DTMステーションでもこれまで数多くの製品を紹介してきた、米国の老舗オーディオインターフェイスメーカー、MOTU。そのMOTUから、UltraLite mk5と並ぶ10万円台のモデルとして発売されたのが、ハーフラックサイズの筐体に8基ものマイクプリアンプを搭載したオーディオインターフェイス、「OctaLite」です。搭載された8基のマイクプリは約30万円の10preやUltraLite mk5と同じ回路で、出力側にはESS Sabre32のDACを採用。ミキサーとエフェクトを受け持つDSPも載せているので、PCに負荷を掛けることなくエフェクトを使うことができます。また、スタンドアローンでも動作するため、PCに繋いだスタジオでの録音から、PCなしのステージでのミックスまで、この1台でこなせるようになっています。
さらにOctaLiteは単体で使うだけでなく、手持ちのMOTUインターフェイスや他社製のADAT入力を持つオーディオインターフェイスに光ケーブル1本でマイク入力を8ch足す、オプティカル・エクスパンダとしても使用可能。ADATの光入出力を搭載しているので、逆に別の機器をOctaLiteの光入力に繋いで、入力を16chに増やすこともできるようにもなっています。接続はUSB-Cで、Mac、Windows、そしてiOSデバイスでも使える柔軟性も確保。国内での価格は149,600円(税込)で、DAWのPerformer Liteが付属しています。スマホから操作できるDSPミキサーのCueMix 5や、UltraLite mk5のアップデートで加わったADAT出力の新機能など、見どころ満載のMOTU OctaLite。実際どのような製品なのか、その詳細を紹介していきましょう。
ハーフラックに8基のマイクプリ。UltraLite mk5と同じ筐体サイズのOctaLite
OctaLiteは、「超高音質を誇る18in/22outのMOTUの第5世代UltraLiteインターフェイス、UltraLite mk5を試してみた」で紹介した2021年登場のUltraLite mk5と同じサイズの筐体を採用した製品。サイズは22×17.5×4.5cmでまったく変わらず、重さも1.36kgとほぼ同じです。
ただし、入出力の構成は大きく違います。UltraLite mk5は、マイクプリ2基に加えて、ライン入力を6系統、ライン出力を10系統備えています。これに対してOctaLiteは、入力の数は同じ8系統ながら、そのすべてがマイクプリ付きのコンボジャックとなっていて、ライン出力は2系統。マイク録りに特化した構成です。
その8基のマイクプリは、UltraLite mk5と同じ回路で、最大ゲインやノイズの少なさといった性能も同じです。この性能は、「1Uに10基のマイクプリを凝縮した、MOTUのモンスターマシンMOTU 10preが発売開始!」で紹介した10preとも共通しています。ゲインは最大+74dBまで1dB刻みで調整でき、EINは-129dBuと、かなりの低ノイズを実現しています。8系統のマイク入力にはBurr-Brown製のオペアンプが使われていて、色付けのないニュートラルなサウンドが得られます。
とはいえ10preは、Thunderbolt 4/USB4での接続やAVBネットワーク、ワードクロック入出力、16chのADAT入出力、64chのDSPミキサーなどを備えた1Uのモデルなので、単純には比べられません。ただ、マイクプリの数を増やすことが目的なら、OctaLiteの本体価格を8基で割ると1基あたり約1万9,000円。10preは同じ計算で約3万円なので、1基あたり1万円以上も安く揃えられるOctaLiteは、コストパフォーマンスの高い選択肢となっています。
アナログ・デジタル合わせて16in12outの入出力
では、OctaLiteの入出力を具体的に見ていきましょう。入力はアナログ8chと光8ch、出力はライン2ch、ヘッドホン2ch、光8chで、44.1/48kHzでは合わせて16in12outという構成になります。88.2/96kHzでは12in12out、176.4/192kHzでは8in4outです。
8基のマイクプリのうち、1-6chの6基はリアに、7-8chの2基はフロントに配置され、フロントにはこのほか、ヘッドホン端子とOLEDディスプレイ、MIC SEL、MIC GAIN、PHONESの3つのツマミ、そして48V、PAD、MENU、BACKの4つのボタンが並んでいます。
MIC SELのツマミで入力を選ぶと、OLEDにその入力が表示されます。後はMIC GAINのツマミでゲインを、48VとPADのボタンでファンタム電源とパッドを設定でき、録音中によく触るこれらの操作は本体のフロントで完結するわけです。また、PHONESのツマミは押すたびに、ヘッドホンとライン出力のどちらの音量を操作するかが切り替わるので、メインモニターの音量も手元で調整できますよ。
このOLEDには、アナログ入出力すべてのレベルメーターのほか、光入出力の動作状況やサンプルレート、クロックソースも表示されます。MENUボタンを押せば、同じ画面にSAMP RATEやCLOCK SRC、OPT MODEといった設定項目が並び、サンプルレートなども本体だけで切り替えられます。
一方、リアを見ると、1-6chのコンボジャックのほか、LINE OUT L-R、光入力1つと光出力2つ、USB-C、そしてACアダプタを繋ぐ15VのDC入力が配置されています。そのXLR側がマイク入力で、TRS側はライン入力とHi-Zの楽器入力を兼ねています。-20dBのパッドが使えるのはXLR側だけですが、TRS側なら+20dBuまでのライン信号も、パッドなしで受けてくれます。なお光入出力は、ADATのほか、ステレオの光S/PDIFとしても使うことができます。
TRS側にはギターを直接挿せるので、リアンプ用の素材録りにも便利です。たとえば7chにギター、8chにアンプに立てたマイクを挿し、ギターの音をライン出力からアンプへ送れば、ドライのギターとアンプの音を別々のトラックに同時に録ることも可能。この経路は本体のミキサー内で完結するため、PCを通る遅れもありません。後で音色を変えたくなったら、ドライのトラックを同じライン出力からアンプへ送り直せばOK。リアンプが簡単にできるのは、ギタリストにとっては、かなり嬉しいポイントですよね。
また出力側の音質にもこだわっていて、ライン出力にはESS Sabre32のDACを採用しています。ダイナミックレンジが125dB、THD+Nが-114dBというスペックは、UltraLite mk5と同じ値でなかなか優秀。入力側も、ライン入力でダイナミックレンジ120dB、マイク入力で115dBと、十分なスペックを備えています。さらにDCカップリングされているので、CV出力としてモジュラーシンセの制御に使うことも可能。音量はヘッドホン出力と同じく、1dB刻みのデジタルトリムで調整できますよ。
PCとの接続はUSB 2.0対応のUSB-Cで、Macではクラスコンプライアントで動作するため、ドライバーなしでも使えます。WindowsはWindows 11の23H2以降に対応し、Intel・AMDのPCだけでなく、SnapdragonのARM PCでも、ASIO/WAVEドライバーをインストールすれば使うことができます。ただし、入出力が多くDSPも搭載していることもあり、ACアダプタを使っての電源供給が必要となっています。
ちなみにMac用にも専用ドライバーが用意されていて、インストールすればループバック機能も使えるようになります。MacとWindowsそれぞれに最適化されたこのドライバーと、Digital Performerのような高性能なDAWを組み合わせれば、往復レイテンシは96kHz、32サンプルのバッファで2msという超低レイテンシを実現。これだけ遅延が小さければ、ソフト音源を弾いたり、DAW上のプラグインを通した音を聴きながら歌ったりしても、ズレを気にせず演奏できますよ。
またPCだけでなく、iPadやiPhoneもUSB-Cケーブルで直結でき、Lightning端子のモデルも、Lightning – USB 3カメラアダプタを介して繋ぐことが可能となっています。
OctaLiteのすべてをコントロールできるソフトウェア、CueMix 5
続いてソフトウェア周りも見ていきましょう。OctaLiteは本体にDSPを搭載していて、入力やPCからの再生音のミックスに加え、EQやコンプ、リバーブといった処理まで本体側でこなしてくれます。それらをまとめて操作するのが、Mac/Windows/iOS用のアプリ、CueMix 5です。UltraLite mk5や、「MOTUから第5世代828がデビュー。超高音質な28in/32out USB3インターフェイスを試してみた」で紹介した828と共通のアプリで、OctaLiteの設定もすべてここから行えます。
CueMix 5は2021年にUltraLite mk5とともに登場したアプリで、その後もアップデートが続いています。トークバックや、同じネットワーク上の機器からの操作といった機能も、こうしたアップデートで加わったものです。機能が増えても画面の構成は分かりやすく、使いやすいのも魅力ですよ。
CueMix 5の画面は、Home、Device、Input、Outputのタブと、ミックスごとのタブ、Reverbタブに分かれており、リアの1-6chを含む8系統すべてのアナログ入力のゲインはInputタブで、クロックなど本体の設定はDeviceタブで操作します。
そしてHomeタブには、フロントの7-8chのゲインや48V、PADと、モニター・ヘッドホンの音量、Input Monitoring、トークバックがまとまっています。Input Monitoringをオンにすれば、入力の音がUSBを通らずに本体内で直接出力へ送られるので、ほぼゼロレイテンシでマイクの音をモニターできるわけです。トークバックのマイクはSourceメニューで選び、話している間のモニターの下げ幅はDimのツマミで決められます。
ミックスのタブは、Line Out、Phones、そしてVirtual 1-2から5-6までの3つのバーチャルバスという、5つのステレオミックス分が用意されています。それぞれのミックスには、8chのアナログ入力、8chの光入力、PCからの再生音、リバーブを個別の音量で加えられるので、ヘッドホンにはLine Outとは別のバランスを送る、といったことも自由自在です。
さらに、これらのミックスのうち1つ、またはPCからの再生音を、Loopback 1-2としてPCに戻すこともできます。DAW側での入力位置は初期設定でUSB In 9-10ですが、DeviceタブのLoopback LocationでUSB In 1-2にも移せます。入力1-2しか選べない配信アプリにも、本体のミックスをそのまま送れるのは便利ですよ。
またアナログ入力のチャンネルには、4バンドのパラメトリックEQとコンプが用意されています。EQはHighとLowをシェルビングに切り替えられるほか、Lowをローカットとして使うこともできます。一部の入力にはゲートも用意され、マスターには3バンドのEQが付いています。PCへ送る信号は、エフェクトを通る前のPre Fxから取るか、通った後のPost Fxから取るかをInputタブで選べるので、掛けた音でモニターしながらドライで録ることも、掛け録りすることもできますよ。
リバーブは5つのミックスとは別に1基用意されていて、ルームサイズはSmall、Medium、Largeの3種類。Pre-Delay、Damping、Decay、Widthの4つのパラメータで響きを調整する、シンプルながらも使いやすいものとなっています。Reverbタブで各入力からのセンド量を決め、リターンは各ミックスのReverbチャンネルで加える形なので、ボーカリストのヘッドホンにだけリバーブを深めに返したいときにも重宝しますよ。
しかもPCを外しても、こうしたミキサーとエフェクトは本体だけで動き続けます。Deviceタブでは全設定をプリセットとして保存できるので、スタジオ用とステージ用を作り分けておけば、セッティングの切り替えもすぐに済みますよ。一方、PCに繋いで使う場合も、DeviceタブでNetwork Controlを有効にしておけば、PCと同じWi-Fiなどのネットワークに繋いだiPadやiPhoneのCueMix 5から、OctaLiteを操作することも可能です。PCから離れた場所でも、手元でミックスを調整できるので、あらゆるセッティングに対応できます。
光ケーブル1本でマイク入力を8ch追加。UltraLite mk5側の新機能も
そして、OctaLiteの大きな特徴といえるのが、オプティカル・エクスパンダとしての使い方です。光出力の設定はCueMix 5のOutputタブで行い、Optical OutのフォーマットをADATにして、Sourceで「Analog Inputs (Optical Expansion)」を選択します。
このSourceの設定で、8系統のアナログ入力が光出力に送られ、UltraLite mk5や828といったADAT入力を持つインターフェイス側では、8chの入力として扱えるわけです。もちろん、「MOTU 16Aの第二世代モデル登場。64ch DSPミキサーやMilan対応AVB、Thunderbolt 4/USB4を搭載し、制作から配信まで網羅」で紹介した16Aでも受けられますよ。
ただし、送れるch数はサンプルレートで変わるので注意が必要です。44.1/48kHzなら光ケーブル1本で8ch。88.2/96kHzではSMUXという方式で1本あたり4chとなり、1-4chを1本目、5-8chを2本目の光出力から送ります。そのためUltraLite mk5のように光入力が1つの機器で受ける場合、8chすべてを使えるのは48kHzまでです。OctaLite自身の光入力も1つなので、96kHzで受けられるのは4chに限られます。
逆に48kHzまでなら、UltraLite mk5と組み合わせて、両機合わせた10系統のマイク入力すべてを、同じ回路のマイクプリで揃えることができます。ドラムやボーカル、ギターアンプなどに何本ものマイクを立てるバンドの一発録りでも、すべての入力で均一なクオリティが得られます。
また、OctaLite同士を繋ぐときも設定とサンプルレートの制限は同じで、2台目の8chの入力が1台目を経由してPCに届きます。ブラケットと連結キットで2台を横に並べれば、1Uに16基のマイクプリが収まり、そのすべてをまとめて録ることができます。1Uで16chのマイク録りができるのは、なかなか強力ですね。
一方、UltraLite mk5側にも、2026年9月22日公開のMOTU Gen 5インストーラで新しい機能が加わっています。それがCueMix 5のOutputタブ、Optical Outの設定にある「Mirror Analog Outputs」で、ライン出力1-8chに送っている信号と同じものを、ADAT出力からも出せるという機能。OctaLiteからのマイク入力を光入力で受けながら、ライン出力の信号を光出力でデジタルミキサーやレコーダーへ送れるわけです。
付属ソフトとUltraLite mk5との使い分け
付属のDAWは、「MOTUのハードウェア付属の無料DAW、Performer Liteが、歌ってみたの歌い手にお勧めな理由」で紹介したPerformer Liteと、Ableton Live Liteの2本です。Performer Liteには100種類を超えるバーチャル楽器が含まれているほか、MOTUやBig Fish Audio、LucidSamplesなどによる6GB分のループとサウンドも用意されていて、いずれも製品登録後にダウンロードできます。
また、ハイ・リゾリューションのユーザーページでは、MOTU製品の正規オーナーを対象に、作曲家の和田貴史さんのソロプロジェクト、John Harmony’s Garden「Can’t stop loving you」のPerformer Liteプロジェクトデータを無償配布しています。その録音や編集の工程は和田さんのYouTubeチャンネルでも公開されているので、Performer Liteでの実際のワークフローを知ることもできますよ。
さて、ここまで見てきた通り、OctaLiteとUltraLite mk5は同じサイズの筐体ながら、入出力の構成は大きく異なります。そのため、どちらを選ぶかは使い方次第。ライン出力を多く使う人や、5ピンのMIDI端子が必要な人はUltraLite mk5、マイクを8本挿したい人はOctaLiteがピッタリです。ただ、OctaLiteをUltraLite mk5のエクスパンダとして組み合わせれば、PCに繋いだUltraLite mk5側のMIDI端子とライン出力も合わせて使えるので、両方を揃えるのも一つの手だと思います。
以上、MOTU OctaLiteについて紹介しました。ハーフラックに8基のマイクプリ、PCなしでも動くDSPミキサー、そしてADATでの拡張性。マイク入力が足りないUltraLite mk5ユーザーはもちろん、MOTUのM2やM4から、ドラムを1台で録れる機種へ移りたい人も、一度チェックしてみてはいかがでしょうか?
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【関連情報】
MOTU OctaLite製品情報(ハイ・リゾリューション)
MOTU UltraLite mk5製品情報(ハイ・リゾリューション)
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