先日、知人から「これ、スゴイよ!」と教えてもらって試してみたのがu-he(英語読みでユーヒー、ドイツ語読みならウーヘー)のRepro-1というソフトシンセ。ご存知の方からは「今さら、何を言ってるんだ!」と馬鹿にされそうではありますが、状況を理解しないままにデモ版をインストールして音を鳴らしてみて、驚きました。

なんだ!この分厚いサウンドは!」、と。画面を見て、これはあのシーケンシャルサーキットのProphet-5?と思ったら、単音しか出ません。そう、これProphet-5をモノフォニック化して1981年に発売されたPro-Oneをアナログモデリングした音源だったんですね。Prophet-5をモデリングした音源は、NIのPro-53やArturiaのProphet Vほか、いくつかがありますが、サウンドの完成度、質の高さという意味ではそれらを圧倒するんじゃないでしょうか…。国内ではディリゲントが代理店として、今年3月に発売されていたようですが、ノーマークでした。というわけで、今さらながらRepro-1について紹介してみたいと思います。


SEQUENCIAL CIRCUITのPro-Oneを再現したu-heのRepro-1

開発元であるベルリンにあるu-heについては、2013年に「ドイツu-heのWin/Mac対応フリーシンセ、3種類を使おう!」という記事で紹介したことがありました。その時点では国内代理店はなかったのですが、現在はu-he製品全般をディリゲントが扱ってます。


u-he製品は現在ディリゲントが代理店として扱っている

ちなみにディリゲントの価格は13,000円で、現地価格は$99。$1=110円で換算すると2000円ほど高い計算にはなりますが、日本語のチュートリアルがあり、日本でのサポートもあることを考えると悪くない値段なのでは……と思います。

そのRepro-1のデモサウンドのビデオがあるので、まずは以下をご覧ください。



YouTubeのビデオではありますが、できればパソコンのスピーカーではなく、オーディオインターフェイス経由で低音がしっかり出るモニタースピーカーで聴いてみると、Repro-1のサウンドのすごさをある程度実感できると思います。

4つ、5つの音が重ねてありますが、リズム以外はすべてRepro-1が使われています。とくにこのシンセベースのサウンドの太さって、グっと来てしまいます。私自身は、Pro-Oneを使ったことがあるわけではないですが、いかにもProphet-5なサウンドですよね。


1981年に発売されたPro-Oneの実機

ちなみに以前、ドイツのMusikmesseで展示されていたPro-Oneを撮影したのがこの写真です。Repro-1とまったく同じというわけではないですが、パラメータを見てもほぼ同等のものになっていますよね。


2オシレーター構成となっているRepro-1の主なパラメータ

アナログシンセが分かる方なら、画面を見るとだいたい想像がつくとは思いますが、Repro-1は2オシレーターの構成で、OSC Aはノコギリ波/矩形波、OSC Bはノコギリ波/三角波/矩形波を基音とするPULSE WIDTHモジュレーション。ミキサー部では低音をブーストをさせるフィードバック・パスが搭載されているからこそ、太い音が出るんですね。


500種類以上のプリセットも用意されているので、これらを使うだけでも、かなり楽しめる

フィルター部はカットオフ、レゾナンスに加えて、EG=エンベロープジェネレータからの影響とキーボードからの影響を調整できるようになっています。そして、EGはフィルター用とアンプ用が独立して設定できるようになっていたり、LFOも3つの波形を組み合わせて出力可能になっています。


基板むき出しの格好となるTWEAKS画面

タブを使ってSYNTHからTWEAKSに切り替えると基板むき出しな画面になります。単にパネルを外しただけで、パラメータ的には何も変わらないようにも見えるのですが、よく見てみると、先ほどの盤面にはないパラメータもいくつかあるんですよね。たとえばOSC Bの出力位相を反転させたり、LFOを反転させたり、ピッチベンドを効かせるかどうかを設定する、といったことが可能になっています。


32ステップのパターンシーケンサが2つ搭載されている

さらにPro-Oneにはなかった機能もいろいろと追加されているのがRepro-1の面白いところでもあります。まずはシーケンサで最大32ステップのものが、2パターン作れるようになっており、片方を選んだり、2つをつなげて最大64ステップにするといったことも可能です。音色の中には、このシーケンサ機能を組み合わせたものも入っているんですね。


5種類の強力なエフェクトが搭載されているのも大きなポイント

そして、Repro-1の音が分厚く、カッコよくなっているもう一つの理由は、最終段に5種類のエフェクトが内蔵されていることがあります。Jawsというモジュレーション&ディストーションを使うだけでも、音がぶっとくなるので面白いですね。Lyrebirdはコーラス&ディレイで広がりのあるサウンドにしてくれます。また、ResQは3バンドのEQ&レゾナンス、こいつもレゾナンスをうまく効かせることで、すごい音作りが可能です。Drenchはディレイ、そして、Sonic Conditioneは、トランジェントシェイパーですね。いずれもちょっと変わったエフェクトなのですが、いい味を出してくれますよ。


Repro-1の64bit版をトラックに立ち上げてプリセットを読み込むとかなりのCPUパワーを消費

ここで気になるのがRepro-1が消費するCPUパワーです。これだけのサウンドを出しているので、かなりの演算能力がいるのでは……と思い、Studio Oneのパフォーマンスモニターを使ってチェックしてみました。結論からいうと、やっぱり結構食いますね。64bit版をインストゥルメントトラックとして組み込んだイニシャル状態で12~14%のCPUパワーを消費し、プリセットを読み込むと音色にもよりけりですが、15~30%くらいにまで上昇します。Studio One標準のMai TaiやMojitoなどとはだいぶ違いますよね。

ちなみに今回使ったのは1年前に「DAW専用のSkylake Core i7/Windows 10マシンを10万円で組んでみた」で作ったもので、ここにWindows 10 Creators Updateを入れたものです。それなりに速いPCだと思いますが、マルチトラックで同時に発音させると、なかなか厳しそうではあります。


Windowsでのインストール画面。ここでどれをインストールするか選択できる

なお、インストール画面を見るとわかるとおり、Windowsの場合、VST 2と3、AAXのそれぞれの32bit版と64bit版が入っています。Macの場合にはVST 2/3、AAXに加えてAudioUnitsにも対応しています。さらにWindowsもMacもNKSにも対応しているため、Native InstrumentsのKOMPLETE KONTROLでも使えるというのはKOMPLETEユーザーにとっては嬉しいところでしょう。

「とはいえ、やっぱりPro-OneじゃなくてポリフォニックなProphet-5がいいんだ!」という人も少なくないと思います。これに対し、u-heでは開発を進めているようで、ビデオも公開しています。問題はこのCPUパワーをどこまで抑えられるか、というところなのかもしれません。あとはu-heの開発力を信じるしかありませんが、個人的には音質を落としてポリフォニック化するのなら、Repro-1のままでもいいけど、どうなるか……ですよね。


ディリゲントでは、このRepro-1だけでなく、u-heのさまざまな音源、エフェクトも扱っています。まだ、ちゃんと使えていませんが、ちょっと触ったところだと、バーチャルアナログ・シンセのDivaは、Repro-1をも上回る強力なもの。MinimoogJupitar-8JUNO-60MS-20JP-8000などを計7種類のビンテージシンセをモデルにソフトウェア化したというポリフォニックシンセ、かなりすごいサウンドが出せます。


超強力なアナログのポリフォニックシンセ、Diva

モジュレーション・マトリックス・シンセサイザーのHiveは見た目はシンプルながら、マトリックス構造でさまざまな音作りができる音源。Repro-1やDivaとは明らかに異なるサウンドで、より今っぽいサウンドづくりができます。CPU負荷もRepro-1、Divaより軽く、扱いやすい音源になっているようです。


モジュレーション・マトリックス・シンセサイザーのHive

そしてワイヤレス・モジュラー・シンセサイザーのZebra2は、その名の通り、自由自在にパッチングが可能なモジュラーシンセです。十数年の歴史を持つソフトだそうで、その間ブラッシュアップを続けてきただけに完成度の高い音源。シンセの音作りとはどうするべきものなのかを学ぶ上でも力になりそうなプラグインです。


ワイヤレス・モジュラー・シンセサイザーのZebra2

ほかにもデジタル・モジュラー・シンセのBazille、バーチャル・パッチング・シンセのAceといった音源、さらにはエフェクトとしてテープマシン・エミュレータのSTAIN、ダイナミックス・プロセッサのPresswerkなどさまざまなプラグイン製品が存在していますが、いずれもデモ版が無償で入手でき、とりあえず試してみることができるのがポイントです。ある程度の時間を使っていると、「ザザザー」といったノイズが出る仕掛けになっていますが、フル機能使えるのが嬉しいところ。


デモ版にシリアルナンバーを入力すればホンモノになる!

またデモ版とは言っていますが、実際は製品そのものであり、ここにシリアルナンバーを入力すれば使えるようになっているんです。いずれも容量的には小さい音源ばかりですから、まずはこのデモ版を試してみてはいかがですか?

※2017.12.27追記
Repro-1の製品名がReproに変更になるとともに、インストーラの中にはRepro-1とともに、この記事でも紹介していたProphet-5の復刻版であるRepro-5がRepro-1とともに収録される形になりました。


新たに収録されたRepro-5


【価格チェック】
◎ディリゲント・オンラインショップ ⇒ Repro-1

【製品情報】