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THE金鶴に聞く、映画『家』のサントラ制作、舞台裏

この5月から公開された映画、『家』。主演は西村知美さん監督は秋原北胤さんで、1960年代ごろの家族のかたちを描いたという作品。実は、そのサウンドトラック制作がDTMステーション的に見て、非常に興味深いものとなっているのです。音楽制作を手がけたのは、これまで数多くの映像音楽に携わってきたTHE金鶴佐々木TABO貴さん[元有頂天]、三柴理さん[元筋肉少女帯]、Claraさんの3名によるユニット)。

 

各シーンごとに作られた膨大な数の曲を聴いてみると、バイオリン、フルート、マリンバ、ホルン、ティンパニー……といった生楽器をふんだんに使った楽曲になっているのですが、実はレコーディングにSONAR X1およびOCTA-CAPTUREを用い、音源は主にINTEGRA-7を用いて作ったものなのだとか…。先日その制作過程について、THE金鶴のお二人、佐々木さん、三柴さんに、DTMマガジンなどと共同でのインタビューを行ったので、紹介してみましょう。


今回インタビューさせていただいたTHE金鶴のお二人、 三柴理さん(左)、佐々木TABO貴さん(右)


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--今回の『家』サントラを担当された経緯を教えてください。

三柴:秋原監督の作品では、五重塔、二重心臓などの文学映画をやってきており、だいぶ以前から「今度、小諸での作品をやるので、そのときは音楽をよろしく」って言われていたのです。ただ、それから4年もたってしまいましたけどね。昨年8月には、映画の撮影はほぼ固まっていたので、準備に取り掛かりました。実際のレコーディングスタートまでに多少余裕があったので、自宅で完結できるシステムの構築という意味もあり、SONAR X1を導入したのです。

2013年5月より公開される映画『家』の予告編。

--なぜ、SONARを?
三柴:もともとはシステムとしてのHDレコーダーじゃないと信用できないと思っていたのですが、時代も変わってきました。そうした中、THE金鶴としてはハイクオリティーな音をお届けするのを売りにしているだけに、音自体にはとにかくこだわりたかったのです。スタジオにある機材などを見ていて以前から、自宅録音の機材に関しては疑問を感じていたので、音がいいという評判のSONARを導入してみたのです。HDレコーダーとかの専用機だとボクはいじれないんだけど、SONARを使えば録音だけなら自分でできるんじゃないか…という期待もあって。
佐々木:三柴とは30年いっしょにやってきたけど、初めて自分だけで録音してくれたから助かりましたね(笑)。4TrのカセットMTRもいじれない人でしたから…。

三柴:どうも、レベル調整とかが苦手で、音が小さすぎたり、音量オーバーで割れちゃったりね(汗)。でも今回OCTA-CAPTUREを使って録音したんですが、AUTO-SENSボタンを活用したこともあって、うまくいきましたよ。4TrMTRより簡単でした(笑)。


サウンドデザイン担当の佐々木さん

 

--OCTA-CAPTUREにマイクを接続してのレコーディングですか?
三柴:今回、自宅での作業ということもあって、マイクは使ってないんですよ。主にINTEGRA-7のライン出力をOCTA-CAPTUREに接続しています。ほかにもV-Synth GTやギター、デジタルピアノなど使っています。昔は自宅でのレコーディングなんてデモ程度しかできないのが当たり前でしたが、今はこれでできちゃいますからね。普通、バイオリンやフルートといった生楽器を録音する場合は、スタジオにプレイヤーを呼んで演奏してもらって録りますよね。でも、最近の映画はなかなか予算もとれないし、時間もない。それならオーケストラとか室内楽の人を呼ぶよりもこうした機材を使ったほうが早いし、クオリティーの高いものが作れます。実際、普通に聴けば、生楽器を使っていると思って疑わないと思いますよ。

 

--INTEGRA-7は数多くのアコースティック楽器の音が収録されていますからね。
佐々木:INTEGRA-7のすごいのは、単にサンプリングされた音というのではなく、実際のアーティキュレーションを忠実に再現してくれること。バイオリンならバイオリン、ホルンならホルンという楽器の特性を熟知していて、その奏法を分かっていてこそできることが多く、伸びしろが大きいんですよ。三柴の場合、オーケストラマニアというか生楽器マニアだから、すごい弾き方まで再現してやっているから、生のように聴こえるんですよ!
三柴:ボクもそうだけど、Claraもそうなんですよ。バイオリンとかフルートの音をさらにカスタマイズして、「このタイミングからビブラートがかかる」とか、入念にチェックして徹底的に音作りもしているんですよ。Claraがフルートやバイオリンを弾いて、ボクがホルンとかハープを弾いたりしてましたよ。ただ、ここではドンカマは一切使わない。「せーの!」で一緒に弾いて、それぞれ違うトラックにステレオで録音していくんだけど、SONARだと、どんどんトラックを増やしていっても、まったく問題なく動作してくれるのが嬉しいのなんのって!

SONAR X1にレコーディングしたという三柴さん

 

--クリックを使わないというのは、何か理由があるんですか?
三柴:サントラなので、映像を見ながら、それに合わせて「せーの」で演奏しているんです、合うまでやる。映像の動きに合わせてrit.を入れたり……。だから、ドンカマは使いようがないんです。最近の音楽は何でも打ち込みが主流で、何のバンドでもドンカマが当たり前になっています。でも、ジミヘンだってピンクフロイドだって、昔のバンドは、サビを強調したければ、ちょっと遅くなったりするのが自然でした。確かにドンカマが合理的だったからこそ、普及していったわけだけど、最初にそれがありきというのはおかしい。もっとも今回1つだけドンカマを使ったものはあるんですよ。赤ちゃんが出てくるシーンで心臓音を鳴らすのに、ドンカマを聴きながらGM音源のハートビートというのを手弾きしました。そのあとは、録った音に重ねる形で弾いていきました。

 

--INTEGRA-7、確かにリアルなサウンドだと思いますが、生楽器の音での演奏と比較するとどうなんでしょう?

三柴:昔はホルンを呼んで、レコーディングしたりもしていました。ただね、演奏者のみんながみんな夢中になってやってくれるわけじゃないんですよ。ボクは映像を真剣に見て、登場人物の思いや情景をいかに音楽として作り上げていくかということをしていますが、曲そのものがさほど複雑ではないこともあり、演奏者は譜面をみたら、初見ですぐに演奏できちゃう。だからこそ、適当にやられちゃうことがよくあるんですよ。レコーディングのギリギリの時間まで携帯をいじっていて、1回演奏して終わりって……。それではやはり思い通りにならない。下手するとチューニングとかもおかしくて、後でコンピュータを使って直したりね。そうすると、そのエディットのせいで、機械っぽくなっちゃったりして…。INTEGRA-7のようなところまで来ると、生と変わらないですよ。


ミックスもすべてSONAR上で、ProChannelや標準エフェクトで処理している

 

--最新のシステムを使ったからこそベーシックな制作手法に戻れた、と。
佐々木:やっぱり楽器のクオリティーが上がってきたからこそ、実現できるようになってきたことも多いと思いますよ。
三柴:INTEGRA-7、音色数が多いので、音色一覧をプリントアウトした上で、片っ端から音を確認して、使えるものを選んでいきました。たとえばマリンバとかビブラフォンの音なんか尋常じゃないですね。あまりにもリアルすぎて、気持ち悪いほどでしたから(笑)。
佐々木:ただ、普通に録ると生っぽ過ぎて困る面もありました。今回の映画、1960年代とかを描くものだったので、あまりにもHiFiでリアルだと映像に合わないので、「どう汚そうか」という感じでミックスを考えた部分も多々ありました。テープシミュレータを使ったり、わざとヒスノイズを乗っけたり、ビンテージのコンプをつかって昔っぽくしたりね。すべてSONAR標準のエフェクトやProChannelの機能を使ったのですが、この辺は楽しかったですね。時代性と質感をコンピュータの中で作れちゃうんだから、何でもできちゃう。

 

--半年程度で、SONARやINTEGRA-7、OCTA-CAPTUREなどを使いこなしている感じですね。

三柴:半年なんて経ってませんよ、実質3か月も使ってないくらいですから。ここまで戸惑うようなことはありませんでしたが、まだ全然使いこなせていません。そもそもMIDIだって使ってないし…。


SONARにはMIDIトラックは作成せず、すべてオーディオでレコーディング。フェードはA-300 PROを使って入力

 

--MIDIトラックは全然使っていないのですか?
三柴:そうですね。すべてオーディオトラックのみです。昔はMIDIで録っておいてホルンで鳴らして、やっぱりトロンボーンに替えてみようか…なんてのが大丈夫でしたが、INTEGRA-7は音色によって弾き方をかえると、より本物らしくなるので、ホルン用に作ったデータをトロンボーンに置き換えたりはできないんです。だから敢えて、MIDIは使わず、すべてオーディオトラックなんですよ。よくロックバンドの仕事などでデータを渡す際に、「オーディオといっしょに、MIDIでもください」なんて言われますけど、絶対にあげない(笑)。だって、渡すと勝手にソフトシンセの音色とかに換えられちゃって、ひどいことになったりする。やっぱりMIDIでは伝えられない表現力っていうんですかね…。

 

--最後に読者に向けて一言ずつお願いします。
三柴:自宅でレコーディングするならOCTA-CAPTUREはいいですよ。近い価格帯の製品はいろいろありますが、ちょっと一段違いましたね。もっとも、いまSTUDIO-CAPTUREというのが出たので、そっちにも興味があるんですが…(笑)。あとA-300 PROを使ったんですが、SONARとの組み合わせでこれがすごく便利でした。そのキーボード部分は全然使わなかったんだけど、コントローラーとしてね。フェーダー操作もこれを使ったところ、すごくいい感じでしたね。
佐々木:最新の機材を使って、もの凄く人間的なことができるというのをぜひ聴いてほしいですね。実験的な側面もあって使ってみたシステムでしたが、まだまだいろいろなことができそうという可能性も感じました。今後も、ぜひ活用していきたいですね。

 

--ありがとうございました。

 

【関連サイト】

映画『家』公式ページ

THE金鶴公式ページ

 

【製品情報】

 

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