできていないため、実際にしっかり使えるようになるのは今後ということになりそうですが、こうしたアプリがいち早く日本の開発者によって作られるというのは嬉しいことだな、と思ってます。

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