イギリスのプロ・オーディオの名門、Focusriteから新たなオーディオインターフェイス、Scarlett(スカーレット) G2シリーズ6機種、全8製品が一機に発表されました。今回登場したのは、これまでも人気のあったScarlettシリーズの第2世代となるもので、見た目は大きく変わらないものの、これまでの24bit/96kHz対応から24bit/192kHz対応になるとともに、マイクプリアンプ性能が向上し、さらにレイテンシーが往復で2.74msecと非常に小さくなっているのがポイント。
そして何よりも驚くのがその価格。エントリーモデルである2IN/2OUTでマイクプリが1つというScarlett Solo G2の場合、10,000円(税別)という値段設定となっているのです。しかも、Ableton Live LiteやFocusrite Red2 & Red3 Plugin Suite、Softube Time and Tones Bundleといったプラグインに加え、各社オーディオインターフェイスの中で、初めてPro Tools|Firstをバンドルしてきたのです。しかも、このPro Tools|Firstは通常のフリー版に入っているプラグインエフェクト10種類に加え、12種類のプラグインエフェクトがバンドルされているというFocusriteの特別バージョン。実際、どんな製品であるのか、試してみました。
新たに登場したFocusriteのScarlett G2シリーズ。上からSolo、2i2、2i4
この赤いボディーがカッコいい、FocusriteのScarlettシリーズ。第2世代になって中身は変わったものの、基本的なデザインや使い勝手は従来のものを完全に踏襲しています。
今回発表されたのは以下の6機種
製品名 | 入出力数 | マイクプリ | 直販価格(税抜) | 発売時期 |
Scarlett Solo G2 | 2in/2out | 1 | ¥10,000 | 2016年6月 |
Scarlett 2i2 G2 | 2in/2out | 2 | ¥14,500 | 2016年6月 |
Scarlett 2i4 G2 | 2in/4out | 2 | ¥18,300 | 2016年6月 |
Scarlett 6i6 G2 | 6in/6out | 2 | ¥27,500 | 2016年7月 |
Scarlett 18i8 G2 | 18in/8out | 4 | ¥38,500 | 2016年7月 |
Scarlett 18i20 G2 | 18in/20out | 8 | ¥55,000 | 2016年7月 |
さらにコンデンサマイクとモニター用ヘッドホンをセットにした以下の2つのパック製品も登場しています。
製品名 | 直販価格(税抜) | 発売時期 |
Scarlett Solo Studio G2 | ¥21,200 | 2016年6月 |
Scarlett Studio G2 | ¥27,600 | 2016年6月 |
高品位な音でのレコーディングに必須のコンデンサマイクを単体で購入するとなると、エントリー製品でも数万円はしてしまうのが一般的で、モニターヘッドホンを入手しようと思っても、やはりかなりの価格になります。それらがセットとなって、すぐにDTMを始められる環境が、21,200円で手に入れられるというのは、かなりグッと来ますよね。
Scarlett Solo Studioにはコンデンサマイクやモニターヘッドホンが同梱されている
これまでのScarlettシリーズ、「すごくいいけど、192kHzに対応していないのが残念」といった声が多くあったのを受け、従来の96kHzから、192kHzの最高品質ハイレゾサウンドの再生、そして、そのレコーディングにも対応した形になっています。また、その特性を十分に生かせるようにと、マイクプリアンプも性能アップしている、というのが第2世代のG2である、というわけなのです。
Scarlett G2シリーズではサンプリングレート192kHzに対応
実際、このモニターヘッドホンを使って、聴いてみましたが、高域までしっかり音を捉えることができ、音の細かなニュアンスの違いまで聴き分けることができるし、口径が大きいオーバーヘッド型のヘッドホンだけに、低域もかなりしっかり出ています。
Scarlett Solo Studioには入っているコンデンサマイクやモニターヘッドホンもなかなかいい感じで使える
まあ、モニターヘッドホンという特性上、のんびりゆっくり聴くリスニング用のものとはちょっと違う雰囲気ですが、「CDの音と、MP3の音、ハイレゾサウンドでは、それぞれどう音が違うのか?」なんていうのを聴き分けるのには、結構使えて面白いですよ。
実売価格1万円という衝撃価格のScarlett Solo G2
また、驚くのは今回の価格です。Scarlett G2シリーズになり、性能が大きく向上しているのに、値段は大きく下がっているのです。たとえがSoloの場合、従来13,500円だったのが10,000円に、2i2は19,800円が14,500円、2i4は27,000円が18,300円……といった具合。SteinbergのURシリーズの価格を意識しているんだろうな、と思う設定ではありますが、これはユーザーとしてもなかなか魅力的ですよね。
2in/2outでマイクプリも2つ装備する2i2でも14,500円
その、Scarlett G2シリーズで、もう一つ大きく注目すべきポイントがバンドルのDAWです。前述のとおり、従来のScarlettシリーズでもバンドルされていたAbleton Live Liteに加え、Pro Tools|FirstのFocusrite特別バージョンがバンドルされているんです。
Pro Tools|FirstのFocusrite特別バージョンがバンドルされている
このPro Tools|Firstについては以前、「フリーウェアのPro Tools|Firstがやってきた!」という記事でも紹介したことがありましたが、Avid Techonologyが昨年から無料配布を始めたDAWです。
「無料のDAWをバンドルされたって、嬉しくないよ!」なんて声も聞こえてきそうですが、このFocusrite版のPro Tools|Firstはちょっと違うんです。通常配布されているPro Tools|Firstには10種類しかエフェクトがバンドルされておらず、それだけでは、あまり使えないというのが正直なところでした。また一般的に流通しているAAXプラグインは使えないし、正規にプラグインを追加しようとすると、結構な価格でオンライン購入する必要があったので、「そうまでしてPro Tools|Firstを使わなくても…」と思ってしまうDAWだったのです。
ところが、このFocusrite版には、かなり使える12種類のプラグインが追加され、これらをMacでもWindowsでも使うことができるんですよね。具体的には以下の12種類です。
Eleven Lite | アンプシミュレータ |
InTune | チューナー |
Vibe Phaser | フェーザー |
Sci-Fi | リング・モジュレーター |
Vari-Fi | スピード変化エフェクト |
Graphic EQ | グラフィックEQ |
Black Op Distotion | ディストーション |
Flanger | フランジャー |
Roto Speaker | ローターリースピーカー |
Tepe Echo | テープエコー |
Studio Rverb | リバーブ |
Gray Compressor | コンプレッサ |
見てお気づきの方もいると思いますが、Focusrite製のエフェクトが追加された、というわけではなく、Pro Tools|Firstのオプションとして用意されているエフェクトが12種類バンドルされた形になっています。
Pro Tools|First本体およびプラグインはAvidサイトからダウンロードする
ちなみに、Pro Tools|First本体はフリーウェア版と同じもののようで、Focusrite版には本体とは別に12種類のエフェクトがセットとなっているわけです。これら12種類は1つ1つダウンロードし、1つ1つインストールしなくてはならないのがちょっと面倒ではありますが、入れてしまえば、あとはずっと使えるプラグインとなっています。サブスクリプションで月額で課金されるのとは違うから、安心して使うことができるんですよね。これが入手できるだけでも、十分元が取れてしまうのではないでしょうか?
昨年Pro Tools|Firstを使ったときは、エフェクトが少ないというだけでなく、日本語環境だとバグもかなり目立ち、やや印象が悪い状況でした。ところが今のPro Tools|First 12.3.1は結構安定してくれます。ただし、保存できるのはクラウドのみで、計3つまで…といった仕様は無料版と同じですね。
Ableitn Live 9 Liteもバンドルされているほか、各種DAWでも利用可能
もちろん、Scarlett G2シリーズは、バンドルされるPro Tools|First、Ableton Live Lite以外のDAW、たとえばCubaseやSONAR、Logic、StudioOne、ABILITY……といったDAWで使うこともできますよ。
これからDTMを始めてみたいというエントリーユーザーの方はもちろん、2台目のオーディオインターフェイスを検討中、ほかのマイクプリアンプ内蔵オーディオインターフェイスを試してみたい…といった人にとっても、手ごろな価格で便利に使える製品だと思いますよ!
【製品情報】
Focusrite Scarlett G2シリーズ製品情報
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コメント
藤本様
Scarlett Solo G2は、iOSには対応しているのでしょうか。
私は現在、UR-242をパソコンとiPad-Air2とでコードを差し替えて使っておりますが、できたらiPad固定、専用のIFが欲しいな、と思ってたところなんです・・・。廉価なものでけっこうなのですが、よろしくお願いします。
西成さん
こんにちは。iOSには正式対応していません。基本的にはUR242と同様です。ただUR242などはACアダプタから電源供給可能であるのに対し、Scarlettはそれがないため、間に電源供給可能なUSBハブを噛ませる必要があります。その方法で、いま試してみたところ、確かにしっかり動作してくれました。
藤本様、ありがとうございました。
電源のことを気にしなければ使える、ということですね。
iPadでは、主にCubasisを使用しているので、私の場合、UR-242をもう一台購入したほうがよさそうですね。そんなに高価でもないですし。
ありがとうございました。失礼いたしました。
質問なのですがPro Tools|FirstのエフェクトはPro Tools|Firstでしか使えないのでしょうか?
名無しさん
AAXプラグインなので、ProTools 12でも使えると思います。が、基本的にもともと入っているものがほとんどなので、不要かと思います。
PCとの接続についてご質問です
USBで接続と思いますが、
2.0か3.0か教えていただけますか?
よろしくお願いします
AKAIKAIYAさん
USB 2.0端子でもUSB 3.0端子でも使えますが、規格的にはUSB 2.0接続ですね。
現状USB 3.0接続可能なオーディオインターフェイスはZOOMのUAC、PreSonusのSTUDI O192、RMEのMADIfaceなど、ごくわずかしか存在しないです。
ありがとうございました
もうすぐ発売されるScarlett 18i20 G2に興味を持っていろいろ調べていたら結局藤本さんの記事にたどり着きました(笑)
音質に定評のあるScarlettシリーズなので試そうかと思っていますが、URシリーズのようにDSPエフェクトなどは内蔵されていなく、ダイレクトモニタ音にリバーブなどが単体ではかけられないと理解しています。DSPミキサーの使い勝手も賛否あるようですが、それよりURに慣れているとダイレクトモニタのリバーブなしというところに引っかかっています。
その昔はIOと別にミキサー用意してハードのリバーブ使ってたんだっけ?と記憶が曖昧になるくらいURに慣れてしまっているので・・・(汗)
今回のG2シリーズはレイテンシが最小になったということで、ダイレクトモニタが必要なく、DAWからのエフェクトを含んだ音の返しで十分ボーカルモニタなどができるという理解でいいのでしょうか?
わんぱぶさん
どこまでレイテンシーを詰められるかはPCのパワーにもよると思います。またプラグインエフェクトを挿すと、そこでもレイテンシーが発生するので、レイテンシーだけに着目すればDSPに分があります。でも、プラグインで自由に好きなエフェクトを選べるメリットは大きいですし、ここまでレイテンシーが小さくなれば、ほぼ気にせず使えるのではないかと思います。
藤本さんいつもご丁寧なお返事ありがとうございます。
なるほどプラグインかけながらボーカルとか録音できると録音時から編集のこと考えながら録り方も考えられますもんね。それは考えもしませんでした。今のマシンパワーと技術があってこそですね~。Scarlett 18i20 G2さらに興味が湧いてきました(笑)レイテンシーにかぎらずScarlett 18i20 G2の機能をレビューしていただける機会がありましたら楽しみにしています。他の記事ももちろん楽しく読ませていただきます!
ヘッドホンはどうでしょうか?
MDR-CD900STと比べると音質は劣るでしょうか?
ヘッドホンが気になるさん
ヘッドホン、モニター用と見て悪くはないと思いますが、低音は出にくい印象です。
一方で、900STと比較したら、それは断然900STのほうが上ですよ。
ヘッドホンの価格だけで比較しても圧倒的な差があるわけで、それに相当する違いがあると思っていいのではないでしょうか?
初めまして
DTM初心者になります。
初めて使うDAWがこれからもある程度使うDAWになるんだろうなと思い、
元からCubase LE6が付属しているScarlett studio を購入しようと考えていたのですが
昨日 間違えてCubasの付属していないScarlett 2i2 sutudioを購入してしまいました。
今回一度2i2の方は手放して、再度cubaseがもとからついたキッドを購入しようと
考えているのですが、いろいろ調べていると
・2i2のほうが新作であること
・Pro toolsが付属していること
等、2i2を使っていたほうがいいのかな、という気持ちになってきました。
その場合
2i2を使い続ける場合Cubeseは別途購入が必要ということですよね><
(もともと付属されているのを買っても
購入前から使い慣れてきたらcubaseグレードアップを考えてはおりました)
このままCubaseなしで2i2を使い始めるか
初めからCubaseに慣れておくために再度買い替えるか、
どちらがよろしいでしょうか??
私の購入ミスで大変恐縮ですが
その際の先を見据えた使用上のメリットや別途おすすめ等あれば教えていただけたら幸いです。
初心者さん
どのDAWが付属しているかというのは、なかなかわかりにくいですもんね。
もちろん、買いなおすというのも手ではありますが、それには結構な出費が必要になりますよね。返品できるのであれば、話は別かもしれませんが…。
もし買いなおすくらいなら、Cubaseを購入したほうが安いと思いますよ。
Cubase LE 9よりも機能的にはずっと上のCubase Elements 9は10,800円ですから。
その後アップグレードすることを考えても、ソフト購入のほうがいいように思います。
いかがでしょうか?
迅速・ご丁寧なご対応ありがとうございます。
買値での返品が不可の状態で少し後悔しておりました。。。
ですので本当に助かりました!
早速購入してみようと思います!
ありがとうございます
初めまして!
藤本様
DTMスーパー初心者です。
DAWを使ってやりたいことは、自分で弾いたギターを録音したいのですが、いまいち分かりません(専門用語とかもわかりません。)ので教えて下さい。
PC:win10
IF:Scarlett Solo Studio G2
・input2にギターのシールドをさし録音したのですが音がこもる。
・サイトからDLしたシュミレーター?がどこにインストールされているのかわからない。
・ギターのバッキングファイルmp3をインポートするとapple quick time をインストールしてくだ
さいというメッセージが出たのでWindows用のquick timeをDL商品たのですがファイルをインポートすることができませんでした。
すみません。がわかる範囲で教えていただけたら幸いです。
藤本様
追記です。
使用ソフトは、Pro Tools Firstです。
すみません。
hinkinさん
お返事が遅くなって失礼しました。
http://www.dtmstation.com/archives/51868479.html
この記事を読んでみてください。これでだいぶ解決するのではないでしょうか?
MP3読み込みに、QuickTimeというのは変ですね。何かシステム的におかしくなっている可能性が高そうです。
藤本様
お忙しいところ返信いただき恐縮でございます。
早速、記事を参考に設定したところクリーンな音で録音することができました。
誠にありがとうございました。
まだまだ、課題はありますがトライしたいと思います。
hinkinさん
無事解決できてよかったです!
はじめまして。
現在、オーディオインターフェースの購入について検討中で、Scarletがいいかなー、と思っていたのですが、ClarettにUSB版が出たとのことでそちらにも惹かれてしまいました。
しかし、打ち込みや視聴がメインで今のところ入力はあまり使う予定がなく、入力面の充実したClarettは持て余してしまうのではないか、とも思います。
そこでお聞きしたいのですが、出力音という面から見て、ScarletとClarettを比較した時、どのような違いがあるのでしょうか? または、大差はないのでしょうか?
お答え頂けると幸いです。