KAITO V3がいよいよ登場、新エディタ、Piapro Studioを使ってみた!

ついに、クリプトン・フューチャー・メディアから待望のVOCALOID3が登場します。その第1弾となるのが、KAITO V3。そう、初代VOCALOIDとして存在していた男性ボーカルのKAITOVOCALOID3で復活することになったのです。しかも、1つのパッケージに、4つものライブラリが収録されているのも注目のポイント。具体的には、張りのある自然な声のSTRAIGHT、柔らかな声のSOFT、ささやき声のWHISPER、そしてナチュラルな英語の声のENGLISHの4つです。

すでにデモソングもいろいろと上がっているので、お聴きになった方もいると思います。声質についてや、ライブラリの違いの印象などについては、ほかのみなさんがいろいろと書いていらっしゃるので、そちらに譲り、ここではKAITO V3に収録されたPiapro Studioというクリプトン・フューチャー・メディアが新たに開発したVOCALOID用の歌声入力エディタにフォーカスを当てて紹介してみたいと思います。

2月15日にクリプトン・フューチャー・メディアから発売されるKAITO V3
(C)Crypton Future Media,inc www.piapro.net


KAITO V3は定価16,800円と、これまでのVOCALOIDライブラリと同程度の値段ですが、その中身を見るとちょっと驚きの内容になっています。そう前述のとおり、4つのライブラリが入っているほか、なんとPreSonusのDAW、StudioOne Artist 2.5 piapro editionが同梱されているのです。

PreSonusのStudioOne Artist 2.5 piapro editionが同梱されている

さらにSONICWIREというフリーサウンド素材集と、サウンドファイルを管理するVSTiMUTANTというものもバンドルされています。

KAITO V3に同梱されているVSTi型のエディタ、Piapro Studio

しかし、ここで一番注目したいのは、もう一つのバンドルソフト、Piaporo StudioというVSTi型のVOCALOIDのエディタが収録されていることです。
ご存知のとおり、これまでVOCALOID3でのデータ入力にはYAMAHAのVOCALOID Editorを使う形になっいましたが、最近になって、新たな方法が登場してきています。その一つが以前にも紹介したVOCALOID Editor for Cubaseでした。しかし、このKAITO V3に搭載されているPiaporo Studioはそれとも異なるクリプトンが独自に開発した新たなエディタなのです。

誤解を避けるために説明しておくと、KAITO V3も同じVOCALOID3のライブラリであり、インストールすると他社のVOCALOID3ライブラリと同様にTiny VOCALOID3 Editorもインストールされます。したがって、Tiny VOCALOID3 Editorはもちろん、別売のVOCALOID3 Editorでも、VOCALOID Editor for Cubaseでも使うことができます。それに加えて、Piapro Studioでも利用できるというわけなのです。

SONAR X1 LEのVSTiとしてPiapro Studioを組み込む

でも、VSTi=ソフトシンセ型のエディタとはどういうことなのでしょうか?すぐにはイメージができなかったので、実際に少し使ってみました。ここではあえて、StudioOne Artist 2.5 piapro editionではなく、Cubase AI6およびSONAR X1 LEで使ってみました。

※Windows7 64bit環境で試しましたが、64bitアプリ(試しにCubase7 64bit)の場合、うまく使えないようでした。

CubaseのインストゥルメントトラックとしてPiapro Studioを組み込む

これらDAWを起動すると、Piapro Studioはプラグイン型のソフトシンセ、Piapro Studio VSTiとして見えるので、まずインストゥルメントトラックとして、これを組み込んでみます。ここで、VSTiの設定ボタンをクリックすると、小さなダイアログが表示されます。

最初に現れるのは製品名ロゴだけが表示されるダイアログのみ

「あれ?」と思ったのですが、さらにこのダイアログをクリックすると、いよいよエディタが登場してきます。

Piapro Studioを最初に開いたときの画面。ここにトラックを作成して音符や歌詞を入力していく

そのこのエディタが起動すると、ある意味、CubaseやSONARのMIDIトラックとは別世界のものとなります。つまり、VOCALOID2のVSTiのように、DAWのMIDIトラックで演奏情報を入力するのではなく、あくまでもPiapro Editor上でメロディーも歌詞も入力していくので、DAWのMIDIトラックは空のままでいいのです。

新規にトラックを作成し、ここにリージョンを作る

Piapro Studio上で新規トラックを作り、トラック内にリージョンを作った上で、ダブルクリックするとピアノロール画面が開きます。ここで音程、歌詞を入力していきます。使い方はとってもシンプルで鉛筆ツールで1つ1つ音符を入力し、歌詞を流し込んでいくというものです。

リージョンをダブルクリックして開くピアノロール画面に音符を入力していく

これまでVOCALOID3 Editorを使ってきた人も、まったく違和感なく使えると思うし、とっても使いやすく工夫されています。音符の入力自体は大きく変わりませんが、音符をクリックすると文字入力画面が現れ、ここで1文字でも複数文字で流し込むことも可能です。

歌詞も効率よく入力していくことができる

また画面左側には、VEL、DYN、BRE……というパラメータが並んでいますが、これをクリックするとピアノロールの下にオートメーションのエリアが現れ、エディットしていくことができます。

画面下に各種パラメータを表示させ、オートメーションを描いていく

さらに、音符を選択すると、その上と下に波形のようなものが表示されます。上の波形をクリックすると、歌唱スタイルを調整するためのダイアログが表示されます。

1音ごとに歌唱スタイルを設定することが可能

一方、下をクリックするとビブラートの設定ができるようになっているんですね。調整項目自体はVOCALOID3なので、従来のものと同じですが、ずっと使いやすくなっていると思うのですが、いかがですか?

ビブラートもさまざまなスタイルのものを選択できる

このように入力したところで、プレイボタンをクリックすると、歌わせることができます。また、複数トラックを設定しておけば、合唱させることができるわけですね。

ただし、Piapro Studioのプレイボタンを押して歌わせる場合は、あくまでもVOCALOID3の歌声が再生されるだけ。やはりDAWで使うからには、ほかのトラックと連携させたいですよね。その場合は、簡単。CubaseやSONARの再生ボタンを押してスタートさせれば、Piapro Studioが完全に同期した形で再生され、別のパートもいっしょに再生することができるのです。

DAW側のプレイボタンを押すことで、全体を同期して鳴らすことができる

もちろんテンポ制御はすべてDAW側で設定し、そのテンポとマッチした形で演奏され、早送りや巻き戻しをしても、それに追従する形になります。

当然、Piapro StudioをVSTiとして扱っているので、その出力に対して、リバーブやディレイ、EQ、コンプ……と各種エフェクトをかけることも可能となっています。なお、Piapro Studioを組み込めるのは1トラックのみという制限があるため、デフォルトの設定のまま出力させるとメインボーカルもコーラス1つのチャンネルに出力されてしまい、別々にエフェクトをかけるといったことができません。

しかし、Piapro Studio VSTiでは、各トラックごとにオーディオアウトチャンネルを設定することができるため、
ホストDAWが、VSTiからの複数チャンネルアウトに対応していれば各チャンネルに別のエフェクトをかけることが可能となっています。
VSQ、VSQXのインポート、エクスポートに関する設定もできる

なおPiapro StudioはVSQファイル、VSQXファイルを読み込むことができるし、VSQXファイルを書き出すことも可能です。でも気になったのは、入力したデータをどのように保存できるのか、という点です。結論からいうと、いたって簡単。CubaseやSONARのプロジェクトファイルとして保存すると、Piapro Studioに入力したデータも一緒に保存され、再度読み込めば、復元されるのです。当たり前のことかもしれないけど、何か不思議な感覚であり、とっても便利です。

これがあれば、DAWとVOCALOID3 Editorを行ったり来たりする必要がなくとっても便利になりそうですよ。

他社のVOCALOID3ライブラリを読み込んで使うことはできなかった

最後にチェックしてみたのは、Piapro Studioで別のVOCALOID3ライブラリを扱えるのか、という点。試しにKAITO V3とVY1V3がインストールされている環境で使ってみたのですが、残念ながらPiapro StudioからVY1V3は見えませんでした。できればオプション料金を支払う形でもいいので、これを開放してくれるとさらに強力なツールになるのですが……。とはいえ、今後続々と登場してくるであろうクリプトンのVOCALOID3ライブラリでは使えるでしょうから、これを楽しみに待ちたいところですね。

Commentsこの記事についたコメント

12件のコメント
  • しゅう

    Piapro Studioつかいやすそうなので、
    手持ちのGUMI,IAで使えないのは残念です。
    クリプトンの今後出るボカロは全てこんな豪華仕様になるんでしょうか?

    2013年2月13日 7:57 PM
  • らぐえる

    64bitDAWで使うときにはjBrigeかませれば
    いけるかもしれませんね。
    届いたら実験してみます。

    2013年2月14日 1:29 AM
  • 藤本健

    しゅうさん
    コメントありがとうございます。
    やはり他社ソフトを使えるようにするのは難しそうですね…。
    今後登場が見込まれる、ミクなどがどうなるかはまったく未知数です。
    ただ、英語版はやっているという話なので、同じ仕様になる可能性は高そうですよね。
    らぐえるさん
    本来は私がテストすべきところなのですが、すでにPCの環境を別の仕事用のものに変えてしまって、すぐに試せない状況です。
    何かわかったらぜひ、教えてください!!

    2013年2月14日 7:51 AM
  • HMP

    FAQに以下の記載があるので、他社製VOCALOID3で使用できるようになる可能性はけっこうあるかも?です。
    そのあたり、藤本さんにツッコんでいただけたら嬉しいかなあとか(笑)
    http://piaprostudio.com/?page_id=132
    「VOCALOID2や他社製VOCALOID2, 3ライブラリは読めますか?」
    掲載日:2013年2月15日
    2013年2月現在は『KAITO V3』にのみ対応しています。他のライブラリについてはアップデータにて対応予定です。

    2013年2月16日 7:30 AM
  • 藤本健

    HMPさん
    こんにちは。
    そうですね、この辺は今後のアップデートに期待しつつ……
    ということでしょうね。ただ、開発したクリプトンの立場を考えると、しばらくはこのまま、今後、初音ミクなどがリリースされたら、まずそれに対応し、その後場合によっては他社も…という順番じゃないでしょうかね?

    2013年2月16日 7:55 AM
  • cyross

    こんにちわ、cyrossです。
    KAITO V3が届きましたので、早速使ってみました。
    64bit DAWでうまく動かないという話でしたが、SONAR X2a Pro(x64)ではうまく動いていると思います。
    ちゃんと起動します(そらそうか)。
    パラメータも設定可能です。
    複数トラックの再生にも対応しています(パラアウトはまだですが)。
    SONAR側から同期で再生出来ます。
    ただ、PiaProStudio側から再生すると、SONAR側のシーケンスを追っかけないのが残念でした(音は出ています)。
    以上、SONAR X2a x64+PiaproStudioのレポートでした。

    2013年2月16日 11:58 AM
  • cyross

    > ただ、PiaProStudio側から再生すると、SONAR側のシーケンスを追っかけないのが残念でした(音は出ています)。
    ふと思って、元々32ビットのFL Studio 10.9でも同じ事をやったところ、同じ結果になりました。
    どうやら、SONAR(もしくはx64)側の話ではなく、PiaproStudio側の話のようですね。

    2013年2月16日 12:06 PM
  • 藤本健

    cyrossさん、SONAR X2 64bitでのレポートありがとうございます。
    そう、記事でも書いているとおり、Piapro Studioのプレイボタンを押した場合には、DAW側とは同期しません。それが仕様のようですね。

    2013年2月17日 10:14 AM
  • maysmix

    久々に投稿させて頂きます。
    AKAI SYNTH STATION 25を、Win7(64bit)のStudioOne2(KAITO V3バンドル)に繋げたいのですが、MIDIコネクタじゃなくてミニUSB-Bのせいか、設定がすんなりとは上手くいかず、リアルタイム入力が出来ません。
    まずPC側に「PLWMidiMap.cpl」を入れて、送信先は「Microsoft synthesizer」「Microsoft GS Wavetable Synth(エミュレート済み)」「Microsoft MIDI Mapper(エミュレート済み)」が選択できる様になりましたが、受信元でAKAIの情報が得られないため、選択すら出来ません。
    通常のMIDIコネクタのCASIO GZ-5やKORG microKORGは問題なく認識されました。
    StudioOne2側でMIDIポートの設定が必要なのでしょうか?
    色々メニュー触ったのですが、それらしい項目が見当たりません。
    よろしければご教授頂ければ幸いです。

    2013年3月17日 12:27 PM
  • maysmix

    先程、質問した者です。
    PCがBTO仕様だったため、各種ドライバを最新バージョンに入れ替えたり、設定を色々弄ったりしましたが、それでは解決しませんでした。
    ダメ元でUSBケーブルを別に使用していた物に変更したところ、あっさり認識しました。
    自己解決してしまいましたが、同様に苦労される方がいると思い、追記させて頂きました。
    これでiPhoneでもiPadでもPCでも、どこでもSS25が使えます。
    お騒がせして申し訳ございませんでした。
    これからこの記事を参考に、色々と遊んでみたいと思います。

    2013年3月17日 5:32 PM
  • 藤本健

    maysmixさん
    こんにちは。お返事が遅くなってすみませんでした。
    無事解決できたようで、よかったです。

    2013年3月17日 9:25 PM
  • maysmix

    お返事ありがとうございました。
    その後、苦労しつつも何とか進められる様になりました。
    中々慣れるのに時間がかかりそうですが、このソフト一本で殆ど出来るのはイイですね。
    他のライブラリもアップデート対応で使えるそうになるとか。
    待ち遠しいですね。

    2013年3月30日 6:28 PM

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です