MOTUから第5世代828がデビュー。超高音質な28in/32out USB3インターフェイスを試してみた

すでにご存じの方もいらっしゃると思いますが、MOTUから定番の高性能オーディオインターフェイス、828の第5世代目となる製品、MOTU 828が発表され、国内では1月31日より発売となります(税込市場想定価格169,400円前後)。この新たな828は完全な新設計で、従来モデルであるMOTU 828esから大きく進化し、より高音質、高性能になっています。

MacまたはWindowsまたはiPhone/iPadにUSB 3(USB 2.0互換)で接続し、最高で24bit/192kHz、最大で28in/32outに対応したオーディオインターフェイス。強力なDSPを搭載し、ミキシングやエフェクトを内部処理できるようになっており、パソコンに接続しなくてもスタンドアロンのミキサ&コンバータとして利用することが可能なのもユニークな点。ESS Sabre32 Ultra DACの搭載により125dBのダイナミックレンジを実現する8系統のバランス/DCカップリングTRSアナログ出力を搭載しているのも特徴です。そのMOTU 828を発売前に一足早く試すことができたので、どんな機材なのか紹介してみましょう。

MOTUの第5世代目となる828が超パワフルにフルモデルチェンジして発売された

23年の歴史を持つ歴代828で最高音質を誇る新828

DTMステーションで昨年11月に行ったアンケート調査で、オーディオインターフェイスとして第3位/11.4%のシェアとなったMOTU。ここ数年で爆発的に普及したM2やM4が牽引したことがシェア動いている向上につながっているのだと思いますが、そのM2やM4の機能・性能を大きく上回るMOTUを代表するオーディオインターフェイスが、MOTU 828です。

初代828がリリースされたのは2001年のこと。FireWire(IEEE1394)接続のオーディオインターフェイスでMacにもWindowsにも対応するものとして初めてリリースされ、大きな注目を集め、幅広く普及していきました。その後、828mkII、828mk3 Hybrid、828x、828esなど、さまざまなモデルチェンジ、バリエーション展開をしつつ、常にオーディオインターフェイスの世界で機能、性能面でトップを走ってきたという歴史を持つ製品です。

その828がこれまでの第4世代製品である828esからフルモデルチェンジ。23年ぶりにシンプルにMOTU 828という名前に戻ってリリースされたのです。

アナログ回路を再設計し、ESS Sabre32 Ultra DAC搭載で超高音質を実現

これらの歴代828のうち2011年発売の828mk3 Hybrid、2017年発売の828es(ともに廃盤)と重ねて写真撮影したのが以下のものです。

いずれも1Uのラックマウントサイズでブラックボディーではありますが、デザインはかなり大きく異なっていることが分かると思います。828シリーズとしては初の液晶ディスプレイ採用となっており、入出力状況のチェックや各種設定も、とても分かりやすくなっています。

一方リアを見ると奥行きが長くなっていることが分かります。具体的には前モデルの828esが18cmであったのが、新製品の828は31cmと倍近い長さになっています。

そう、今回の828は、これまでの828史上最強の音質と打ち出しているだけに、熱対策も含めアナログ回路周りも大きく設計を見直した結果、奥行きも大きくなっているのだとか。

DACにはESS Sabre ES9026Proを搭載
その音質のコアを握るのがDACチップ。ESS TechnologyのSabre ES9026PRO DACを搭載しており、出力においては125dBのダイナミックレンジと-114dBのTHD + Nという、他社製品をも圧倒するスペックを誇っています。

アナログ・デジタル合わせて28in/32outの入出力をチェック

ざっと入出力についてチェックしてみましょう。まずフロントパネル左側にマイク/ライン/ギター入力可能なコンボジャックが2つ、その右にはヘッドホン出力が2系統用意されています。この2系統のヘッドホン出力は、それぞれまったく異なるミックスを設定することも可能になっています。

リアを見てみると、またかなり数多くの端子が並んでいるのが分かります。

右から見ていくと、まずフロントの2chから入ってきた信号にインサーションする形で、2系統のSEND/RETURNが並んでいます。これは828esにはなかった機能で、これを使ってアウトボード接続したり、リアンプといったことも可能です。

その左にはTRSフォン接続のラインインが3~10chとして並んでいて、さらにその隣にXLR接続のメイン出力があります。

そして3~10chのラインアウトがあり、その左にフットスイッチ用の端子が用意されています。ここまでがアナログの入出力で、ヘッドホンの2系統も入れると10in/14outということになります。

その左にはMIDIの入出力があり、その隣にコアキシャルのS/PDIFがありますね。さらに左にはオプティカルの出力が2つ、入力が2つあり、これらはadat接続できるため、1つで8ch伝送可能だから16in/16outで、先ほどのS/PDIFと足し合わせてデジタルでは18in/18outとなり、先ほどのアナログと足せばトータル28in/32outという計算になりますね。

一番左にあるのはWord Clockの入出力。外部機器との同期もここでとることが可能なわけです。

ちょっと気になったのがUSB端子です。USB Type-C端子となっているわけですが、ここにはUSB3|USB2との表記があります。また、MOTUのサイトなどには「USB3(USB 2.0互換)」という表記があり、実際試してみたところ、コンピュータ側はどちらに接続しても同じように動いてくれるようでした。USB3接続すると、レイテンシーなどでなんらかの差が出る可能性もありそうですが、まだ細かく検証できていません。これについては、正確なことが分かったら追記したいと思っています。

3.9インチ24ビットRGB LCDとノブ/ボタンで各種設定を行う

実際操作してみると、フロントにあるノブは一番右側のメインボリュームはもちろん、メニュー用のロータリーエンコーダーも、入力ゲイン調整、ヘッドホン出力調整、すべてかなり重めの操作感になっています。

またMENUノブとその下のSELECT/BACKボタンを使い、サンプリングレートやクロックソース、各種ルーティング、デジタル端子のモード設定やメーターに関する設定など、各種設定を行うことが可能になっています。

さて、MOTUの第5世代の設計という面では以前「超高音質を誇る18in/22outのMOTUの第5世代UltraLiteインターフェイス、UltraLite mk5を試してみた」という記事で紹介したUltraLite mk5とも共通する面もいろいろありそうです。その一つがミキサーアプリケーションであるCueMix 5を採用しているという点。

828のすべてをコントロールできるソフトウェア、CueMix 5

CueMix 5は828のすべてをコントロールできるアプリ。前述のとおり、828本体のノブやスイッチ、ディスプレイを使って各種設定は可能ですが、このCueMix 5を使うことで、より分かりやすく、より細かく設定していくことが可能です。

具体的にはCueMixという名の通り、メイン出力や2系統あるヘッドホン出力、3-4、5-6、7-8、9-10とある各ラインへの出力に何を送るかを設定するCueのミックス設定が可能になっています。

また入力における各チャンネルのゲイン設定や、出力における各チャンネルのトリム設定。そして、内蔵DSPによって、各チャンネルで利用できるパラメトリックEQやコンプやゲートの設定、そしてリバーブの設定……などなど細かな設定を行うことが可能です。

こうしたアプリケーションは、他社オーディオインターフェイスでも存在していますが、CueMix 5がいいのは、とにかく分かりやすいということ。28in/32outとトータル60chもあるオーディオインターフェイスではありますが、誰でもマニュアル不要で簡単に利用できると思います。

CueMix 5のアプリ自体はMOTU UltraLite 5のものとまったく同じですが、何が接続されているかによって画面表示は変わってくるようです。

ループバックのチャンネル設定を変更可能

また以前紹介したときよりもCueMix 5機能も進化し、828の最新ファームウェアと組み合わせることでユニークな使い方が可能になっています。

たとえば、ループバックに関するチャンネル設定が可能になっているのは重要なところ。現在、他社製品も含め多くのオーディオインターフェイスではループバックが可能になっており、配信などで便利に使えるようになっています。ただし、ほとんどのオーディオインターフェイスのループバックは1-2chに固定されているため、融通が利かないという面があります。

それに対し828ではループバックは9-10chがデフォルトとなっていて、設定変更によって1-2chにすることができるという仕様。そのため、状況に応じて使い分けることが可能になっています。

iPhoneやiPadでCueMix 5をリモートコントロール

また、Network Controlという項目が追加されています。デフォルトではDisabledとなっていますが、これをEnabledに変更することによって、外部アプリからリモートコントロールが可能になるのです。

そうiPhoneやiPad用にもCueMix 5というアプリがあるのですが、同じLAN内にあれば、これらのアプリからCueMix 5をリモートコントロールできるようになるのです。基本的にMac/WindowsのCueMix 5とまったく同じ画面であり、タッチパネルを用いてミキサーやEQなどを設定できるのは便利なところです。

なお、828にはMOTUのDAWであるDigital Performerのライト版であるPerformer Liteが付属しており、WindowsでもMacでも利用可能となっています。

以上、ファーストインプレッションという感じでMOTUの第5世代となる828について紹介してみました。実際にレコーディング、再生してみても、超Hi-Fiで申し分ない感じです。マイクプリアンプも高ゲインを稼げるのに超低ノイズで扱いやすいのも嬉しいところです。ただし、マイクプリアンプはフロントの2つの入力用のみなので、もっと多くのマイクチャンネルが必要な場合はadat接続マイクプリなどを利用しなくてはならないのが唯一の弱点といえるかもしれません。

MOTU M2やM4からのアップグレードに最適なのはもちろん、より高品位で多チャンネルのオーディオインターフェイスが欲しいという人にとって、最適な機材といえそうです。

【関連情報】
MOTU 828製品情報

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Commentsこの記事についたコメント

1件のコメント
  • fjmt

    せっかくUSB3にして帯域に余裕ができたのに、どうしてAVB無くしちゃったんですかね。
    単体でみるとセンドリターンで2ch増えたようなものとはいえ、機材追加による拡張性までふくめると大きく退化したように感じます。
    せめてesを継続販売してくれればいいのに……

    2024年2月3日 12:45 AM

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