東北を応援するキャラクターとして生まれた東北ずん子。2012年9月にしゃべるソフトウェアのVOICEROID+版・東北ずん子が登場した際には、DTMステーションでも記事にして大きな反響になりました。その東北ずん子が、いよいよVOCALOIDとなって6月5日に発売されます。ご存じの方も多いと思いますが、2013年6月にVOCALOID化を目指すクラウドファンディングが開始され、1か月後に目標投資額を達成。その後、AHSの手によってVOCALOID化が進められていたのです。

私もことあるごとに、VOCLOID版の東北ずん子の開発進行状況を伺っていたのですが、いよいよ完成したようなのです。発売までは、まだ3週間程度ありますが、一足早く、ソフトを入手することができたので、どんなものなのか使ってみるとともに、開発の経緯などをAHSの尾形友秀社長に伺ってみました。


VOCALOID版の東北ずん子がいよいよ発売になる


ご存じない方のために、これまでの経緯を改めて説明すると、東北ずん子は2011年にSSSという会社によって発表された、ずんだ餅をモチーフにしたキャラクター。東北復興支援をテーマとして掲げており、東北6県の会社は許可なしにキャラクターを利用できるというユニークな発想のものとなっています。


発売が決まったVOCALOID版・東北ずん子のパッケージ 

そのSSSが「東北ずん子をしゃべらせよう」と、ネットを通じて広く一般から資金を集めるクラウドファンディングを実施。それをAHSの尾形社長が仙台出身ということもあって、開発を引き受けて、2012年9月にVOICEROIDとして発売したのは前述のとおり。この際、中の人として抜擢されたのは、同じく仙台出身の声優、佐藤聡美さんでした。

佐藤さんは、アニメ「けいおん!」の田井中律役で知られる人ですが、VOICEROID版の東北ずん子の声は、その律っちゃんとはだいぶ異なる雰囲気で、「元気」というより「かわいく、おしとやか」な感じ。以下が以前、記事にした際にVOICEROIDにしゃべらせたビデオです。



アニメでいえば、同じく佐藤さんがCVを務める、氷菓千反田える、ソックリな感じなんですよね。そのVOCALOID版が誕生するとあって、どんな歌声の製品になるのか楽しみにしていたのです。

そして、VOCALOIDのクラウドファンディングから約1年が経過し、ようやく製品発売が確定。入手したVOCALOID版の東北ずん子を使い、とりあえず歌わせてみたのが以下のビデオです。



それ、摩耶花との掛け合いだから」とか「後半のパートが逆だよ」といった突っ込みは置いておいて、想像していた以上に、VOICEROID版の東北ずん子の雰囲気がうまくVOCALOID化されており、カワイイ歌声になっていると思いませんか?

ちなみに、これはCubase Editor for VOCALOIDを使って入力し、軽くリバーブを掛けただけのベタ打ちVELパラメータがバラついているのは入力をUSB-MIDIキーボードからCubaseのリアルタイムレコーディングで行ったからです。

ところで、実際の人でも、しゃべる雰囲気と歌声の雰囲気はかなり異なるという人はいるし、力強く歌うのと、優しく歌うのでは感じも変わってきます。どうやって、こんな歌声が実現できたのか、先日、尾形社長に話を伺ったところ「1年前に開発に着手した際、まずどっちの方向に持っていこうかと考えたのです。最近のVOCALOIDって、力強く、声量のあるもの、実力派シンガーといった雰囲気のものが増えてきているので違う方向を作ってみたいと思ってはいました」とのこと。

尾形社長としては、なるべく多彩な歌声の選択肢があるべき、という考えで、VOCALOIDを作ってきたいという経緯があり、同社がこれまで扱ってきた「猫村いろは」、「結月ゆかり」などとは違う路線にしようと取り組んだそうです。


最近のVOCALOIDとは少し違う方向性の製品にしたという 

佐藤聡美さんは、本当にいろいろな歌い方ができる人です。最初、参考までにということで、複数の声質で歌ってもらった中、この東北ずん子のように『ふわふわしている』、『柔らかい』雰囲気の歌い方のものがあったので、そんな方向で作れればと企画していきました。佐藤さんとしても、東北ずん子のキャラクタを見ながら、こんな歌声であるはず、という思いも持っており、そこをすり合わせながらレコーディングを進めていきました」と尾形社長。

VOCALOIDの制作に時間がかかるということは知ってはいるものの、クラウドファンディングが実施されてから、1年というのはずいぶん待ったような気もするのですが……。


クラウドファンディング実施後、1か月弱で目標額を達成した 

お待たせしてすみませんでした。クラウドファンディングが成功してすぐに佐藤さんに打診をしてレコーディングに入ったのですが、レコーディングに4~5カ月かかり、その後も編集にかなりのパワーを割いた結果、1年近く経過してしまいました」(尾形社長)。

普通、VOCALOIDのレコーディングって、1日か2日だと思うのですが、4~5カ月というのは尋常ではないですよね。その点確認してみたところ、そもそもAHSではレコーディングに1週間程度かけているそうです。さらに、人気声優の佐藤さんは分刻みのスケジュールで超多忙。また、何時間もレコーディングスタジオに拘束して、同じクオリティーを保ち続けるのは難しいということで、短時間ずつ4~5カ月のスケジュールを抑えてもらい、レコーディングを続けていったそうです。


もちろん、しゃべるソフトであるVOICEROID+東北ずん子も併売される
 

とはいえ、日にちが異なると、やはり声質がバラついてしまいそうですが、その点、大丈夫だったのでしょうか?
佐藤さんは、とっても優秀なプロの声優さん。前にレコーディングした歌声を聴いてもらうと、同じ声を再現することができるので、その点、まったく問題はありませんでした」と尾形社長。夏前からスタートしたレコーディングが終わったのは寒くなった時期。その後、編集作業を行い、ようやく発売にこぎつけたというわけなのです。

もちろん、製品化された「VOCALOID3 東北ずん子」はWindows、Mac対応のハイブリッドで価格も従来のAHSのVOCALOID製品と同様の標準価格11,238円となっています。パッケージ版のほかにダウンロード版も発売され、こちらは8,381円と、手ごろです。


Music Maker MX2とセットになったMusic Maker MX2ボカロパック 東北ずん子 

またAHSが発売するDAW、Music Maker MX2とのバンドル製品である「Music Maker MX2ボカロパック 東北ずん子」(標準価格20,762円)、VOCALOID3 Editorとのバンドル製品である「VOCALOID3 東北ずん子スターターパック」(標準価格16,952円)も登場。単体の「VOCALOID3 東北ずん子」にはMusic Maker MX2の機能縮小版であるMusic Maker Silverも同梱されるので、とりあえずこれでDTMをスタートしてみようという方にも役立つパッケージとなっています。尾形社長も「DAW+TinyVOCALOID Editor+歌声ライブラリという構成になっているので、とりあえず単体のVOCALOID版の東北ずん子を購入するだけで、一通りものは揃います」と力説。基本的には、以前「結月ゆかり買うとDAW(Music Maker Silver)がGETできるぞ!」の記事で紹介した結月ゆかりと同じ製品構成ですね。


VOCALOID版東北ずん子にはMusic Maker Silverが同梱されている

ところで、結月ゆかりのパッケージには用意されている声のサンプリングデータ、「exVOICE」が東北ずん子には入っていないようですが、その点に尾形社長に確認したところ、なるほど、という答が返ってきました。


VOCALOID版の東北ずん子にexVOICEはないけれどブレスデータは9つ収録されている
 

ライセンスの関係上、VOCALOID製品は楽器と同じように商用を含めて自由に使うことができるのに対し、VOICEROIDのほうは商用利用不可とさせていただいています。その関係上、exVOICEはVOICEROIDのほうに入れており、VOCALOIDには入れていないのです。もちろん、非商用であればニコニコ動画などに投稿することも問題ありませんので、exVOICEが必要であれば、VOICEROIDのほうをご利用ください」(尾形社長)

ちなみに、「ふ~」、「ハッ」といったブレスのサンプリングはVOCALOIDにも入っており、自由に利用できるようです。

なお、6月5日の発売を前に、5月末には体験版が公開され、ダウンロードできるようになるとのこと。まずはこれを試してみるのがよさそうですね。 

※追記 2014.6.4
ニコニコ生放送「DTMステーションPlus!」を一緒に運営している作曲家の多田彰文(@akifumitada)さんによる東北ずん子の公式デモソング「FATE」が公開されたので、以下に掲載しておきます!


 
【関連情報】
VOCALOID3 東北ずん子製品情報
東北ずん子 体験版ダウンロードページ


【価格チェック】
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