ティーザー広告などを見てすでにご存じの方も多いと思いますが、ATVからaFrame(エーフレーム)という、とっても不思議な電子パーカッションが登場しました。ホームベース型ならぬダイヤモンド型のこのパーカッションは、「叩く」、「押す」、「擦る」といったアクションで演奏するこれまでにない打楽器。

素手で演奏でき、とっても繊細な音が出せるaFrameは、PCM音源ではないのがポイント。「Adptive Timbre Technology]というATVが開発した独自技術で、アコースティック楽器感覚で演奏できるようになっているのです。先日、浜松で行われた発表会に行ってきたので、これがどんなものなのかレポートしてみたいと思います。


ATVが開発した新製品、aFrameを演奏するパーカッショニストの梯郁夫さん
まずは、パーカッショニストであり、aFrameの開発アドバイザーである梯(かけはし)郁夫さんによる演奏をビデオ撮影してきたのでご覧になってみてください。



なかなか、いろんな音が出るし、いろんな奏法があって、面白いでしょ。この発表会より前に、テレビ東京系列のニュース、ワールドビジネスサテライトトレたまでATVのaFrameを取り上げていたから、それを見たという人もいたかもしれません。


Rolandの創業者であり現ATV会長でもある梯郁太郎さんがaFrameの開発にも携わっている

ATVって…? と思った方はぜひ1年前の記事「MIDIの父、梯郁太郎さんがCOME BACK!! 電子楽器メーカー、ATV始動」も併せてご覧いただければと思います。そうATVはRolandの創業者であり、元社長、元会長である梯郁太郎さんが、昨年設立したばかりの小さな会社なんです。

aD5という高性能ドラム音源がATVの現在の主力製品となっていますが、その第2弾製品として、aFrameが生まれたのです。先日の発表会でも、梯さんがaFrameへの思いを語っていらっしゃいましたが、86歳の梯さんはATVの会長であり、いまも現役のエンジニア。aFrameの原理的な技術部分から、商品企画に至るまで、深く関与されているようですよ。


表面はザラザラとした素材になっている

実際に、私もaFrameに触ってみましたが、すごく楽しくて、気持ちよく叩けるパーカッションです。触れば誰でもすぐに感じると思いますが、なるほどPCMでは絶対にありえない反応速度なのも大きなポイントだし、ザラザラしたパネル面を指や爪で触ると、その感触通りにリアルタイムに音が出るのも面白いところ。

また、エッジ部分を“カンカン”って叩くと、まさにその雰囲気で音が出てくるけど、設定によって、出音は、ホントにさまざま。ただ、どんな音色に設定してもまったくレイテンシーのない音が出てくるから、なんか不思議だし、またそこが気持ちいいところなんですよね。


「Crafted by Fujigen」という焼印が押されている 

電子楽器ではあるけれど、限りなくアコースティック楽器に近い感覚のaFrame。そこにはデザインや素材、加工へのこだわりもあるようですよ。それを象徴するのが、このフレーム部分。木ではなく、竹を使っているそうなのですが、よく見ると、「Crafted by Fujigen」という焼き印が押されています。実はギターメーカーとして知られるフジゲンがフレーム部分の加工・製造しており、ここでは釘などを使わず、伝統的な工芸技術が使われているのだとか…。


エッジ部分の素材は竹。釘を使わない伝統的な工芸手法で製造されている 

そして、「竹は収縮が少なく、音質的なバランスが良いなどの利点があります」とATVは言うのですが、……?? 電子楽器なのに、フレームが竹であることで、どう音が変わるのでしょうか?また、どうやって、PCMを使わずに、こんな不思議な音が気持ちよく出せるのでしょうか?

aFrameはさまざまな音が出せる打楽器ですが、その構造自体は、それほど難しいものではありません。簡単にいうと、このダイヤモンド型の楽器を叩いた音をマイクで拾い、それをフィルターで変化させているだけなんですよ」と話してくれたのは、aFrameの開発者であるATVの研究開発部・プロデューサーの荒川僚さん。


aFrameの開発者であるATVの荒川僚さんにいろいろお話を伺った

正確にいうと、フィルターとはEQの集合体であり、ピエゾピックアップというマイク素子をセンター部分に1つ、エッジに近いところに1つの計2つ仕掛けてあり、センターが主に低域の音、エッジ側が高域の音を拾うようになっているんです。またセンサーという意味ではもう一つ、圧力センサーを搭載しており、盤面を抑える圧力を感知しているんです」(荒川さん)

なるほど、確かに叩いたり、擦ったりする音をマイクで拾って加工しているのなら、フレーム部分が木なのか、竹なのかで、だいぶ音の雰囲気が変わってくるでしょうし、盤面がザラザラであることも納得がいきます。圧力センサーのほうは、直接的な音ではなく、EQなどで音を調整する際のモジュレーションとして効くようになっているんですね。

でも、EQだけで、あそこまで派手にサウンドが変化するものなのでしょうか?

これは32chのパラメトリックEQとなっていて、しかもそれが2つあるので、かなり激しく音を変化させることが可能です。一つのEQをティンバーと呼んでいるのですが、片方が主に低域を司るメインティンバー、もう一つが高域担当のサブティンバーとなっているほか、味付け的に利用するエクストラティンバーというものを備えており、これら3つを並列に並べた構造になっています。メインティンバーとサブティンバーを低域用と高域用に分けて使うのも手ですが、両方を高域加工用に使うといったこともできるので、かなり自由度の高い設定ができますよ


各種パラメータは、リアにあるボタンとLCDでいじることができる 

もっとも、EQ自体はシンプルなものなので、32chあるといっても1つのチャンネルのパラメータとしては、周波数帯域を決め、Qとゲインだけですからね。これをどう使うかで、ずいぶんと違う音になるんですよ。また、エクストラティンバーのほうは、単なるEQというよりもエンベロープジェネレータを備え、ちょっとシンセサイザ的なものになっているんです。そのため、スネアでいうスナッピーっぽい音や、リズム・マシンのクラップのような音を作ることが可能になっています

そんな話を聞き、個人的には中学生くらいのころにグラフィックイコライザーに憧れていたことを思い出しました。当時は無敵のエフェクターだと夢見ていたので……。でも、実際にEQだけで、これだけのサウンド変化を実現できるというのはスゴイですよね。

EQって、一般的には周波数成分を調整するためのものと思いますよね。でも、実はそれだけではなく、余韻をつけるという機能を持っているのを知ってますか?」と荒川さん。「え?どいういうこと??」と思ったら、面白い話をしてくれました。

EQってQを持ち上げることで、周波数が強調されるだけでなく、時間軸方向に延びる特性を持っているんですよ。だからQを高く設定するとリリースがついてくる。ただ、普通の音楽などに設定してもリリース部分はマスキングされて目立たないけど、一発のパルス波に掛けるとそれが顕著に表れるんです。パルス派って、まさに打楽器そのものですよね。だから、ここにさまざまなEQを設定することで、幅広い音作りが可能なんですよ

EQにそんな特性があったなんて、まったく知りませんでした。1つのティンバーで32個もEQ設定ができるわけですから、かなりいろいろな音が作れそうですよね。

それらEQのパラメータに、プレッシャーセンサーの値をモジュレーションすることで、音を止めたり、変化させたりできるため、強く押しておくとミュートされているようにしたり、鈍い音にしたりできるわけです。そのモジュレーション先をどのパラメータにするかは自由に設定することが可能です。さらにaFrameには音源部とは独立させる形でマルチエフェクトを内蔵しています。リバーブ、コーラス、ディレイ、ワウ……と用意していますが、これらのパラメータに対してもプレッシャーセンサーによるモジュレーションをかけることを可能にしています

荒川さんによると、音源のパラメータをまとめたパッチを最大80音色分保存できる構造にしているとのこと。さらにエフェクト側も最大80音色保存できるので、80×80種類の音色が記録できるんですね。ただ問題は、これらパラメータの設定がaFrameの内側にあるスイッチと、小さなLCDディスプレイで設定しなくてはならないこと。


USB端子経由でPCとの接続も可能

電源供給はmicroUSB端子からも行えるようになっているのですが、これをPCと接続することで通信を可能にしています。ただ、これを一般ユーザーに開放すべきかどうかは、まだ決めていません。USBで操作できるようにすると、どうしてもサポートが大変になりそうな気がしますが、小さな会社なので、それに対応できるか……」と荒川さん。


ACアダプタを使わなくてもモバイルバッテリーを使うことで長時間使うことが可能

その辺は、ぜひ「サポートしません」と宣言した上でドライバーなど公開してくれると楽しくなりそうですよね。ちなみに、aFrame本体にはバッテリーは装備しておらず、動作させるためには、そのACアダプタ端子かMicroUSB端子から電源を供給する必要があります。といっても、微弱な電力で動作するから、モバイルバッテリーなどを接続することで何時間も使うことができるようです。


トランスミッターを取り付け、完全なワイヤレス電子楽器として演奏する梯さん 

さらにaFrameの出力は単純なオーディオ出力であるため、ワイヤレスマイクのトランスミッターをここに接続すれば、完全なワイヤレス打楽器が実現できるわけです。打楽器奏者って、普通は動き回れないからステージの奥のほうに隠れがちですが、これならステージの中央に出てきて、ボーカリストやギタリストと一緒に並んでプレイする……なんてこともできそうですよね。

発表会最後には、先ほどの梯郁夫さんと、ゴダイゴのドラマーでもあるトミー・スナイダーさんの2人が競演する形でワイヤレスなaFrameを使ったプレイを披露してくれたので、ぜひ、そちらもご覧になってみてください。



なお、発売は2017年1月を予定しているとのことで、気になる価格は実売で16万円前後になる見通し。安い機材ではないけれど、世界的にも注目を集める新しい楽器になりそうですね。


トミー・スナイダーさん(左)と梯郁夫さん(右) 

なお、このaFrameについて、ニコニコ生放送/AbemaTV Fresh!で放送している「DTMステーションPlus!」で12月6日取り上げて実演してみる予定です。当日は、先ほどのYouTubeビデオでも演奏していた梯郁夫さんに出演いただき、さまざまな使い方を見せていく予定ですので、お楽しみに!

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